2023/12/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアニタさんが現れました。
■アニタ > 麗らかな昼下がり。のんびりぽかぽかお天気に道行く者の表情も歩みも、財布の紐も緩くなる――
かはともかく。大通りに無数に並ぶ露店の店主たちが威勢のいい声を張り上げ客引きに勤しむ、
その一角でフードを被った少女がある布地を手に、目隠しの下の眼を丸くしていた。
店主はそんな彼女をお目が高いと称えながらも商品の希少性を滾々と説いており……
「ほほほぅ! なるほど、仰る通り……これはいいものですね!
これをメインに一着……
あ、いえでも今日は修繕のための生地を――」
揺れるハートのまま会計するところで――財布の中身を思い出した。うぐと小さく呻く。
(足りる? 足りない? ぎり過ぎない? てか超えてない?)
心中でそんな言葉を繰り返し、肩を落とし背を丸め、分かりやすいぐらいに悩む。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にバランガさんが現れました。
■バランガ > 午前中に大きな仕事を一つ終えてしまえば午後からは従業員に任せて街に出る
物色がてらに露店の群れへと顔を出せば、顔なじみと挨拶を交わす
物色というのも、物だけではなく、者を見ているのがこの男の特徴
布地を扱う知り合いの店に差し掛かると、店主はどうやらセールストークの真っ最中
トークの餌食になっているのは…背後からでも、おっ、という雰囲気の女
「お邪魔するぞい…ああ、そっちのお客さんの相手を先にしてくれて構わへんで」
なんて言ってアニタの隣で布地を見ている態を作る
横から見れば、目隠しをした姿に少々驚くが、ここは王都マグメール、こういう手合いはある意味多い
口をはさむタイミングを見計らうように店主とアニタの会話を横耳に入れ
■アニタ > 「いえ、だけど……やっぱり予算が……
うぅん、今からギルドで依頼を見てくるのは……けどそんな急には――
そもそも売れちゃったら……」
長いこと悩んでいる内に、いつの間にか思考そのまま小さく声に漏れてしまっている。
周囲の喧騒もその耳には入らず――
だったが、流石にすぐ横からの声には気が付いた。一瞬肩をびくっとさせ。
遠隔視で彼の姿を確認し、ワンテンポ遅れて顔もそちらへと向けた。
「あ……す、すみません」
悩むあまり、手に取ったままだった反物を商品棚へと慌てて戻した。
それから店主へと改めて顔を上げて。
「あ、あのう、それ……少しの間とっておいてもらえたりとか……」
おずおずと切り出すも、まあいい顔はされない。
■バランガ > こちらからいきなり声を入れればさすがに疑いの目も持たれるだろう
それならば布地を見ながらタイミングを見る方が良い
実際、ここの店の反物はなかなかよく、行商で他所に持って行っても売れる代物
だから、そういう意味では隣の少女の見る目は確かなのだ
「なんだなんだ、そんだけ気にいってくれてんだからよ、少しくらいとり置きしといてやったらどうだい」
かっかかっ、と笑いながら横から口を出す
それを聞かれると店主もまいったな、といった表情になるのは―――店主と男が顔なじみで、男が女好きであることを知っているからだ
要するに、女に恩を売ろうとしているというのが分かるようにの無言のアイコンタクト
「ま、代わりと言っちゃなんだがこの布地を買ってくからよ、売り上げにゃ十分だろ?」
そういってアニタが購入しようとしていた反物より値の張るソレを買う意思を示して、さっさと購入してしまうことで女の意志が挟まるタイミングをすっ飛ばす
■アニタ > (ダメだよね、やっぱり……)
白黒の視界の中で渋い顔をする店主を見、諦めかけたその時。
恰幅のいい男性の笑い声に驚き、その視線を彼へと向けた。
「え、えっ……えぅ、あ、えと、でもそんなの、悪い――」
戸惑い、何も言えずにいる間に男はするすると話を進めていき。
あっという間に店主は取り置きを約束し、そして男には別の反物が、という状況になったのだった。
「あ……ありがとうございました。……あの、助け船を出していただいちゃって……」
彼へと向き直り、深々と頭を下げる。透視視界の方も律義に下げ、お辞儀。
■バランガ > さっさかぱっぱか支払いまで済ませてしまうし、店主は取り置き用の場所に反物を入れ込む
なので、女にとっては一番都合のいい展開で落ち着いた顛末
「おう、構わへん構わへん…ここの店主としても必ず買ってくれる約束が出来て損はしてねえから受け入れたんやしな。
それに学院の生徒さんなんやったら信頼できるやろ」
深々と頭をさげられれば、構わん、と手を振って見せる
正面から見ると、目隠しで目元が見えないがそれでも美形とわかる
こうなると逃したくねえなァ、と内心で算段をつけ
「それで、金のめどはついとんのかい?取り置きちゅうてもそう長くは待てへんやろうが」
そう声をかけながら次に店にやってきた客に場所を譲るように、自然に一緒に歩くように誘導を仕掛ける
■アニタ > 「え? あ……失礼しました。私、アニタって言います。
コレはただのアクセサリでちゃんと見えてますので、心配しないでください」
学院のと言われては思い出したようにフードを取り、改めて彼へと顔を向けた。
目元に巻いた黒い眼帯を指さしながら、軽い笑みを浮かべてみせ。
白黒の視界の中で改めて彼を見れば、恰幅のいい男性で、朗らかな笑みを浮かべている。
(いい人そう……)
と、そんな印象を覚えていると、彼が僅かに振り返ってからその場を動いた。
