2023/11/06 のログ
ご案内:「公園 平民地区」から フリッツさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアニエスさんが現れました。
■アニエス > 「……うー、あったま痛ぁい」
二日酔いでズキズキする頭を抱えた少女兵士は、市民公園のベンチに腰掛けて堂々と業務をサボっていた。
周囲に横たわる浮浪者達を、本来ならば追い払うのも業務の一環の筈だが……そちらには目もくれず。
むしろ日によっては、彼らが起こした火の側に座って、貧しい彼らに酒をせびるくらいの図々しさがある──それはさておき。
「あー、こりゃダメっす。もうおしごとなんてやってらんないっす。……寝る!」
ごろん、とベンチの上へ横になる少女兵士。鎧兜を身に着けていても寝られるのは兵士の嗜みである。
仰向けになってみれば空は高く、雲ひとつない晴天。
「んー♪」
機嫌よさそうに鼻歌など歌いながら、ベンチの上で足をぱたぱた遊ばせる。
■アニエス > そのうち眠気もやってくる。目を閉じてくうくう、心地良い寝息を立てる。
……他の見回りの兵士にたたき起こされるまで、快適なサボりを堪能することだろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアニエスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリーシャンさんが現れました。
■リーシャン > 日の高い時間帯の平民地区の冒険者ギルド。
冒険者や依頼人などで混雑をした中、受付に向かい一つの依頼を出す。
それは王都からダイラスまでの護衛を頼むというもの。
拘束期間や野盗が現れた場合の追加報酬などを記載すれば用紙を提出し。
「これでお願いね。出来るだけ変な人は避けてよ?」
用紙を受け渡すときにギルド員にそう告げては受付を離れ。
そうして依頼を受けてくれるものが現れるのを待つ間に、今出ている依頼を眺め、
そして冒険者の話に聞き耳を立て、どういう依頼が多いか、それによってどういったものが売れそうかなどをリサーチ。
そうしながらしばしの間待つこととなって。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリーシャンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に影時さんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に杜若さんが現れました。
■影時 > ――ここ最近は秋めいていた筈なのに、少し汗ばむ。
季節外れの陽気というのは、凶兆めいているのか。
作物の収穫時期やら、此れから収穫期になると思われる作物や果実に杞憂する声を、市場を進めば耳に入る。
武具類の修繕、冒険者の七つ道具めいた用具やら食料の調達だけを見れば、頼るものは決まっている。
それ以外の諸々を探し求めたり、あるいは未知の出会いを狙うならば、積極的に街に出ることに意味がある。
特にそれが逢引きの一環となれば、尚の事だ。
「……ン、鐘が鳴ったか。そろそろか?」
王都マグメールの平民地区、雑多な露店や屋台が寄りあうように隣接した市場の近く。
其処に、土地に縁のある人物と思われる像が立っている。騎士らしい身なりを模しているが、素性等は分からない。
だが、目立つ場所となれば待ち合わせスポットとしてよく使われる。
いかにも初心そうな若い男女も居れば、色々酸いも甘いも嚙み分けた娼婦とその客らしい組み合わせもいる。
その中に一人の男が混じる。この地の一般的な服装とは大いに意匠が異なる白い着物を着流し、腰に刀を差した男だ。
そんな男が昼の時間を告げる鐘楼の鐘の響きを聞き、ふむ、と首を傾げる。
「場所は手紙で告げたつもりだが、……土地勘は大丈夫だろうかねえ」
待ち合わせの人物の宿、その受付に手紙を送ったのだ。今日の正午が過ぎた頃、この像の前にて待ち合わせよう、と。
その手紙を運んだものたちが、男の頭の上や肩の上で、日差しを浴びながらふわぁ、と欠伸をする。
