2018/11/02 のログ
ご案内:「王都庭園(過激描写注意)」からチューベローズさんが去りました。
ご案内:「遺跡の一角(過激描写注意)」にアイディールさんが現れました。
アイディール > とある遺跡の中の小部屋。
森の中に在り、冒険者や軍人が腕試しに訪れたり、人には言えない話をする者が使うような
そんな、探索され尽くしたどうということのない遺跡だ。
ありふれた場所の、ありふれた小部屋の中央に、その石は浮かんでいた。
さながら、誰かがそこに配置したかのように。

――透明で小さな石の中に、まるで燃えているような光が存在する。
薄っすらと、時間に応じて色を変えていく。青、赤、黄、緑、紫――。
きらきらと煌めく色の中に、時折黒く闇のような色合いが走る。

それはそんな石だった。
ただ、静かに静かにそこに存在し、いつか消えてしまうだろう。
そこに存在するのが極自然で――けれど、決定的にどこか不自然な光。
そんな風に、今宵それはそこで何かを待っていた。

ご案内:「遺跡の一角(過激描写注意)」にナルさんが現れました。
ナル > ぺたぺたと石畳を裸足で歩く音が聞こえる。

危険が多いこんな場所に一メートルにも満たない少女が姿を表す。
その存在は稀薄ながら確かに其処に存在していて、まるで誘虫灯に誘われる羽虫の様に一歩、また一歩と発光するそれへと近寄って行く。
この邂逅は悪戯な妖精の招待状か、はたまた醜悪な悪魔の罠か...。

アイディール > あるいは光が羽虫を呼ぶように。
その魔石の煌めきが、合成獣の少女を呼ぶか。
茫洋と、静かに色を変えていく光。
それが、前髪に隠れた鮮血の如き娘の眼差しに映れば
緩やかに赤みを帯びた光が色を増す。

赤、真紅、深紅――。

彼女の視覚に、あるいは触角に映るのはそんな色合い。
無機質ながら強い、強い感情の色合い。
それを愛情と呼ぶものもいるかも知れないし、あるいは欲情と貶めるものもいるだろう。
そんな色艶を挟んだ魔石は、ただ、少女が触れるのを待っているようで――。

ナル > 「あなたは此処で何をしているの?それともするの?」

薄く儚い、透き通った声で少女は問うた。
普段自分から話し掛けたことなど僅かに数えるばかりだというのに。

「私が此処に存在する意味はあるの?あなたがくれるの?」
すっと手を伸ばす、触れるわずか直前で手が止まる。

「教えて?あなたと私の存在意義(レゾンデートル)を。」
詠うように紡がれた言葉を合図に、その指先が触れた。

アイディール > 指に触れた魔石の感触。
小さな白い指先に静かに馴染んでいくように感じるか。
その感触は硬質なのにどこか暖かく柔らかいようにさえ触れる。

――意味?存在意義。そんなものあるはずもないだろう?

その声は空気を震わせることはない。
少女の脳裏に淡く響くように聞こえる。色のない男とも女ともつかない声音。
それと同時にとろり、と魔石から黒い闇のようなものが零れる。
まるで触手のように指先から手首、手首から腕へと絡みついていくそれ。
柔らかく温かい粘液のような触感を感じさせるそれ。
「教えて?」と請う娘に応えるように、あるいは、それなど気にもしないというように。

――仮にあっても、餌を待つ小鳥のように口を開け、待っているだけでは得られない。

じわり、じわりと少女の身体を包んでいく闇色の何か。
それと共に伝わる言葉は、慈しむように、あるいは嘲笑うように響いていって。

ナル > 意味なんて無い。そう言い放たれた少女はあるはずの無い真意を、存在しない答えを探すように自身の異能を顕現させた。

頭の触角を僅かに揺らせ、淡く青白く発光させた。言葉の裏の意図を辿るように。そんなものは存在しないと薄々知りながらも、縋らずには居られなかった憐れな少女は、纏わりつく質量のある闇を気にも止めずに、一歩踏み出す。

「造られて役目も主も失った私、存在する意味が無いと言ったあなた。ふふ、変なの。」

言葉の裏の虚無に触れたナルは、不意に漏れた笑いの意味も分からぬまま白く細い両の腕でその宝石を抱いた。壊れやすい宝物のように優しく。

その結果がどうなるかなど知らずに。否、知ったところでどうなるだろうか?その結果を定義付ける感情を持ち合わせぬ彼女が...。

アイディール > 淡く青白い光放つ触角。
とろり――とそれに闇が絡みついていく。
まるで粘液生物のような触感を感じさせるそれが愛でるように包み込んでいく。
腕から肩、頭から首、そして胴へと流れ落ちて脚の辺りまで絡みついていく。
甘く、暖かいような感触を感じさせていく。

――自分を定義するものは自分しかないだろう?

静かな声音から、何かを感じることはできるかどうか。
あるいは、それは本当に感情か。もしくは、彼女がそう感じた幻想か。
どこか柔らかな声音と共に、胸に抱かれた宝石から零れた闇色が
少女の身体を包み込んで――そして、ぬるりと溶け落ちていくだろう。
まるでそこに最初から何もなかったかのように。

ナル > 「んぅっ!?」

もともと敏感な体の一際敏感な触角を包まれた瞬間僅かに艶めいた声が漏れた、身体が、本能が、思考がそれぞれ警笛を鳴り響かせた。

咄嗟に飛び退く...ことは出来なかった。
気付いた時にはもう手遅れだった。
今まで小部屋に居た自分はもう存在しないと。
抗う暇も術も持たぬ少女は瞬く間に闇に溶け忽然と姿を消した。
その場には少女の纏っていた純白のマントだけが残されていた。

ご案内:「遺跡の一角(過激描写注意)」からアイディールさんが去りました。
ご案内:「遺跡の一角(過激描写注意)」からナルさんが去りました。