2023/12/06 のログ
アルマース > 振り返ってももう掏りの子どもは背中も見えない。
土地勘の無い場所で追いかけても見つかる確率は低そうだし、同族に対して結束の強い場所である。
聞き込みをしたところで子どもを庇う者の方が多そうだ。

大した額が入っていたわけでは無かったけれど、掏られるなら腕輪を買ってしまうべきだった、という後悔。
迷った末に我慢したとき、我慢しない方が良かった、という結論になぜか大体なってしまう。
我慢などせず好き勝手自由に生きろとカミサマが言っているのかもしれないなー、と都合の良い解釈で溜飲を下げることにして。

「財布だけ返してくんないかなあ……」

ごてごてと刺繍の入ったお気に入りの財布を思い、無花果のもう半分を口に入れて歩き出す。
お安い買い物が結局高くついてしまったが、終わったことは考えても仕方ない。
持たざる者が持てる者から奪うのは――どうせならもっと金持ちを狙ってよと思いはするが――生きるためでもある。
カモ認定されるのは癪だから、同じことがあったら襟首ひっ捕まえてやろ、と気は引き締めつつ。
路面で火を焚いて酒盛りをしている一団を横目に、異人街を抜けてゆく――

ご案内:「王都マグメール 平民地区 異人街」からアルマースさんが去りました。