2023/12/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアニタさんが現れました。
アニタ > 昼を過ぎたばかりの王都の市街地にて、複数人の男女が顔を合わせていた。
種族も歳も多様な柄、みな動きやすそうな格好ばかり――
そんな冒険者の中で一人、野暮ったい衣服に身を包んだ少女が、顔を上げた。

「はい、お疲れさまでした。みなさんと一緒にお仕事が出来てよかったです」

騒々しい大通りにあってはかき消されそうなか弱い声色に続いて手を振り、去っていく者らを眼帯の向こうから見送る――
とん、と地面に杖を突いてから深く息を吐く。その顔に疲労の色はあれど、満足げに。
続けて邪魔にならぬよう軽い伸びをしてから、少女はブーツの足をのんびりと動かし始めた。

「――ほわっ?」

その矢先。誰かか何かにぶつかり、その手から杖が転がってしまう。
人ごみに紛れていくそれを、慌てず、一拍置いてから確認しては追いかけようと。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にバランガさんが現れました。
バランガ > お得意様周りを午前中のうちに済ませ、午後は店を従業員に任せれば自由時間とばかりに出歩く男。
行き交う人々をすり抜けながら、なんぞ面白いことでもないものかと気もそぞろ。

「平和なんが一番やけど、そればっかりじゃつまらんけえのう」

一仕事終えたらしい冒険者の一団を避けるようにすれ違えば、その直後に何か硬いもの正面から転がってくる。
なんじゃなんじゃ、と腰を屈めながら拾えば杖。

誰のやろうな、と視線をあげ前方をきょろりきょろりと見回してみる。

アニタ >  行き交う人の邪魔にならないよう端に寄りながらも、その視界は転がる杖を追いかけていた。
 やがて小さな音と共にそれが止まった先。拾った人物を足の先から視界を上げて見てみれば――

「あ……」

 きょろきょろと周囲を見回しているのは、灰色の髪をした恰幅のいい中年の男。
 知り合いでほっとした半面、彼に見せた痴態を思い出せば真っ直ぐな視線は向けられず――

「す、すみませんバランガさん。……店長。そ、それ、私の杖……です」

 前から小走りで近寄っては、俯きがちに声をかけるのだった。

バランガ > ただの杖と言えばただの杖だが、それなりにきちんと扱われてるのが見て取れるそれ。
落とし主次第では面白いことになりそうだ、などと考えていたが前方から現れたのは見知った顔。

「おう、なんやそういや見た覚えあるな思うとったら、アニタのやったか。
 そら見覚えあるわな…ほれ、人が踏んで転んだりせんかってよかったわ」

そう言って杖を差し出す。
俯きがちにこちらを見る相手に、にまにまと人の悪い笑みを浮かべたまま。

「そういやあ組んでどっか出る言うとったなあ…終わったところやろ、お疲れさん。
 そや、労ってやんのも雇い主の仕事やさかい、ちと付き合わんか」

杖を渡して自然と横に並ぶ。
有無を言わさぬ押しの強さは、先日の事柄を踏まえての強み。
断るならば、という雰囲気を敢えて出した上で、腰のあたりに手を回し断れないようにする手管。

アニタ > 「あ、ありがとう……です。はい、その時は何とか飛び出そうと思っていたので……助かりました」

 目線は彼へと向けられないままだったが、少なくともその顔だけは真っ直ぐに見せてから、小さく頭を下げた。
 子供のように両手で木製の杖を受け取る。
 ――千里眼の白黒の視界の中でちらりと見た彼の顔は、また実に悪い――愉しそうなもの。
 彼にされたことを思い出せば生娘のように頬を赤らめ、俯くことしか出来ない。

「労う……ですか? あ、あの、お気持ちはありがたい、です……けど、
こ、この後は友達と約束……あっ、あ……」

 彼氏とのデート、とは言えずに小さな声で断ろうとしたものの――
 男の押しには全く全然敵わず、さらに腰を抱かれ逃げられないまま、彼に誘われるまま進むことになるのだった。

