2018/03/05 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にタマモさんが現れました。
タマモ > 時に、こうして目覚める事が出来れば、戯れに得た力を使う。
もっとやれる事もあるのだろうが、遊び心も大切なものだ。
それが、ヒトの負の感情を得られる事に繋がるものならば、一石二鳥ともなる。

九頭龍山脈の山賊街道、港湾都市ダイラスへと向かっていたのだろう荷馬車が一台、緩やかに進んでいたが…停止する。
その荷馬車はところどころが凍り付いており、それが原因でついに走る事が出来ずに停まってしまったような感じだ。
もはや、この荷馬車を使い逃げる事は出来ない…そう見切りを付けた御者が、荷台から飛び降り…ようとした。
だが、街道に沿って見える森林の茂みの中から、一条の青白い閃光が御者を直撃した。
一瞬の叫び声の後、御者は飛び降りようとした格好のまま、荷台の側で凍り付いて。

と、その閃光が放たれた場所から、一人のミレー族の少女が姿を現わした。
片手に持つ魔法銃を弄ぶところを見れば、今やったのはこの少女なのだと分かるだろう。

「もう少し、楽しませてくれると思ったが…三人で終わりか…」

その姿が、ゆらりと揺れ…別のミレー族の少女へと変わる。
再び手にした魔法銃を荷馬車に向け、込められた魔力を放つ。
それは、先ほどの青白い閃光とは違い、いくつもの赤い球体となって荷馬車を襲う。
数度の小爆発の音、そして、当たった場所から燃え始める荷馬車。
確かめるかのように、それを見詰め…ふむ、と頷いた。

タマモ > 最初に、この荷馬車を見付けた時は、護衛も何人か居た。
己の姿のまま、楽しむのもありなのだが…何となく、以前、この九頭龍山脈で喰らった少女達の力を使う事に。
各々、得意とする属性を魔法銃を介して使う能力は楽しめる。
逃したとしても、この少女達が所属していた組織にまず疑いが向くだろう。

一人、また一人と、姿を変え、属性を変えて護衛を討つ。
あえて正面からは挑まず、とりあえず、隠密からの魔法で見付からぬように倒す事に徹する。
普段と違う戦い方は、よい暇潰しにもなった。
そうして、気が付けば…結局は己の姿は気付かれぬまま、終わってしまったのだ。

樹の枝の上に立ち、それを見下ろしながら、魔法銃を懐へと仕舞う。
狩りの時間は、これで終了だろうか?

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にリーゼロッテさんが現れました。
リーゼロッテ > 山脈の奥深く、普段は限られた人しか入れない蒼き月の森。
そこでゆっくりと夜を過ごしている最中、隔絶された本来の世界から流れ込む焦げた匂いに気づく。
嫌な感じがすると思えば、戦闘衣を引っ掴んで纏い、しばらく引き金を引くこともなかった魔法銃を片手に外へと飛び出す。
枝で作られた十字の墓の前を通り過ぎ、草むらの中を駆け抜ければ、いつの間にか本来の世界へとその姿はたどり着く。
九頭竜山脈、遠くで煌々と燃える火を確かめれば、不整地と光のない世界という状況下でありながら、転ぶこと無く斜面を駆け下りる。
そこにあるのは、吹き飛ばされた荷馬車と、傍で倒れる護衛達の姿。
青い瞳をいつも以上に丸くしながらも、ぎゅっと魔法銃を握りしめると、背中へとそれを回しつつ護衛達の元へと向かった。

(誰がこんな事を……)

強奪にしては、派手に吹き飛ばしすぎている。
仇討ちにしては、人相の悪そうな人間は見当たらない……はず。
理由の分からぬ暴力に困惑しながらも、周囲の敵を気にするよりも早く、今は手当が先だと倒された護衛達の傷を確かめていく。
手近にいた一人の前に両膝を付くと、手元に魔力を灯して明かりにしながらも、傷口を確かめていった。

タマモ > 派手な音を立てたとはいえ、遠目に見ても街道から見える姿はない。
もうしばらくは、または、飽きて己が立ち去るまで、誰もこの場に来る事はないだろう。
…そう思っていた矢先、視線が、森林深くへと向けられた。

誰か来たか…こんな場所に、冒険者とやらの類か何かだろうか?
そう考えていれば、耳に届いた足音、その正体が見えた。
リーゼロッテ、今、喰らった事で己の物となっているミレー族の少女の記憶にある少女だ。

