2023/12/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区・冒険者ギルド」にアイクさんが現れました。
■アイク > 早朝に比べれば大分静か――冒険者ギルド比――な時間帯。
張り出された様々な依頼のなかでも難易度の低いものであれば、そろそろ達成報告をしてくる者達が集まってくる頃合いだろう。
「―― はい、これ。
ちゃんと完了印も貰ってるから確認してね。」
ギルド職員に達成証を引き渡す少年もその一人であった。
少しばかり薄汚れてしまっているのは壮大な冒険を経た結果――なのではない。
「……地下水道の害獣駆除って、実入りが良い割にやりたがらない人がいるのって本当だね。
ボクも次行くときはもう少し間を空けたいかも。」
誰もやりがたらない――地味で、辛くて、そして臭い依頼には少年は少しばかりため息を漏らしてしまう。
とはいえ、危険度は低く自分のような駆け出し冒険者にとっては貴重な収入源には違いないのだが。
「流石にこのまま宿には戻れないよね。」
ギルド職員から報酬を受け取って受付から離れながらそんな事を独りごちる。
少しばかり鼻が馬鹿になってしまっているせいもあって、身体にそんな臭いが染みついてしまっているような気がしてしまい自分の服を摘まみ上げて匂いを嗅いでいた。
■アイク > 「これは身体を拭くぐらいじゃダメだろうなあ…」
嗅いだ臭いからそう判断する。
手持ちは普段より多めの報酬がある。となれば、
「今日は少し奮発してお風呂でも入ろう。」
うん、と今日の方針が決まれば、少しだけ浮き足立ちながら冒険者ギルドの出入り口へと向かい歩いて行く。
ご案内:「王都マグメール 平民地区・冒険者ギルド」からアイクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシースさんが現れました。
■シース > 【お約束待ちです】
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリリット・アリール・ソエティアさんが現れました。
■リリット・アリール・ソエティア > 「位じゃないよ、大事な事だからね、そういうの。
魔法とかは気にしないで良いと思うよ、真面目と言うのも十分に評価に値するし。
了解、まぁ…学院外だしね。
ん…そか。他の街はあんまり旅行向きじゃないねぇ…ダイラスならボク的にはホームだからねっ」
危険にかんすれば街の外が圧倒的、とはいえ街中に無いかと言えば…。
ダイラスに関して言えば、自分の魔法などで安全性と船足はかなり保証される部分がある。
有名所の街でいえば、他は中々旅行には向かないだろう。
何方も一般人向けではない事だけは確か。
「香辛料含めて、昔は輸入だよりだったもので今はこっちで作ってるのは多いね。
それは確かに…ある程度懐の余裕ないとだねぇ…。
あー、性格や種族次第な部分もあるもんね、大多数が凄いと思うものが自分に合うかは別かな。
そだね、ボクが考えてた色と、シースさんが考えた色はきっと違うし」
種族含め、個人個人で感じる事は違うし、芸術という物に対する感性も違うだろう。
自分には落書きにしか思えなくても、人によっては良い品なのだろう。
味の好みに関しては互いに一般的か、甘味が好きというところは近いのだろう。
「それはまぁ、なんとなく感じてるかな?
