2023/09/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にスルーシャさんが現れました。
スルーシャ > 大通り。

夏の暑さが和らぎ始めてから人通りも多くなってきた頃。
王都に紛れ込む魔族もまたその雑踏の中を歩いていく。

昔から王国内はなんらかの加護により魔族は真の力を発揮できない。
それでも、既に国内に紛れ込む者達もいる。自分もまたその一人。

だが他の大多数の魔族と決定的に違うことは、進んで目立つこと、危険に飛び込むことはしないこと。

気配を隠す、力を隠す、妨害行為や視覚的な被害は表立って及ぼさない。
学院にも、王城にも、人間を侮らず、訳知り顔で足を踏み入れることはしない。


そんなことをしなくても、優秀な”奴隷の素材”は王都に集まってくるし、
尖兵となった者に調査をさせれば良い。

今日も冒険者を装って街を歩き、変化を感じ取り、偽善をまとって困っている者に声をかけよう。
もしくは素材として上々であれば接触しよう。

心の奥底に煮える欲望を引きずり出し、歪め、己への忠誠を根付かせて、
自分に従順なペットを作り出す為に

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアンジェラさんが現れました。
アンジェラ > 「はい、これからもよろしくお願いします。」

大通り。規模の大きい商店から出てくる少女。
ペコペコと頭を下げる商人の対応から、それなりに階級が上と感じさせるかもしれない。
しかし、若輩なので…と苦笑して手を振って応対を終了させた。
少女に、というよりは家名にヘコヘコしているような物だろう。
それはそれで家業の手伝いなのだから構わないのだが。

さて、という風に踵を返して通りを歩いて行く。
どうしようかな。食事にするか。どこかで休憩でもするか。
雑踏に紛れる魔族には特に気づく様子もなく。
通りを歩く人の目に留まるかどうか、だが……?

スルーシャ > 「……へえ……。」

 ふと目に止まる原石。否、己の手で粗くとも磨かれている。
 粗い、のはあくまで己の目からのこと。周囲からすれば眩いほどの輝きを既に伴い、
 そしてそれなりの身分の者であろうことは身なりの良い商人……、
 その磨かれた至宝が出てきた店から見送る者の対応からも伺えて。

 やがて、狙いを定め、ゆっくりと雑踏の中で後を追い、徐々に距離を詰めていく。

「貴女。ねえ、そこの貴女。」

 ある程度歩いたところで声をかける。
 振り向けば顔立ちの整った者、人間に擬態した者の身なりは冒険者の如く動きやすいものだが、
 あしらわれた意匠や身に着けている装飾品、焦ることのない振舞いや緩やかな雰囲気が、
 下々の元へ降り立ったそれなりの身分を思わせる女。

 ともすれば、貴女からすれば『平民達が行き交う中で同じ気位の者を見つけて声をかけた』くらいの雰囲気だろうか。

「少し暇を持て余してしまって。平民に紛れて遊んではいるのだけれど、
 やはりなれないものね。よかったらご一緒してくださらない?」

アンジェラ > 雑踏に紛れて歩いて行く。
多少紛れたとは言えまだまだ暑いと言えば暑い。
どこかのカフェか酒場にでも寄って冷たい物でも頼もうかな、と考えながら。
狙われているとは露も知らず、そのまま歩いていけば…。

「…?」

かけられた声に振り返る。
自分にかけられた声かどうかはわからなかったが、声の主を探して。
見れば貴族らしき雰囲気の女性が声をかけてきていた。
視線はまっすぐにこちらを。整った顔立ちからは気品がうかがえる。

「はい、何か…?」

しかし、こちらも然程驚いた様子はない。
貴人に声をかけられるのに慣れた様子。パーティなどももちろん経験があるのだから、当然の事ではあった。
どうしようかな、と一瞬だけ考える。さして感じさせてはいないが、少しは困っているのかもしれない。

「…ええと、かまいませんよ。
どこか、行きたい所などありますか?」

と、朗らかに笑って答える。特に警戒した様子もないだろう。
…その女性には美味しい獲物に見えたかもしれないが。

スルーシャ > 美味しいどころではない。所作振舞いにも品がある。若く、活力に満ちている。

人の中では上の中、ともすれば顔立ちなど単独の評価であれば本来はまだ低い評価かもしれない。
総合性。奴隷商人として、上質な品を厳選した感が、自分の審美眼以上の何かを秘めていることさえ感じさせる。

