2023/11/29 のログ
サテラ >  
「禁酒えらいなー。
 って、そっか。
 普通ストレートって言わないんだ。
 うちの果実酒、下手な蒸留酒より強いからなぁ」

 大抵、割らないで呑んだ人間はダウンするし、魔族でもふらふらに酔って帰るくらいなのだった。
 サテラ自作の果実酒は地元では人気なのだが、卸してる店では、割らずに飲むのを禁止する店も有ったりする。

「わあーっ!
 これがティアちゃんお手製のタルトタタン?
 すごい美味しそうー!」

 そう目をキラキラとさせて喜ぶ様子は、ますます子供っぽい。
 目の前にゴブレットが置かれているのが似合わないくらいだ。

「お酒も……んーっ、いい匂い!
 えっへへえ。
 なんだか凄い贅沢してる気分~!」

 などと、無邪気にはしゃいでいる。
 

ティアフェル > 「わたしの人生に酒はあってもなくても成り立つ……。
 ロックとかストレートとか水割りとかって、度数の高い酒の飲み方指定だと思ってたけど……」

 良く分からない科白に疑問符を浮かべながらも、たぶん詳しく聴いても理解できるかどうかは自信がなくて、ふうん、と肯いておくに留め。

「味のポイントは悪くなりかけ……追熟しきった残り物リンゴを余すことなく使い切った点にあります……あれ。りんごって追熟するんだっけ……?
 味は普通だと思うけど、食べよ」

 チーズとかの方が酒には合うかと思うのだが。
 しっかりカラメリゼするくらいに焼き上げた素朴な味のりんごぎっしり。まだ生地がさっくり感を残すタルトタタン。
 特筆すべきような洗練された高級さはある訳ないが、大衆的で庶民的な。いうなればおふくろの味的馴染み方はしそうな品。
 ゴブレットに満たされているのは価格帯も上ではあるが若い女性が好みそうな果実酒が選ばれたらしい、店主もほっとしたような視線を向け。

「じゃあ食べちゃお。あ……お茶がおいしい……ノンカフェにすべきだったかもだけど……やっぱりお菓子には紅茶がよき……
 わたしはこの時間に甘い物という罪悪感を噛みしめる……。
 うん、まあまあ……自分で作った物はやっぱり感動はないな……」

 赤みを帯びるまでしっかり焼き締めたりんご菓子の味を確認するように噛みしめつつ。
 無糖で泡立てたクリームやバニラアイスなんか添えられてたら云うことないのだが。
 場末の酒場にそんなものは望むべくもなく。
 白いプレートにカットして乗せただけの品をフォークでつついては、紅茶を啜って。

「あー絶対肥る……この背徳感に痺れてしまう……」

サテラ >  
「もっと自信もってよー。
 こんなにおいしそーなんだから」

 そう言ってすぐ『いただきまーす』と声を上げて、大きな口でたっぷりと一口。
 栗鼠のように膨らんだ頬をおさえながら、足をぱたぱたさせて喜んでいる。
 行儀は悪いが、とても率直な感情表現だろう。

「んーっんーっ!」

 ぺちぺちと、隣のお菓子の作者の肩を叩く。
 口の中いっぱいに頬張ったまま、賞賛の満面の笑みだ。

「……はふぅー。
 おいしぃねえ。
 だいじょーぶだいじょーぶ、今食べた分は、明日とか明後日のわたしが何とかしてくれる~」

 そんな無責任な事を言いながら、思考停止で食べる甘味は素晴らしいのである。
 果実酒をちょびっと含めば、幸せに浸っているような恍惚の表情を浮かべていた。
 

ティアフェル > 「あ、そーね。
 絶対おいしい、まずいとか受け付けない、おいしいしか認めない!って云っとけば口に合わなかったとてそうはいえまい……」

 なるほど、先手を打つとは大事なことだ、と真面目な顔をしてうむうむ同感した。
 が、そんな先手を打つ必要なかったくらい非常にいいリアクションが隣から伝わる。
 良すぎて、何か拙い物をいれたかな、わたし?とうっかり一服盛った説まで疑うが。そんな覚えはない。

「お。おぉ…お、おいしい…? ほんとに…??
 作り甲斐あるなあ……女の子のリアクションってかわいい……堪能しとこ」

 実家では貪り食うばかりの弟を眺めては、菓子でもメインディッシュでも餌を与えている気しかしなかったが。
 頬っぺたぱんぱんにして笑顔の女子を見ると、わあ…と食べるのを忘れて見入り。

「な、なんか照れるけど、ありがとう。嬉しい。
 ――それな」

 未来の自分に恨まれることになるだろうが、その案は採用、と大きく肯いた。
 明日なんとかすりゃあいい。なんと魅惑の思考か。
 と云うことで食ーべよ、と決めてタルトタタンを崩していきながら、ポットの中で濃さが増してしまった紅茶に普段は気にして入れないミルクと砂糖を調子に乗ってぶち込んで。