ボクはそこら辺に鈍感だけど、シースさんは結構…ん-、なんていうんだろ潮目を読み過ぎる的な。
あはは、そういう風に言ってくれるのは嬉しいかな、でもボクにも下心はあるよ、うん」
少女には判りづらい言葉だろうが、要するに警戒心が強いと言いたいらしい。
信用してくれる事は嬉しいが、それでも自分の中にある一部を少女へ示すように言葉にしつつ。
うん、という言葉と共に艶っぽい笑みを浮かべ少女を見つめ。
「だよね、シースさんの注文頼んで思いついたんだよっ。
うんうん、偶には気楽に過ごさないと息詰まっちゃうしねぇ」
二つに分けられて、目の前に置かれたクレープonアイス。
先に分けられた事に内心苦笑し、きっちりした性格なんだなぁと頭の中で思いつつ。
けれどふと沸いた悪戯心に従って、少女へと切り分けたクレープonアイスを一口分差し出してみる。
「はい、シースさん…あーん」
■シース > 「…長所って。何も無いよりは良いですけど、けれど、一つだけよりは。複数有った方が良いのかなと…贅沢、ですけど。
けれど、えぇ。実際何もない訳じゃない。そういう事だと、思っていただけましたら。
自分次第でどうにかなる、持って生まれ付きの何かとは関係無い…そういう物ですし。
海。港。其処はもうリリットさんにお任せしてしまおうかと。
色々お詳しいでしょうし…というか、王都ですら。私まだまだ知らない所だらけですから。
…このお店だって」
正に恒例。
既に知っていると思っていた屋台の並びから。少し逸れただけで、こんな店があるだなんて。まるで知らなかった。
やはり情報網というのは横の繋がりが重要で。その点人付き合いが苦手な少女と、世界中を船で同業者達と飛び回る彼とでは。
天と地と、どころでは済まない程、あまりに大きな隔たりが在るのも。当然だ。
どうあっても叶わないと解っているのだから。素直に任せてしまった方が良いと思う。
現にダイラスについてだって。言われて思い出した、そんな形。
他の観光できそうな場所すら、一つか二つ、それで限界。
勿論危険度についてだって…知名度で判断している所が多く。実際どれ程の、という体験は無い。
一頻り感心して、彼の言葉に頷いてみせるのだった。
「唯、こういう時は悩むのかも…奢っていただけると、懐的には助かりますが。
逆に奢られっぱなしだと、その、何と言うか。精神的な余裕がみるみる目減りしていく…というか。
目上の方なんだから、ゴチになります、でも良いのかもですけど…どうしても。つい」
なので。先程、せめてリボンに関しては。此方で出させて頂きました、と。先程急ぎ気味で支払いにいった内情を明かす。
あぁして選んだリボンは確かに。それぞれで違う色。
出来上がりもまた、送る相手がお互いである以上。どういった物が似合うのかを考えて、出る結論も…ついでに出来その物も。また違う筈。
「……有るんです?下心」
少々会話をすっ飛ばしてしまう位。其処の点を聞き逃せなかったらしい。
それとは逆に、内面について触れられると。敢えて答えず流したい、そう思ってしまった所も。有るかもしれない。
早速警戒心の強さが出た。…というより。これを黙って流せる程、免疫が無かった、という方が適切。
アイスを載せたクレープを差し出しつつ。その為に少し前へと乗り出したまま。斜め下から掬い上げるような目線。
困り気味に眉を寄せての、藪睨みにも似た目付きは、少々…ぶしつけな風でもあるが。
実際の所これは完全に。少女が、対処に困った時に見せる癖のような物、である…相手へというより。自分が、どう反応すれば良いか、という時の。
「……ん、んっ、けほ。すみません。気楽にと言いつつ、つい、気になっ………ぅ、ぉ …ぉぉぅ…」
長所だけでなく。短所も自覚していると、言いたげに。そんな目付きが悪かったと謝罪しようとした…所へ。
鼻先へと差し出されるスプーン。
載っているのは今折半したばかりのクレープだから、先程のシェアとは事なり、自分の手元にある物と味は同じ。
それでもこうされるという事は。彼の目的は、味覚以外の所にある訳で。
声を呑み込み。目を白黒。たっぷり数秒程度、思考と同時に身動きすら固まったような素振りを見せて、それから。
ぎぎぎと音のしそうなぎごちなさで、ぱくりと。
「っんん、ぁ、ぁー……の。…えー……はい。け、結構な、お手前で…?」
美味しかった。そう言いたいのだろうが。作ったのはお店の人であり、目の前の彼ではない。
髪に触れつつ斜めに逃げた表情自体は、差程変わっていないものの。妙きちりんな答えになる辺り、どうやら。
平静ではいられなかった……らしい。
■リリット・アリール・ソエティア > 「真面目であるって言う事は、物事に真っすぐ取り組めるって事だとボクは思うんだ。
だからシースさんは学院の授業に真面目に取り組んでいる分、長所は後から増えると思うんだよね。
もって生まれた事だけじゃ長所じゃないもの、ボクの航海関係の知識も天候予測も覚えて鍛えた結果だよ?
