2022/05/10 のログ
ご案内:「あやしいお薬 実験場」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の平民地区。
住宅街や商店街も近い、道行く人々で賑わう通りの一角には、
先日老いた店主を亡くし、老朽化した老舗薬屋を取り潰すこととなっていて、
その店内に残った薬や素材・薬のレシピなどの検分をギルドから任されたのは、
王都をきままに練り歩く小さな薬師だった。

「~~~♪…っふふ、…くくっ…♡ ふふふーんっ……♪
おもしろいお薬、たっくさん持ってたんだね、おじいさん。
っふふ、ちょっとお香にして焚いただけなのに、こーんなにぽかぽか、ふわふわしてきちゃった…!」

と、鼻歌交じりに薬を選り分け、選別し、ギルドへの提出用に一筆添えたラベルを張ったサンプル瓶を次々並べては、
許可を得て自分ようにもサンプルや素材を物色していく。

そんな中で「集中力・身体能力・感覚を増す」という触れ込みの、薬とハーブのお香を試しに焚いてみたら、
体温の上昇と気分の高揚、微量の発汗を促されつつ、むふー!と鼻息荒くも実に集中してこの仕事をこなせるようになっていた。

…一点、想定外なのはこのお香の成分が往来…道行く人々の頭上にまで平然と漏れてしまっていること。
日頃ならばそれに気づくはずのあどけない薬師も、今は「躁」に近い状態なためか、
平然と開け放った窓からその成分と方向を漏らしてしまっていた。

甘酸っぱい果物7割に、
唾液腺を刺激するような焼いた肉汁のような匂いが1割
ほんのりとハーブの清涼な匂いが1割で、
これまた一部の欲求を滾らせるような、
にんにくのようなワイルドな香りが1割の、

あやしい薬のあやしくも魅惑的な香り。

タン・フィール > 老舗薬屋の大掃除に備えて換気のために開け放たれた窓からは、
遠目からすれば炊事の煙かお菓子づくりかのような煙がもうもうと漂い続ける。

「なんだか甘い匂いが…」と、通りがかった見回り兵士や女性、子供などは1~2吸いだったために影響は薄いが、
通りを横切りきった頃には、なんだか闇雲に元気な足取りに不思議がっていることだろう。

その匂いに釣られた道端で寝転んでいた野良猫などには効果てきめんだったのか、
薬屋の役目を終えた庭先で適当な雄雌同士で見繕い合い、交尾を初めてしまう始末。

そんなことになっているのを露とも知らず、幼子は窓を開けっ放しのまま薬屋の一室…
店内のカウンターからすぐ横の、薬の実験室へと移動した。

「マンドラゴラの突然変異に、飛龍の胆石…サキュバスのリンパと胎盤の干物…って…
わぁーっ…!これ、使い道しってたらものすごく高い素材っ…!

…ぇへへ、このへんのはいくつかもらっちゃってもイイって、ギルドのヒトいってたから…!」

素人目には石ころだったり、なにかのゴミや死骸の切れ端のようなレア素材の数々に、
少女のように大きく長いまつげの目をぱちくりと瞬かせて、
早速いくつか、お試しにと薬屋の残したレシピを元に調合してみる。

「えーっと…この干物を、こっちの根っこを煎じたお湯で戻して…っと…」

実験してみたいのは、薬を受けた生き物の生態を思い通りに書き換えてしまう魔法薬。

薬を飲んだ対象に接触し、飲ませたものが強く念じて「命令」すれば、
スライムを硬質化させ、ゴブリンに翼を与え、淫魔すら貞淑に、
さらには枯れ木のような老人を戦士顔負けの肉体にもできるし、
自らの足で出歩くのも困難な肥満の紳士や婦人を赤子同然まで縮めることも容易なもの。

慎重にならねばならないはずのその薬の実験は、半ば酔っ払いのようなテンションの幼子薬師の手で、
実に適当に…かつ、効果は悪い意味で抜群の、
薬の出来栄えにランク付けをするならば頂点かそれに継ぐ最良品質の「原液」が出来上がってしまう。

仮に王都の井戸水や水道に混ぜれば、強烈な毒を撒くに等しい大罪となるであろう危険な薬瓶が、ひとつ、ふたつ…。

タン・フィール > 普段、幼子薬師がこさえない種類の薬効は、その精神まで蝕んで変容させているのだろうか、
すっかり上気した頬、舌なめずりを絶え間なく行う唇。
妖しく細待っている目は艷やかに潤んでいて、
この極上の「イタズラ」の元を、どのようにして使ってやろうかということで頭がいっぱい。

4本、胡椒瓶のような小ささの薬瓶を最終的に生成すると、
それをひょいひょいと道化師顔負けの手先の器用さで、お手玉のようにジャグリング。

「……そーだっ…ひとつは、ギルドの人たちにあげちゃおう…♪
…ここで知った、新しいお薬だもん、ちゃあんと実物で、報告しなkyっちゃだしね…。

…もし、お試しで使っちゃったら、どんなことになるかは…しーらない…♪」

くつくつと鈴のような声で微笑、すっかり魔性を呼び起こされた幼子は欲望のままに、
さながらインプや悪戯な妖精の類の如く、王都で目を引いた誰かに、なにかに、イタズラをしかけようと夢想に耽っていた。

ご案内:「あやしいお薬 実験場」からタン・フィールさんが去りました。