2018/07/31 のログ
ご案内:「◆路地裏(過激描写注意)」にマーナさんが現れました。
マーナ > 「うー、今日も暑いなぁ」

夜になっても蒸し暑い日々が続く。特に路地裏なんかは熱気がこもってるのか、妙に暑苦しい。
ふぅっと息を吐きながら尾を振って、胸元をパタパタと仰ぎながら夜道を歩く。

ご案内:「◆路地裏(過激描写注意)」にマヌエラさんが現れました。
マヌエラ > 王都ともなれば夜の路地裏にも稀に人影はあるもの――青毛のミレー族がそうであるように。
それとは別に、もう1人。いつの間にか、道の端の打ち捨てられた木箱に腰掛ける女がいた。マーナがその眼前に差し掛かるまで、本当にいたのか怪しくなるほど存在感がなかったが。

「本当に、今日は暑いですね」

魔術師の装束を着込んだ女は、まさしく暑そうな格好だったが、魔法で冷却でもしているのか、声そのものは涼やかだった。人好きのする柔らかい声と共に、笑いかけた。

「冒険者の方ですか。暑い中、ご苦労様です。何でしたら、こちらで涼んで行かれませんか」

マーナ > 「…わっ!?」

びっくりした。全然気づかなかったというようにビクッと身を竦めて反応する。脅かす目的であれば十分成功と言えるだろう。
…自慢の鼻ですら感じる事の無かった違和感に、今は気づかず。

「うん、暑いね…でもお姉さん涼しそう、そっちは涼しいの?」

誘われるままそちらへ歩み寄り、木箱の方へと進む。

マヌエラ > 「ふふ、こんばんは。ええ……この辺りよりは」

 驚きを素直に表す様子に思わず微笑みながら、ストレートな質問に返事をする。マーナが近付くと、確かにふっと暑さが和らいでいくのは感じ取れただろう。

「私は水との親和性が強いので、“水の気”を張ってみたんです。水は“熱を持ち去るもの”ですので」

その要素を取り出して術式化した、といったところだろうか。一歩近付くたびに涼しさは増す。快適である。

マーナ > 確かに魔女の言う通りここはひんやりして、どことなく纏わりつくような蒸し暑さが無い。

「本当だ…やった、ラッキー!」

せっかくだから涼しんで行こう、と魔女の横に腰掛けて、尻尾を左右に上機嫌に振りながら、夜空を見上げる。

マヌエラ > 「うふふ、喜んでいただけてよかったです」

 感情の出し惜しみが一切ないマーナの様子が可愛らしく、再び小さく笑う。

「私はマヌエラと申します。見ての通り、魔法を使います。貴女のお名前を聞いてもよろしいですか?」

 穏やかな名乗りと問い、続けて。

「折角ですから、もっと涼しくしませんか?」

 魔術師ならではの方法でもあるのか、そんなことを持ちかける。

マーナ > 「マヌエラだね。アタシはマーナだよ。よろしく!」

耳をぴこぴこ動かして無垢な笑みを向ける。今でも十分涼しいが、まだまだひやっとする程度。
もっとと言われれば興味も相まって。

「もっと涼しくできるの?マヌエラってもしかして凄い魔法使いだったりして」

興味津々と顔を近づけてじっと見つめる。

マヌエラ > 「ありがとうございます、マーナさん。まあ、柔らかい語感で素敵なお名前ですね」

 ほうと息を吐いて嬉しそうに口にする。

「ええ、涼しくすることはそれほど難しくありませんから――ふふ、大したことはありませんよ」

 隣に座りあった状態で、人懐こく顔を近づけてくれる貴女は、気付くだろうか。

 魔術師装の女の視線が、視線を合わせた者の精神を魅了する呪視であることに。
 そして――マーナの背後、長く伸びた影からずるりと無数の触手が這い出し、今この瞬間、マーナに絡み付こうと襲い掛かったことに。

マーナ > 「……ぁっ」

瞳があった瞬間、心を掴まれるような気がした。胸がドキドキしてキュンと疼く。
興味の対象は魔術からマヌエラ本人へ移行し、心と身体がうずうずする。
それは、周囲の異変など一切気にする余裕もなく、マヌエラを見つめ続けていて…。

「…っ!?きゃあっ!?」

体に絡みつく触手。四肢が締め付けられて押さえ込まれるように拘束されて行く。

マヌエラ > 瞬く間に、触手はマーナに絡み付いていき、その四肢の動きを封ずる。並の人間より強い力を持っているであろうマーナをしてもびくともしない。その触手の表面から分泌されている得体の知れない粘液が、マーナの均整の取れた肉体を汚した。

「マーナさんは、とっても素直で、元気で、可愛らしい方ですね」

この状況を作り出した女は、全く変わらないテンションで、微笑ましげに口にした。

「先ずは、マーナさんのお嫌いな暑さから……この熱を持った場所から、少し離れましょうか」

女が告げるや、風景が歪んだ。月や星星は、曇りガラスでも通したかのようにぼんやりとしか見えなくなる。石畳はぶよぶよとした触感に変わり、時折どくん、どくんと脈動した。
女の、悪辣な魔族の作り出した、実際の路地裏を模した悪趣味な結界に捕えられたのだった。
確かに、あの暑気は急速に去り、変わりに瘴気とも呼ぶべき、悪寒を覚えさせる空気があたりに満ちていた。

マーナ > ぬらぬらとした分泌液が身体を汚し、吐き気が起こる。
胸にこみ上げる胃酸を押しとどめながら、変わっていく景色に戦慄する。

「マヌエラ…?これ、君が…?」

熱気も止んだ、むしろ寒気がするくらいだ。変わっていく景色、異界に閉じ込められたような感触。
膨大な魔力と脅威に尻尾を震わせながら、それでも優しく見える魔女の視線に、まだ期待を残して…異界へと消えていく。