自然と、少女も店の前から離れ――いつの間にやら共に、通りを歩いている。
「そう、ですね……
一応冒険者の真似事もやってまして、それで何とか……とは思うんですけど」
先の布地は割と高かった。否、少女からすればかなり、した。
俯きがち、歯切れが悪くそう答えて。
「良いバイトとかないかなぁ……」
■バランガ > 「そういや名乗っちょらんかったのう、ワシァバランガいうもんじゃ。
おう、そうやったか…いやジロジロ見てしもうたみたいで済まんのう」
ちゃんと見えていると言われれば、この町ではそんなこともあるだろうと納得するほかない
フードがとられれば美しい銀髪が波打っているし、制服越しに豊満さの溢れる肢体
朗らかな笑顔を見せながらも、脳内では目の前の美少女をどう食ってやろうかという算段を巡らせていて
「ほうほう…流石学院の生徒さんだけあって、武芸も出来るんやなァ。
そやかて、さっきの布地は結構するやろうし、冒険者の実入りは結構バラつくてゆうからなあ…」
そう言ってしばし考える――――振り、あくまで今思いついた態で
「よっしゃ、取り置きしてやれゆうたんはワシやしな。
アニタ嬢ちゃんがよけりゃワシの店でバイトせんか?ちょうど一人辞めて困っとったんや」
と、それらしく助け舟を出す
■アニタ > 「バランガさん、ですね
――あ、いえいえ、気にしないでください。私も同じような人がいたらきっと見てしまいますし。ふふ」
そんな見た目をした少女だが、意外と表情豊か。ぽってりとした唇で微笑んでみせた。
「そう、なんです。いい依頼が丁度あれば助かるんですけ――
……えっ? バランガさんのお店……ですか? えっと……」
足が止まった。彼の提案に驚き、顔を上げる。
と、慌てて彼に追いついて。
「すごく、助かります。ただ……あの、どんなお店……なんでしょう?
わ、私にも出来るお仕事なんですか?」
少し警戒した様子で彼へと尋ねるも、失礼だったかと慌てて聞き直した。
■バランガ > 「そう言ってくれると助かるわい、見た見てないで喧嘩沙汰になるのもこの町じゃ有り触れとるからのう」
こうして横並びで時折横を見ながら歩いて、話してみれば意外と表情は豊かで言葉も明るい
ぽってりとした唇の色っぽさも相俟って目隠しを取ればさぞ美形と見えるもので
「かかかッ、警戒すんのは正しい反応じゃわい。こう見えて宝石商をしておってな。
これはクズ石じゃが…ま、こういう石を加工して販売しとるわけじゃ」
そういって腰につけた袋から自然と取り出したのは、赤や青といった色合いの鉱石類
見えている、と言っていたのだから大丈夫だろうと手のひらに乗せたそれを見えるように差し出す
問題は、その石に刻まれた加工魔術が、催淫であったり、魅了、発情といった類の代物だということと、それがどれくらい効果を発揮するかということで
「行商で店を離れることも多いんでな、ある程度身元がはっきりした者しか雇えんのだわ」
先ほどの学院の生徒だから信頼できる、という会話からの続きのように言葉を連ねながら、鉱石の魔力の発動具合、効き具合をそっと探る
■アニタ > 「す、すみません……
って、ほ、宝石商さんですか!?」
肩を縮めて謝罪した矢先、思わぬ彼の言葉に眼帯の下で目を丸くした。
――改めてその姿を上から下まで確認し、服の質や体格から少し口を丸くし一人で納得するのだった。
「石……」
開いた袋から出された色とりどりの鉱石を遠隔視から眺めるも、白黒の視界ではよく分からず。
自然にきゅっと眼帯を上げ、覗かせたターコイズブルーの瞳でそれらを短い間見つめたのだった。
眼帯を戻し――
「なるほどぉ……店番、とか。そういうお仕事ですか?」
ほう、と僅かに熱っぽい吐息を零して、彼を見上げた。
石を見たのは、術に触れたのは短時間だったが――少女は頬に熱を感じていた。
■バランガ > 「元々は加工を専門にしとったんじゃが、まァ長くやっとるうちに店まで構えてしもうてなぁ…カッカカッ」
まるで気にしてない、といった風で快活に朗らかに笑うことで警戒心を削ぐようにふるまう。
「店に立つときはもうちょいとマシな恰好するがの。…ほれ、ちゃんと見てみるとええ」
自然と持ち上げられた眼帯、そして見えた目元と瞳はいうまでもなく想像以上の美形、美少女。
しっかりと見るように仕向けて、そして反応を見れば、熱っぽい吐息は確実に蝕んでる様子が見て取れて。
「おう、そんなに難しい仕事は任せんから安心してくれや、他の従業員も居るしな。
今やったらまだ店も開けとるから、よかったらちと来てみるかい」
術をもっと深くハメるため、そう言って店へ案内しようか、と声をかけて。
■アニタ > 「わ…………クズ石……でも、普通に綺麗なんですね。
ほふ……なんだかちょっとドキドキしちゃいました」
光り輝きはしていないものの、色とりどりの石を見る内に何かときめく感情が沸き上がるよう。
袋に戻されるそれを名残惜しそうに見送っていたものの――
視界から消えた途端、我に返ったように瞬きを数度。頭を振ってから眼帯を戻したのだった。
「それなら私でも頑張れるかな……
あっ、はい! あの、それじゃあお店を見せてもらってもいいですか?」
術の効果か、先ほどよりも彼の言葉を素直に飲み込み、深く考えず頷いて後を付いていく。
そして少女は男と共に、平民地区の通りから姿を消して――……
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からバランガさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアニタさんが去りました。