バランガ > 「まあまあそう時間はかからんさかい大丈夫やろ。
 冒険がどんくらい時間かかるか分からんのやから、友達も待ってくれるわ」

なんて都合のいいことを言い連ねる。
そもそも、断ろうとする言葉が弱い時点で押し切れると男は踏んだのだからもう無駄というもの。
腰を抱いたまま歩いていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアニタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からバランガさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシェティさんが現れました。
シェティ > 平民地区の中央部に位置する一軒の酒場。
食事を摂る者、酒を酌み交わす者、冒険者としての連れを探す者――そういった手合いで賑わう店内と、
テーブルの合間を忙しなく行き交う従業員達の中に紛れる様に、銀髪の女もまたその喧騒の中に身を置いて居た。

「――――……お待たせ致しました。ご注文のエールになります。」

二人組の冒険者の座るテーブルへと、エールの入ったジョッキを二つ置いて、軽く一礼を差し向けてから去って行く。
酒場の従業員として働くその姿は、足繁く店に通う常連客にとっては見慣れぬものに映ったやも知れない。
お世辞にも愛想が良いとは言い難かったが、女は手慣れた様子で給仕の仕事をこなしてゆく。

その身に纏うのは普段の侍女服とは異なり、店から貸し与えられた給仕服。
機能性やデザインは普段の侍女服とさして大きな違いは無く、仕事をこなす上では何ら支障は無かったが、
ひとつ大きな差異として、膝上までしか無いスカートの丈だけはなかなかに慣れず、時折落ち着かない様子を見せていた。

シェティ > さりとて本来の目的を忘れじと、料理や飲み物をテーブルへと運ぶ最中で彼らの会話の内容へとそれとなく耳を欹てる。
今回の依頼で幾ら稼いだであるとか、行きつけの娼館に最近入った娼婦が大層な美人であるとか、
その多くは取るに足らない仲間内同士の雑談に過ぎなかったが、彼等の持ち寄る情報の速さと量は侮れないというのも事実だった。

今しがた耳に入れた情報を記憶の内に留めながら、遠くのテーブルで呼ぶ声に応える様に其方へと向かう。
聞き取った注文を手許のメモに書き留めてから、軽く一礼を差し向けてから踵を返した刹那。

「恐れ入りますがお客様。此方ではそういったサービスは受け付けておりませんので。」

近くの席に座った男が一人、酒精に赤くなった顔ににやついた笑みを浮かべながら手を伸ばす様を視界の隅に捉えると、
女の腰近くへと伸ばされたその手をぴしゃりと軽くあしらってから、彼へと振り返り抑揚の淡い声で静かに告げる。
従業員の中には幾らかの対価と引き換えに、或いはなし崩し的に客とそうした行為に及ぶ者も見られたが、
少なくとも今の女にはそれに応じる趣味も義理も存在しない。
口惜しげに跳ね除けられた手をひらつかせる男に再度一礼してから、女は注文のメモを手にカウンターの奥へと去って行く。

シェティ > それから先も女はテーブルの合間を縫う様に行き交う他の従業員達に混ざりながら、
淡々と、されど手慣れた様子で客から注文を取り、料理や飲み物を運んでは彼らの会話に耳を欹ててゆく。
そうして手に入れた情報の内果たして何割程度が有益なものであったかは判らないが、
絶えず入れ替わる客足と彼等が齎す喧騒は、夜が更けて酒場が閉店時間を迎えるまで止む事は無かった………。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシェティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/路地裏」にイェフィムさんが現れました。
イェフィム > (コツコツコツ…、と、足音を消すこともせずに平民地区の路地裏を歩く少女が一人。
 騎士服に身を包んだ少女は、後から続いてくる気配に気を配りつつ、
 いつでも剣を抜けるように右手をそれに添えていた)

「………さぁて。」

(敢えて人気のない場所を通ってきた。
 敢えて人に後を付けられても何も言わなかった。
 少女というだけで甘くみられることも多い中、
 さて今日釣れたのはどんな人だったかな、と、袋小路までたどり着けばくるりと後ろを振り返って)

ご案内:「王都マグメール 平民地区/路地裏」からイェフィムさんが去りました。