2020/04/10 のログ
ご案内:「乱倫の館」にヴォルフさんが現れました。
■ヴォルフ > 王都からほど近い小高い丘の上に、その館はあった。
どこか気怠いほどに甘ったるい香が炊きしめられ、それを嗅いだ者の身体を奥底から疼かせる…。邸内はもとより、中庭に至るまで温かいのは、中庭の全てが温室として設えられているからだ。そこには四季折々の花々が咲き誇り、至る所にある灯が幻想的に花々を浮かび上がらせていた…。
そして、その広い庭の中央には、温水で満たされたプールがある。
無数の真紅の薔薇の花弁が浮かび上がり、泳ぐ者の身体にまつわりつき、彩る。
ここでの宴を楽しむ者達は皆、いずれもが他者の情欲を煽り立てる服装を楽しんでいた。これみよがしに均整の取れた裸身を露にするものもいれば、要所のみを露にし、他は薄絹で隠すというような装いの者達もいる…。
そうして集った男女そして両性の貴顕達が今宵貪るのは…アケローンの闘奴達の鍛え抜かれた身体だった。
命を賭して殺し合うよりも、よほど役得があると、闘奴達は歪んだ喜びを露にし、むしろ自ら貴顕達を犯し犯される…。
そんな乱倫の宴の片隅。
プールのそばの植え込みの陰に、少年は座り込んでいた。
命を賭して闘う以上に、身体を売ることは忌まわしいと思われた。
それは、部族の誇りに反すると。
ここだけは、隙間風が僅かに吹く。
忌まわしいほどに甘ったるい香気が薄れ、そして…人気も少ない。
ここならば、『客』を取らずに済むだろう…。
そうして彼は、この乱れた宴が頭上を行き過ぎるのを待っていた…。