2023/11/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアレナさんが現れました。
■アレナ > どんよりとした曇り空の下、時刻は恐らく昼下がり頃。
夜の営業に備えた仕込み中であろう食堂の裏口を背にして、
その辺に転がっていた木箱を椅子代わりに、足許へ大きな木桶をふたつ置き、
異国風の装束に身を包んだ小柄な少女が、山盛りの馬鈴薯の皮剥きに勤しんでいた。
「ん、うーん…… ぁた、……おかしいな、コツ、掴んだと思ったんだけど」
たっぷりと長い袖をたすき掛けにして腕を剥き出し、真剣な表情で包丁を使っているのだが、
完成品を入れている木桶の中身は、明らかに小さすぎるものばかり。
お隣さんのよしみをタテに、毎日のように雑用を引き受けているわりに、
一向に、少女の包丁捌きは上達してくれなかった。
今も、どちらが皮だかわからない格好に剥けてしまった芋を両手に、
溜め息交じりに呟く始末。
とはいえ、皮のついたままの芋はもう、あと数個。
それが終われば、とりあえず、今夜も賄いのご相伴にあずかれる筈だった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
■トーラス > まだ日が高い昼間から食堂のカウンターで酒を呑む中年冒険者。
木製のジョッキに注がれたエールをご機嫌に流し込みながら、
酒のアテに注文した馬鈴薯の素揚げがテーブルに提供されると眉根を顰め。
「おいおいっ、何だこりゃ!?
この店はいつからこんな阿漕な商売を始めるようになったんだ?」
富裕地区の洗練されたリストランテには遥かに及ばないまでも、
値段の割りには味もボリュームもそこそこ相応の質と量を維持する良心的な店。
だが、提供された皿の上の芋は提供個数こそはメニューの通りではあるが、
どれもこれも、通常の芋に比べて小さいものばかりで腹が満たされるとは到底思えない。
既に心地好く回り始めていた酔いもあって、店の裏手にも聞こえるような声量で文句が飛び交う。
そんな迷惑客の勢いに従業員は『そいつは下働きの奴が…』と食堂の裏口を示して言い逃れをする始末。
クレーマー客に対する初期対応の不備は、客の不満を更に募らせ、中年冒険者はカウンター席から腰を上げ、
裏口の扉を蹴破るような勢いにて開ければ、裏路地を見廻して其処にいた芋剥き女を睨み付けた。
■アレナ > 背にしていた扉が、突然、大きな音を立てて開かれた。
「ひ、ぎゃっ――――――!?」
店内の騒ぎなど知る由も無い、従って完全な不意打ちを喰らって、
少女はびくんと大きく身を跳ねさせ、色気の欠片も無い悲鳴を上げ、
ついでに盛大に手許を狂わせて、ざくん、と包丁で指先を突き刺した。
「いっ、たぁ――――… っ、っん、……?」
左手には不器用な手つきで包丁を握ったまま、傷ついた右手の親指を咥え、
恨めしげな涙目で、少女は騒音の元凶とも呼ぶべき男を睨み上げる。
誰なんだとか、いったい何ごとなんだとか、言いたいことはたっぷりあるが、
言葉の不自由な身では、とりあえず、目にものを言わせるしかなく。
■トーラス > 食堂の裏口の先、路地裏に居たのは包丁を片手に握る異国情緒な格好の少女。
まるで親の仇でも見るかのような視線で睨み返す相手に怪訝な表情を向けるも、
木桶の前に置かれた馬鈴薯の残骸、もとい、皮が剥かれて下拵えがされた芋を見付け。
「ちっ、……おい、何だこりゃ。
折角の芋をこんなに痩せ細らせて客に喰わせるとは如何いう料簡だ!」
分厚く身が残った皮と、角張った小さな芋の断片を両手で抓み上げて女の顔の前に突き付ける。
煮込み料理ならば、いざ知らず、個数が定められた素揚げ等で提供されれば詐欺の一歩手前。
何しろ、捨てられるだろう皮と料理に使われる中身の部分の大きさがほぼ等しい事実。
眉間に皴を刻み込ませて怒声を少女に浴びせ掛けながら、
改めて、この界隈では余り見かける事のない、シェンヤン風とも思える
異国情緒な衣装に身を包んだ少女の容貌に視線を這わす。
■アレナ > 口の中に金臭さが広がってはいるが、傷はさほど深くない。
何ならこうして舐めているうちに消え失せるかも知れないほどだが、
痛いものは痛いので、少女の恨みは消える筈もなく。
「――――――、… ぁに?」
更に言わせてもらえるならば、この男の言葉は早口で聞き取り辛い。
怒っているからなのだろうけれど、正直、芋を掴んで詰め寄られても、
恐怖より困惑が募ってくるばかりなのだった。
首を傾げて、眉間に皺を寄せて、傷の消えかけた指を口から放し、
その手を顔の前に、五指を広げて『どう、どう』と宥めるような手振りをしながら、
「チョット、待ッテ、……えと、も、少し、ユックリ?」
とりあえず。
意思の疎通を図るには、クールダウンが必須である、と訴えた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
■アレナ > ≪移動します≫
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアレナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にチーリンさんが現れました。
■チーリン >
日暮れ前の広場で、ベンチに座りのんびりと空を見上げている少年は、ほう、とため息をついた。
「困りましたねえ……」
然程困っていない様子で、そんな事を呟きながら、広場を行き来する人を眺めているのですが。
「いやはや。
こうしていると、一見、とても平和に見えるものですが」
王都は随分と荒んでいると聞いていた少年からすると、それでもまだ秩序がある様に見えます。
とはいえ、それも物陰や路地に行けば、その限りじゃない事は最近覚えたのですが。