2023/11/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「うぅ……」

 宿場や酒場などの飲食店が軒を連ねる通りの一つで、苦し気に呻きながらふらふらとした足取りで進む女が一人。
 昼間の静かな顔とは異なり繁華街では今が盛りとばかりにどこも盛況で、ここ一帯もがやがやと賑わいを見せていた。
 そんな喧噪から少し外れるように道端でふらついていた歩はとうとう止まり。腰を屈して蹲ると、額を抑えて唸った。

「………わ、悪酔い……した……」

 今日は悪阻が酷いという酒場の奥さんを診に呼ばれたのだが。その際奥さんが給仕に入れず人手が足りないと豪く忙しそうにしていたのでお節介心を起こし落ち着くまでと簡単な調理や給仕を手伝っていたのだが。
 その際宵の口ですでにべろべろになった酔客に酒を勧められ、空気を悪くしそうで断り切れず、少しだけといただいたのが失敗。
 その酒が甘く飲み口は軽かったのに随分強い酒だったらしく、一杯飲んだだけで思ったより回ってしまい。どうにか給仕を終え家路につく途中で――ダウン。

 奥で休んでいくかと店主に訊かれたものの、その時点ではどうにか家までは大丈夫かと想定し遠慮して帰路についたものの。
 途中で足元が覚束かなくなってきて、ふらふらと膝が崩れてしまい、どうにか歩き出したところで転倒しかねない、と道の隅に小さくまとまって唸る情けないひと時。

「ぅー……最近呑んでなかったからなあ……キたぁ……きつい…………
 み、水……お水ほし……」

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にサテラさんが現れました。
サテラ >  
「――はい、お水」

 湧き水のように綺麗な水がたっぷりとそそがれた、透明なグラスをそっと差し出した。

 見かけたのは偶然。
 夕食を手ごろな店で摂った後、ふらりと店を出たら足元がおぼついていない後姿を見つけた。
 心配になって追ってみたら、案の定ぐったりとダウンしている。

「酔いを覚ますのによく効くお呪いしといたから。
 飲めばすぐに楽になるよ」

 だから目の前で膝をついて、『ひさしぶり』と声を掛けながら水を差し出したのだ。
 

ティアフェル > 「ぅー……眩暈が……
 …………へ?」

 血中のアルコール濃度の高さを自覚できるくらいで、少し辛そうに呻いていたが。
 不意にグラスに注がれた水を差しだす手に蹲ったまま目を真ん丸く見開いて。
 それからグラスを持つ手の先から上へなぞるように視座を動かして。

「え……あ、わ……びっくり、した……
 えと、お水? ありがとー……いただくー」

 酔って少しぼおっとする視界と発音が少し濁る声だったが、礼を云って差し出されたそれを落とさないように少し震える手で慎重に受け取り。
 久し振り、というほどの感覚はなくて、少し曖昧に笑って小首を傾げ。

 受け取ったグラスの縁に唇を当てると傾けて、こくっ、こくっ、と喉を鳴らして嚥下してゆき。
 半分ほど飲用すると、ほーと人心地ついたような吐息を深く洩らし。

「ふはー……生き返る~」

 オール明けの酔いどれみたいな実感の籠った声で。

サテラ >  
「ふふ、ティアちゃんおじさんみたいだよー?」

 くすくすと笑いながら、ひとここち着いた様子をみて一安心したようで。

「どうしたの?
 わたしじゃあるまいし、ティアちゃんがよい潰れるなんて珍しそうだけど。
 自棄酒、って感じでもないし」

 不思議そうに首を傾げながら、隣に腰を落ち着けてしまう。

「もしかして、酒場でお仕事とかだった?
 安酒は悪酔いするからよくないよー?」

 なんて言いながら、いつぞやに比べれば随分と血色の良くなった顔色で、友人を気にかけて顔をのぞき込む。
 

ティアフェル > 「っふ……酔いどれると須らく人はオヤジ化するものよ……」
 
 苦み走った渋い表情を作ってもっともらしくのたまう科白は大分アホらしい。
 残り半分の水をゆっくりと啜りながら悪酔いの理由を訊かれ。

「ん? ってことはサッちゃんはお酒に弱いの?
 ま……時に深酒することもないでもないけど……」

 自棄になってかっくらうと云うほどのことはほぼほぼない。
 返事をする前にあれこれと予測する声にその内そうそ、と首肯して。

「ちょっと人手が足りないってゆうから手伝ってたのよ。
 お客さんに勧められて断り切れなくってねー。売り上げにもなるし」

 冷たい夜風が火照った頬にむしろ心地よくて目を細めて前髪を靡かせながら残りの水で喉を潤して酔いを落ち着けると。
 吐息が大分酒臭いと思えたので顔を近づける彼女に匂いを気にして顔を引くように離し。

