2023/10/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者酒場」に杜若さんが現れました。
■杜若 > 「わっはっは!皆さん!今日は吞んでください!あっぱれ、あっぱれです!」
冒険者酒場の隅の方、3席ほどを貸し切った団体の中心で豪快に笑う少女。樽ジョッキを煽り酒を一気に飲み干すと歓声を挙げる男衆たちに発破をかけるように乾杯の音頭を挙げて酒の席を盛り上げる。
少女たちの一行は冒険者の集まりで、複数パーティで共同作戦を行い王都近くの村を困らせていた巨大な魔猪の討伐に成功し、その祝賀会を開いているようだ。テーブルには自分たちが仕留めた魔猪の肉や、村人たちの感謝の気持ちとして贈られた野菜をふんだんに使った料理が並べられている。彼女たちだけでは食べきれないそれらの料理は他客のテーブルにもサービスとして配られていく。
「さあ皆さん!宵越しの銭は持たないのが粋というもの!今日は腹がはちきれるまで食って飲んで騒ぎましょうぞ!」
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者酒場」に影時さんが現れました。
■影時 > 仕事を終えた後、一眠りしていれば――こんな時間だ。
そういうものだ。朝とも昼ともつかぬ迷宮の探索に従事していれば、嫌でも疲れる。疲弊が募る。
迷宮から脱出した後、冒険者ギルドに一路走って報告し、宿に戻れば昼間。
宿部屋の同居人にして子分である小動物二匹の餌と、水の取り換えをしたら、駄目だった。
仮眠のつもりでいても、目が覚めれば夜というのは鍛えが鈍っているのか否か。
否、それはきっと腹が空いていたのだろう。
次の仕事と幾つかの手続きも兼ねて、ギルドに立ち寄り、そうしてその後に酒場の方に向かい――、
「――おうおう、景気が良いねェ。俺もあり付いて良いのかね?」
何やら酒宴めいた様相の片隅にて、振る舞われている料理にありつくことにした。
流石に酒は自前。麦酒に蒸留酒を纏めて頼む。
それらが来るのを待ちつつ、貸し切り席の近くの卓に陣取り、団体の中心らしき少女の方に声をかけてみよう。
呼び声に振り向き、顔を見遣れば似たような装いと壁に得物を立てかけた男の姿が見えるだろうか。
■杜若 > 「ほらほら、皆さん情けないですぞ!おなごに飲み負けるは男の名折れ!ささ!もっと飲みましょう!」
まだ年端もいかない見た目のわりに、少女はかなりの酒豪らしい。
酔狂で始まった冒険者たちとの飲み比べではまるで水を煽るかのように次々に運ばれてきた樽ジョッキを空にしていく。
挑戦者たちは一人、また一人と降参していき、その中心でただ一人少女だけが麦酒を一気飲みしながら豪快に笑っている。
少し宴席の雰囲気が落ち着き始めると、料理をさらに盛り付けて席の中心から離れ、酒ばかり注ぎこんだ空きっ腹に肉を流し込み始めた。
少女が男から話しかけられたのはそんなタイミングだった。
「む?もちろんですとも!歓迎いたしますぞ!…ややっ?もしや、そなた…!」
そこに立っていたのは懐かしい故郷のものと似た、それでいて少しだけ異なる装いと得物を持った男。
少女は興味深そうに男を観察し、そしてはっと閃いたように目を輝かせる。
少女が幼いころより憧れた伝説の戦闘集団「ニンジャ」であると察したのだろう。自分の隣の椅子を引くとバンバンと叩いて貴方を歓迎し、貴方の許可も取らずにウエイターに彼との相席を告げて駆け寄り、華奢な見た目からは想像もできないほどの腕力で強引に自分の元へと彼を誘って。
「どうぞこちらへ!そなたにはきっと積もる話が山ほどございますゆえ!これも何かのめぐりあわせ!酒も料理もすべて某が持ちますゆえどうぞこちらへ!」
