2021/09/07 のログ
ご案内:「貧民地区のあばら家(過激描写注意)」にアリエノールさんが現れました。
アリエノール > その子供と行き会ったのは、ほんの偶然だった。
買出しに出かけた街角で、ひどく痩せたその子に懐を狙われ、
捕まえて、何故そんな真似をするのかと尋ねた、それが始まり。

そして、今日。
子供の住むあばら家の中、唯一と思しき質素な寝台を前に、
骨と皮ばかりに痩せ衰えた老婆の枕辺に、己は跪いていた。
両手で彼女の手を優しく握り、ほろほろと涙を流す。
けれども、その涙はもう、彼女を癒すこともなく――――――

「……ごめんなさいね。
 お役に立てなかった、……でも、もし良かったら。
 私のところへお出でなさい、……弟さんたちも、連れて」

たった今、天に召されたばかりの老婆の傍らへ取り縋り、
泣きじゃくる幼子数人をそこへ残して、一番年嵩の子供と部屋の隅に避け、
ひっそりと、囁き声で告げれば、子供は泣き腫らした顔で頷いた。

『でも、まず、ばあちゃんを弔ってやらなきゃ』

幼い声が紡ぐ大人びた台詞に、そっと頷き返して。

「そうね、そのことも、……私が、お手伝いするわ。
 とにかく、私は一度帰って………そう、これを」

携えてきた、井戸水を満たした革袋を差し出す。
それも本来は、老婆のために用意してきたものだったが。
手渡して、子供の頭をそっと撫でて、彼らを残し家から出る。

薄暗く、煤けた壁の家々がひしめき合う、細い裏通り。
お世辞にも、子供が育つに相応しいとは言えない界隈を、ゆると眺め渡し、
俯いて眦に残る涙を拭いつつ、溜息を吐いた。

蘇る記憶、そう遠くない過去の、まだ塞がり切らない傷。
どれだけ泣いても、どんなに手を尽くしても、引き止められなかったひとを思う。
ひとの生命というのは、まったくもって、ままならないものだ、と。

アリエノール > 頬を拭った指先が、しっとりと濡れている。
そっと持ち上げて淡い陽光に照らされた雫を見つめ、
虚しさに胸の奥がじくじくと痛むのを感じて、僅かに眉根を寄せた。

「………なんて、半端な力なのでしょう」

所詮、貴族の慰みものになるためだけの生命。
そのためだけに、付け加えられた力。
本当に必要な相手には、本当に救ってあげたい相手には、
ただ涙する姿以外、何も捧げられない、虚しさ。

「……いっそ、ただ、無力なものでしたなら、
 こんな気持ち、知らずに済んでいたのでしょうか……」

呟く端から、ふっと頭を振る。
ただの『もの』であったなら――――そも、逃げも隠れもしなかった。
単純に、使い潰される消耗品で終わる筈だった。
どちらが幸せだったかと言えば、それは――――――

アリエノール > 「――――――しあわ、せ……?」

ふと思い浮かんだその単語に、小首を傾げてしまう。
しあわせ、というのは多分、ひとのためにある言葉で、概念で、
己に当て嵌まるものだとは思えなかったからだ。

仄暗い物思いを断ち切ったのは、傾き始めた陽射しの色。
早く手配を済ませなくては、と気を引き締めて、黒靴を履いた足を踏み出す。
まずはとにかくも人手を、探さなくては、と――――――。

ご案内:「貧民地区のあばら家(過激描写注意)」からアリエノールさんが去りました。
ご案内:「夢幻窟 エロトラップダンジョン(過激描写注意)」にリラ・フィオーネさんが現れました。
リラ・フィオーネ > 「……うぁ? あれ…ここ――――どこ?」

彼女が意識を取り戻したのは、頬を濡らす水滴の刺激によるものだった。
意識を取り戻して周囲を見回して、現在の状況を確認すると何処かの遺跡めいた構造物の内部だった。
周囲の壁がぼんやりと光苔のおかげで松明が無くとも灯りには困らないのは幸いだが、ここは現実ではなく夢の中。

「あ~……確か、あれから…んー…記憶が無いかも。でも、此処は間違いなく夢ですよね?」

現在の服装は全裸で、場所は夢幻窟であるというのは間違いないはずである。
夢である証明として、瞳を閉じて意識すれば術を解除しますかという問いかけが頭の中で響いた。
一応は安全性は確保されてはいるものの、服装は一切無くて全裸のまま謎の遺跡っぽい構造物の中を移動する事となる。
本当にコレは自分が見ている夢の中なのだろうかという疑問もあるが、ひょっとすれば他人の夢の中へと意識が潜り込んでいる可能性があるのかなとも思考する。
そうじゃなければ、遺跡という状況は自分では考えるはずもなく。
ぶるっと全裸のせいか、寒気がするという風に自らの豊満過ぎる乳房を抱きかかえながらペタペタと素足のまま移動を開始した。
ひょっとすれば、すぐにでも場所が切り替わる可能性もあるだろうという期待もあった。