「ぁあ…悪いなーこんな時間にぃ~いけないな~甘い物とか~美容の大敵なのになぁ~あぁ罪深……どうか俗悪的なわたしをお許しください…」

 にやつきながら心にもない懺悔するという深夜テンション。

サテラ >  
「まってまって、なんでそんな力技なの?」

 この友人はなぜか正面突破で突き進む雰囲気がある。
 折角の美人さんなのだから、と友達としては思うのだった。

「えへへー、わたしもティアちゃんの手作りお菓子食べられて嬉しい~!
 あれだねっ、愛情を感じるねっ!」

 ぐっと両手を握り込んで、力強く頷く。
 一般的な果実酒一口で酔っ払ったのか、とでもいうようなハイテンションだ。

「そうそうっ!
 はぁ~、糖分で満たされるぅ~。
 頭脳労働で疲れた頭に沁みちゃうぅ」

 でへへ、と品のない笑い声が出てしまうくらい、ゆるゆるに油断した女子一名。
 そこにお酒が入るものならもう、感極まる。

「あぁ~……ティアちゃん、わたし今、とても幸せだぁ」

 友人と甘い罪を共有する背徳感のなんと心地よいことだろう。
 そんなノリだものだから、あっという間に食べてしまうのも無理はないのだった。
 

ティアフェル > 「なんでって……力こそ総てだよ?」

 何を当然すぎることを、と脳筋なことを大真面目にのたまったゴリラ。

「そう? なら良かったよー。そう云ってくれる友達大事だよねえ。
 わたしゃ嬉しいよ……ありがたやありがたや……そうかやっぱりわたしは一服盛ったのかも知れん……」

 愛情という一服。それならば致し方あるまい…と無駄に重々しい空気で首肯しているのだが。
 普通のお菓子でそんなに喜んでもらえるなら嬉しい限りで、なんならほろりとくる。

「明日のサッちゃんごめんなさい……がんばって走り込みとかしてください……」

 深夜甘味の悪道に引きずり込んだのは多少悪いと思わないでもなかったが。
 当人がこれだけ喜んでくれるならば誘惑して良かったと感じ、明日のサテラ氏にお詫びするしかない。

「ん~、んだねえ……こんな夜更けに女友達と駄弁りながらお菓子とか最高過ぎだよねえ……一人だったら絶対楽しくないもん~」

 うむうむうむ。激しく同感しつつ、焼き菓子も食べ終わって紅茶を啜りながらふうう~と大きく息を吐くと。

「さらに、このまま甘い物で腹を膨らました直後で寝る…! 罪悪感しかない一日の締め方をするのだ。
 マジで明日のわたしすまん」

サテラ >  
「やめてぇ~美人可愛いティアちゃんが残念になっちゃぅ~」

 悲しみの懇願。
 魂の慟哭だった……。

「やーん、盛られちゃった……。
 これは責任取ってもらわなくちゃなー」

 愛情を盛ったというのなら責任を取ってもらわなくてはと、調子に乗ってしなだれかかるのである。

「んえ、大丈夫。
 わたしこれくらいなら全然太らないからーにひひー」

 ここにきて、悪魔のような裏切りをする馬娘。
 まあ魔族なのだけれど。

「あー最高だなぁ。
 罪悪感という幸福に満たされておやすみする……。
 どうせなら、友達と一緒にお布団で女子トークしながらだと、なおさら幸せだなぁ~」

 なんて言いながら、ちらちらと隣を見ていたりするが。
 先の裏切りが許されるか否か。
 

ティアフェル > 「ありがとう。だがわたしはとっくの昔に残念な女だよ……」

 お誉めいただくのはありがたく受け取らせていただくも。
 揺るぎない事実には、遠い目をしながら呟くのだった。

「サッちゃん……あなた酔ってるのよ……」

 盛られた、というか酔った、が正しいしなだれ具合に、ふる…と首を振りながら静かに諭すような声で告げるのであるが……傍目から見ると意味が解らない光景。

「……肥れ。肥えろ。もっと食え。肥ゆれ……一人だけ裏切ろうなんて許さないから~……
 ほらあ~んしたげるから、あ~ん」

 呪いながら。残り全部持ってきてちょうだい!と切り取られたタルトタタンのホールを丸ごと要求し。
 それにそのままフォークを突っ込んで、彼女の口を開けるように促し食べさせようと、呪詛に満ちた昏い双眸を向けながら、地獄の底から響くような低い声を出すのだ。

「……肥るまで食べるならわたしのベッドに入れてあげる。
 そうじゃないなら友情なんて儚い物は忘れて」

 ちら見されて、女の友情と云うものがどれだけ儚い物か体現するような薄情な女が、今度は無糖にした茶を啜っていた。

サテラ >  
「ああ、なんてことなの……。
 ティアちゃんのウェディングドレスがみたかった……」

 よよよ、と涙を流すふり。
 そのうち自宅に死蔵されてるドレスを色々着せてやろうとひそかにたくらむのだった。

「わーい、あーんっ」

 簡単に餌付けされる馬娘。
 食べさせてもらえるのも嬉しいらしく、幸せそうにもりもり食べてしまう。

「ほんとっ?
 よーし、全部食べちゃおーっ!
 そしてティアちゃんの添い寝をゲットだー!」

 哀しいかな基礎代謝の差。
 そして目的がいつの間にか変わっていた。
 とはいえ、流石に1ホールも背徳の幸せを味わえば、どう見積もってもカロリーオーバーであるのだった。
 