もっとも、その少女は、今の己が得ているミレー族の少女達に起こった事は知らないはずだ。
それが起こったのは、少女が集落を離れた後の出来事なのだから。
視線は、そうした考えを巡らせている間にも、少女に向けられていた。

さて、どうしたものか。
今度は、また違った思考を巡らせ始める。
あの少女に対し、どうしたものか…この本来の体の持ち主の記憶にもある為、嬲り遊ぶ事は出来ないだろう。
本気で壊そうとすれば、間違いなく止められる。

となれば、前に別の知人にしたように、夢の中に誘うしか方法が無いか…
そう思い至れば、少女が今調べている場所で使われた、地・水・火、以外の属性を扱う存在で行くのが良い。
その姿はゆらりとまた変わり、とん、と木の枝を蹴って舞い降りる。
傷口を確かめている、その少女の側に着地するように。

リーゼロッテ > 僅かに残る氷、そしてそれを溶かすように燃え盛る炎。
魔法によるものだと察し付きつつも、魔法銃によるものかどうかまでは確かめることは叶わない。
とはいえ、山中で仲間の少女達が消息を絶ったことは耳にしていた。
蒼月の森によく訪れる客の中には、自分の愛弟子でもある組合の秘書がいる為である。
だが、それとこれを結びつける接点が見つからず、通り魔のようにしか見えないのが現状。

「……まだ、生きてる」

一人目の存命を確かめると、次々と倒れている護衛達へと駆け寄っていき、慎重に身体を確かめていく。
魔力の塊や、圧縮された火、冷気にめり込んだ石礫。
幸いにも重傷者はいても、死傷者はいなかった。
安堵の吐息をこぼしたいところだが、そんな余裕はない。
立ち上がると、背中に回していた魔法銃を手に取り、増幅弾のクリップを開かれた排莢口へと一気に押し込んでいく。
ガコッと音を立てて装填されれば、ボルトを引いてから銃口を空へ向けた。
広がる緑色の魔法陣から放たれたのは、銃口から広がっていく大きな蓮の花。
それがふわりと風に流されるように散っていき、花弁が周囲に満ち溢れる。
それがぶつかるだけで、体力とともに治癒効果をはたらかせていくが、重傷の場合はそれでは間に合わない。
再び銃を背中に回すと、蓮の花弁を掌で掬い上げ、傷跡へと降り注がせることで治癒効果を集中させていった。
そんな中だった、傍に誰かが降り立ったのに気づいたのは。

「誰っ!?」

治癒へと意識を向けていた分、反応がおくれてしまう。
ぴくっと体が跳ねるように驚くも、反転するようにそちらへと振り返りつつ身構える。
相手の姿を確かめようと、視線は彼女へ向かう中、以前とは違う深緑の多い服装が見えるだろう。
ロゼッタをモチーフにしたデザインのジャンパースカートと、白いブラウスにカーディガン状の上着。
それでも童顔に大きい青い瞳と顔立ちは変わらずであり、迫力なく彼女を凝視するだろう。

タマモ > 耳を澄ませ、少女の囁きをも聞き取れるように。
少女の動きを確認しながらも、その元へと降り立つ間まで、それは続けていた。
それなりに、勘付くかもしれないか…それは、少々危惧し過ぎていた考えらしい。
何が起こったか、それよりも、倒れた護衛達へと意識を強く向けている感じだったから。
それは、少女の呟きでそれとなく分かった。

まぁ、分かったところで、この少女に何が出来る訳でもない。
理解しているが、なるべくならば、事の流れに乗るまでは面倒な流れは避けたいところではあった。
だからこそ、その少女の反応はある意味ありがたいもので。

…だが、少女の次の行動に、少しばかり興味が湧いた。
それは、他のミレー族の少女達が扱うのとは、また別の力を行使したからだ。
まだ、魔法銃で扱う魔法には種類があったのか…と。
この魔法銃を扱う上での知識は、何人ものミレー族の少女を喰らい、かなりのものであるのは自負している。
それらの知識を交え、少女の行使した力を覚える為に、見に少々意識してしまっていた。
それに気付いたのは、着地をし、己の存在が少女に知られた後だ。