茶と黒の毛並みのシマリスとモモンガだ。住処に置いてくるつもりだったが、お目付け役とばかりにくっついてきた。
手紙運びをさせた報酬ついで、というつもりだろうか。
頭上のモモンガがぺたん、ぺたんと尻尾を飼い主の頭に叩きつけてくる。大人しく待ってなさい、とばかりに。
■杜若 > 「お、いたいた!お待たせいたした影時殿!」
鐘がなってから少しして、遠くから軽やかな足音が聞こえてくるだろう。
銅像を目印に集まる人ごみの中、初々しいカップルたちを邪魔しないように避けながら小柄な少女が異国風の出で立ちをした男に駆け寄ってきた。
いつもの愛用のキモノとハカマは泥に汚れ、顔にも土を付けた少女は小動物に頭を尻尾で叩かれているのを見て目を輝かせ、懐から栗のような木の実を数個取り出すと、その小動物たちに餌付けしようと近づけて、その後走って乱れた呼吸を整えてから男に笑顔で頭を下げ、遅刻と汚れた姿の理由を説明する。
「いや~お待たせしてかたじけのうございます影時殿!今日は近くの農村の収穫を手伝っていたのですが、長引いてしまいまして。」
■影時 > 仕事も含め、この街を行き交うようになって気づけば長い。故に多少ながら土地勘が効く。
だが、待ち人はどうだろうか? そこが少しながら不安である。
もう少し万全を期して、自分から向こうの宿に迎えに行く方が良かっただろうか?
そんなことを考えつつ、胸の前で腕を組む。
襟に巻いた黒い襟巻が寝床代わりのつもりか、もそもそと頭を突っ込んで尻尾を振るシマリスの様子を横目にしていれば。
「……お?」
タイミングとしては鐘が鳴り終えるかどうか、といった頃合いか。
声がする。己が名を呼ぶ声が聞こえてくる。顔を上げれば、肩上や頭上の動物も顔を擡げ、耳をぴくっと揺らす。
その上で見やり、思わず怪訝に眉を動かして見やるのは、駆け寄ってくる小柄な少女の姿だ。
装いの印象、雰囲気としては男のそれに近い。だが、泥や土に塗れているのはどうしたことだろうか?
「そう長く待って無ェから安心してくれ、杜若。さっき俺も来たところだ。
成程、な。得心は出来たが、声をかけた時期がまずかったかねえ。……ちょっと動くなよ?」
どの名で呼ぶかどうか。往来であることを考えれば、この名で呼ぶ方がきっと望ましいだろう。
見える姿に頷き、安堵交じりに笑っては呼びかける。
だが、手持ちの衣装が若しかしたら着物と袴のみだろうか? 予感として抱いた懸念を強めつつ、着物の袂を漁ろう。
差し出される木の実を二匹が受け取り、ぺこん、と会釈する様に頭を下げる様を確かめたのち、手拭いを取り出す。
それで“動くな”と呼びかけた後、顔についた泥を拭ってやろうと手を伸ばす。
■杜若 > 「お?左様でしたか!ではそう遅刻というわけでもなさそうですな!安心安心!」
男の内心など機微に疎い少女に伝わるはずもなく、なかなか現れない少女に不安な気持ちを抱いていたことなど知らないとばかりに気にするな、という男の言葉に甘えるように悪びれずに微笑んでいる。
そして収穫の際数個くすねていたらしい葡萄の実を懐から取り出してパクッと口に含むと、頬に手を当て舌鼓を打った後で男にも一粒どうぞと差し出して、それから栗を受け取り頭を下げる二匹に愉快そうに笑うと指先でその喉元を擽り戯れ始めた。
「あっはっは!このモフモフめ、お辞儀するなんて賢い子らですなっ!んっ?は、はい…?」
そうしていると男から動くなと呼びかけられて顔を向けると、顔に伸びてくる手に頬を赤らめて視線を泳がせそそっと袖で顔を隠してしまう。
どうやら自分の顔についている泥に気づいていないようで、何か勘違いをしているらしい。いつものはきはきと舌少女とは思えないほど小さな声で言い淀みながら囁いた。
「…なっ!?かっ、影時殿…さすがにこの往来の中…その、接吻…は、某といえど恥ずかしゅうございます故…」
■影時 > 「まぁ、道に迷ってねェか――とは、ちぃと気になってたがね。杞憂で良かったよ」
とはいえ、まさか収穫の手伝いにまで行っていたとは思わなかったが。
この時期であれば、確かに人手がどれだけ居ても足りない仕事とは、小遣い稼ぎ的な仕事として貼りだされるだろう。
その仕事は若しかして、葡萄の収穫なのだろうか?