■影時 > こういう場所は、人間観察に有用だ。
場所が違えば当然ながら見えてくる内容も、聞こえてくる内容も違う。
玉石混交かつ多種多様な会話に耳を傾けているだけでも、此れは此れで面白い。
どこそこの人物が愛想が悪い、怪しいといった話から、最近流行の店まで、色々だ。
冒険者相手の酒場もまた然り。
今、現在進行形で見かける祝杯の席も鎮魂の席も、遠目からすれば考えを巡らせる要素に事欠かない。
遅れて運ばれてくるジョッキを受け取り、どーもと会釈しながらウェイトレスを見送ろう。
グイと煽りながら眺め遣る風景は、やはり件の少女が中心のように思える。
如何にも年若いにも拘らず、よく飲む。よく笑う。
「有難てぇ、や、と……お、おおおおう!?」
分け前、サービスとして振る舞われていたものに在りつくにあたり、声をかければ何やら所があったか。
駆け寄っては何やらぐいぐいと、引っ張り始め出すさまに慌てて腰を浮かす。
一瞬踏ん張って、持参した得物を掴み取りつつ、ジョッキと一緒に勧められた隣席に収まろうか。
「積もる話――、ねェ。色々耳聡いのは良いこととは云え、良いのかね?俺は結構呑むぞ?」
ジョッキを置き、そして卓に刀を立てかけて。
奢ると宣う少女の方を見遣りつつ、人が悪そうに笑って見せようか。
背丈の差だけを見れば、さながら親子のそれのよう。だが、見えざる実力とは恐らく侮れない。
呑み過ぎてよろよろと風に当たろうとする挑戦者たちを横目にしつつ、頼んだ酒が来るのを見る。
どん、と置かれたのは、如何にも高そうな蒸留酒の瓶。酒造を兼業する高名な錬金術師の作である、らしい。
■杜若 > 「ふふふ…宵越しの銭を持って明日を迎えるなど、そんな無粋な真似をすれば里の両親に顔向けができませぬ!それに足りない分は私が皿洗いでもしてコツコツ返しますゆえ何も問題はございませぬ!」
様々な思惑やそれぞれの席にその分だけの物語がある冒険者酒場だが、少女はそんな情報収集の宝庫のような環境を意に介さず、ただのガヤとしか思っていないらしい。
お通夜のような暗い席も、悪事の匂いがするカウンターも、貴方の手を引いてお構いなしに朗らかに通り過ぎると卓について悪い笑顔を見せる貴方にいたずらっ子のような顔で答えながらすでに赤字ですゆえ!とにっかり微笑んで見せる。
ウエイターがそんな彼女を問い詰めることなく呆れた顔でため息をついて通り過ぎていくあたり常習犯なのだろう。
高価そうな酒がテーブルに置かれても美味しいのですか?と目を輝かせて貴方に聞き、そのうんちくを耳にして感心したようにため息をこぼす姿は傍から見れば親子に見えても致し方がないだろう。
「時にそなた…あ、申し遅れました。某は杜若と申しまする。…察するにそなた、かなりの使い手。…先ほどから隙を伺っておりまするが…某の持つどんな手を使っても斬り伏せられる某の姿しか思い浮かびませぬ。単刀直入に聞きまするが、そなた、ニンジャ、なのですかっ?」
先ほど得物を掴むために踏ん張ったところから、貴方の実力を察したのだろう。酒が進むとうずうずしはじめて、一瞬でも気を抜けば不意討ちをかけかねないほどの殺気を貴方に向けており、しかし余りある経験差から自分がどんな卑怯な手を使っても手も足も出ずに切り捨てられるほどの使い手であると察し、そして貴方に斬られ志半ばに散る自分の姿を想像してうっとりと恍惚に浸りながら貴方の素性を突く質問を投げかける。
■影時 > 「そーゆー手合いの奴らには俺も心当たりがあるが、多少は溜めとけ溜めとけ。
うっかり腰のものなど潰しちまった、折っちまった時とか、それこそ目も当てられん――って、駄目じゃねえかよ!?」
朝に帰還し、報告を済ませた仕事は遺跡に潜り、未帰還の冒険者の探索だ。