サテラ >  
「あー……うん、それはまあ、否定できないなあ」

 自分が呑んだくれて自棄酒して、友人に絡んだ時を思い出すと。
 まあまあ、セクハラもしたし相当おじさんだったと思うのだ。

「んにゃー、さっちゃんは滅茶苦茶強いよ。
 酒樽三つくらいじゃ酔えないかなぁ」

 ザルとまではいかないけれど、相応に酒豪ではあった。

「しかしそっかー。
 それじゃあ、断りづらいよねえ。
 お仕事おつかれさま。
 お水、おかわり要る?」

 そう声を掛けながら、火照っているだろう顔を手の平で扇いであげつつ。

「どーもティアちゃんとはお水で縁があるねえ」

 なんて言っておかしそうに笑った。
 

ティアフェル > 「人間行き着く先は結局みなオヤジなのかも知れない……」

 身も蓋もないことを悟ったように呟いては重々しく瞑目していた。
 ……大分ちゃんとした酔っぱらいの妄言と云えよう。

 相当な酒豪だと豪語する様子に、コスパの悪い体質だな……としみじみと感想。
 少ない酒量で酔えるのを安上がりと称すればそうなる。

「まーね……なんで酔ってる連中ってのは呑ませたがる習性があるんだか。
 絡み酒は酒場の鉄板にして意外と経営側ではカモに部類されるのだな、と今夜痛感した。
 あ、どもども、サッちゃんもおつおつ。
 んー……そだな……喉は潤ったし。
 ね、甘い物でも食べ行かない? 飲んだ後って不思議と欲しくなるよねー」

 深酒後、炭水化物を求めた身体に穀類や糖類を突っ込み、不摂生の第一歩を人は踏み出すのである。
 それを常態化させる訳ではないから、たまにはということで。
 扇いでくれる小さな手に、ありがと、と笑いかけつつ、一人で甘味を突っ込みに行くのもなんなので、巻き添え……もとい軽く誘ってみて。

「あーね。なんか会う度水もらってる気ぃするー」

 はは、とそれわたしも思った、と笑いながら少し肩を竦めて。

サテラ >  
「……反省は、してるので」

 しみじみと言いつつ、遠い目になったり。
 ここのところしばらくは、お酒に頼り切りで酷かった事を思い出した。

「いやうん、ほんとすみません。
 わたしも酔うとかなりの絡み癖があるので、はい」

 深々と手をついて謝りました。
 カモになるのはよくとも、お店にご迷惑をおかけしてはいけないのである。

「あ、甘いの行く!
 なになに、こんな時間に美味しいところやってるの?」

 甘味と聞けば、女子なら食いついてしまうのも当然。
 普段は自分へのご褒美にしか甘味を解禁していないので、食べられるタイミングがやってくるのはとても嬉しいのであった。

「ふふ、ねー。
 あ、お店まで抱っこしてってあげよっかー?」

 笑いながらそんな事を言って、竦められた肩を包むように抱き着こうとしたりなど、戯れのようにじゃれつき。
 

ティアフェル > 「いーんじゃん? 羽目を外さない一生はないってー」

 至って気楽に。
 物事深く考えたって碌なことないことも多い、とぱたぱた手を振って気にするなしと軽い。

「マジかー、面倒くせえー。
 こう、酔って絡んでもさあ、かわいく上目遣いでゴメンナサイしとけばどうにかなるってさあ、特権だよねぇー」

 あっはは、と笑い飛ばしながら、わたしに謝る必要はないしーと謝罪を躱して。
 お店よりも絡んだ相手が迷惑なだけだからいいんじゃないのか、と自分への害を齎された訳でもないので対応が甘め。

「おし、じゃ行こー。
 えっとね、さっき働いてた酒場でピンチヒッターの強みを生かして残った材料で勝手にタルトタタン作ってきてやった。
 明日まで残ってたら引き取ってやろうと思ったけど、まあ、どうせ残るなら今の内に片づけてやろ」

 素人が有り合わせで仕込んだ物だし、夜の酒場ではきっとハケないだろうから。
 先程まで働いていた酒場へUターンしに行こうと。
 残りのお水を飲み干して、このグラスどうすればいいと首を傾げ。