ティアフェル > 「わたしの嫁ぎ先を勝手に潰すな……」

 いや普通にしてたら嫁げないだろうが。
 世界は広い、蓼食う虫も好き好き。どこかにいる物好きの為に花嫁衣装も必要になるかも知れないと世迷言。

「よーしよーし、我らの友情は保たれた。
 店主! 追加! 糖質と脂質たっぷりのデブ専メニューをここに! もう砂糖てんこ盛りにしたバターとかでいい!」

 素直にお口を開ける彼女にフォークで次々と容赦なくタルトを運んでは。
 まだそんなもんじゃ肥らないと云うのであれば、チートな魔族体質も降参するほど食わして飲ます所存。
 
「肥るまで食べてからだからね。わたし同じ悩みを共有できない人とは仲良くなれないから!」

 心の狭量をこんなところで見せつける、正直友達としてどうかというちっせえ女。
 どうだ、ついたか、脂肪。塗れろ脂質…とヒーラーの風上にも置けない不健康を提唱しながら歪んだ笑顔で純真無垢なまでに清き乙女たる友人を全力で肥えさせるべく、彼女がギブるまではお口に高カロリーな食物を運ぶ、こいつの方がよっぽど悪魔な女。

サテラ >  
「わたしに嫁いでくれてもいいんだよー?」

 まさにその蓼食う虫。
 とはいえ、着飾って着せ替えたら絶対に楽しいと確信できる素材である。
 いずれ企ては実行されるのであろう……。

「まってまってまってー?
 嬉しいけどっ楽しいけど!
 流石にやーだぁー許してえー」

 当然のカロリーオーバーに敗北宣言。
 白旗を上げるのだった。

「うう、運動で痩せるの大変なのに……。
 また食事制限しなくちゃ……」

 意外とちゃんと乙女の悩みはあるのでした。
 基礎代謝が高かったらその分普段から食べるから仕方がないのだ。
 『いじわるー』といいながら、ふにゃふにゃの猫の手ぱんちでささやかな抗議行動をするのだった。
 

ティアフェル > 「やだよ、バカ喰いして肥らない体質の嫁なんて理不尽な存在耐えられない」

 ネックはそこだった。
 嫉妬心諸出しにしたじっとり湿った眼差しで真正面から断った。

「いーや、行けるっしょ~?
 ねえ、わたしたち友達だよねえ~?
 仲良しだもんねぇ~? 同じ悩みを分かち合えるよねえぇえ~?」

 基本分かち合いたくはないだろうが。
 呪いの言葉を吐きながら、友情、と非常に薄っぺらいそれを掲げて砂糖漬けのバターとかをスプーンに載せて迫る。
 店主も素直にそんなもん出すなよ、と他の客が無言で突っ込みたそうな視線を注いでいた。

「そう~。大変だよねえぇー。ちょっとやそっと走ったくらいじゃぜーんぜん減らないんだもんねー。
 うふふっ、わたしたち同じ苦しみを分け合えるんだねっ。それでこそ友だよね!
 よっしゃ、今夜は語り明かそうぜっ」

 イジワルでしかない女は当然の抗議を受けても、にこにこと満面に笑みを湛えながら。
 パンチ喰らおうがビンタ張られようが満足げで。
 家で寝てもいいよ!と宣言するが、何ゆえこんな女の寝床で一緒に寝たいものかと全人類は疑問だ……。

サテラ >  
「バカ食いしたら太るもん!
 ただの個体差だもんー!
 お腹つまむぞーもーっ!」

 えーんえーん、とぺちぺちしているところに、砂糖漬けバターを口に放り込まれたらそれはそれで、罪の味に負けてしまうのである。
 食べずに逃げない辺り、こんなところにも性格は滲んでいるのだった。

「むぅぅ……!
 この借りはお布団の中で返させてもらうからね……!」

 それでも一緒にお泊りが楽しみなのだから、やっぱりお友達が大事なのだろう。
 まあ。
 一緒に寝床に転がれば、お腹をぷにったりなどして、ぎゃーぎゃー騒ぐのは目に見えているのだが。
 女友達なんてそんなものなのかもしれない……。
 

ティアフェル > 「どこがよ、大食い!大酒飲み! この歩く理不尽体質ー!」

 ほぼほぼ喧嘩である。女の喧嘩というか一方的な嫉妬のかくも醜いことか。
 難癖つけまくりながら、そんなに飲み食いしてて華奢でかわいいとかわたしの人生に喧嘩売ってんのかっ、と文句垂れ流し。
 そこまで云ってもついて来てベッドに潜り込んでくるとしたら不思議以外の何物でもないのである……。

サテラ >  
「んもーっ言いたい放題言ってー!
 そんな事いうなら身長よこせー!
 猪突猛進いじわる美人ー!
 大好きー!」

 ぎゃいぎゃい。
 難癖には難癖を返し、けれどそんな事を言い合ってるうちにも時折笑顔が漏れてしまい。
 結局、懐いた仔馬のようにぴっとりと身を寄せてお家までついて行き、女子二人の姦しい時間を過ごす。
 まさに不思議生物なのであった……。
 

