2018/05/24 のログ
ご案内:「王都 城壁・城門付近」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > 依頼からの帰り道。
数人の冒険者がうつむきながら、重い足取りで城門をくぐる。
その中のひとりはフードの少年。
他の冒険者は一時的な仲間であり、今回の依頼のために集まっただけのこと。
城門をくぐれば、それぞれ所属のギルドや家へと向かうだろう。
簡単な挨拶を交わして解散する。普通ならば打ち上げとか、互いの労をねぎらうところだろうが
全員そんな気分ではなかった。

依頼自体は成功した。成功したのだ。
だが、それでも、彼らの心には大きな落胆と拭いきれない悔悟の念。
一人になった少年は立ち止まり、大きくため息をつく。

ブレイド > 今回受けた依頼。
それは、ゴブリン退治。
複数の集落がゴブリンに襲われるという事案が発生したのだ。
被害を受けた集落の範囲から、おそらく同一の群れの仕業であろうと
周辺調査、発見した場合の討伐依頼を受けたのだ。
数人がその依頼をうけ、臨時のパーティとしてその依頼をこなすことになった。
範囲は狭いため調査自体はあまり時間はかからなかったし、ゴブリンも大した脅威ではなかった。
だが、そこで見てしまったのだ。
ゴブリンにさらわれた娘たち、その成れの果てを。

ブレイド > さんざ弄ばれ、体液と糞尿に塗れ、手足がありえない方向に曲がった娘の死体を。
泣き叫び恐怖と嫌悪の声を上げ、醜悪な妖魔に犯される娘を。
すべてを諦め快楽に身を委ね、喘ぎ声を上げる娘の姿を。
うつろな目で中空を見つめ、ぶつぶつと何かを呟く心の壊れた孕み腹の娘を。
ゴブリンたちが弄び、孕ませ、苗床にしようとした娘たちの姿を。
そして、それを救おうと果敢に立ち向かった青年たちの末路を。
青年たちの数は少なかった。
数人が帰らなくなった時点でギルドに依頼を出したのだろう。
全身の皮を剥がれ吊るされた死体、ゴブリンの便所と思われる穴の中に放り込まれた死体
人の手足を使ったオブジェのようなもの。これは男女のものが混じっていた。
今思い出しても胸が悪くなる。

ブレイド > 生き残った娘たちは集落へと返したがどうなるかはわからない。
自ら死を選ぶかもしれない。妖魔の子を孕んだ娘として迫害されるかもしれない。
自分たちにはどうすることもできなかった。
冒険者の中で被害はなかった。幸いなことに。
だが、この結果はまだ冒険者としては中堅数歩前の彼らの胸に大きな傷を残した。
成功を祝ってなどいられない。晴れやかな気分などまるで無い。
ただただ空虚な依頼の達成。

その場でへたり込みそうになった。
叫びたいほどに、自分の無力を呪った。
報酬など受け取る気にもならない。立ち止まり吐き出したため息。
それ以上に吐き出したかったのは嗚咽。

「なんてざまだ…」

ブレイド > 薄暗い表情で、城門側の街並みを見渡す。
無力さに打ちのめされた今回の仲間たちの姿はもう見えない。
それぞれが負った傷を癒やすためにそれぞれの場所へと行ったのだろう。
自分はどうする。
自宅?酒場?それともギルドへ報告?
どっと身体から疲れが吹き出る。
手足がまるで鉛のようだ。ふらりふらりと城門前の通り、建物の壁に背を預け座り込む。
こんな顔で自宅になど帰れるわけもない。同居人に心配をかけるかもしれない。
酒を飲んで全てを忘れるか?そんな事はできない。目に焼き付き、耳にこびりついたそれを忘れることなど。
ギルドで報酬をもらう。それは後日でいい。今、そんな気分ではない。報酬などもらっても嬉しくない。
ただ、ただ、疲れた…。

ブレイド > 冒険者という職業柄、血なまぐさい場面やこのような被害者たちをみることも
いずれあるだろうということは覚悟していた。
していたのに、このざまだ。
自分は情けないのだろうか?覚悟が足りないのだろうか?
あるいは、もっと冴えたやり方があったのだろうか?
いかに応急手当をならっても、心の傷は癒せない。
染み付いた恐怖は消せない。
壊れた心はもう戻らない。