「酔いはさっきあなたが冷ましたじゃないよ。
 歩けるし、絵的におかしい……」

 自分よりも少し小柄な女の子に担がれている図は違和感しかない。
 お姫様抱っこは王子様に依頼するわ、なんて軽口を叩きつつ、抱き着く体勢に、わ、と目を丸くしつつ。
 じゃれつく背中に手をぽんぽんしつつ路上に蹲る姿勢から引き上げるように立ち上がって。

サテラ >  
「うえーん、面倒くさいっていわれたー!
 ふーんだ、面倒くさい女の自覚はありますよー」

 笑い飛ばしてくれれば、大げさにリアクションして、けらけらと一緒に笑うだろう。

「へえー、ティアちゃんお菓子も作れちゃうんだ。
 タルトタタン美味しいよねー、わたしもよく作るよ。
 うちの農園で採れたての林檎で作るの」

 友達を器用だなぁと思いつつ。
 グラスは受け取ると、手の中でパッと、手品のように消えてしまう。

「えー、おかしいかなー?
 というか、ティアちゃんも王子様とか期待しちゃうタイプ?」

 立ち上がるのに合わせて、身体を離すと横に並びつつ、顔を見上げて。
 

ティアフェル > 「自覚はあるなら良くない?
 まあ……逆にめんどくさくない女子とかいない。大体の女子はめんどくさい生き物だよ……」

 訳知り顔の自論だが、あながち的外れでもないと思っている。
 その面倒に割と振り回されてくれる世間があるから成り立つのだろうなんて厚かましい暴論を唱えるのだ。

「ちょっと古くなりかけのりんごを見つけちゃうとついね。
 結構シンプルな材料でできるし、割と適当でもそれなりになるもんね、あれ」

 少し焦げたくらいがいいものだから雑な性分にもどうにかなる。
 返したグラスが消えると、お見事ーと呑気に笑い。

「少なくとも姫に姫抱きされたら矛盾を覚える」

 真理。とでも云うように真顔で提唱しては、さて、と先程まで忙しく立ち働いていた酒場へ戻ろう。
 行くよー、と手を差し伸べて促し。
 繁雑としていた営業も少し峠を越えて落ち着いている小さな酒場へ向かい。

サテラ >  
「ティアちゃんのそういう懐の広いところ好きー」

 そんな事言いながら、面倒くさい女筆頭は、友人の腕に腕を絡めようとする。

「あー、なるほど。
 腐らせちゃうのももったいないもんねー。
 うんうん、お菓子作りを教えるときも結構おすすめしてるなー」

 多少おおざっぱでも、ちょっと失敗しても、わりと何とかなるのが丁度いいお菓子なのだ。
 入門編には丁度良いお菓子の一つだろう。

「え、そんなぁ、お姫様だなんてもー」

 なんて照れて見せつつも、置いていかれない様に隣をちょこちょこついて行く。
 酒場に着けば、店構えなどを面白そうに眺めながら、友人にくっついて入店するだろう。
 

ティアフェル > 「サッちゃん以外からは、雑って云われるけどねー」

 周囲は事実を述べているだけだろう。
 実際大雑把そうにあっけらかんと笑いつつ、腕を絡める彼女に甘えん坊だな、と微苦笑しつつ。

「あれってりんご大量消費メニューだからさ、一気にハケていいよね。
 わたしお菓子作り教えるのって苦手だわー。教えるほどうまい訳でもないし、自分の手順乱れるから絶対向いてない」

 逆に彼女は根気が良さそうだから向いているのだろう、と勝手に得心して。
 
「照れるのそこ……?」

 街中で女同士で姫抱きしている方が恥ずかしいものだが。
 それはいいんだ、と疑問を覚えつつも、店に巻き戻れば。
 飲食メインなせいかこの時間は客足が落ち着いている酒場は、厨房が見えるようになった横長のカウンター席と窓際に設置されたテーブルがいくつか、といった小ぢんまりした店舗で。
 今は数人の客が遅い食事を摂りながら酒を嗜んでいて、空席も目立つ。

 カウンターでいいか訊きながら、戻って来た顔に店主が忘れ物かと首を傾げるので。
 おやつ食べに来たー、とのほほんと笑って、作っておいたタルトタタンの残量を確認し二人分お願いする。

サテラ >  
「実際、出荷できない形の悪いのとか、沢山使えるから助かるよー。
 あー、自分のペース崩れると嫌って人いるよね。
 わたしも、仕事のプラン乱されるとすっごいイラってしちゃう」