そんな推察に足る葡萄の実を一粒、己も受け取ろう。ぱくりと遣れば成る程、山葡萄の類とは違った味わいがある。
「ああ、こいつらは俺の子分だよ。
栗鼠はスクナマル、こっちのモモンガはヒテンマルという。こんなナリでも冒険心に溢れた冒険者だぞ?」
そして栗の実を受け取り、かりかりとし出す様が肩口より響き出す。
その音の主である二匹の毛玉めいた動物が、親分から紹介されると、えへん、とばかりに食べかけの実を抱えつつ、胸を張る、
撫でられれば、くすぐったーい、とばかりに身をよじらせ、二匹揃って抱えた実を落としかける。
同族と比べて膂力も知力もあると思しい二匹だが、それもあくまで同族と比べて、とのこと。
しっかりとうま味が詰まった栗の実はちょっと重いらしい。持ってほしいでござる、とばかりに男の貌に押し付けてくれば、
「へいへい、ちょっと待ってろお前ら。順番にな。
……別段やっても良いンだが、な? お前さん顔に泥が付いてるぞ。服もそうだ。急いで来たかね?」
子分たちに待て、と告げつつ、そそっと袖で顔を隠そうとするさまに手を一旦止める。
間合いと仕草で勘違いしたのだろうか。そう思いつつ、向こうの顔についた泥の位置に目を遣る。
言いよどむ姿に小さく囁きつつ、改めて手を遣ろう。服については、流石に今すぐはどうしょうもない。
顔を拭き終えれば手を引っ込め、羽織の袂に手拭いを戻す。
入れ替わりに小さな布袋を出せば、小動物たちの食べかけの栗の実を回収しよう。あとでおやつか夜食になるに違いない。
■杜若 > 「あっはっは!迷いませぬとも!某、この町の地理にはちょっと自信がありますからな!食い逃げに賭場の踏み倒し、酒場での乱闘の常習犯故、何度も逃げ回り大通りも細道もよう知っておりまする!」
葡萄を口にして味わいながらも少しは迷子の心配をしていたと語る彼に堂々と悪事を口走る。
強者と見るや決闘を申し込んだり宵越しの金を持たないからと酒場のつけ払い常習であることもそうだが、ちゃっかり葡萄をくすねる手癖の悪さからもわかるように結構な子悪党である。
「スクナマルとヒテンマルですな!実に愛い見目をしておりますな!…ふふっ、影時殿のパーティーメンバーでしたら失礼のないようしっかりともてなさねば!」
そう言って胸を張る二匹の首やお腹を撫でながらすっかりモフモフの虜にされた様子でその毛並みの感触を楽しんで、男に食べさせろと木の実を押し付ける様には感嘆の声を上げて胸をキュンキュンとときめかせている。
「なっ!?…あ、はは~…そ、某勘違いしておりました…えっ!?…その、楽しみだった故、けっこおう急ぎで走って参りました…。さっ、それではそろそろ参りましょう!」
顔に手を伸ばした理由を聞くと、かぁっと顔を真っ赤に染めて袖を下ろし、男の手を受け入れて顔の泥をぬぐってもらう。
そして服の泥にも無頓着だったのか、彼に言われてようやく気付いたようで、自ら手でパンパンと払うとささっと髪の毛を整えて布袋に栗の実を入れた彼の腕にお待たせしましたと腕を絡ませて、まだ赤いままの顔をにっこり微笑ませて街道を歩き始める。
■影時 > 「……――ははは。
そーゆーのを若気の至りとか云うにしても、諸々洗い浚い吐かせなきゃなんねぇかなぁ。
俺はこう見えて無頼を気取っていたつもりなンだが、いよいよ看板倒れか」
実年齢の差という概念を考えだすと、若気の至りとも云えなくもない――かもしれない。
ははは、と乾いた笑い声を絞り出したあと、息継ぎめいた嘆息ののち、虚空を仰ぐ。
賭場は兎も角として、食堂や酒場で出入り禁止になっていない場所が無いだろうか?考え出すと、心配となる。
葡萄のような実の数粒程度は雇い主の勘定に入っているかもしれないが、それも大きくなれば色々と厄介だ。