「ちくしょう…」

ただ、そう小さく漏らす。いじけたルーキーの姿など冒険者業界では散見するものだろう。
今の自分がまさにそれ。通行人はただの物乞いとでも思っているのだろうか。
距離を取り、視線を送るでもなく、ただ通り過ぎていく。

ご案内:「王都 城壁・城門付近」にバルジリスさんが現れました。
バルジリス > 王都城壁門前、そこを歩くのは、執事服を着たチンピラとは誰が言ったか、バルジリス。
その口には、最近禁煙しているので、棒付きの小さなキャンディが咥えられていて…

「……」

その表情はすぐれない。最近、嫌なことがあったのだ。少し、仕事に休みをもらい、
気分転換にと城壁外へと歩いてきたのだが……
天を見上げれば、少し、雲がかかってきている。雨でも降るだろうか……?
そして、城壁の壁、そこに座りこんだ少年冒険者らしき姿を目が捕らえる。
まあ、何かあって、落ち込んでいる冒険者だろうと、いつもなら気にも留めないだろう…
だが、今日は何だが……気になったのだ。
気が付けば、少年の前に立っていて。

「……おい、少年冒険者。どーしたんだ、こんなところで」

そう声をかけようか…

「もうすぐ、雨が降りそうだし。そんなところで座り込んでると、物乞いと勘違いされて追い払われちまうぜ?」

ブレイド > 上から降ってくる声に思わず顔を上げる。
執事のような服を着た…男?
飴を咥えているように見えるが…そんな男が自分に何かようなのだろうか?

「…べつに、動く気力がねーだけだ」

少しかれたような声で、ややぶっきらぼうに返す。
見上げたついでに空が灰色なのがわかる。
雨が振りそうだと、言われて気がついたと言うか…
それだけ長い間うつむいていたのだろう。天気の変化がわからないくらいに。

バルジリス > 「……ふーん」

動く気力がないと言われれば。短くそう返し。少し、少年が背を預ける壁に、
自分ももたれるように背を預けようか。
しばらく、無言の時間が続くだろうか……?そして。

「……なんか、ひでぇツラしてたぜ。さっきの顔。
……なんか、あったのか?」

そう切り出そうか。べつに、興味があったとかそんなわけではない。
ただ……妻と、同じ職業の少年が、落ち込んでいた……
だから、話を聞いてみようかと思っただけ。

「話せとは言わねぇが……話したら、聞くだけ聞くぜ」

何て、言ってみよう。

ブレイド > 「……」

隣に男が座る。
物乞いのようなフードの少年と執事服の男が並んで壁に背を預けている。
すこし奇妙な絵面だ。

「………雨、降るんじゃねぇのか?」

話を振ってきた男に対して、そう返す。
雨が降るならば、こんなところに座っている場合ではないだろう。

「物好きもいいけどよ…上等な服が濡れちまうぜ?」

自分はいい。濡れてもいい。
むしろ、雨にうたれたほうがいい。
心も身体も冷えるだろう。雨が嫌な出来事を洗い流してくれるだろう。

バルジリス > 「ん?ああ、そーだな。雨、降ったら濡れちまうな」

濡れると言われれば、そう答えよう。
確かに、このまま話していたら、雨で濡れてしまうな…なんて、他人事のように考え。

「だけどよ、それはテメェも同じだろ?それとも何か。自分なんて濡れた方がお似合いだ……なんて、かっこつけた考えでもしてんのか?」

そう、わざと煽るように言って…そして。

「濡れるの何てごめんだろ?どんな理由があろうとさ。
……近くによ、俺の行きつけの酒場があるんだ。
そこで、酒ついでに、雨を避けようぜ。
……まぁ、どうしても濡れたいなら、そこで酒を浴びりゃいい」

そう提案してみよう……と。

「…っと、自己紹介もしてなかったな。俺ぁバルジリス。興味ねぇだろうから、覚えなくていいぜ」

そう、事項紹介もついでに。

ブレイド > 空を見上げて、また視線を地に落とす。
はっ、と自嘲気味に笑って男の言葉を聞く。

「お似合いとは思わねーよ。
でも、なんだろな…カッコつけれたらよかったな……」

虚勢でも何でも、かっこつけて、彼女らを助けることができたのなら
どれだけよかったか。
男の言葉はどことなく優しい。煽るような言葉もわざとだろう。

「…行かなきゃ、アンタも一緒に濡れる気だろ?
行くよ。風邪ひかれてオレのせいにされちゃかなわねぇ」

ゆっくりと立ち上がる、体が重いのは相変わらずで
立つだけでため息が漏れる。

「わかったよ、バルジリス。
オレはブレイドだ。興味あっても覚えなくていい、そこらの木っ端クズみてーな冒険者だ」

バルジリス > 「あ、分かっちまったか?」

濡れる気かと言われれば、そう少し笑おう。
相手ののろのろとした動きに対し、此方はスッと立ち上がって、ズボンに付いた土埃をはらおうか。
相手の溜息や、自分を木っ端とかいう言葉に、
何か、冒険者としての壁みたいなのにぶつかったのかと思いつつ。