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からサテラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 屋台街」にリリット・アリール・ソエティアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 屋台街」からリリット・アリール・ソエティアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 屋台街」にリリット・アリール・ソエティアさんが現れました。
リリット・アリール・ソエティア > 【待ち合わせ待機中】
ご案内:「王都マグメール 平民地区 屋台街」にシースさんが現れました。
リリット・アリール・ソエティア > お出かけのお誘いを受けてくれた少女と隣り合って、平民地区の屋台街を練り歩く。
此処で軽食や、雑貨、アクセサリーの屋台などを見回って、其の後で隠れ家的な甘味処へ行くつもりでいて。
ちなみにお忍びなので、本日の恰好はシャツに半ズボン、これは頑丈さではなく着やすさ重視の普通の人が着るシンプルな衣服。
その服装の上に黒いマントで防寒して、さらに伊達メガネをかけて大きな帽子で目立つ耳を隠した姿。
そんな恰好で嬉しそうに鼻歌を歌いつつ。

「いやー、うれしいなぁ…シースさんが一緒にお出かけしてくれるなんて」

そう言って、一緒にいる少女を横目に見て、微笑みかける。
手も握りたいが照れ屋で真面目な少女の事、それはまだかな、と近い方の手をにぎにぎと動かし。
近くに見えたアクセサリーの店に目をつけると、いこっかと声を掛けて近づく。

「おー、これ貝のアクセサリーかな…この花を模したのとかシースさんに似合いそうだね」

そう言いながら、店主に断って花を模した髪留めを手に取って少女の髪に合わせて見つめ。
少女の反応を確かめる、ある意味でこれは囮なのだ。
実際には少女の視線の向く先なんかを見て、内心を隠そうとする少女の欲しいと思う物のリサーチ。

店主の褒め言葉を軽くかわしつつ、少女にいくつかの髪飾りやブローチ等を勧めていく。
少女が素直に欲しがれば奢るつもりで、素直に言わなくても欲しそうな品が分かれば、こっそり買う予定で。
嬉しそうに黒い綺麗な髪に合う品や、紺色の瞳に近い濃い色の貝で作られたブローチなど、屋台の端っ子におかれていた物にも手を伸ばし。
少女にかざして似合うかなー♪、と歌うように呟く…自分の声に宿る力が少しは少女の緊張を沈めてくれるよう願いつつ。

シース > 「…や、その……本日は。……お世話になり……ます……」

傍らを歩く相手の声に。ぎゅ。と、フードを引っ張り少し深めに被り直す。
お忍び、という事実を、年頃なりに。重要事項として受け止めているのだろう。
とはいえ此方は。其処まで費用の掛かる変装などは出来る筈もなく。あくまで私服。
ただ今回の場合。相手の服装も、思っていたよりはシンプルな物であり。市井に紛れるという形なら。これで良かったのだろう。

こちらの方へ向けられた手。動く指。その意図は何となく察しているのだが。
だからこそ、歩く正面へと視線を戻してしまい…気付かなかったフリ。
実際相手に見透かされている通り。手を繋ぐ等というのは、恥ずかしい気がしてしまう。
…子供じゃないんだし、と。口の中で小さく呟くのだが。実際に羞恥を覚えるのは、どういう形でなのやら。

「…む……そうですか?ちょっと、キラキラしていると…校則的に。大丈夫なのか、気に、なります…」

貝細工という奴はとても綺麗なのだが。学生が普段使いするには、少々派手じゃないかしらん。と。
こうしたオフの時なら、プライベートである、問題無い筈なのだが。
此処で学院に関する台詞が出て来るのは。もし相手が買ってくれるなら。互い目にする機会の多い、学内でも。付けていられる物の方が良いのだろう。
意地なのか気遣いなのか良く判らない基準を、自身に科しつつ、少女も。決してこういった物に興味がない訳ではなく…屋台を覗く。
店主のお薦め台詞には一々頷いてみせるのだが。それはそれとして、判断基準とするのは、やはり。先に挙げた通り、学院でも身に着けていられるか。
なので、相手が矯めつ眇めつする中でなら。螺鈿のようにキラキラと輝く物よりも、落ち着いて色濃いブローチ等。其方を気にしている様子。

もっとも…面と向かって欲しいとは言わないし、買ってくれると言われたら、大いに恐縮するのだろう。
そんな面倒臭い性格の少女であった。

リリット・アリール・ソエティア > 被ったフードを引いて深くかぶり直す少女を見て、小さく苦笑する。
そういう小さな動き程人目を引くこともあるかもと考えつつ。
とはいえ王都だけあって色々な人間もいるのでそれほどでもないかなと、辺りを見つつ。

「場所によってはシースさんの方が詳しいかもだから、そういう時はお願いね」

少女の私服姿も新線に感じるのはこれまであっていたのが学院だったからだろう。
此方の手の動きに一瞬視線を送った後、前を向いたのはやはり恥ずかしいのかなぁ、と頭の隅でかんがえて。
それならと手の方は置いておき、自然な動作で少女との距離を一定に保る。
其れに追加して、無いとは思うがおかしな人間が近づいたとき直ぐ動けるよう、最低限の警戒だけして。