少々流れが変わってしまったが、それでも、少女の反応の遅れに助けられた。
もう数歩だけ少女に近付き、触れられる程の距離に。
こちらへと振り返ろうとする動きに合わせ、向ける瞳が、目立たぬ程度に鈍い輝きを放つ。
それは、己の姿を確かめる為に向ける視線、それがまず、その間が見知った相手だと判断するだろうという読み。
性格から、一瞬、上手くすれば少しの間が生まれるだろう。
それだけの間があれば、合わせた瞳に向ける力によって、意識を残したような錯覚だけ与え、眠りへ、夢の世界へと誘える。

上手く力が効いたのならば、少女は己がそれを解除するまで、夢の住人となるだろう。
別に失敗をしようとも、そのまま撤収すれば良い。
己の本当の姿は晒していないのだから、次にこの少女を目にする機会があろうと安心だ。

リーゼロッテ > 振り返った先にいたのは、久しく再開した友人。
その姿に、警戒が解ける……はずだったが、彼女の雰囲気とともに瞳の違いに気づいた。
以前は金色だった瞳が、何故か今は真紅に染まっており、その雰囲気は子供っぽかった彼女とは異なる。
けれど、それに気づくという一瞬に瞳から発せられる力に気付けなかった。

「っ……」

何かを掛けられたような気がする、その程度の錯覚は覚えたが既に瞳術にはまってしまう。
ぐらりと体が揺れ、目眩のようなモノを覚えつつ、僅かに顔をしかめながら こめかみ に掌を押し当てる。
その仕草すらも、夢の中で行われているとは気付けないほどに。

「タマモちゃん……だよね、どうしてここに?」

あたりを見渡せば、鬱蒼と生い茂る木々に囲まれた一本道。
こんな山中を散歩にするには不自然な世界である。
掌を下ろしながら苦笑いを浮かべると、彼女に問いかけながらも、赤い瞳は気になるらしくそちらへと視線が向かっていった。

タマモ > 出会ったのは、それなりに前であったと記憶している。
それでも、この体の持ち主の事は覚えているだろうとは思っていた。
実際に、こちらの姿を目視した少女に僅かな隙が生まれ…力に飲み込まれた。
くすりと笑みを浮かべるも、それは少女が見ても気付けないものだろう。
すでにここは夢の中、少女の何もかもが、己の手の内なのだ。

「ふふ…リーゼロッテ、細かい事は考えずとも良い。
妾は妾、お主が知っている妾、何も違和感を感じる事はないじゃろう」

少女へと掛ける言葉、それは、何の疑問も少女に抱かせずに意識の中に溶け込んでゆく。
今まさに気にしていた、己の瞳の事。
なぜ、こんな場所に己と少女が居るのか。
少女の身に起こった、不思議な目眩。
それらはすべて、今、少女にとっての疑問とはならなくなった。
その言葉の後、それがしっかりと働いているのを確かめるように、少女の反応を待つ。

リーゼロッテ > 「……」

呼びかける声に、反論しようとすると意識に靄がかかったように言葉が浮かばなくなる。
確かに、自分知っている彼女であり、それは間違いなかった。
瞳が赤いことも、雰囲気が違うこともあれどそうだと脳裏で呟くが、小さな違和感が意識の片隅に残る。
一瞬だけ、脳裏によぎる砂嵐の映像と、その奥にいた黒い自分。
黒い自分の唇が動き、何かを伝えようとするが音にもならず、ノイズの多い世界では唇から読み取ることもかなわない。
ぼんやりとしたまま彼女の前に立ち尽くしているが、術の掛かり具合は8割方という印象を受けるだろう。
掛かってはいるが、何かが全ての把握を拒む。
虚ろな表情のまま、いまは薄っすらと微笑むばかりだが。

「そう……かな、そうなの…かな」

よくわからないというように呟き、眠気を払うように軽く頭を振る。
猫毛質のウェーブヘアが緩やかに踊り、染み込ませた甘い香りが薄っすらと広がっていく。

タマモ > ふむ…少女の反応に、軽く頷いて。
ここは夢の中、もはや少女には何の抵抗も許されぬ世界。
なのに、なぜか引っ掛かる僅かな違和感。
その違和感が確信とならないのは、己もまた、出会った後の少女を知らないからだとは気付けない。
が、そこまで深くは考えなくとも良いか、そう結論付けた。
念の為、現実での周囲に幻惑による惑わせの結界を張り巡らせる。
その違和感が、少女の内にではなく、周囲にあると考えてしまった上での行動だ。