こうして社会的通念めいたものに思いを馳せだす時点で、己は無頼気取りの誹りを免れない気がする。
「本当、見た目だけで色々得してるよなぁ、お前ら。
……基本的にひどいことはせずに、餌をくれる相手にゃ、懐く筈だぞ?」
余り撫ですぎると嫌がるし、飼い主にして親分たる男に対しても、色々と気紛れな面がある。
だが、初対面で餌をくれた相手については、どうやら小動物コンビとしては好感度は高め、らしい。
冬毛のほわほわふわふわな毛並みを少女にひときしり堪能させたあと、貰い物を預かれ、と飼い主にせっついてくる。
出掛ける先で頬袋に収めようもない、彼らの身体に対して大きい荷物の預かりは、飼い主任せだ。
「――あとでいくらでもやってやるぞ?ツバキ。……まぁ、此れで良し。まずは取り敢えず歩くか」
ぐいと身を乗り出し、向こうの耳元に唇を寄せる。ク、と口の端を釣り上げつつ、吹き込む名前は囁くように。
そうして向こうの顔を拭い終えれば、ほっと息を吐く。
その一連の風景に肩を竦めるような二匹から食べかけの栗を受け取り、袂に仕舞えば小動物たちはそれぞれの定位置に動く。
モモンガは男の頭上に。シマリスは右肩に。それぞれ陣取ったところに少女の腕が絡む。
顎を引き、見下ろせば目に入る微笑に笑い返して歩き出しつつ、こう切り出そうか。
「時に思ったが、お前さん。予備の服はあるか?」
■杜若 > 「あっはっは!大丈夫ですとも!食い逃げや乱闘の罪はある程度清算しております故!」
心配そうにため息を吐く彼に胸を張りながら得意げに言い放つが、要するにまだ土地勘に慣れていないときに捕まったり本人が後日、自分の悪事を忘れて再訪した際にお縄にかけられて清算させられたにすぎない。
少女がよくツケを労働で支払うと提案するのもこう言った失敗から得た教訓なのだろう。
二匹のモフモフをしっかりと堪能した後、飼い主に対して荷物を押し付ける様は少女をさらにときめかせる。
これ以上はしつこいと嫌われそうだからと指先を離したが、撫でたい衝動に駆られてプルプルとその手を震わせていた。
「ひぁ…か、影時殿…往来故、あまりその…からかわないでもらいたい。」
耳元でささやかれるとゾクゾクっと背中を震わせて真っ赤になった顔を恥ずかしそうにはにかませながら、少女にしては珍しくしおらしい反応で頬を膨らませると、拭われた頬を指で掻いて息を整えるように深呼吸する。
そして歩き出しながら尋ねる彼の言葉に少女は答えた。
「予備の服…寝巻くらいですかなぁ…。破れならば自分で補修できますし、着られなくなったならば布さえ手に入れば自分で拵えます故!」
その間はサラシにふんどし姿ですがとまたいつもの高笑いをして見せる。
少女も一応女であるため一通りの家事は仕込まれているらしい。
これも手作りなんですよとくるりと回って自分のキモノ姿を男に見せびらかすが、少し考えた後でたまには既成のものが着てみとうございますとねだるように男に甘えて見せた。
■影時 > 「だと良いが。
とはいえ、常に清廉で在れ――とは言えンにしてもな、財布の紐は気を付けろよ?」
若い時分で金遣いが荒い、後先考えないのは、早めにどうにかしておきたい。
前のめりが過ぎる点も含め、癖になり過ぎると後々が何かと心配になる。
どうにも説教臭ぇな、と。内心で自嘲めいた笑みを浮かべ、唇を引き結ぶ。
せめて、若気の至りの代価、代償に時間を潰すよりは、鍛錬に時間を使う方がもっと有意義となるようにしたい。
気苦労を抱える飼い主とは対照的に、二匹の毛玉めいた動物たちは自由である。
抱えて運べない荷物を飼い主に押し付けた後、悠々自適に飼い主の頭に貼り付いたり、襟巻きに潜り込んで、ふんすと息を吐く。
「無論、心得てるともさ。とは言え、遣る奴らは結構見かけるような気もするがね」
