2016/02/20 のログ
ご案内:「洞窟の様な場所」にリーゼロッテさんが現れました。
■リーゼロッテ > 九頭竜山脈からほど近い場所、麓で治安を守るチェーンブレイカーと賊達はまさに犬猿の仲と言うよりは、相容れぬ存在とでもいうところか。
ともかく、勝手に整備なんぞしおってと要らぬ誹りを浴びせられながら山道の警備員達が客共々急襲を受けてしまう。
巨大な隼の足に掴まった屈強な戦闘員達を連れ、拠点を飛び出したのが夕方頃。
日が暮れる前には彼らを戦場の傍で急降下しつつ、地面を滑るように降ろし、旋回して戦闘を見守るだけだったのだけれど、鬱陶しい鳥と少女の存在へ賊達は矢を射かけた。
何時もなら当たることもない攻撃が、運悪く避けた時に命綱を絶たれ、身を翻した隼から少女は落下してしまう。
幸い、風の魔法で減速しながら着地出来たものの…ぽっかりと口を開けた穴へ落ちてしまい、そこは異質な世界となっていた。
生きた肉の様な壁、甘ったるい香りが何故か漂い、陰気な魔力の気配が異様に濃い。
腰に下げたカンテラに明かりを灯すも、グレー色の肉壁が脈動するさまを見て、ぞぞっと悪寒に身を跳ねさせた。
「な、何なの、ここ…」
隼に助けに来てもらわないとと思念の通話を試みるも、まるで電波障害のようなノイズばかりが脳に響き、頼りになる相方の声が聞こえない。
完全に孤立し、狭くライフルが動かしづらいという最悪なロケーションも重なれば、心の中に恐怖が少しずつ広がっていく。
「大丈夫…きっと出口があるから」
夜の闇が見えていた空の穴は何故か塞がっている。
歩いて出口を探すしか無いと、ライフルのベルトに肩を通して背負う。
代わりにフリントロック式のピストルを手にすれば、銃口へ何時でも放てるよう、魔法弾の陣を発生させれば、にちゃ、にちゃと気色悪い足音に顔を顰めながら歩き始めた。
■リーゼロッテ > 魔族が作った新手の罠か何かかな と、それらしいことを考えながら進むも、肉に近い感触の床と得体のしれない粘液が靴底に絡む耳障りな音がじわじわと正気をこそぎ落とそうとするかの様。
気持ち悪い、と心の中で何度も呟きながら歩き続けると、不意にぞくりと体に熱のこもった痺れが走った。
「…っ!?」
ふらっとする体、崩れる体を支えようと足を前に、ぐっと地面を踏みしめる。
下腹部の奥底から這い上がるような甘い痺れの正体ぐらいは知っているものの、何故それがこんな危なっかしい場所で感じるのかが分からず、頬を上気させながらも困惑の表情を浮かべていた。
「……この香り…?」
場所に似つかわしくない香り。
甘い香水に似たそれに媚毒が混じっているのに気付くのが、少々遅かった。
銃口に宿した魔法弾の陣を消すと、代わりに緑色の魔法陣を発生させ、胸に手を当てながら上に向けてトリガーを絞る。
緑色の粒子が自信に降り注ぎ、体の中に染みこんだ毒素を浄化していく。
しかし、フィルターの様な効果はなく、この魔法を解けばいつでも媚毒が体を蝕むのは変わりない。
先制の手段を失いつつも、歩く度に振動で疼く下肢に震えながらも、一歩ずつ歩み続ける。
■リーゼロッテ > 歩き続け、どれぐらいの時間が経ったかもわからない。
外界と完全に遮断された密室は、時間の感覚も狂わせていく。
そうして辿り着いたのは開けた場所、天井こそ低いものの、大きな屋敷の食堂ぐらいは軽くありそうな広さ。
中央でうごめいている何かを見つけると、何気なくカンテラの明かりをそれにかざした。
「ひっ……!?」
甲高い悲鳴を押し殺す。
色白の顔があっという間に青ざめていき、カンテラを持つ手が震えると明かりがゆらりゆらりと、蠢く何かを照らした。
それは同じぐらいの年頃の少女の姿…だったであろうもの。
肉の壁に取り込まれ、灰色の面積が増え、虚ろな顔で取り込まれてない胸から上の部分を不規則に動かしては止まってを繰り返す。
壊れた電気じかけの人形のような、気味の悪い動きも相成って正気度を刳り落としていた。
更に辺りへと散っていく光が、同じ目にあっている無数の少女を見つけていき、力の抜けた掌からカンテラが落下。
ガシャンと肉床に激突し、明かりを失っていく。
「ぃや…いや、いやぁっ!!」
絶叫とともにそこから走り去ろうとするも、壁が蠢き道を塞いでいく。
これではここに追い込まれたようなもの。
恐る恐ると背を向けた方を振り返る、背後から並ならぬ嫌な気配を感じたからだけれど…それは果たして何だろうか?
■リーゼロッテ > 少女の恐怖の時が続く…その悪夢から抜け出せたのは何時の事かは、今は知る由もない。
ご案内:「洞窟の様な場所」からリーゼロッテさんが去りました。