2020/05/21 のログ
ご案内:「ダイラスの高級レストラン」にリスさんが現れました。
■リス > 港湾都市、ダイラスは、ハイブラゼール。
その場所は、遊興の場として名高い場所で、少女の生まれた都市の目玉とも言うべき場所である。
貴族たちが沢山遊びに来て、お金を落とす故に、貴族の要望を取り入れた店がたくさんあり、ここはそのうち一つとなる。
たくさん遊んだ貴族たちが球形の場所として、落ち着いて食事ができる―――それだけではなく、密会などすることもできうる防音性を備えたお店であった。
今回、この場所を指定したのは、リスのほうである。
理由は、今宵出会う客はそれなりの立場にいる存在であり、相手の事を思い、会えてこの場所を選んだのだ。
個々の店員は、見聞きしたことを絶対に漏らすことのない者達で、その信頼故に成り立っている、信頼を失えば、沢山の貴族から攻撃され、店の店長や従業員郎党すべて処刑されてしまうのだろう店なのだ。
此処ならば、どのようなことでも気軽に話をすることができるし、誰かに聞かれることもない。
だから、少女はここを選び、待つことにする。
そして、珍しくもあるだろう。少女は、ドレスを着ていた。
それだけならともかく、王都では普段から己の姿を人に変じていたが。
今宵の少女の姿は、その頭部には一対の竜の角が背中には、赤い鱗を持つ竜の翼、そして、背もたれのない椅子から垂れているのは、竜の尾。
―――人竜としての真の姿で、いるのだ。
ダイラスは昔から少女が住んでいたこともあり、少女がこの姿で驚く人も少ないのと。
この、秘匿性のとても高い店だからこそ、見せることのできる姿、ともいえるのだ。
約束の時間まで、少しばかりの時があり、少女はカバンから手鏡を取り出し、再度、身だしなみをチェックする。
ご案内:「ダイラスの高級レストラン」にナインさんが現れました。
■ナイン > (そろそろ時間、なのだろう。
約束より少しだけ早い――という頃合いで。彼女の待つ個室、その扉が開かれる。
勿論案内の店員は、直前にしっかりと、室内へと向けた合図を忘れず。
よしんば室内で既に会話が行われていたとしても、口を噤めるだけの余裕を持たす。
そして、幾つかの物理的、及び術式的な鍵が開けられた所で漸く。入室が成るのである。
厳重極まりない、店の信用をその侭形にしたかのような、かの部屋へ。招かれた少女が足を踏み入れて。)
…ったく。此方に来ても相変わらず、仕事が終わらなくてな。
悪かった、どうやら随分と待たせてしまったらしい。
(直ぐに場を辞す、案内役の店員を尻目に。大きく肩を竦めてみせようか。
…今日はこの季節に関わらず、幾らか涼しかった為か。羽織ったストールを、空いている椅子へと放り。
改めて彼女へと目を向けた所で―― は、と。少しだけ息を零した。
こういう場所だから、だろう。改めて目を惹かされてしまう。
人であり竜である、彼女本来の姿。そして…常よりもずっと、めかし込まれた姿。
親友として、だけではない。歴としたトゥルネソル商会の名代としても、此処に立っているに違いない。
軽く頬を掻く仕草は。些か、気恥ずかしさのような物を覚えたから…だろうか。
先日、この街のオークション会場で交わした約束。
その為に店も、日取りも選んで貰ったのだが。
意味合いだの形式だのを改めて鑑みると…我ながら。女らしく、勘繰らざるを得ないような事ばかり。)
■リス > 伏せていた瞳、扉が開かれる気配にて、そっと瞼をあげて視線をそちらのほうへと向ける、今宵の来客はただ一人にて、商談の相手ともいえる。
部屋の中は大体8畳くらいの広さであり、二人で会話するには少しばかり広くあるが、周囲にある調度品やテーブル、窓から見える景色、それらを含めての広さなのだろう。
貴族としての感覚では、これで良いという事ではないか、そう思う。少女自身は、貴族ではないので、推測でしかないのだけれども。
「―――こんばんは、ナイン様。いいえ、――いいえ。
あまり来ないこの場所に思いをはせていれば、時間なんて直ぐに過ぎてしまいましたわ。
あと、すみません、先日お買い求めいただいた服装で来れなくて、あれだと。
背中が翼で破れてしまいそうになり、着れなかったのです、今回は正装で来るつもりでしたので。」
少女はさすがに好意―――多少のいたずら心があったとしても、だ、それを無為に破ったりするのは嫌なので、今回は泣く泣く諦めた。
少女の格好は、今宵に対する気負いがそれなりにある。
商売人として、彼女の友として。
最高の商売にするために、お互いに公開のない、良い取引をするために。
だから、普段は身に着けない、左手の指輪も、胸元のペンダントも、身に着けてきた、己の全てを晒して来た。
普段はヒトと同じように見えるよう細工している空色の瞳もまた。
竜眼となり、瞳孔は竜のそれであるのだ。
薄く赤く彩られた唇笑みを作り上げて、首を傾いで見せる、
「まずは来たばかりで、喉も乾いておりましょう?