「あー、シースさんの髪に映えるけど、学院では目立つかもねぇ…校則では其処まではなかったかな、貴族の子とか結構色々つけてるし」

混合クラスと貴族クラスでちがうのかな、と首をひねる。
なにせ教えている事が事だけに貴族生徒はほぼ来ない、海軍士官とかを目指してるとかいう子はいたかもと思い浮かべ。
少女の髪に合わせるとしたら、白を多く使った品だろう。それは似合うと同時に目立つともいえる。
そう考えれば、こうしたお出かけならまだしも学院内でというのは、恥ずかしがりやである少女には難しそうで。

そんな中で、少女の視線や手の動きをしっかりと確認する。
目の良さにはいろいろん理由で自身がある、しっかりと落ち着いた濃い色合いのブローチと、制服のアクセントにできそうな小さなバッジに狙いを定める。

「結構ダイラスのほうから届いてるみたいだね、こういうの…今度シースさんに送ろうかなぁ、ダイラスなら偶に行くし」

少女が恐縮し、辞退するであろうことをあえて告げる。
その間に店主に手で合図して、狙いをつけていた二つの品を包んでもらうと代金をアクセサリー影に置き、交換で品をマントの内へ隠して。

シース > 実際通行人から、何かしら違和感を覚えられる…そんな可能性も無くはない。
例えば顔や髪を意図的に隠し、人目を忍ぶ…等と言われたら。
頭の上に誤魔化し様のない特徴を有する、ミレー族の奴隷などが。素性を隠し逃亡している真っ最中だとか。
そのような嫌疑を抱く者が居てもおかしくはないだろう。
もし、そんなあらぬ疑いを掛けて来る者が居たら。その時はどうしようか。

「……ぁー…はい。まぁ私みたいな学生が、この辺で来るとなると。…すいーつ、位ですけど」

何故だか微妙に。イントネーションがおかしかった。多分学院に通う為、王都に出て来るまでは。あまり縁が無かったのだろう。
そもそも少年少女達の間で話題になるような、時流に則った品物、などというのは。大概首都発祥の物なのだろうから。
という事で案内役となるには心許ない少女だが。一応、例えば混合クラスの女子生徒達なら、どんな屋台に通うのか。知識はある。
それを活かせば。うっかり顔見知りと遭遇し、教師と生徒のお忍びデートめいた風体に気付かれてしまう…その可能性を。減らす事は出来るだろうか。

「…綺麗で当然、最初からそう、という方々なら。良いんでしょうけど。
何と言うかこう…私とかが急に、お洒落な何か、付けてたりしたら。……急に色気づいた…とか。変に、勘繰られそうで」

校則云々はともあれ。もっと怖いのは学生間のネットワーク。昨今は井戸端で繰り広げられる奥様方の情報戦にだって、決して勝るとも劣らない物だったりする。
中でも色恋がどうだの…それを通り越して男女のアレコレだのは。世の中大勢が気にするしネタにする。まして思春期の学生達なら尚更だ。
そういった界隈に目を付けられたくない、という陰キャな本性が出てしまいつつ…それでも。
つい気に止めてしまうような品が存在する事には。どうやら、容易に気付かれてしまうらしく。

「 …ぅぇ、え、ぇ゛っ。ぃ、ぃ……え。お高い物とかなら、そんなの、駄目。……駄目です、絶対…っ」

案の定。顔の前でばたばたと両手を振るようにして、全力で恐縮するし遠慮する。
ダイラスも王都のように華やかな場所であるし、寧ろ観光地特価が働いて、土産物等の値段はより高くなりそうだ。
唯でさえフードを被っている上、そうして眼前の視界に自ら邪魔な物を振り回してしまうので。
相手の目論見には気が付く事が出来る筈もなく。

リリット・アリール・ソエティア > ちなみに、リリットもエルフとしての特徴持ちなので場合によっては狙われたりする。
外見に反し腕っぷしも魔法の腕もあるので、大抵は返り討ちだが。

「スイーツが分かれば十分じゃないかな、ボクとか酒場は知ってるけど、スイーツって結構知らないんだよ」

一応甘党の船乗りに聞いたスイーツ店はあるが、実際いっても良いか悩んでいたのだ。
強面の船乗りが進める店が普通なのか測りかねて。
少女が知っているならば僥倖、其処に案内してもらおうと嬉しそうに考えて。
少女が知っている理由にまでは思い至らない、流石に同級生とのエンカウントを防ぐためであるとは想定外で。

「長期休暇明けのあの子変わったよね、的な感じで言われたくはないんだね。
貴族の子達は、それが家の格を示す意味もありそうだけどね…ん、それじゃそういうのは気をつけようか」

長期休暇明けなどに垢抜ける子がいて、そういうこの噂は学院をめぐると聞く。
良い噂だけなら問題ないが、その話の中には悪意も混ざるのだ。
綺麗になった子なら、其処に実は性的意味で遊びまくりとか、だれが混ざたでもなく他愛ない噂だからこそ捻じれてしまう事もある。
少女の恥ずかしがりとかはそういう噂に対しても及んでるのかな、と頭の隅で考える。