認識票の破片や破損した装身具程度しか、痕跡が残らなかった者は、まさに絶望的だろう。
手向けの酒でも勤しむかと思っていれば、まさかまさか、想定よりも大きく跳び超えた有様であった。
顔も知らぬ者は、そんな手向けられ方は嫌いということかもしれない。
そんな事情は問われなければ内心に秘めつつ、手を引く相手の応えを聴けば、ついついツッコミを切り返さずにはいられない。
諸々装備が整え、後援者を得ていても堅実を心掛けていれば、大丈夫かよ、と虚空を仰ごう。
ツケ払いは危ないぞ、と。溜息がちに通り過ぎるウェイターの様相に一抹の不安を抱えながら、顔を戻し。
「……カキツバタ、ね。なンかどっかで聞いたようなそうでもねぇような。
そうかぁ?そこまで遣るつもりは無いが、と、いかんいかん。名乗りが遅れたな。
俺は影時、という。でー、あー、……忍びの者かどうか、ねェ」
どう呼ぶか。名乗りを舌の上で吟味し、語感に考えあぐねつつ酒を進める。
ジョッキの酒は最初の一杯として早々に空け、直ぐに封を開けるのは例の蒸留酒。
二人分のグラスを頼めば、そのうちの片方に澄んだ琥珀色の液体を注いで、少女のほうに滑らせよう。
何気ない素振りでありながら、男の物腰には震えも何もない。何もかもを隠し、秘める黒い淵かのよう。
一つ、動けば切って捨てるどころか、忽ちに呑みこんで逃さない。影も何もかも。
「……――忍びの者であったら、どうする?ン?立ち合いたいのか?」
忍びの者であるかどうかは、噂を辿れば隠しようもない。
朝方、冒険者ギルドに報告しに出向いた時の姿も、上着の下は忍び装束であった。
知らぬものであれば動きやすそうな異国の服と思うかもしれないが、さて。
グラスを持ち上げ、希釈せずに喉を焼く酒精を含みつつ、じっと少女を見据える。試すように。あるいは測るように。
■杜若 > 「ふふっ、刀はもののふの魂…一心同体にございます。折れたのならばわが命もそこで散るのみ!腹を切って果てまするゆえ問題はございませぬな!」
はっはっはと豪気に笑いながら本心とも冗談とも計りづらい言葉を返すと、貴方の内心にある弔いの意図を汲んだのか、それともたまたまか、静かに天に盃を掲げて切なそうにニコッと微笑んで見せる。
少女のあまりにも破滅的すぎる思考回路を本気で心配している貴方の言葉に、ツケ飲みは我が里の粋な風習ですゆえ!と少女の破滅的な価値観の元凶に察しの付くような言葉を放つ。
いよいよあんまりおいたが過ぎると娼館に売り払っちゃうからね?と冗談半分、本気半分にウエイターからくぎを刺されてしまう始末である。
「影時殿、ですなっ!…おぉ、その反応、やはりニンジャっ!?痺れまするっ!」
貴方からグラスを滑り渡され、それを煽ると少女から送られる殺気をものともせず少女が動けば即斬り捨てることも厭わない立ち振る舞いをする貴方に目を輝かせて憧憬の眼差しを向ける。
少女を試すような、そして推し量るような冷たい視線。忍び故殺気を隠しながらもなお滲み出る強者の殺気を浴びた少女はぞくっと背筋を震わせて、まるで発情したかのように頬を紅潮させながら貴方の問いかけに口を開く。
「おぉ!影時殿ほどの強者に斬り捨てられて散るももののふの誉!ぜひとも立ち合いたい…と、言いたいところですが…。今の某の実力では影時殿の前では巻き藁と同然。そんな弱者を影時殿に斬らせるわけにはまいりませぬ。某が強くなった暁には、一度、二度刃を交えた後で斬り捨ててくださいませ。」
猪突猛進の少女でも雲泥の差ほどもある実力差はわきまえているようである。強者との手合わせえを何よりも求める彼女にしては珍しく立ち合いの誘いを断ると、その代わりにと本気の殺気を向けて見せてくれと懇願し、失神しかねないほどのその殺気を向けられたならばまるで発情した雌のように恍惚の表情で、死への恐怖を堪能するであろう。