まるで良く装飾された宝箱のような印象を抱いていて、中身を確かめたい衝動に駆られてしまう。

「ふふ。人が良いのね。一般区画で見知らぬ顔に声をかけられたというのに。
 そうね、ゆっくりと出来るところが良いかしら。

 貴女とは”仲良くなれそう”だから、少しお話ししたくて」

 言葉の端に呪詛を織り込む。認識をこちらに傾ける。好印象を抱かせる呪詛。
 それを、徐々に、徐々に、小さく、言葉にいくつも織り込んでいく。

「私はスルーシャ。良ければ貴女のお名前を聞かせて?」

 歩み寄りながら、目の前で緩やかな着衣では隠しきれぬほどの豊かな胸が弾む。
 ……それは、貴女の秘められた欲求を刺激するだろうか。

「貴女は普段どんなことをしているの? 私に”貴女のことを”色々と教えて”頂戴”」

 心を引きずり込む、呪詛を紡いで

アンジェラ > ゆっくりできる所、と聞いて思いつくのはやはり座れる場所だろうか。
こういう人を品の無い酒場には連れていけないなぁ…と感じながら、
それじゃあ、という風にして歩き始める。

「あはは。そうですか? 第一印象って所ですか…。
私、ちょっと遊んでる風に見えるらしいから、貴女みたいに綺麗で瀟洒な方と釣り合うでしょうか。」

仲良くなれそう、との言葉を真に受けて少し照れた様子。
それでも少しうれしそうな様子は隠せない。
言葉の呪詛は徐々に浸食し、じわりと思考を誘導されていくだろう。
歩み寄る姿と、豊かな胸元。一瞬だけ目を奪われてしまう。
そこに告げられた言葉に、ふっと、一瞬意識が遠くなったような気がする。

「…あ、え。あ…その、家業の手伝いを。」

言葉はきちんと返すものの、少し不安定。
するりと自分の秘密を喋ってしまいそうになり、効果が覿面な事が見て取れるだろう。
精神的な防壁は、無いに等しい。

スルーシャ > 「見えるらしい、ってことは、実際はそうじゃないのね。
 もっと自分が楽しめるように遊んでもいいと思うけれど。

 でも、それを言えば私のほうが、かしら。貴女がそう言ってくれるのは嬉しいけれど、
 私、体を動かすのが好きなのよ。」

 それに、と柔和な笑みを浮かべて。

「貴女は自分に自信がないだけなのかしら。むしろ私の方が見劣りしてしまうかと思っているくらいなのだけれど」

 貴女を肯定する、貴女を見ている者の唇が濡れて、蠢いて。

「それにしても人が多いわね。涼しくなってきたからかしら」

 そう言って視線を誘導するように周囲を見渡し、後ろを振り向く。
 その中で、まるではぐれないようにとでもいうように、腰に腕を回してくれば、
 甘い香りが漂ってくるだろう。

「家業の? ……商人の方かしら。色々な人と知り合いなのかしら。
 貴女のことを”友達の私に貴女のことをもっと”教えて”頂戴”?」

 視線が己の胸に奪われたことを見逃さない。ともすれば、と思い、呪詛を重ねた上で

「……この辺りで、外に音が漏れなくて、二人きりでゆっくりできる場所はあるかしら」

 囁いて。誘いをかけて。身を寄せて。口説いているのだと。
 友達に向けて薄暗い感情を煽るように

アンジェラ > 「少し意外ですね。…あ、でも外出してるって事はそうなのかな。
結構貴族の女性って家の中にずっといますから…。」

歩みを進めながら、不意に腰に回される腕に一瞬驚いて。
隣に並びながら、微かに照れた様子を見せるだろう。

「あ…いえ。スルーシャさん、すごく、綺麗で。」

濡れた唇に視線をとられる。
漂ってくる甘い香りに、形の良い鼻が擽られる。
徐々に瞼がとろんと蕩けていく様子が見て取れるだろう。

「そう…ですね。知り合いは…そう、それなりに多いと…。」

はぁ、と空気よりも熱い吐息。
簡単に欲望を刺激されて、腰のあたりが熱くなってくる。
ぐるぐると情欲が脳内に渦巻いて、思考が停止していく。

「あ…あり、ます。近くの…宿が。」

魔性の言葉に操られるまま、近くにある宿を示す。
カップルご用達、のような場所だ。日中からそれなりに人が出入りしており、酒や食事も提供されているだろう。

スルーシャ > 「家の中で大人しくしていたら刺激的なことも、新しい出会いもないわ。
 ……こうして、貴女と出会えることもなかった。」

 貴女を見せつけるように、女は腰に腕を回したまま背を伸ばして歩く。
 二人だけの世界に浸っているわけでもない。それほど視野が狭い訳でもない。

 貴女を術中に堕とす為の世界の構築。それは相手を篭絡する手管に沿ったもので、
 元来人をたらし込む所作だからこそ魔力の検知も、消費も少ない。
 着衣越しとはいえ、直接触れて魔力を流し込めば尚のこと。