「そっかぁ…それじゃ仕方ないね。
其れじゃそろそろ他のお店いこうか…軽食とか雑貨とか…あ、布なんかもあるみたいだね、どこか行きたいところある?」

こっそり受け取った品物は大き目のマントの裏。
店主に目であいさつして、周りの屋台を見渡して、あそこはサンドイッチ。
あっちは小物系の雑貨、あっちがシェンヤンとか東方の布かな、と何件指さして。

シース > 相手のように、実際に隠さなければいけないような種族的特徴はない。
とはいえ、決して多数派ではないだろう身体的特徴を持っている、という自覚は有るので。其処もまた人目に止まりたくない理由。
万が一の事が有ったら…其処は完全に。相手任せになってしまうだろう。こちらは完全に、唯の人間なのだから。

「…流石に。其方はお付き合い出来ませんね。というかお酒って美味しいんでしょうか。
大人の方の飲酒というのは、味目的なのか、酔う方がメインなのか…」

その辺まるで判らない。と、首を振る。お酒はきちんと、飲んでも良い年齢になってから。そういうルールは守るので。
船乗りという職をイメージすると。何だかそうした酒場の方が似合っていそうではあるが。
世の中趣味や好みは個人の自由。甘味好きの強面男性が居たって、何ら不思議ではない筈だ。
どうやら相手も乗り気になってくれているようなので。それなら後で、甘い物を食べに行くか。そう内心で決めながら。

「…です。正にそれ。変化するって、どうしても。何かしら切っ掛けというか…要因というか。それを意識してしまう訳で。
私は…一般家庭ですから。もし、あぁいったのを身に着けるんでしたら。…自己満足出来る物、で充分かなと」

別に身分や格式を主張しなければいけない立場ではない。
学生の内から煌びやかさや強さを主張して、将来に繋げようだとか。そんな貴族様達には無縁である。
…なのでやっぱり混合クラスというのは、まだまだ改善の余地が有るのではないかなあ、だとか。経営側ではなく当事者側から考えてしまうのだが。
当然それを、声を大にして言い出すのにも。また身分などが必要となるのだから、どうしようもない。

後は少女自身、以前と比較されずに済む真新しい環境への移行…編入時に、変わった、つもりでいる身なので。

「…せんせ、じゃない、リリ………」

次の屋台に目移りする中。答えようとした言葉を飲み込んだ。
あれやこれや、たっぷり数秒思案を重ね。片手を持ち上げフードの中へ、そのまま前髪を弄くるようにしつつ。

「……りりっと、さん。結構早い時間から来てしまいましたし…腹拵え、するべきだと。思います」

悩んだのは。先日「学内では先生と呼ばなければ」、そう主張してみせた相手に対し。
いざ学外、授業の外、なら。お忍びらしく振る舞うなら。どう呼べば良いのか…だったのだろう。
結局。外見年齢こそ近くとも、目上の相手なのだから、さん付けはしつつも。
あまり他人行儀になり過ぎて、周囲から違和感を覚えられないよう。ファーストネーム。

すたすたと率先する…かに見えて。その実立ち止まって居られずに。自分からサンドイッチの屋台へと歩きだす。
止まっていたら。その侭振り返られていたら。少しばかり恥ずかしさが色となって乗る頬に。気付かれていただろうから。

リリット・アリール・ソエティア > 「あはは、船乗りが集まる酒場は流石に連れて行かないよ。
シースさんだと酔った馬鹿がむらがるからね。でも今日はボクの独り占めさ」

冗談めかした言葉で少女に告げる。
酒は美味いものはすごいよと力説し、船下りて最初は美味しいお酒が嬉しいなぁ呟いて。
少女のイメージ通りの酔う為の酒場も間違ってはいない、仲間内で飲んで酔って騒いで…買う為に繰り出すのだ。
買うは流石に言わないが、性的な意味である。

スイーツ店に関しては少女の方に任せられそうだと頷いて。

「そうだね、垢抜けるにしても様変わりにしてもきっかけがあるし、そのきっかけがいろいろな噂に化けるモノね。
あぁ、勉強するときとか前髪が邪魔にならない程度のヘアクリップとか、かな?」

少女の髪は結構長く、量も多い…ならそれをまとめるクリップや紐はあると便利じゃないかなと首を傾げる。
きらびやかではなく、けれど趣味の良い品ならかくれたおしゃれと言い張れるだろう。
混合クラスの生徒の席の並びなども、貴族とそれ以外で分かれてたりするので、教師から見るとあそこは貴族の子とかお付きの子なんだとわかる程で。
数人はそれを気にも留めてない人はいるが少数で。

「ん…呼びやすいのでいいよ」

途中で止まった声に苦笑しつつ。
けれど呼び直してくれた呼び方に微笑んで。

「そうだね、軽く何かお腹にいれようか」

こくりと頷き、近くにあったサンドイッチの屋台へ向かう少女の後について歩く。
率先して歩く少女、一瞬の反応から照れてる?、と内心で考えて。
けれど、フードを被った少女の頬や首などは後ろからは見えないので、確定は得られず。
歩きながら、何サンドがいいかなぁ、と少女に問いかけるように声を漏らし、気づけば少女の隣へとおいついて。

