2021/07/26 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道 (過激描写注意)」にイスルスさんが現れました。
イスルス > メグメール 街道 夜中
ダイラスと王都を結ぶ唯一の一本道
道という道を示す道

途中の分かれ道は 砦 山脈への入り口など
いろいろとあるだろう中で、イスルスは港湾都市から近い街道にいた

「   」

言葉を持たないイスルスは、息遣いだけが、今唇から発せられる音
一定のリズムのそれは、乱れることはない
この夏空の月明かりの下で、王都へと真っ直ぐに逃れようとする
数人の愚者を追う、飼い主足るボスに命じられた執行人

馬の四つ足と蹄の音が耳に近づいていく
この真夜中 月と星の明かりだけが広がっている空間の中で
その馬のたなびく尾のシルエットまでが視界に入るのはたやすかった

二足走行という、両手の指先を真っ直ぐに揃え、尖らせ
クラシックメイドスタイルという脚の動きを阻むような形でさえ、不具合はない
素早く 右が 左が 脚が 前へ 前へ 前へ

それは密やかなものではない 隠すつもりもない
むき出しの草木の映えない地面を叩く爪先と靴底の音は
確かにその者らの背後へと迫っていた。

振り向く者が言う 何かが近づいていると
誰かが言う 悲鳴を。

イスルス > 悪態が耳に通り過ぎる中で イスルスはその光の無い黒瞳で見つめる
ハイライトの無い鮫のような瞳
奔る為に育てられた馬の速度に近づいていくと、馬が怯えの声と共に焦りと速度を産む

獣が近づいてくると、本能で察している。

その怯えは、跨る騎手へと伝染した。
 畜生! という声と共に、弩の矢が弦にはじかれ、引き金と共にイスルスへ放たれる

ビンッと弾けた音と共に、イスルスはその矢を黒い瞳と、握力で掴み上げる結果を見せた
馬と共に横に並ぶと、握る矢を先端として、握り拳の横腹を叩きつけるような重い音

ミシリと馬の肋骨が砕かれ、拳の形に沈む
腹に突き刺さる鏃とそれを繋ぐ一条が埋め込まれ、馬の悲鳴と共に倒れるかといえば、逆
肉を食らう獣に追われる恐怖が、たとえ臓腑が引きずり出されても動けるだけ動こうとしていた。

馬の脳内に分泌された興奮作用が、一時的なドーピング
それに、イスルスは無言のまま、感嘆の意を示すように瞳を少し細めるのなら
騎手の脚を掴み、引きずりおろす握力が、足首を細めた。

喉から出る 濁音という痛み
それと共に、引きずり落ちる際に振り下ろした拳の殴打
ぼぎゅっと頬を砕き、首を折る感触と共に、そのまま倒れ転がるのを放置し、次へと向かう

イスルス > 一人がやられた恐怖
それは今度は逆に馬へと恐怖が伝染する
速度を上げていく中を、再び人間のような身体のままで
再びトップスピードまで上げる二足歩行に至るのはたやすかった

真夜中 月明かり 馬にまたがる人間
イスルスは、対象への処刑を命じられて動いている
しかし胸の内に感じるわずかな高揚は それはきっと
これが狩りに映るかのように感じているからだ

イスルスは自身で、それを考え 答えて 認める

両脚の動きが、さらに速くなったのを感じるのならば
ドレスコードで身に着ける両足の精巧な革靴がギチッギチッと悲鳴を上げるのも構わず
二人目に対し、再び引きずりおろす。
馬の首にしがみつき、抵抗しようとする動作があったものの

それは腰に備えた愛用の杭剣 ステイレット・ダガーの先端が背中側から穿たれた二つの孔で終わった
両方の肺を貫く、二度の衝撃と共に、馬に垂れさがるままやがて落ちた二人目を見届けることもなく

最後の三人目へと差し掛かる。

イスルス > 最後の一人ともなれば、速度を再び上げる為の姿勢を気にする必要もなかった
馬が恐れ、騎手が恐れ 怯えて 泣いて 背後へと迫るそれが
横並びになった瞬間に終わると、悟らせる

横並びになった瞬間こそが、恐怖の最高潮
しかし、左右を時折確認しながら街道をひたすらに走る騎手は
突如横から来た衝撃に暗転し、終わる



「……。」

イスルスは、奔ることをやめ、馬達に意識は何ら向けない
目の前の三人目が、首を起点として頭部の先を肩に付ける形に代わっていることで
それを確認し終えると、静かにゆっくりと、肩を持ち上げるようにして息を深く深く吸い
そして肩が下がると共に深く深く吐き出した。

狩りを終えた気分が、身体を気持ちよく通り過ぎていく
最後に放った後ろから飛び掛かるようにした飛び蹴りによる
  ごぎゃっ という骨の肉の内側から鳴り響いた音と共に、横合いからの砕く一撃の後の余韻

それが身体をめぐる中で、ごそりと三人目の懐から目的のブツを見つけると
それをイスルス自身が持つ、白にレースの織りが繊細なハンケチへと包み、懐へ納める

息も乱れず、汗もかかず 身に着ける黒と白のクラシックメイドスタイルに汚れは無い中
月明かりを頭上に掲げ、目を閉じ少しの間、月光浴をする
表情は、日向で浴びる温かさを感じるようにして、穏やかな無表情。

イスルス自身、今は独りだ
同族もいない 似たような外見はいても ミレーは違う
遠吠えの無い月明かりの夜は、少し耳に寂しく思えた

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道 (過激描写注意)」からイスルスさんが去りました。