「ん、りょーかい。ま、顔合してる間だけは覚えておいてやるよ。じゃ、行こうか。」

そういって、酒場へと向かおう。
その酒場は、それなりに清潔で、客は少なそうだが、これは時間帯によるものだろう。
店内に入れば、カウンター席に座り、

「とりあえず、芋の揚げ物と、エール。テメェは?
今日は気分がワリィから、パーッと奢ってやるぜ」

そう、矛盾しているような事を言って、注文を聞こうか。

ブレイド > 「隣りに座っといて、わからねーわけねーだろ」

それくらいわかるぜと笑いながら歩く。
どこか乾いた笑いだが。
愛想笑いのような、心の底からの笑いではないのは確か。

男についていけば小奇麗な酒場。
立ち寄ったことのない酒場ではあるが、勝手は他の酒場と代わりはあるまい。

「奇遇だな、オレもいい気分じゃねぇからな。
りんごの果実酒と…つまみはアンタと一緒でいい」

カウンター席に腰掛けて、肘をつく。

バルジリス > 相手の乾いた笑いには、少し心配そうな表情をしようか。
なぜ、この見ず知らずの少年冒険者にここまでするのか…正直、自分でも分からないが。
まあ、分からないなら、分からないでいいや。乗り掛かった船だし。と軽く考えつつ。
相手がリンゴの果実酒と、芋の揚げ物を頼めば……

「さて……どーやら、ろくでもないことがあったみてぇだな。
自分への評価が大事な冒険者が、自分の事木っ端何て言うのは相当だぜ?」

そう、先ほどの相手の発言を引き合いに……

「別に、テメェの自己評価なんてどうでもいいんだが……
落ち込んで、自分の事が嫌になっても……虚勢でもいいから、張っとけ。
わざわざ、冒険者が木っ端何て言っても、舐められるわ、馬鹿にされるわ、評価は落ちるわで。
散々な目に合うだけだぜ?」

そういいながら、出てきた芋の揚げ物を齧って……

ブレイド > 出てきた注文、りんごの果実酒を一口。
男の言うことはたしかにそうだ。
冒険者は謙虚にするだけ損だ。
だが、思い知った。自分が何もできなかったことを。
被害が拡大することは防げた、だが、それだけだ。
それだけなのだ。

「張れる虚勢もありゃしねぇ。
胸張って依頼をこなした冒険者様だなんていえるか。
そう言や、あの哀れな…悲惨な…女たちは救われんのか?」

男にはわからないであろうことを口走ってしまう。
そこから、ぽつぽつと、今回の依頼であったことを語る。
絞り出すような声で。

「依頼はこなした。だけど、それだけだ。
そりゃ、そうにしかならない。でも……どうにもならねぇことをぐじぐじ気にしちまう。
だから、木っ端屑だ。それでいい、いまは」

バルジリス > 「……」

しばらく、相手の言葉を黙って聞こうか。
どうやら、女がらみらしい。悲惨な……と言うことは、邪神崇拝者や、山賊。魔物がらみだろうか…?
そんなことを考えていれば、あいてがぽつ、ぽつと語ってくれた、ゴブリン討伐の話。