クク、と零す笑い声は口元を押さえつつ、密やかに。
背を曲げ、一瞬間近にした向こうの顔と表情の変化をじっと見やっては、目を細める。
性や色恋沙汰には開放的と思える国柄だ。裏路地まで目を遣れば、街中であっても情事に至っているものは居る気がする。
この王都ではなく、奴隷市場都市まで至れば最早語るまでもない域でも在ろう。
「なぁるほど、ね。まァ、俺も似たり寄ったりだ。修繕や最低限の仕立てなら俺も自分でやる。
刀を差すならその恰好で事足りるが、そうじゃねぇときの服も……まずは探しに行くか」
風邪ひくぞ、と。この先の気候の移りかわりも思えば、苦笑交じりにツッコミを差し込む。
男も裁縫も含め色々な加工の技を習得しているが、それは女の嗜みとは別の理由によるもの。
とはいえ、一人でちゃんと仕立てや修繕が出来るというのは、十分に大したものと言えることだろう。
向こうの着衣の由来に納得できた、と頷きつつも、もう少し女らしいものをと思うのは、情を交わしたものとしては無理もないことだろう。
甘える様に同意、とばかりに、丁度見えた服屋の看板に足を向けてみよう。
オーダーメイドではなく、サンプルとして軒先に数着並ぶさまは、それなりに在庫もあるのだろうと算段する。
■杜若 > 「むぅ…宵越しの金を残さないのは…我が里の粋にございます…」
頑固者なのか、散財癖はなかなか治りそうもない。
少女に根付いた里の刹那的な悪習の価値観がどうしても抜けきらないのか、貯金を恥とすら考えかねない少女は心配そうな彼からの忠告に頬を膨らましてしまう。
「そっ、某はその…恥ずかしいのですっ!」
しかし彼の耳元での囁きにはしてやられっぱなしで、からかう男に真っ赤になった顔で恥じらい拗ねてしまう。
人前でよく肌を晒し、そんな姿で男たちと肩を抱き合いながら酒を食らう少女とは思えないほどの恥じらいっぷりだが、なかなかに色恋に対しては初心な様子である。
「ふふん、刀はもののふの魂です…が、確かに路銀稼ぎにはいささか邪魔になることもありますし、この馴染みの服も労働の際は少々動きづらいですし、あまりお洒落というのも知らないので影時殿に見繕ってもらえると助かります!」
男の言葉にバカは風邪をひかぬ故と自ら自虐して見せながらも、やはりそこは少女なのだろう。
あまり異国の地であるこの王都のお洒落事情は知らぬものの、そういったことに興味がないわけではないようで、せっかくならこの地の流行りの服が良いですと男が見つけた服屋に興味津々で、サンプルの服を手に取り自分の首下にあてて似合いますかと尋ねる様は普段の彼女を知るものからすればなかなか新鮮だろう。
■影時 > 「一晩屋根の下で過ごせるくらいは残しとけ。
魔法で傷を塞げるから、色々割り切って宿代をケチりにケチる奴も冒険者の中には居るがな。
杜若、お前さんは俺が見るところその類の使い手じゃあるまい?」
散財癖を抱えるならそれを戒め、財布の紐を引き絞ろうとするのが相方の務めだろう。
武器防具が整い、損耗と修繕の頻度が少なくなっても、報酬の何割かをきちんと保管するのは後々に備えてのことだ。
それは思わぬ掘り出し物の購入、不意の出費のためでもあり、誰かを養うような時のためでもある。
回復魔法の使い手で諸々行きついたタイプの場合、睡眠は魔力回復と割り切って、宿のランクを下げに下げる冒険者が居ると聞く。
如何に眠れるからと言って、厩の藁を寝床代わりにするのは、如何にもののふであっても、お勧めできない。
「すまんすまん。まぁ、大っぴらでありゃイイもんでもないか」
この辺りの機微の根っこは、やはり年頃の乙女らしい。
場所と時刻を変えれば、密やかに物陰で致している者たちが多い盛り場に連れて行けば、どんな顔をするだろうか?