「忍びの者であったらば…そうですなぁ…実は某、幼いころよりニンジャに憧れておりまして…その、ニンジャと話し酒が飲めたらば、それだけでこの宴席は至福のひと時。酒がもっとうまくなりまする!」
■影時 > 「こらこら果てるな散るな。まだ若けぇのに色々勿体無いだろう」
嗚呼、成る程。“そっち”の価値観か。そっちと区分するのは武士、侍の気風、流儀である。
潔い死よりも、忍者は生存を選ぶ。なりふり構わず生きて務めを果たすことを貴ぶ。
何やら察したのか、弔いらしく盃を掲げる仕草に忝いと会釈するも、続く諸々は心配にならざるを得ない。
つまりは家風かぁ……、と虚空を仰ぐ。若いうちから潔過ぎるのも、色々大丈夫だろうか。
「……俺の噂やら行いやら聞き込めば、分かるものは分かろうからな。
無理に否定はせンよ。だが、出来りゃあ声は抑え目に頼む」
忍びとしての素性、技は売り込み材料とせず、依頼の受諾傾向と確実さを以て功績と成している。
それが冒険者として生きるための信頼であるとともに、単独で難易度のある依頼を受けられる所以としている。
得物に立ち振る舞い、そして何より変わった体術やら装いをしていれば、分かるものは皆無ではあるまい。
例えば、己が素性を察する少女がまさにそう。
仮にもし――故郷からの追手やら、本来の意味の同業者であったなら、手段を問わず闇討ちにしていただろう。
だが、殺気に加えてこの反応、まるで憧憬を抱く素振りが声を抑えてくれ、と頼むことを己に選ばせる。
「腕に覚えがない、とまでは云わんがね。が、それなり以上には戦れそうにも見えるが、惜しいコト言うなぁ、お前さん。
斬って捨てるなら、斬りながらも生かしたうえで抱き潰す方が良い」
木剣でもギルドで借りて、訓練場で立ち会えば力量はより明確に測れよう。
だが、今はまだ宴の席でもある。立てかけた得物の柄頭に右手の指を乗せれば、微かに息を詰める。
心中で僅かに鞘走り、覗かせる斬意――とは糸のように細く、そして凍えるように冷たく、少女の肌を粟立てるか否か。
それを呷る酒杯ですぐに押し流しつつ、斬るのは惜しいなあと右手を伸ばす。
おどけるとも本心とも取れる、好色げな面持ちではだけた晒の胸元をつつくように。
「憧れる、ときたか。……そんなに憧れるような手合いかねぇ、あれらは」
そう零しつつ、空になった酒杯を置き、逆の手で瓶を掴む。向こうの酒杯が空になったら注ごうと。
■杜若 > 「むぅ、勿体ないと言われれば…某、おなごの本懐は成し遂げておりませぬし某だって乙女故、この一人や二人は産んでみたいし…刀が折れた程度で腹を切るのは確かに惜しいですなっ!所詮刀など消耗品!そんなものより命が大事!あっはっは!、某真理に気づいてしまいました!」
忍びの価値観と正反対の侍の価値観。潔く散る一見不合理な生き様を心底心配する貴方の言葉が響いたのか、その説得を驚くほどすんなりと受け入れると先ほど魂とまで呼んでいた自分の愛刀を消耗品とまでこき下ろし、貴方とは正反対に豪快に笑って見せる。
「おっと、これは失敬。ニンジャとはこれすなわち忍ぶ者ですものな。内密に内密に…。」
彼の素性を察した少女はただ憧れるだけで忍びを取り巻く環境…例えば里を抜けた者へと送り込まれる追手や他里からの刺客であったりに常々命を狙われる立場にあるということを知らないようだ。彼から声を抑えるようにと言われて小声になるも、納得した理由はどこか的外れであるが聞き分けは良いようである。
「単純な剣技のみで果たし合うならば見せ場もありましょうが、それでは影時殿の全身全霊とはならぬでしょう?某は全力で某を殺しに来た影時殿と刃を交えて散りたい故。もっと修練を積みまする!」