 書類仕事がメインなので、突然の割り込み申請書やら、緊急の決済やら飛んでくると、こめかみに青筋が浮かんでしまうのである。

「えーだって、お姫様とか憧れだもんー」

 なんて乙女チックな事を言ってるのだが。
 馬娘はあまり性別を気にしないので、女同士だからと気にならないのだった。

「おじゃましまーす。
 えへへ、おやつに誘われちゃいましたー。
 あ、それとここで一番高くておいしいお酒くださーい、一番おっきいサイズで!」

 カウンターにちょこんと座りながら、元気よく片手を上げてお酒を注文したりする。
 がっつり飲むつもりらしい。
 まあ、おやつだけおすそ分けされるのも申し訳ないと思ったからかもしれないが。
 

ティアフェル > 「そういうのってジュースやお酒にすることが多いんじゃないの?
 へえ……意外と神経質なんだねえ。
 お菓子作り以外だと別にいいんだけど、お菓子は結構神経使うし失敗したら何だか無性にイヤな気分になるから不思議……」

 人生に必要もない嗜好品を楽しむために作っているだけなのに、一番失敗するとテンション下がる。
 楽しみが潰れる感じになるからイヤになるのだろうか、と少々自問し。

「そんなら担ぐ方じゃなくて担がれる方やんなきゃ。担いでる場合じゃない」

 よりによってこのゴリラを。
 そんなことをしていたらその憧れから遠ざかるばかりだぞと真顔で忠告し。

「あ、呑む?
 それだったら何かアテ頼んだ方がいいね」

 甘い物、と思っていたが酒のアテならしょっぱい物の方がよさそうだ。
 自分は残り物のタルトタタンと何でもいいから温かいお茶、と注文。
 残り物消費で勝手に作った物とは云え普通に代金は支払うつもりではあり。一般客としてオーダーする。
 タルトタタンは一人分にして、後はチーズの盛り合わせとかにしてもらおうかと、酒に合うアテを店主に考えてもらい。
 一番安い酒、という注文なら慣れているので簡単なものだが、高くておいしい酒、という注文には困ったように。
 価格帯で云えばランクの高い酒というのは勿論すぐ用意できるが、おいしい酒、というのは人それぞれ好みの問題で難しい。
 どのような酒が好みなのかをまず伺うだろう。
 蒸留酒なのか果実酒なのか穀物酒なのか。
 それぞれで店で扱う最上の酒がある。どのような酒がお好みですかお嬢さん、と取り敢えずお茶を煎れるのに湯を沸かしながら確認する。

サテラ >  
「神経質……なつもりはないんだけど、急に仕事が増えると、こう、殺意が溢れそうになるというか……」

 恐らく普段から抱えてる仕事量がすでにキャパオーバーなのかもしれない。
 こうして遊び歩く時間を作るのも、なかなか大変だったりするのだった。

「そっかぁ。
 じゃあティアちゃんに今度抱っこしてもらおうかなー」

 お姫様気分のお試しーなんて言って忠告には能天気な返答を転がし。
 お店ではお店で。

「あ、わたし甘いのでお酒行けちゃうから大丈夫ー。
 好みは果実酒でーす。
 がっつり強いのでも大丈夫なので、ストレートで!」

 店主さんにやたら元気よく好みを伝えつつ。
 『たるとったるとっ』と、身体を揺らしながらわくわくしている様子は、非常に子供っぽいだろう。
 

ティアフェル > 「それはありがちだな」

 大体は急に仕事が増えるとうんざりするものだろうと肯いて。
 無理はしていないといいのだが、まあこうして街中や意外な場所でもばったり会ったりすることもあるくらいなのだから、そこまで深刻でもないのだろうと予想し。

 担がれたいという要望が来たので、取り敢えず笑っておく。
 わたしの話聞いてねえなーと今日もちゃんと天然な様子におかしげに肩を揺らしつつ。

「わたしは紅茶でいいや。お水も一杯お願い。
 しばらく禁酒だよ
 ストレートな果実酒ってなんだいね」

 悪酔いは懲り懲りだ。どれだけ二日酔いになっても翌日には総て忘れて呑み始めるようなのん兵衛でもない。
 蒸留酒がいいのか果実酒がいいのかちょっと良く分からない謎オーダーにカウンターで横に並んで座りながら首を傾げつつ。
 店主は鷹揚に応じては大きめにカットしてもらったタルトタタンと、その店での価格が最上な果実酒を選んでゴブレットに注いで出してくれ。
 紅茶は良く蒸らしてからカップを添えポットサービスで出してくれた。