シース > 「ぅ………守って、頂ける。そういう意味だと思っておき…ます。
ちなみにリリットさんは。酔っても大丈夫なクチなんです?…ちょくちょく。まるまる上戸って聞きますけど」

唯でさえ二人で行動している上で。余計に意識せざるを得ないような事を言われると。軽く唇を尖らせてみせる。
酔って騒ぐ。多分にそういう事が多いのだろう。海の男達というのは得てして。陽気なイメージが付き物だし。
それを思い浮かべている内に、ふと疑問。癖というのは千差万別、その中には、酒癖という物だって含まれるだろう。
…相手の場合も、何かしら普段と違う側面を見せるのだろうかと…言われなかった部分について。邪推した訳ではないのだけど。

「…せんせ……じゃない、リリットさんや、他の方々にしても。其処からウワサが拡がるというのは。困るでしょうから。
あぁ…その位なら。確かに良いのかも。実際問題時々鬱陶しくは有ります……し」

的外れな邪推だけなら良いが。其処からうっかり、相手は学院内の誰かに違い無い…などと決めつけられてしまい。
其処から相手や、そうでなくとも別の教職員の方々等に。累が及ぶのは。避けておいた方が良いと思う。
現状身分の差をまだまだ解消しきれない新制度だが。ウワサ好き、色恋に興味津々、というのは。平民でも貴族でも、きっと変わらないのだろうから。

それはそれとして。お高い物を買って貰うのは気が退けるが。相手の言うような、普段使いの物なら。まだ安心出来るかもしれない。
確かに少女の髪は長さもあるが、それ以上に癖の強さが厄介で。どれだけ除けても自然戻って来てしまう。
物理的に押さえつける何か。覚えておいても良さそうだ。

「…お互いさん付けになってますし。これなら違和感無いかと…少し。気が退けますけど」

相手の方が年上である事を考えると。呼び捨てされても文句はないのだが。
髪を弄くっていた指先は。続いて頬を掻き…少し間を置けば、其処は熱くならずに済んだと。触れて確認し息をつく。
もし其処で相手から、照れているのか、そう声に出して尋ねられていたのなら。それはもうムキになって否定した事だろう。
躍起になればなる程怪しいのだ。そんな事まで気が及ばずに。

「…此処だけで結構お腹に貯まるんです。朝昼兼用でも良い位。
私は…どうしようかな。海の話が有ったからか、其方に食指が働くかも」

船乗り、そうでなくても海の仕事に携わる者達。彼等を想像すると、つい。シーフードに意識が向いたのか。
二人で並んでメニューを覗き込み。少女が選ぶのはツナにレタス等の品。セットの飲み物は炭酸水。
…マスタードは抜きで、と屋台の主に念を押す辺りは。先日の激辛料理で疑心暗鬼なのだろう。

リリット・アリール・ソエティア > 「何かあればきちんと守るよ、勿論。
ボクかい…ん-、結構強い方だよ、ただ酒と雰囲気に酔って抱き着き上戸になるって言われた事はあるかな?」

軽く唇を尖らせる少女の様子に、そういうところが可愛いんだよねぇと内心思い。
聞かれれば、酒だけでなく雰囲気が合わさるとそうなるみたいでねぇと、他人事の様に。
普段から結構距離の近い部分はあるが、それがより進むのだと、少女にはある種脅威かもしれない。

「ボクの方は、そんな噂は気にしない図太さがあるからね。気にしないで良いよ…むしろボクが気をつけないとね、シースさんの事。
だよね、軽くお腹にいれたら布も見にいこうか、端切れとかなら良い布でも結構安いと思うんだ」

自分は噂を気にしないだけの精神的耐久といざとなったらしばらく船にという逃げ道もある。
そういう点でいうなら、少女の方が深刻だろうからと、心配そうに見つめて。
そう言ったうわさには身分も関係ない部分も多く、噂の内容次第では致命的になりかねないのは、少女だろう。

同意を示す少女にこの後のことも軽く提案する。
一反などで買えば高額だとしても、服を作って余った端切れなどは格安な事が多い。
屋台でならむしろそういう品が多いかもと、少女に告げつつ。

「そうだね、付き合い始めの…友人っぽいかな?」

こくりと頷いた後で、付き合い始めの後溜めたのは、悪戯なのか本心があったのか。
続く言葉は友人という少女に少しは安心を与えるだろう言葉、一瞬恋人と言いたかったが、其処は我慢して。
少女の一寸した仕草をみて、やっぱり冗談でも恋人はやめてよかったと、小さく頷き。

「おぉ、いいねぇ…安くて多い店は庶民の味方だよね。
ボクは、ハムと卵かなぁ…鉄板だけど、海で卵ってあんま食べれないし」

保存食のハムと違い、こういう店のハムは味優先なのも手伝って。
鉄板ながらのハム卵サンドを頼み、飲み物は自分も炭酸水。
マスタードは少なめにして貰い、美味しいサンドイッチを手にし、もぐっと一口。
ぱぁ、と顔を可は焼かせて、少女に美味しいねぇと笑いかける。