何にしても、もはや夢の中、これで己自身に掛かるだろう制止もないはずだろう。
そう考えれば、次なる行動に移ろうと。

「そう、こうして妾とリーゼロッテが出会えたのも、何かの運命とやらであろう。
その証拠に、見詰める妾に、何か感じるじゃろう?
こうして、妾の存在を感じてゆく程に、段々と強まる安らぎを感じるのじゃ。
そして、安らぎは次第に妾への想いとなり、共に体を熱く疼かせてゆくじゃろう」

虚ろな微笑みを、楽しげな笑みで返す。
少女へと語り掛けながら、ゆっくりと両手を伸ばし、少女を抱き寄せる。
少女の体を感じ、己の体を少女に感じさせるように。
ゆっくりと…ゆっくりと、少女の心から、そして体へと、己に対する想いで侵食させてゆくように。

リーゼロッテ > 心の中に残されたブラックボックスの様な残滓。
その中身は最早、形をなすほどの力は残っていないが、取り込むことが出来ない領域でもある。
自身であって自身ではない、そんな存在だからで。
周囲に掛かる幻惑を重ねても、その領域は変わらず黒く残り続けていく。

「運命……? 安らぎ?……熱い、疼き……」

ぼそぼそと彼女の言葉を繰り返しながら、かくりと小首をかしげた。
抱き寄せられる身体は、抵抗もなく自分より少しだけ大きな身体に抱き寄せられていく。
言葉は身体を支配し、スカートの下で薄っすらと熱を蓄えながら太腿を震わせていった。
しかし、抱き寄せられた身体の右手の甲にも変化が生まれていく。
薄っすらと輪郭だけ残っていた鴉羽のラインが、徐々に黒く、はっきりと染まりはじめる。
同時に、澄んだ青色はまるで一滴ずつ青色を溶かしていくようにその深みを増していきながら、夢見心地な微笑みを浮かべていた。

タマモ > 面白い…そう思う。
ここは己が支配する、少女の夢の世界、そのはずだ。
それなのに、支配し切れない部分が感じ取れた。
だが、それに不安は感じない…むしろ、それを良しとする。
少女から感じる黒い力が、何をするのかは分からない。
この世界を掻き消してしまうなら、それはそれで良いだろう。
何もせず、沈黙の姿勢を取るならば、それもそれで良い。
思い通りに事が進むのも楽しいが、意外性もまた楽しいのだと。

「ふふ…そう、大きくなってゆくのを感じるじゃろう?
想いが、熱が、疼きが、そして…弾けるのじゃ、手始めに、軽く達しておくが良い」

小首を傾げる少女、その瞳を、続く言葉と共に輝きを保つ瞳で見詰め続ける。
ちらりと、僅かに視線が少女の手の甲に向けられた。
少しばかりの好奇心と、どうにか出来るかどうかの確認。
片手が、黒く染まり始める少女の手の甲に、そっと触れられる。
そのまま優しく撫で、そこから直接に力を流し込む。
力を叩き込み、無理矢理に掻き消すようなものではない。
包み込み、飲み込んでゆくかのような力の流れで。

リーゼロッテ > 「……? 弾けるって…何が――っ、ふぁっ!?」

促されるままに腕の中で淡い絶頂を感じ取ると、陰裂からはサラサラとした愛液が滲み出し、白いショーツのクロッチをしっとりとくすんだ色へ変えていく。
ぎゅっと瞳を閉ざしながら、頬を紅潮させながら快楽に沈みつつも、脳内は僅かに混乱していた。
何が起きたか分からぬまま、浅い絶頂に腕の中で小さく震えつつ、膝のちからが少し抜けそうになれば身体が沈む。
荒く、緩やかな吐息をこぼしながら彼女へ寄りかかるようにして体を支える中、手の甲へ掌が重なると、こそばゆい刺激にピクンと身体が小さく跳ねた。
一度は形となって、二度目の深い傷に境界線が砕けたモノ。
その残滓は触れなければ、今の自分に問いかけることしか出来なかったものだった。
それに触れなければ、何もなかったかもしれないが……触れる事自体が禁忌ともいえる。
そこは自身とは違う存在へ繋がる門。
触れる掌を、包み込もうとする温もりすらも跳ね除けるように青い炎が紋から溢れ出す。
誰だお前は、我等に触れるな、お前は魔か、ならば死ね、全ての魔は殺す、我が主に仇なすなら死ね、永きに見つけた宿木をどうするつもりか。
乱雑に溢れ出す低い男のような声が幾重に重なり、鴉の啼き声すら交じる。
炎は掌は焼かないが、拒む相手の魂を焼き焦がす。
魂そのものを庇う手立てがなければ、耐え難い激痛を齎す葬魂の炎だ。
己とは違うものから溢れていることを示すように、腕の中に崩れ掛かる自身は、炎に気づくこと無く虚ろな表情を蕩けさせながら、頬に朱色を浮かべていた。

