2023/08/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にセカンドさんが現れました。
セカンド > 「……はぁ? リゾートに出店ん~~~?」

普段は魚が死んだような顔と目をしている黒髪眼鏡の女が、珍しく素っ頓狂な声をあげてのたまう。
話しかけたのはウェイトレスの一人。近頃話題のリゾート地に一枚噛んだりはしないのか、という純粋な疑問を店長にぶつけたようだ。
カウンターに座りスタウトを呷っていた銀髪の男は軽く肩を竦めるとかぶりを振り、二人のやりとりを面白そうに眺める。

「アホ言いなや。あの……なんやっけ、『海の底』やっけ。大店はええで? せやけど、ウチみたいなとこが出店はあかん。
そもそも出店してる間ここの店どないして回すねん。ウチはみんなに『今月は休日なしや』ってよー言わんで。自分休みなしでええか? あかんやろ?
それに屋台借りるにも銭がようけかかるし、移動の費用も馬鹿にならん。人も材料もな? せやかて向こうに泊まるのは本末転倒や。
何より、なんで好き好んで汗水垂らしてレッドオーシャンに飛び込まなあかんねん」

眉を顰め不機嫌さを隠そうともせずに、つらつらと理由をまくしたてる。
実際の所、いかな補助があるといえ店舗一つ程度の中小事業者が手を出したところで火傷するのがオチだ。
いっそ個人事業主ならばバカンス兼用で出店するという考え方もできる。大店ならば多少の赤字は広告費という名の投資と言える。
だが、中途半端な規模ではうまくいかない。住宅街の宿屋兼飲食店が出ていく幕ではなかった。

とはいえ女が否定的な反応を示した本当の理由は、単に空調完備の快適なこの店から出たくないだけだ。
呆れた表情を浮かべたまま、しっしっと接客に戻るよう手でウェイトレスに示すと店内を眺める。
目の前のカウンター席がぽっかりと空いているだけ、本日も商売は順調と言える。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からセカンドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイグナスさんが現れました。