ふと、人の悪いことを思い浮かべれば、それを察したのか。
頭上のモモンガがぺちん、と言った勢いで後頭部に尻尾を振り下ろしてくる。
もちろん痛みはないが、ツッコミとしては十分。肩上で襟巻きに包まったシマリスが吐息したような気配も生じて。
「稼ぎ方にもよるかね。お前さん、冒険者として何処かに登録してるか?
この辺りの農村とかで収穫の手伝いを、とも思うなら――……そうさなぁ、町娘らしいのもアリかねえ」
過信は禁物だぞ、と。ふるり、と首を振る。この先寒くなるならもう少し工夫やら何やらを考えたくなる。
着物に重ねられる上着もあっても良いだろうし、背負い袋に突っ込めるなど、嵩張らない程度の服も良いと思う。
労働以外の金策の手段を尋ねつつ、見かけた服屋の軒先にて足を止める。
出来合いらしい服を取り、尋ねてくる様は、良いねぇとばかりに笑いつつ、他に何かないかと目を遣る。
農村の娘めいた野暮ったいチュニックと巻きスカートの組み合わせが目に入るが、流石にそれは避ける。
ふと、掴んだのは白いブラウスに革色の胴衣、黒灰色のスカート、そして緑色のエプロンといった組み合わせ。
確かディアンドルやら、ダーンドルだかいった名前の衣装だったか。
胸元の起伏が際立った少女なら、似合うのではないか?と思いつつ、此れはどうだ?と示してみよう。
■杜若 > 「うっ…で、では今後は、そのように…」
彼からの進言が正論で少女には言い返すこともできない。
そして少女の価値観に寄り添いながら折衷案を告げる彼に、ついに少女は折れたようで、しばしの葛藤の後、宵越しくらいはできる程度の金くらいは残そうと頷いて見せる。
「その、見せつけながらするのも、嫌いでは…ないですがっ…それはその、興に乗らないとなかなか…」
乙女らしい反応を見せながらも本質は被虐嗜好の持ち主でもあるようで、彼の言葉に貴方が望むのならと満更でもない反応を浮かべて見せる。
しかしモモンガによって頭をはたかれた彼が悪い笑顔を見せていたことからろくでもないことを考えているなと気づき、ぷくっと膨れやっぱりなしです!大っぴらなど言語道断と吐き捨てて見せて。
「…冒険者とは登録がいるものなのですか?某ようわからぬままに依頼をこなしておりました故。…ふむふむ、町娘の流行り…良いですなっ!某酒場に農村、大工作業と町娘らしい仕事もようしております故、憧れますっ!」
男の言葉にきょとんと首をかしげながら、どうも彼女行きつけの情報酒場は非公認の闇ルートからの依頼場らしくなかなかグレーな仕事も多く請け負っていることが計り知れるだろう。
少女が選ぶ服はどこか幼げで顔立ちや背格好はともかく、胸元の大き目な彼女にはアンバランスなものが多く、男に提案された衣服を早速手に取り首下に重ねてみると、なかなかしっくりきたようで早速試着してみますと店主に話しかけている。
■影時 > 「とはいえ、貯める余裕がある仕事であるかどうか――にもよるか」
だが、常に己の言が正しいとも言えない。
それは路銀含め、自由になる金銭を贖える手段、手立てが如何ほどの収入を約束するか、にもよるのだ。
当座の生活費を差し引いた場合、残るものがあまりに少なかった場合、まさに宵越しの何とやら、にもなるのだろう。
今の己自身の生計が、どれほどの余裕、自由の余地を有しているかを雇い主に感謝すべきだ。
