2020/03/31 のログ
ご案内:「乱倫の館」にヴォルフさんが現れました。
■ヴォルフ > ここは、王都からほど近い郊外に建てられた富裕貴族の別邸。
瀟洒なつくりのその館は今、集まった人々の熱気にむせるほど…。
庭は温室となり、この季節この時間に薄布一枚をまとって出歩いたとて微塵も寒くはない。そしてまた、温水を満々とたたえたプールには、この季節には手に入らぬ筈の薔薇の花弁が無数に散らされ、これまたどういう魔術の力なのか、プールの下から照らし来る、光彩をその折々に変える光に照らされて、妖しげに揺蕩っていた。
むせかえらんばかりの熱気は、どうやら人々の集うがためばかりではないらしい。
濃厚に甘く芳醇な香気の、何やら香が炊きしめられている…。その香気を吸う者は、いやおうなく身体が疼くようになっている…その所為でもあった。
屋敷のそこここで、嬌声が上がっている。
周囲の視線を感じてより興が乗り、激しく交わりあう者ももう、珍しくはない。
肌身の透ける薄物など…むしろおとなしい方だ。
ある者は、しっかりと衣服を着込んでいるようで、胸、鼠径部だけがはっきりと露わになるような衣を纏っている。
ある者は、いきりたった肉槍に金環を嵌めてもいた。
それぞれの装いが、ありありと肉欲に耽ることを意識している…。
闘奴達もまた、ある者は女を犯し、ある者は男色趣味の貴族を背後から貫き、そしてある者はふたなりの貴族の娘と肉槍同士をすり合わせ、白濁の宴に酔い痴れていた。
少なくとも、殺しあう必要はない。
これは闘奴達にとってみても、常の殺し合いの緊張と重圧という憂さを晴らす、歪んで刹那的な娯楽であったのだった。
その、狂騒の中。
少年は庭の温室、温水の薔薇の泉の裏手にある、樹の根方に座り込み、脚を投げ出していた。
他の闘奴達のように、乱倫の宴に加わるつもりはない。
故郷では、戦士を志す者は、戦場にて敵兵の首を挙げて見せねば一人前とは認められず、一人前でない男が女を抱く資格はないとされていた。
女に精を散らさず、剣に散らせ。そう、教え込まれてもいた。
その教えが気になったというわけではない。
が…命を買われ命を見世物に殺し合いをしたとしても。
貴族の娯楽のために身体を買われるということに、この少年の殺伐としたほどに朴訥な心はまだ、背徳の街に染まり切ってはいないのだった。