タマモ > 「さて、何じゃろうか…分からんじゃろう?」

達した少女へ掛けるは、その絶頂が何かを分からないものとするもの。
確かな絶頂に震える少女の体、その感触を感じながら、くすくすと笑い続ける。
もちろん、それによって体の力が抜けたなら、抱く腕で少女を支えるだろう。

そうしながら、少女の手の甲に触れ…途端に起こる、変化。
緩やかに流れていた力は簡単に逆流して散り散りに、続くように響き渡る、男の声。
なのに、少女へと向ける笑みは変わらない。

「ふふ…くくっ…面白い事を言うではないか、のぅ?」

笑みは楽しげに、しかし深く黒く沈んでゆく。
向けられた真紅の瞳は、爛々とした強い輝きを放ち始めた。

「己の名も名乗らず、妾が名を問うお主こそ、何様のつもりじゃ?
ふふ…勝手に自己主張をしておきながら、触れられれば触れるなと文句を言う…
妾と同じくして、宿る体が居なければ存在出来ぬ、その相手の存在も知らず死ねだの殺すだの…
己が何を言っているのか、理解しておるか?
死ねと言うならば、死ぬ覚悟を。
殺すと言うならば、殺される覚悟を。
まぁ、お主は持っておらんじゃろう?若造が」

少女を抱える腕は、少女の体を崩れぬように、壊さぬように。
だが、腕から発せられる炎には、その存在を知るだけでも掻き消されてしまう程の威圧感を放ち始める。
本来は魂を焼き焦がす炎は、身に触れようと、魂までは届かない。
何千年もの年月を、そして今もなお蓄積される憎悪のなせる業か。
…だが、それだけだ。
実際にそれを行使しようとする相手に対し、己はまだ手出しまではしていない。

リーゼロッテ > 快楽に沈む脳裏に、薄っすらと砂嵐が幾度となく走る。
その向こうにいる自分は黒く、何かを思い出させられる気がした。
目の前の出来事をぼんやりと見つめていると、青い炎が記憶を呼び覚ます。
薄暗い地下、壊された友人達、壊れていく自分。
……そんな世界に絶望を吐いて、自分が呼び水になってしまった事を。
炎の色が吸い込まれていくかのように、青い瞳の深みは一層強まっていく。
深海の様な濃い青色へと刻一刻と染まりながら、ぼんやりと嬉しそうな彼女を見つめる。

「……死は静かな月夜の安らぎを。壊れた…魂が目覚めるまで……眠るだけ。闇には……罰を、焚刑は魂を焼き払う」

彼女の反論に応えるように、紋ではなく自身の唇から言葉を紡いでいく。
古傷が開き、それを焼き塞いだ足跡に触れ、そして尚もそれを問うなら砂嵐の向こうがはっきりと見えていく。
姉と慕う人に助けを求めて、心に描いた自分の成れの果て。
ぐっと彼女の方に手を重ねながら、自身の両足で確りと立ち上がると、濃青の双眼が感情を失った顔でじっと見上げつつ、”そして”と呟いた。

「巣食う魔を焼き払う……浄化の炎」

鴉羽がはっきりと象られた瞬間、炎は自身を包み込んだ。
彼女が自身に施した術を焼き払いつつ、衣類も燃え尽きる様に姿を変えていく。
真っ黒な喪服の様なクラシカルなワンピースドレスと、黒いミニハットと顔を覆うような黒レースのヴェール。
現実の世界でもその格好へと変わりながら夢から抜け出すと、表情は普段のような変化あるものへ戻っていった。

「……タマモちゃん」

以前とは違う彼女と、そして自身を惑わせて抱こうとした感覚に戸惑いを顔に浮かべつつ、瞳を震わせながら彼女を見つめる。
自身の中に眠っていた鴉たちの声が耳元にまとわりつき、頭痛に耐えるように眉を潜ませながらも、彼女を見つめていた。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からリーゼロッテさんが去りました。
タマモ > 【これにて中断、そのうちに再開】
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からタマモさんが去りました。