其処は存分に任せて欲しいね、ダイラスなら王都以上にって言いきれるよ。
そこは逆に考えて、きっとシースさんもボクの知らない場所をしっていると思うんだ、ほら隣の芝生と同じだって。
あぁ…うん、此処はシースさんみたいに真面目な子は知らないと思う、よ?」
この店は一般的生徒はほぼ知らないだろう、遊んでいると言われる系統の生徒ならワンチャンレベル。
情報という意味で言えば人付き合いが多く、長生きしており冒険者でもある自分が多そうではある。
けれど少女が知っていて自分が知らない事も多いとは思うのだが。
とはいえ、頼ってくれるのであればそれは嬉しい事でもあるので、小さく微笑んで。
王国の船乗りでダイラスに言った事が無いのは、それこそ田舎の漁船乗り位だろう。
貿易・交易に欠かせない大規模な港湾都市であり、税収も恐らく多いのだろう。
とはいえ、船乗りが多い分騒ぎも多いし、真面目な少女に紹介できない店も多いのも事実。
そういう部分は他の危ない都市に負けないが、それ以外に安全に案内できる場所も多めである。
「懐の話えいえば。ボクは余裕のある方だからね、シースさんが気にしないなら全部ボク持ちで良いんだけど。
そういう感覚を持っているシースさんは、真面目で良い子だと思うな。
まぁ、シースさんが慣れてきて、ボクに全部ゴチさせてくれると嬉しくはあるね」
リボンの件を聞いて、そっかと頷いて。
選んだリボンの色はおそらく互いに互いが似合うと思った色合い。
そうして作られたものはそこからさらに相手に似合うと思った形や長さに加工され、仕上げられるのだろう。
「あるねぇ、仲良くなりたいっていう下心…ボクも聖人君子ではないもの」
素直に頷いて、もろもろ飛んだ質問に答える。
好きの反対は無関心、好意が無い相手はそもそも注意すら払わないし、相手の事を考えない。
好意があり仲良くなりたいからこそ、少女に声を掛け、少女の事を考えるのだ。
とはいえ、警戒心の強い少女に全てを明かすのではなく、少しずつ距離を測りながらというこの時間も楽しんでいる節もある。
少女からの視線に、艶っぽい笑みを崩し、悪戯っぽい感じの笑みを浮かべ、二人の視線を合わせつつ。
「いいよ、ああいう風に言われてそうですかって流せるのは、結構なツワモノだろうし、ね?」
そんな言葉を挟みながら、手は動いていて。
クレープonアイスを小さく切りとっての、”あーん”である。
恐らくここが普通の喫茶店のテラス席なら、しなかったであろうし、しても少女は頑なだっただろう。
けれどここは個室で二人切りという、ある意味で特別な空間。
暫し固まった少女が、少ししてぎこちないながら、ぱくりと食べる様子を見て、小さく頷いて。
「おいしいなら良かったよ」
くすくすと微笑みつつ、少女を見つめ。
其れから少女に対し畳みかけるように。
「シースさん、シースさん……あーん」
少女を呼び、視線が向いた辺りで自分の口を開けて何かを待つ、ちなみに目は閉じているように見える薄目で様子を見つつ。
■シース > 「……学習結果が、着いて来てくれる…なら。良いのですけど。
今はまだまだ基本的な、それこそ、あの学院でなければいけない、といったジャンルにまでは進んでいませんし。
…将来的には……そう、ですね。取り得になるというか。性に合った進路でも。見付けられれば良い。そう思います。
私も、えー…この街については、まだまだお登りさんなので。
学院の周辺ならちょくちょく探索していますから。今後そういった…穴場?でも見付けましたら。是非情報共有を。
……ところで。それで気になってきたんですけど、こういうお店って…それこそ。
普通の学生だと、懐の余裕、直撃するような所だったり…します?」
少女もあくまで。王都の学院に編入出来たから、此方に越してきたばかり。
