2023/12/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 異人街」にアルマースさんが現れました。
■アルマース > 貧民地区に近い区画に異人街と呼ばれる通りがある。
多くのまれびとが訪れるこの国で、あえてそう冠された呼び名は、足を踏み入れれば肌で体感できる。
わけあって王都に流れ定住して何年経っても、文化や言葉に馴染めぬまま共通語が覚束ない者――
見た目で排斥されることに疲れ、同郷の者のいる小さな社会の中だけで生きることを選んだ者――
母国への強い愛着や忠義にを胸に、マグメールへ何かしらの反発や反体制の意図を持って隠れ住む者――
外国語が飛び交い、一般の市民や衛兵は警戒の目で遠巻きに観察される。そんな場所で。
「――安いとは聞いてたけど、何でこんなに安いの? 相場の半額じゃない」
絨毯と、色硝子で作られたカラフルなランプが吊られた店先。
しゃがみこんで、籠に盛られた乾燥果物や木の実を物色している女。
地べたの上に敷いた絨毯で、商売をする気も無さそうに水煙草をふかす老人相手に問う言葉は共通語とは異なる。
乾燥した無花果を検めつつ、あまりの安さに質が悪いのではないかと疑惑の目。
外国からの品物がほとんど現地と変わらぬ値段で買える聞いて訪れたものの、実際目にすると飛びつくより先に疑いが先に来てしまう。
売るつもりで取り寄せたもんじゃない――という、答えになっているのかなっていないのか分からない言葉を聞いて、ふうん……と納得はしないまま。
「まあいいや、三袋貰える? あ、柘榴の種もひとつ。
あとお……デーツと……胡桃も」
包んでもらっている間、他の品を眺めている。
真鍮の腕輪や耳飾りを触っては、うーん……と財布の中身と秤にかけて。
■アルマース > 「ン~~~~~~…………可愛いけど似たようなの持ってるし……がまん……」
深い紫の石の色は気になったが、石の色こそ違うものの、真鍮の腕輪は似たものがある。
お財布が温かい時に買うもの、と決めて、手を離した。
枯れ木のように痩せた老人の手から紙袋を受け取り、支払いを済ませる。
「また来るね。おやすみー」
母国の言葉で別れの挨拶を交わし、紙袋を抱えてほくほく顔で店を離れる。
早速買ったものを摘もうと紙袋の中を漁りながら歩いていると、角で子どもとぶつかった。
どん、と衝撃で紙袋から品物が零れそうになって慌てて抱きしめる。
「っと! いったあ――気をつけな」
無花果に気を取られていた自分も悪いので、そのまま走り去るのを強くは咎めず。
大ぶりの無花果を二つに割って中を確かめる。ねっとりした果肉は乾燥しすぎでもないし、見たところ質が悪い感じは無い。
口に放り込んでぷちぷち潰れる種の感触と濃厚な甘みを楽しみながら――
――ふと、嫌な予感。
財布を入れていたローブのポケットを探るが、手に触れるものは何もない。
「……、……、やってくれんじゃない……」