 貴女と言う強く咲く華に近づいた綺麗な毒虫は確実に牙を突き立てる。

「貴女も綺麗よ……。貴女のこと、名前で呼びたいわ……。
 名前を教えて……、貴女の全てを教えて……。」

 術中に堕ちて思考が淀んでいく様を仕草に見れば、支えるように更に体を引き寄せて。

「……今度二人でその知り合いに沢山会いましょう。
 その為に、二人きりでもっと仲良くならないと……。」

 どろりと脳髄を溶かすような甘い声色で友達の心を引き寄せていく。
 もはや友達に向けるものではない情欲を煽り立てる呪詛で昂らせ、
 ……何かの香りに鼻をひくつかせるかもしれない。

「お酒、飲みながらする?」

 もはや、会話など建前だろうと、貴女に確認を取るように宿へと向かうだろう

アンジェラ > 【移動します。】
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアンジェラさんが去りました。
スルーシャ > 【移動します】
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からスルーシャさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「――どー…しよう……」

 平民地区、夜を徹して賑わいを見せる繁華街は今夜も盛況で喧騒に溢れているが。
 それから数ブロック外れただけで人気も少なく、これといった店舗もなく喧噪も遠くじんわりと響くばかりで比較的落ち着いていた。店舗よりも民家が多く、不人気な立地なのか空き物件もいくつか混ざっていて。
 そんな空き家の 屋 根 の 上 で茫然と呟く女と、その真下で吠えている野良犬――

 大の苦手とする犬に追い掛けられて、無我夢中で走り回り気が付いたら平屋建ての空き家の屋根にまで上っていた。
 一体どうやって上ったのか必死過ぎてまったく思い出せない。
 我に返るとそんなところに突っ立っていた。
 犬も到底上れやしないだろうが、しつこく真下でワンワン吠えたてていて。
 屋根の上、腰を屈めて蹲るような体勢でそれを見下ろしながら、顔を全力でしかめ。

「……ちょっとー……あんたどうしてくれるのよぅ……。
 降りられないじゃないよー……」

 吠えられるとちょっと怖くてびくびくするが、ここは絶対に奴の牙が届かない距離。
 情けなく力ない声音でぼそぼそと文句を投げ落とした。

ティアフェル >  そのまましばらく、恐々屋根から見下ろす女とぎゃんぎゃんと聴いているだけで嫌になるような吠え声が響くばかりであったが、いつまで経っても降りてくる気配のない様子に、犬の方がさすがに根負けしたらしく、最後に忌々しそうに大きく吠えて背を向け去って行った。

「~~はあぁ~~……やぁっと行った……」

 半時以上はそうしていたか。やれやれと肩を落として深々と息を吐き出し、これでようやく屋根から降りられる……と下を覗き込んだが。

「………あれ……? 一体これ、わたしどうやって昇ったの……?」

 屋根の上までどうやって昇っていたのかまったく記憶にない。よくよく見れば足場になりそうなものなどない。火事場の馬鹿力でも発揮してしまったのだろうか。
 そもそも基本的に昇るより降りる方が危険なものだ。

「う、う~ん……ジャンプで行ける、かな……? いや……厳しいか……」

 しかし、いつまでも一人で空き家の屋根の上にいればその内不審人物として認知されてしまいそうだ。この事態から速やかな脱却を図らねば……頭を悩ませながら足場を探し、

「よい……しょ、と……ととっ……」

 華麗に跳躍、なんて無謀な真似はできず、屋根の縁に手をかけて足を壁面にかけて降りようと試みるが。

「――っ、きゃ……!?」

 べき、と足を掛けた壁面が劣化していたのか容易く割れてしまい、ぶらーん、と屋根の縁に手をかけたまま宙ぶらりん状態。

「ぅぅわあぁ~……どーしよ……」

 這い上がるのも難しく、そのまま降りようにも下には割れた窓ガラスの破片が散っていたり、古釘の刺さった材木が散乱していたりと、どうにも状態が悪い。

 ぶらーん、ぶらーん、と時折左右に揺れるミノムシ状態で途方に暮れる哀しいひと時。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクロスさんが現れました。
クロス > (ギルドの依頼を終えて少し寛ごうと、ここ平民地区の繁華街にやってきた。
普段は貧民地区で暮らしているクロスからすれば、平民地区は富裕地区と何ら変わらない娯楽場と化していた。
手始めに酒で喉の渇きを潤した。
年季が入り、鼻の奥をくすぐるようないい香りを漂わせるブランデーを味わい、新鮮で干したばかりの魚の燻製を摘まみに夜を過ごす。)