それこそ田舎の漁船乗り達と。どっこいどっこいに違いない。
逆に地元の田舎なら案内出来るのだろうが…そういう所に。観光スポットなど有る訳がなく。
それなら矢張り今は、この街。紹介出来るような所が見つかれば。何かしら伝えていきたいと思う。
と、いう会話の中で。真面目、と称される修学態度は。少女にとっては、あくまで普通、の範囲という認識。
なので彼が此処について、遊び慣れでもしなければ知る由も無い…と示した事について。
いささか斜めに穿った反応をしてしまった。
もっとも遊べるだけの金銭的、時間的、な余裕が有るとすると。それこそ恵まれた家柄の生徒の方が多いだろうから。
少女の感想も丸っきり外れている…訳ではないと思いたい。
「気になるというか。気にするというか。…面倒臭い性格ですね我ながら。
その方が、リリットさんの精神的には良いと仰るのでしたら…まぁ。吝かではないです、けど。
そういう意味では…下心。良い言い方するなら、目的?
有るって聞けた方が、納得は出来ますね…安心かどうかは。その…内容次第、です、けど」
甘味然りリボン然り。奢られっぱなし借りっぱなしは、精神衛生上宜しくない。
「借りを作りたくない」だなんて言うと…無駄に男らしい気がするのは何故だろう。
ともあれ其処はお互い様、というのが。一番良いが。その上で彼がしたい風にして貰うのも、大事だろうから。
なかなか案配が難しいと息を吐いた。
…お金を出せるだけの、という言い方は良くない気がするので。こうしてデートと洒落込む目的。
仲良く…という言葉に。どの段階までが含まれているのか。考えてしまうのは仕方ないだろう。
此処は。そういう国で、そういう街なのだから…更にマクロにこの店自体、そういう店なのだ、とは。気付いていないままなのだが。
「な、流すと言いますか…ノーリアクションは。なかなか難しい話でした…ので。
ともあれ、その、これは……はい。お誘いして頂いて、良かった。そう思える品……です」
確かに。個室という環境は良くも悪くも。退路の存在しない場所だ。
どういう形になるとしても、会話だけなら兎も角…何かしらの行動に対しては。反応せざるを得ないだろう。
お陰で差し出されたスプーンを。口にせざるを得なかった。
色々意識する部分は有るのだが。幸い動転していても、味すら感じる暇が無いとはならなかったらしい。少女の現金な味覚。
するりと溶けていくアイスと、次いで柔いクレープの生地。しっかりちゃっかり味わい飲み込んだ後、目線を戻せば。
今度は彼が口を開け。待ち構えている。
仲良く、の範囲に含まれる行動の中でも。これはなかなかレベルが高いのではないか?
される側だけでなく、する側になる、というのも。なかなか意識させられてしまう物だ。
先ずは目を見開き。ぅ、と、声にならない声。
彼方が薄目で窺っていると知る由も無いからか。彷徨う目線が右往左往する中、直ぐ下で目元に赤い色を載せ。
何かしら上手い事言おうとして、出てこない。そんな様子で唇が震えるばかり。
それでも…なんとか、意を決したのだろう。
手元のクレープにアイス。一口分スプーンで掬い取り、差し出して。
「ど、どうぞ……じゃない、ぁ、……あー、ん…!」
最後ら辺無性に力が入った。それだけの気合いが無ければ。とてもではないが踏ん切りのつかない行為なのだろう…少女には。
■リリット・アリール・ソエティア > 「きちんと勉強すれば結果は出ると思うよ。
そうだね、好きこそっていう言葉もあるし、自分の好きな事とか性格に合った進路はありだね。
シースさんは地道な勉強を続けられるみたいだし、好きな事見つけたら成績上がると思うな。
そっか、それじゃ穴場見つけたら其処も一緒に行ってみたいね。
ん……ん-、甘味の値段で言うと少し高めかな?
