2020/01/12 のログ
レクス > それは灰色の雪が奏でる仮初の生。
盗賊団によって殺められた村人達が、這いずる。
屍となった眼窩に零れるのは、涙か。それともただの体液か。
腐りかけた手を前に伸ばしながら、『ア゛』とも『オ゛』ともつかない声をあげた。
彼等に混じって歩くのは、盗賊団だった者達。
村人に比べて、まだ幾分たりとも原型を留めているが――大差ないだろう。
まるでやる気のない人形遣いが操る人形のように、蠢いているのだから。

「………とても、きれい…だ」

ぽつりと、その蠢く様を見ながら、言葉が呟き落ちる。
心の何処にもそんな言葉通りの感慨など抱いていない。聞く者の誰もがそう確信する。
そういう虚ろな響きの声音。虚ろな色合いの瞳。
まるで、才能な枯渇し切った劇作家が描いた下らない台本の台詞のように言葉が紡ぎ出されて
そして、それに混じって――ボギリ――と足や腕がへし折れる音がする。
意味もなく動き、摩耗し、壊れた屍が完全に動かなくなる音だ。

何の意味もない行為。
気紛れに降り注ぐ灰の雪が、気紛れに止むまで続いていく静かな静かな道化劇。
誰を慰めるためでもない、観客のいないそれ。

レクス > その静かな宴。
気紛れにはじまったそれは、きっと気紛れに終わる。
春に降る雪が誰にも気付かれずに消えていってしまうように…。

ご案内:「廃村(過激描写注意)」からレクスさんが去りました。