「……そうか」

そう、相手が話し終えて、少し経ったら口を開こう。
重い、話だ。この少年の肩には、重すぎるかもしれない……
だが、少し考え、考えをまとめ、話を続けて……

「……そりゃ、仕方ねぇよ。被害者も、冒険者も。もちろんテメェも。
誰も悪くねぇ。悪いとすりゃあ……この世界そのものだ」

そう言って、エールを少し飲んで。

「テメェは、依頼をこなした。冒険者なら、被害者の事は割り切って、報酬を受け取って。
次の依頼、次の依頼と続けていくものだろ………なんて、考えてるのか?」

そして、サングラスごしに、相手を見つめ。

「テメェら。冒険者も。感情があるだろ。そんな現場を見たら、吐き気がするし、落ち込みもする。「もっと、早く来ていれば…」なんて、後悔もする。それが、当たり前だ」

そう言いながら、エールでのどを潤し……

「大事なのは。忘れねぇことだよ。その吐き気を。落ち込みを、後悔を……
その上で。機械的に、仕事をこなすんじゃなく、血のかよった仕事ができる…
そんな冒険者こそ、本物だと思う。
……確かに、今のテメェは、弱い木っ端みてぇな冒険者かもしれねぇさ。
でも、木っ端なら、燃やせば火がともるだろ?
………木っ端なら木っ端でも、くさらせるんじゃなく、燃やせ。
そして、次を見据えろ。また、その後悔の元となるような被害者を出さないために動け。
………なんて、な。偉そうなこと言っちまったな。ハハ」

そう、苦笑しようか……

ブレイド > 「かもしれねぇ、アンタの言うとおりかもしれねぇ。
世界が悪い。そうなんだろ、たぶん」

揚げた芋をさくりとかじり顔を伏せる。
思い出してしまう。
自分のみたものを、聞いたものを。

「でも、オレは見ちまったんだ。聞いちまったんだ。
その場にいたんだ。その場にいたのに…助けに行ったのに!!
なにも、できねーんだ。何もできねーのはオレのせいだ…」

強い後悔。
魔法の一つでも、奇跡の一つでも、なにか特殊な力でもあれば
なにかできたかもしれない。かもしれないというか細い希望でしか無いが。
それでも、自分がなにかできれば変わったかもしれないのだから。

「忘れねぇよ…忘れられるか。しばらく夢にも見るだろうよ。
いくらやっても、いくら同じ場面に遭遇しても…絶対に慣れるようなもんじゃねぇ
だから、木っ端屑のオレができることなんて大したことはねぇ」

男の方に視線を向ける。
サングラス越しの目は見えないが、それでも金色の目で見据える。
少しだけ、涙が浮かんでいるような…だが、意志のこもった目つきで

「だから、アンタの言うように…焚き木程度にはなってやる…」

ぐいーっと、りんごの果実酒を一気に飲み干し

バルジリス > 何もできないのは自分のせいだ。そう相手が呟けば。強い後悔の念を感じて…

「……テメェのせいじゃねぇよ……って言うのは簡単だが。きっと、
テメェが言うんなら、自分の中ではそうなんだろうな」

特殊な力など、無い者の方が多いのだ。力を求めるのなら、
それだけ、重い物を背負わなければならない。
そして、ほんのりと涙がにじんでいる目で、だが、強い意志のこもった眼で。
焚火程度にはなってやると言われれば。ふっと笑もうか。

「……ああ。その意気だぜ。焚火でも…でっけぇ焚火になれよ。
なんか、不思議だが……テメェなら、でっかい焚火に慣れる気がするぜ」

そんなことを言いながら、エールをこちらも飲み干し……

「んじゃ、ま。代金の支払いは任せな。だから、早く報酬、受け取ってこいよ。
どんな後味ワリィ仕事でも、仕事は、やり切るまでが仕事だぜ」

そう言って、代金の支払いを済ませ……
将来有望な、少年冒険者を見送ろうか。

ブレイド > 「そうだ、オレのせい…
だから、今度はなにかできるようになるんだよ。
オレがただのガキじゃなけりゃ…きっと後悔だってちったぁへるだろうさ」

たとえ特別じゃなくても…誰かを救えるだけの。
剣を振るだけじゃない、自分ができることを増やすだけでも
それだけでもだいぶ違う…はずだ。
涙を拭う必要すらもない。頭を振れば、その目には種火が灯っているだろう。

「わりぃな、バルジリス…さんよ。
アンタがいなきゃ、湿気てたところだ。
支払いは…ありがたく奢ってもらうことにするぜ。
でも、今度は奢らせろよな?礼もしてぇしな」

立ち上がってあるき出す。
外は…バルジリスの予報した通り、雨が降ってきていた。
だが、まっすぐ見据えて歩き出す。店を出るさいに、振り向いてひらりと男に手を振って。

「またな」

ご案内:「王都 城壁・城門付近」からバルジリスさんが去りました。
ご案内:「王都 城壁・城門付近」からブレイドさんが去りました。