毎日来れる値段では無いけど、月一とかご褒美で習って言う感じだね」
裁縫と同じだよねと、地道な勉強に関しては微笑みながらそう告げて。
少女は観光や遊び目的で考えているが、実は田舎というか地元の情報に価値が無いかと言えば、否で。
冒険者にとっては其の地方、村の人しか知らない情報は大事で、どんな小さな情報でも益になるとみなしている部分があったりするのだ。
少女の事情を考えれば、確かに今は慣れない生活でもあり。
余計に緊張や警戒が強まっているのかもと、内心で思いつつ。
あくまでも甘味処としてはの話であり、部屋のチャージ料を込めれば宿の一泊に届かない程度ではあるのだが。
とはいえ、性的目的の店なのに甘味の味は値段に見合う以上なので変わり種の店ともいえる。
「面倒とは思わないかな、真面目だとは思うし、そういうところも可愛いと思うし。
さっきも言ったけど、ボクってそこら辺は気にしてないよ、シースさんが過ごしやすいというか、対応しやすい方で良いと思う。
そだね、相手との探り合いなんかは疲れるもんね。
ん-、そっか…とりあえずは”ある”って覚えてくれればいいよ、其の上で嫌な事は嫌って言ってくれれば、しないって約束するからね」
少女が気楽になるなら、奢りを押しつけはしないし。
少女がそう言ってくれるならすべて奢るし、全て奢られるだろう。
懐が広いと取るか主体性が無いと取るかは人次第、とはいえ少女と仕事上だけでなく。
個人的に”仲良く”なりたいのだという本音は隠さず、其処に付随する諸々はまだかくしてと、一種の交渉術なのか素なのか。
少女がどこまでなんかと考えている前で、小さく微笑みを向け。
恐らく少女がもっと明け透けな性格だったなら、本音がポロリと漏れていたかもしれない。
が、少女は真面目で恥ずかしがりで、警戒心が強かったわけで、結果今の状況。
少しずつ距離を詰めていくという、そんな状況が出来上がった。
「シースさんくらいの年だと、カップルの話なんかも多いだろうしね。
そっか、そこはあのバカに感謝しないとね、しょうがないから一杯奢っておこうかな」
個室喫茶という部分が抜けた情報をくれた馬鹿には、酒とげんこつを一杯、と内心にメモを。
とはいえ、この小さな部屋だからこそ少女の緊張が外よりは落ち着いているのも事実。
違う意味で緊張はしていそうだが。
少女の口へ入ったスプーンを抜いて、味わう少女をじっと見つめ。
次は自分の番と口を開けて待つこと暫し。
薄目の向こうで、少女の視線が揺れ、目元を赤く染めて。
ふるふると小さな唇が揺れる様を見つめて、結果としてゆっくりと差し出されるスプーンが動き。
少女が強めの声で”あーん”と言えば、パクリと口へ含み、むぐむぐと味わってから目を開けて。
「ん、本当に美味しいねこれ、それにあーんしあえてうれしいなぁ」
ぱぁっと明るい笑顔を浮かべ、互いに残っているクレープを食べ勧めた頃に。
またふと、という様子で。
「これってさ、お互い関節キスしてるよね?」
等と、今さらな爆弾発言を少女へ投げかける。
■シース > 「先ずは其処…なんですよね。将来何がしたいとか、仕事にしろ生き方にしろ、先ずその辺り。
今は何とも、まだ…学生。それ以上の事は、考えられていませんから。
もう何年か通って勉強して。正式に進路相談の時期とかが来たら…かな。勿論それまでに。目標見つかれば、それはそれで。
…ん…やはり高いんですね、多少とはいえ。部屋代、サービス代…込みでしょうか。
それでも、そうですね。一人で来る訳にはいきませんけれど」
勉強でも裁縫でも。というより、生きていく上で大凡の事が。最初から上手くいく訳ではない。
学習なり練習なり反復が大事。繰り返しを経て物に出来たら。其処からようやく次へと進める。そんな気がする。