「…いい夜だ…。」

(普段は無表情に鋭い目をした不愛想な顔だが、その日だけは少しだけほころんでいた。
そして、そろそろ帰宅するかと思い人込みの少ない道を歩けば遠くから野犬の騒ぎ声が聞こえた。
酔っ払いでも追いかけているのか無視しようにもその後に何とも言えない悲惨な結果になっていそうだと脳裏をよぎった。)

「ハァ…めんどくせぇ…。」

(面倒ごとは御免。
だが、耳に目に入ってしまえば関わってしまう、そんな性格であり、黙って声のなる方へ向かう。)

「・・・・・・・・・。
何してんだ?あんた…。」

(近づくにつれて犬の鳴き声は消え、収まったかと思えば今度は大きな音が鳴り、さらに音が鳴っていたところへ向かえばぶら下がる少女の姿。
酔っ払いではなかったことと、近付いたは良いものの、予想外の出来事にあきれるような目線でその少女を見ていたのだった。)

ティアフェル > 「…………」

 ぶら下がったまま、ちら、と改めて着地予想地点を見下ろす。

「痛そう……絶対痛い……痛いしかない……」

 怪我をしてもいくら自力で治せるとしても、痛いと判っていることはしたくない。極力嫌だ。どうにかあの割れ砕けて散らばり、夜光にきらきら輝くガラス片の上にだけは落下したくない。
 しかしいつまでもぶら下がってもいられない……自重を支える腕が限界だ。
 ぷるぷると震えながらこの状況を打破する策も思い浮かばず、素直になるべくダメージが少ない様に落ちる…という決断を下せずにしばし廃屋の屋根でぶらぶらと虚しく揺れる女。

 その時。

「っへあ!?」

 壁に向かう形でぶら下がっていたので、ちょうど背後になっている通行人……つまり、闇に同化しそうな黒づくめの男性の姿を見えていなければ気配にも気づいておらず。
 不意に背後からかかる声に、驚愕した妙な声を飛び出させて。
 驚いたその弾みで、

「っきゃー!!」

 ずる、とつかまっていた屋根の縁から手を滑らせてそのまま。ガラス片キラキラ、木片に突き立った釘の先ギラギラ。物騒なそれらが散乱する地べたへ向けて垂直落下していくのだった。

クロス > (黒い服装に革ジャン、そして、長く伸びている後ろ髪にミレー特有の耳と尻尾。
隠さずに露わにしながら歩く黒狼のミレーの男は体格のせいか、まるで光のせいで伸びる影の様にも見える。
そんな恰好をすれば、後ろから近付いても気付かれにくく、大概の人が影が独りでに歩いていると錯覚するだろう。)

「・・・。」

(そんな驚かせ方のせいか、目の前にぶら下がる少女は妙な叫びを発しながら手を離してしまう。
足元にはガラス片に釘が散乱している。
大抵の人ならば慌てて手を出すがクロスはそんな様子を見せなかった。
だが、自業自得だと片付けるほど人でなしでない上に、こういった物を見てしまうと『面倒くさい』と感じて動いてしまうのだった。)

(少女が手を離し落ちるその直後、クロスも動き出していた。
まるで獲物を見つけた獣の様な俊敏な動きで少女の腰と背中に手を添えた。
そして、目の前の壁に足をくっつけてはバネの様に体を縮こまって後ろへと飛ぶのであった。
威力のせいで壁は粉砕され、吹っ飛んだ二人はふわっと着地し、大事には至らなかった。)

「驚いてんじゃねぇよ…。
体やら生気目当ての魔族が、やすやすと『何してんだ?』なんて言うか?」

(心配したり、少女の様子を見るような発言よりも先に先ほどの驚いたことへの説教じみた冗談を放ったのだった。
じろりと鋭い目線の目で見ながらもゆっくりと地面へと少女を下ろすのであった。)

ティアフェル >  もう駄目だ、切れる、裂ける、刺さる……。
 古釘ガラス片。衣服を貫通して肌を傷つけるそれらへと成す術もなく直下していく自分の身体に0.3秒ほどで覚悟が決まった。
 決まったけど恐い!
 