そのうえで、少女の武力に見合った仕事を思うなら、収入に余裕が生じる余地はきっと大いにあると思われる。
「……――っ、ははッ。ああ、うん。往来じゃナシでいい。
大事なものは、ちゃんとな。余人から見えねぇようにヤるのが一番良い」
男は忍者である。それも腕利きだ。
その奥義を凝らせば周囲から見えない、そこに居ないように見せかけつつ、事を成すのも不可能ではない。
つまりは大通りで少女の身体を貫きながら、裸同然の姿で闊歩するという不条理もなせうる。
そこまでやれるとは言わずに心に秘め置きつつ、ぷくーと膨れるさまに呵々と笑い、肩を震わせる。
空いた手を伸ばし、向こうの頭を宥めるようにそっと撫でてみようとしてみれば、小動物達が顔を見合わせて溜息してみせて。
「だいたいの連中は登録してる筈だがな。面倒だが、信が置ける場所を介して請けることで、信用が保たれる。
……帰りにでも俺が属しているギルドに行くか。
俺と徒党を組む扱いならば、実績を積めばそのうち骨のある依頼も受けられるようになるだろう。
気に召してくれるなら、有難い。奥で試着してくるといい」
裏社会に近い経路の依頼のルートも知ってはいるが、裏取りも含めてアンダーグラウンドらしく、何かと厄介だ。
良いように使われていないだろうか、という懸念をその言葉で一層に抱きつつ、示したものに興味を抱いてくれるさまにほっとする。
早速と試着を申し出れば、店主も機嫌よく了承の意を示し、近場の試着室まで案内する。
気に入ったなら、その場で履物も含め用意し、最終的に問題なければ会計まで直ぐに至るだろう。
その場で着ていく、という選択もあれば、今までの着衣もきちんと包んで荷物にしてくれるのも含め、良い店に違いない。
他に見るものがあるか等、色々と話し込みつつ、気づけば夕刻まで一気に時が進んだことだろう――。
■杜若 > 「むぅ…影時殿、からかいすぎにございまする…某だんだん腹が立ってまいりましたっ」
彼の実力は知っているのだが、それが性方面にも応用できることは知らない少女は腹実のある言い方と悪い表情にまたよからぬことを考えているのであろうことはわかったようである。
そして膨れる少女を笑う彼にもう知りませぬ!とそっぽを向きながらも頭を撫でられると払いのけようとはせずに受け入れて、もっと撫でろとばかりに肩にポンっと頭を寄せた。
腹が立つとは言うのは言葉の綾のようである。
「ふむふむ、ギルド、ですか…そうですね!ゆくゆくは某、龍や魔王なんかとも手合せしてみとうございます故、しっかりとした母体の組織に与するのは妙案ですなっ!」
男の思案通り、かなり格安で使われているらしい少女は帰り道にギルドによってからその待遇の良さに驚くのであろう。
店主の了承を得て試着室に入った後、しばらく着こなしに苦戦しながらもそのカーテンが開かれると嬉しそうに顔を綻ばせながらくるくると回って男に服を見せびらかし、そして愛おしそうに見つめる少女の姿。
その服に見合った靴も一緒に見繕い、着なれた着物をまとめてもらいルンルンと意気揚々男に並んで町を散策し、ショッピングや何気ない会話を楽しみながら一日が過ぎていった…
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から杜若さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から影時さんが去りました。