シース > 「…そう言って頂けると安心します。…魔法とかお使いになるんでしょうか。そういう時って。
ぁー…あ、-…それは。…それは何とも。成人後も気をつけなきゃいけないのかも」

実際守ってくれるのだろう。そんな確信はあるものの。腕っ節が強い、という風にはとても見えない相手である。
やはり術士的な素養が強いのか。それとも、見た目に合わぬ剛力だの格闘センスだの持っているのだろうか。不思議な気がして尋ねてみつつ。
…今後、長い付き合いになる場合でも。例えば卒業した後でも。あまり酒宴でご一緒するのは避けておいた方が良い気がした。
つつつと目線を逸らしつつ…ふと首を傾げるのは。仮に自分にも、何々上戸の気が有るとしたら。一体何になるのだろうと。

「…体制というか…学院の方は、どうなのでしょう。教師と生徒のウワサとか。気にするんでしょうか?
……けど。こうして気を使って頂いてるので。大丈夫だと思います…今の処。何も、無さそうですし。
うーん…リリットさん。もしかしなくても、器用な方……ですよね?」

端布で作る何かというと。やはり衣装には到底ボリュームが足りないので。細々とした身近の小物、という印象が有る。
それを自分で購入する相手、もしかすると、自分用に何か作ったりしているのだろうかと。
つくづく海の男の豪快なイメージとは真逆だが。目の前の相手には合っている気がするので、不思議だ。

そうやって先程から。右に左にと首を傾げっぱなしなのだが。
屋台に近付く途中での一言には。がくんと前につんのめりそうになった。

「…っ、っ、友人付き合い。ですね?それはそれとして、本当は目上の方な訳ですがー…」

実際、安心目的の前置きが無かったら。冗談を冗談だと気付き難い不器用さも手伝い。
つんのめるどころか、そのまま転倒していたかもしれない。足元不注意になって。
お陰で屋台まで残り数mという所まできて、一気に歩調が早くなった。屋台主が目を丸くしていたが…それには気付かないフリをして。

「腹拵えしておかないと、結構広いですから。歩き回ると思いますし。
では……いただきます」

食べ物関連の屋台が集まった一画は。ちょっとしたスペースに椅子とテーブルも出されており。
オープンテラス…というようなおしゃれ感は無いので、どちらかと言えばフードコートめいた雰囲気だ。
さりとてその方が落ち着く訳で。一つのテーブルを占拠した後、二人でサンドイッチに齧り付く。
…この辺の代金、後で精算した方が良いかな、と。内心考えているのだが。今言い出すと間違い無く、気にするな、で済まされるだろうから。
此処では口にすることなく。遅めの朝食を愉しもう。

相手の感想に頷いては囓り。ゆっくり目のペースで腹に収めて。
そうすれば飲み物の残りは手にしたままで、次なる目的地へと歩き出す。

リリット・アリール・ソエティア > 「あぁ、そういえばそこら辺って言った事ないっけ、一応無手の戦いと魔法がメインだねぇ。
あはは、可愛い子とかにふらふらって近づいていってたぞとか、抱き着いた本人から言われたからねぇ」

マントの下から細い腕をだし、ぽんぽんと叩いて見せる。
力が強いというよりは、関節など股間など鍛えられない場所を狙う戦いなので力こぶが出る程ではないが、それでもよく見れば半ズボンから覗く足は、筋肉が薄く見えるだろう。
笑いながら語るのは船乗りなら笑い話になるのだろう。
一応、普段はそんなことないからね、と少女に言い訳するように苦笑して。

「学院は、其処ら辺は個人の問題扱いだと思うよ、結構放置気味な気がする。
そっか、それなら良かったよ、シースさんが悲しむのは見たくないしね。
かも…いやさぁ、結構自分で作ると安くなるものとかあるじゃない、そういうのは自作するようにしてたらいつの間にかね」

髪を縛るリボンや、拳に巻くバンテージのようなもの。
ある意味で真逆の使い道だが、端切れから作りやすい品である。
他にも半端にあまった木材などで、授業に使う船の模型を作ったりと、本職に頼むと結構するものを形と機構が分かればと手作りしたり。

少女が此方に問いかける事が実はうれしい。
それだけ興味を持ってくれているのだと思えるのだ。
自分の言葉に、転びそうになる少女を見つつ、小さく笑い。

「そうだね、友人付き合い…学外とはいえそう言って貰えるとうれしいね」

少女の言葉に頷き、慌てる様子を見て落ち着いてと言って。
そのうちもっと進んだ関係も受け入れて欲しいなぁと小さく呟く。

「確かに、此処って屋台もいっぱいあるしね。
うん、ボクもいただいてます」

頼んだサンドイッチと飲み物を受け取って。
すでに一口いっていたからか、いただいてますと冗談ぽく告げる。
テーブルの上に置いたコップから偶に炭酸水を飲み、ふぁ、と小さく声を漏らす…どこか色っぽいのは雰囲気のせいなのか。

少女と共に次なる屋台、布を扱う店へ歩いていく。
少女の隣に自然と並んで、どの色が似合うかなぁと、少女の問いかけるでも無く呟いて。