 落下していくほんの僅かな刹那で思考は目まぐるしく回る。
 そして、地べたに叩きつけられて血みどろになる暗澹たる未来予測は――

「―――っっ!!」

 覆された。
 瞬発的に跳ね飛んでくるような俊足で落下途中の己の体躯を受け止める両手。
 どさ、とその腕の中にナイスキャッチしていただいて横抱きにされるように支えられたかと思えば。

「ひわっ…!」

 抱えたまま脆くなった壁を蹴飛ばすようにして後退するしなやかな長躯。
 目の前で割れ砕ける廃屋の壁に一瞬何が起こったのか解らず目を瞠って短い悲鳴を上げ。

「………っっ……、っふ、っは。は……っ?
 え、えっ……? あ、あーっ…! あれっ!? く、クロ、ス……さ、ん、だっけ……?
 あの、えと、ありがとうっ、助かった……その、憶えてる……? 前に教会で、会った人、だよね……?」

 目の玉が飛び出るような顔を晒していたのだが。彼の説教は耳に入っていたものの。驚くな?いや、無理無理無理。
 ともかく、無傷だ。彼に助けられたらしい。
 そして薄い夜光の中その容貌を確認すると、特徴的なまでの長身、そして頭頂部から生えた耳。尻尾の所在は位置的に確認出来ていないが、以前お目にかかった人物のようで。
 こちらのことを覚えていないかも知れないが、地面に降ろしていただき、爪先から降り立って小首を傾ぐのだったが。

クロス > 「あ…?」

(こちらの名前を呼ぶ少女に疑問を持った。
クロスも思い返す、貧民地区の依頼人、ギルドの関係者、娼館や夜の相手…どれも思いつかないっと思っていたが、一つ心当たりがあったのを思い出す。
いつしか、安酒を飲むために軽い依頼を受けようと教会の掃除のアルバイトをしたときにやけにハイテンションな少女が居たような…っと)

「…あぁ、嬢ちゃん…確か…
…騒がしいネクロマンサーの嬢ちゃんだったか…?」

(飛んでもないワードを出しながらも思い出したかのようなことを言うクロス。
確か、教会の中でそんな話をしたようなうろ覚えな記憶を頼りに発言した。)

「悪いな…仕事関係と夜の相手以外じゃ、ちと思い出せないもんでよ…。」

(クロスの日常はほとんどが仕事と色事。
それに関わらない日常の中では記憶が薄く、ほとんどは覚えていない。
だが、それっぽい雰囲気や空間だけは覚えているために完全に忘れているわけではなかったのだ。)

ティアフェル > 「ネクロマンサー!? なんたる憶え方!? そんな!?わたしの印象そんな!?
 待って、ちょいマジで待って! 覚え直して! あと名前すら記憶の彼方かよ、もう名乗らん、絶対に名乗らん! わたしは拗ねた!」

 教会で床をごしごしともに磨きまくった……ある意味一時の仕事仲間であったが。
 めっちゃ記憶に怪しいらしい。よし、拗ねよう、と助けてもらったばかりで早速拗ねた。
 ぶーと不服気に頬を膨らませて、アホ毛をぶんぶんと怒ったように左右に揺らし。

「仕事関係だって憶えてないじゃないよ、あなたとの縁は教会掃除!些少なりともギャラが発生した限り仕事でしょうよっ。
 もしやボランティアのつもりだったの? だったらギャラの件はしらばっくれて置けばよかったのかと悪魔の心が囁くわ」

 みみっちい悪魔もいたもんであるが、日常とは云え払うもの払って熟してもらった労働なのだから仕事、である。
 余りにしょぼい仕事だったので記憶に薄いのは判らないでもないが。
 わたし憶えてたもん、と膨れ面。

クロス > 「(なんだこいつ)」

(思わず心の声と口からの声がリンクして発言されてしまった。
助けたことを仇で返すことについてはどうでも良かったが、覚えていないだけでここまでの態度。
確かにネクロマンサーではなかったような気もするが、流石に失言だったかと思われた。
こういう場合なら素直に謝るのがセオリーと言うものだが)

「…プックック…。」

(クロスは思わず吹き出して笑ってしまった。
多少なりとも申し訳なさはあるが、だが、このテンションと言い言い回しと良いがあまりにも面白く感じてしまった。
普段接するのがどこか人間性を失った娼婦と欲まみれの客人。
こんなコメディアンの様な喋る相手なんて早々で合わないのだから、逆に新鮮である。)

「悪かったよ嬢ちゃん…。
確かに、あの時は酒を飲むだけの金が欲しかったから手伝ったつもりだが立派な仕事だったな?
すまねぇ、期限直しに一杯やるか?」

(暗い民家よりも昼間の様に明るい繁華街を指さす。
こうなってしまっては機嫌を取るしかない。
酒でも飯でも挟んで少女の期限を直そうと考えていたのだった。)