2022/05/01 のログ
ご案内:「氷の居城(過激描写注意)」にマリエラさんが現れました。
■マリエラ > 死の沈黙が暗い帳を降ろす、蒼き氷の城と呼ばれる城館の最上階。
蒼白く凍てつく灯火が淡く照らし出す玉座の間に、独り、佇む娘の姿が在った。
長く裾を引き摺る代わりの様、しどけなく胸元のあいた白いレースの夜着を纏い、
目の高さに捧げ持った水晶球を、氷の眼差しがゆるりと眺め遣る。
蒼い――――――否、僅かに紫がかった其れを、暫し眺めた後に。
細い溜め息と共に、娘は掌を翻し――――――
静寂を切り裂く、高く澄んだ音。
娘の足許で、水晶球は粉々に砕け、しゅわりと溶けて霧散した。
其の様子を興味無さげに見下ろして、娘はまた、ひとつ息を吐く。
「つまらないわ、……こんなに簡単に、壊れてしまうなんて」
水晶のなかには、かつて、美しい少女が居た。
少なくとも、美しいと評判の高かった娘が。
けれどこうして閉じ込めて、眺めて、甚振って――――――壊してしまえば。
何ひとつ残らない、もう、顔も忘れてしまった。
虚しいこと、と呟く唇から零れるのは、微かに白い吐息。
■マリエラ > 「――――――――――――あら」
ふ、と、気づく。
左手の人差し指、伸ばした其の内側に走る、鮮紅のひとすじ。
すう――――――と繊手の白さを伝い際立たせる紅の彩に目を瞬かせ、
漸く僅かに感じ始めた淡い痛みに、軽く唇を噛んだ。
「そうだ、……今度は、紅い髪の娘にしましょう。
燃え立つ様な、鮮やかないろの……いえ、瞳でも素敵ね」
そんな彩を宿す娘なら、きっと躰の裡から湧き出ずるものも、
鮮やかで、艶やかで、美しいに違いない。
くふ、ふ――――――薔薇色の唇を甘く綻ばせて、娘は忍び笑う。
そうと決めれば、明日は何処へ狩りに行こう。
今日のうちに、宵闇に乗じてゆくのも、悪くは無いけれど――――――。
■マリエラ > 冷気を感じぬ足先が、す、とすべらかな床を辿る。
ローブの裾から覗く素足は、ほんの数歩で軽やかに床を蹴り、
娘の姿は不意に、其の場から掻き消えた。
狩りに出向いたのか、其れとも、寝間に身を横たえるのか。
其れを知るのは唯、娘自身のみ――――――。
ご案内:「氷の居城(過激描写注意)」からマリエラさんが去りました。