だから、将来に繋げる為の学習期間。それこそ進学していく此処数年が必須だと思っているが。
実際の所、突然ばったり将来が決まってしまう可能性もある訳で…其処の所は。まだ分からない。
案の定。営業形態から来る付加価値が、店のお値段に影響してくるらしい。
それでも、御褒美程度でなら学生でも充分手を出せる…というのなら。思っていた程よりはマシなのだろう。
少女のイメージだと。政に携わる貴族と、懐に剰り有る豪商辺りが、良からぬ会合に用いるような…そういう。高級さを。思い浮かべていたので。
こういう時ステレオタイプな想像しか出て来ない辺りは。修学途中の若さ故でもあり、田舎暮らしからアップデートされきっていない発想故でもあり。
もちろん…少女の想像の内。よからぬ事に使われる、という点だけは有っている。
但し其処には、いわゆる「性的な意味で」という但し書きが着くわけで。
「リリットさんは、結構対応し易い方ですよ。私からすれば。
…こう……私結構、目上の方からすると、失礼だって取られそうなのに。こうして普通に接して下さいますし。
割と素でお話出来るという点では…それこそ。過ごし易いんだと思い…ます。
探りを入れるというか…勘繰ってしまう所は、有ります、けれど。
そもそもこういう機会自体。色々考えてしまうのが必然というか何というか……男女のなにがし、という奴って」
お互い、きっぱり「男と女」、そう割り切れる身の上ではない…ものの。
肉体的な物という、なかなかに踏み込んだ内情なので。相手については問わないし、此方の事も言い出さない。
…なので。もし、「そういう時」でも来たのなら。其処で互い知る事になるのかもしれないが…
それこそ。嫌な事だ、嫌だ、そういう風に言われるのではないか。
少なくとも少女の経験上、一般的な性の持ち主というのは、そうだった。
だからまだまだ。少なくとも少女の側から積極的に、距離を詰めるという事は。難しいのだろう。
教師と生徒として。個人の付き合いとして。その辺は比較的近しいと思うのだが…それでも。デートという行為から想像せざるを得ない方面に関しては。
「そういう人達が。割と。人目を憚らずにやっていそうというか。それで顰蹙買っていそうというか。
…あぁいうのって。時と場を選ぶべきだと思うんですよ。本当に」
思い切り唇を尖らせる少女は。多分、それこそ学院の中などでも。年頃の生徒達同士、もしかするとそれ以外。
甘くいちゃつく様子など、話題にしたりされたり、目にしたり、が多々有るのだろう。
そんな少女自身が。あれこれ戸惑いこそすれ、自分でも彼に対し行った辺り。
口にした通り時を場を選んだ…此処なら、そういう事をしても大丈夫だと。踏ん切りを付けたという事らしく。
なので紹介してくれた船乗りに、飴と鞭を同時に返すつもりであるらしい彼には。「お手柔らかに」、と付け足しておいた。
実際その人が何処までの事が行われるかを想像し、二人きりになる事前提の店を選んだのか…は。判らないが。
何はともあれ環境と雰囲気とに大いに助けられ、少女としては難題極まる一仕事、差し出した物を食べたり食べさせたり、を果たす事が出来た。
目を開け咀嚼し、何とも機嫌良さげな表情を浮かべる相手の様子に。
いつしか強張り持ち上がっていた肩口が。力を抜いてすとんと落ちる。
前へ乗り出していた身を退き、椅子の背へと凭れ直し、更に弛緩したように。大いに脱力した所で…
「…そ……そうですか。良かっ……ん、ん゛っ。ん゛…!!」
咳き込んだ。もし口の中にまだ何か残っていたら。きっと大惨事になっていただろう。
その位の爆弾発言をぶっ込まれたのだ。唇をわななかせ目を見開き。両手を顔の前でばたばたと。