期待に応えるように肌が凍るほどの殺気を放った貴方にあてられた少女の肌は一瞬のうちに恐怖で震え上がり全身を粟立たせる。
しかしそれは一瞬で、貴方が酒でその殺気を洗い流すように飲み込んだ後で軽口を口にしながら右手を胸元に伸ばし、サラシの上から胸元をつつき始めると受け入れるように少女はそっと体を寄せる。
少女自身も満更でもない様子で殺気を当てられた恐怖で高鳴る心臓を整えながら少しだけ紅潮した顔を貴方に向けて空になった酒杯を差し出してお代わりを求める。
「もののふにはない勝つための非情な手段も辞さない冷酷さに面妖な術の数々…かっこよくありませぬか?ニンジャ。…ふふっ、影時殿のような強者に抱き潰されるなんて、おなごの本懐でございますなぁっ…。それに、某は影時殿のような強い殿方、好きですぞ。なんなれば…影時殿が望むならば、子を産んでも良いとさえ思いまする。」
■影時 > 「目つきもそうだが、思うに相当遣れるだろう。
その点も踏まえて思うンなら、早々に果てるのは色々なげやり過ぎンぞ。
あとは、そうだな。……仮に折れたなら、どうにか出来る心当たりがある。入用ならいずれ紹介してやろうか」
若い身の上で、というのもそうだが、侍と乙女の価値観も等しく双方に並ぶなら、潔過ぎるのも危うい。
切れ過ぎる刃と性根は脆い。刀は消耗品には違いないが、消耗品とするには惜しい業物もこの世には色々ある。
……大丈夫だろうか。己が言葉をすんなりと受け入れたのか、得物を消耗品と言葉を巡らせる姿に内心の危うさが拭えない。
念には念を入れて、いずれ知己の鍛冶師も紹介しておくとしよう。そっと吐息を殺しつつ、そう考える。
舶来含め、故郷の品々を見かける機会が最近は多くなっている気がするが、納得できる品があるかどうかが怪しい。
「そう、それもある。加えて、ああ、それとな。
冒険者とは氏素性の誉れより、働きによって身を立てなきゃならねェもの、でもある。分かるだろう?」
抜けた里も遠い国まではるばる、追手を差し向ける気にはなるまい。
否、それとも暴れすぎて恨みをこじらせた元同業者やら何やらの心配も、ない、とは言えない。在り得ないとも言えない。
専心すれば、耳目は考える以上に効くものが意外とこの界隈は多い。
やや的外れとはいえ、聞き分けてくれる姿には助かる、と頷き。
「それは詰まり、嗚呼。……本気を出せ、と。お前さんは云うか。――地形が変わるぞ?」
剣技のみで果たし合うことも、出来る。己が剣腕はどこそこの道場に入門し、学び得た技も多くある。
そればかりでは足らず、足りず、余さず纏めての全身全霊をと欲するなら――事と次第によっては、地形が変わりかねない。
軽口でも何でもなく、持ち上げる盃で唇を隠しつつ、ぽつ、と零そう。
向け遣った胸元は押さえているのがもったいない位、豊かで柔らかそうだ。そんな感想を抱きつつ、身を寄せる姿を見やる。
酒の酔いばかりではなさそうな火照りを顔に認めつつ、出された酒杯にまた一杯。注ぐ。
「そンな風に言ってくる奴は、お前さんが初めてだよ杜若。
それはどうせなら、技量の欠片位拝んでくれてから言って欲しいが、……だが、好きな方だな。色々と」
気が早くねえかねぇ、と笑いつつ、酒を呷り、肉を齧り。少しは手持ちの銭を出しつつ、杯を重ねよう。
子供を、と言われると、目を丸くしてくつくつと肩を揺らす。満更ではないが、悩ましい処でもある。
そんな言葉を交わしつつ、どちらが満腹するか、酔いつぶれるかどうかは――また、別のは話にて。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者酒場」から杜若さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者酒場」から影時さんが去りました。