残念ながら両手だけでは。一気に赤らむ表情を隠すどころか。扇いで冷ます事すら侭成らないものの。
それでも懸案のスプーンをほっぽり出したりはせず、きちんと皿の上に戻す辺りは。
生真面目なのか…店の料金を考慮して、なのか。
「それ…っ!そ、それ、敢えて……敢えて口にしな、っ、き…気付かな……ぃでいようって、思ってたのに……!」
■リリット・アリール・ソエティア > 「そだね、したい事できること、最低限の知識をつけてその中で自分の好きな事を。
もしくは教師からみて素質がある事を進められるかもしれないからね。
そういう時期が来たらきちんと決めると良いよ。
うん、そこそこするけどまぁ、此処に来たいときはボクに行ってくれれば付き合うよ。
個室だからどうしてもね、ある程度値段は上がるし」
何事も続けることで最低限はまず身に着く、その先は専門知識系か、雑務系かで変わるが。
何方でも知識を増やし、経験を積むことが大事だねと頷いて。
少女の年齢であれば、もう数年…その間に少女に向いた事を見つけて欲しいと願い。
防音、換気の個室を提供してる以上、其処は少し値段が上がる。
部屋代も込みで二人なら、ご褒美レベルになるかなと計算しつつ。
此処はどちらかと言えば、船乗りや傭兵、冒険者、娼婦などがメイン層だろう。
性的な事に使わないなら、本気で静かな個室でしかないが。
少なくとも他の部屋を使っているであろう人は致しているのだろうが。
「そう?、それならよかったかな。
あー、確かに人によってはシースさんと合わないと思う。
素をみせてくれるなら、ボクは嬉しいねぇ。
勘ぐりは、うん、していいと思うよ、最低限そういうのもあしね、ボクだってそう欲はあるもの。
ん、そうだね、ボクは確かに男だし、シースさんは可愛い女性だから、そう考えても自然だよ…おかしくはないね」
今の自分は確かに男である、少女が相手だからというのもあるのだが。
そもそも外見で見分けが付かないのも要因の一つかもしれない。
互いの体については、「そういう時」に互いに知るだろうし教えあう事になるだろう、そうなったら、だが。
自分は相手の性が男女でも、両方でも気にしないおおらかさと、受け入れられるのだ。
少女が距離を詰めない分、少しずつ此方が詰めていく。
教師と生徒から、個人とし、デートをして貰えるところに踏み込んで。
「学院だと、図書館とか含め、結構そういうところでしてるしね。
あはは、寮生活なら寮でとか、ね」
唇を尖らす少女をみて頷き。
人目に付かない場所を探してほしいねと、苦笑し。
少女との”あーん”のし合いは、そんな少女が個室だとは言え、してくれたのは凄くうれしく。
「お手柔らかに」、という少女に了解と小さく頷いて。
情報をくれた相手は、自分もそういう目的と思っていた可能性もあるしなあぁと頭の隅で考えて。
互いに食べさせあうという、デートのお約束を済ませ。
それが少女にはハードルが高いのも事実だろう、けれどしてくれたことを悦びつつ。
少女の力が抜け、気が緩んだところに爆弾を投下するのだ。
「おっとと、大丈夫シースさん?」
噎せ込んだ少女の背後に素早く移動して。
ぽんぽんと背中を叩き撫でて、両手を振る様子を後ろから見つめ。
赤く染まった顔を見つめながら、微笑んで。
「ごめんごめん…思いついた事行っちゃう癖もあるからさ…ボクは嫌じゃないからね。
新しいカトラリー頼もうか?」
背中をさすりながら少女へそう提案する。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシースさんが去りました。
■リリット・アリール・ソエティア > 【中断します】