何か、お飲みになります?」
そう、言いながら、鈴を持ち上げて鳴らせば、入り口とは別の扉から、冷やしたワインや、ホットワインなど、いくつかの飲み物を持った給仕たち。
どうぞ、お好きなものをお選びくださいまし、と少女は甘く笑う。
■ナイン > (窓から見える景色、それ一つ取っても。店側の意気込みを感じさせるものだ。
――ダイラスの夜景、が。一定時間毎に趣を、角度を、場所すらをも変えて切り替わる。
厳密な窓ではなく、向こう側を映し出す事のない硝子に、魔術で様々な風景が映し出されているのである。
時には景色だけでなく。室内で行われる会談に合わせ、資料や映像を映す事も出来る代物であるらしく。
密談、商談、それ等に活用されている事が良く解る。
己としては。広さ狭さよりも、そういった利便性や、調度等に現れる雰囲気が重要だ。
だからこそ。彼女に場所の選択を任せて良かったと。改めて再確認しつつ…彼女と向き合う椅子へと、腰を下ろそうか。)
私は、初めてだな。
王都の方へ居を移した、その後で。此の店は出来たらしいから。…折々戻って来る位では、機会も無いし。
……ふふ、それを言えば私も同じだし――アレは、お遊びとも言えるのだから。
亦別の機会に出来ればと。そう思っているよ。
(オークションでの買い物を思い出して苦笑する。
もしお互い、相手の為に買った衣装を、今日用いなければならなかったなら。
それはそれで己の方は…この店で無ければ確実に噂となるような、装いとならざるを得なかったのだろうし。
…何より。今日は本当に、大事な。有る意味命を預けるような事柄に、触れねばならない取引なのだから。
貴族議会に出るような…ではなくとも。王城でも屡々用いる、要は此亦正装の一つを身に着けている。
只、元々此に合わせて選んだ品物である為に。同じくオークションで最初に選んだ髪飾りが。その髪を飾っているのだが。)
嗚呼、それでは遠慮なく。――……さて。
(席に着いて直ぐ、彼女の合図で飲み物が運ばれて来る。
微かに湯気の立つ程度に温められたワイングラスを手に取れば。するすると消えていくかの如く、瞬く間に給仕は退いて。
改めて二人きりとなったなら。グラスを重ね合う為に、彼女の方へと差し出そうか。)
先ずは、乾杯。…今日という素晴らしい日と、それを与えてくれる貴女とに。
■リス > ダイラスの夜景というのは、輝いて居ると言える、享楽の多い町と為った弊害というべきか将又恩恵というべきか。
それは、其処に住まう者の感情一つに手変化する事象なので、少女としては口にすることはしない、もともと住んでいたとはいえ、今は王都に住んでいるのだから。
自分が来た時にはなかったもの、なぜ知っていたかと言えば、父親が情報を集めているから。
父親は、この商会―――トゥルネソル商会のトップ、自分以上に貴族や、有力な商人と付き合うことがあるので、こういう情報などには敏感なのだ。
(と、格好良く言えればいいのだけれど、本当はきっと新しい物好きのお母さまの所為ね。)
少女の母親は、リヴァイアサンと呼ばれる種族の竜で、海の中での生活をする竜だ、人(?)一倍好奇心が旺盛な彼女は陸に上がり、父親と出会い、そして結婚する。
父方は兎も角母方のドラゴンたちは―――質の悪いことに、母親がその群れの長であり、全員物理的に黙らせた。
その後、海運業をしていた父親は、一念発起し、トゥルネソル商会を作り上げて、一代で伸し上がった、それは、母の力もあるのだろう。
閑話休題、目を遠くしての思考を取り戻し、その新し物好きの母親のおかげで、今ここに来れているのだ、と、切り替わる景色を見て考える。
「私も初めてですわ、ここは。この町ならではのサービスでしょう。
何やら、新しい技術が使われてるとかいないとか……凄い事だと思います。
では、また次―――今回ほど、堅苦しくのない時にでも、着ることにしましょう。」
お約束いたしますわ、少女は少し整えた髪の毛、小首をかしげて、ね?と年相応の笑みを見せる。
二人きりでの密談だ、少しくらいはこのようにふるまってもいいでしょうと。
それとともに、彼女の髪の毛に光る髪飾り、それを見て、今回、着てこれなかったことに少しだけ心がチクリと痛むのだった。
「はい。
ナイン様―――グリューブルム家のさらなる繁栄をお祝いしましょう。
トゥルネソルが、少しでも、その援けになれば幸いですわ。」
持ち上げられるグラス、少女も、ホットワインを手にし。
―――ちぃん、と涼しげな音を響かせてグラスを軽く当てて乾杯を。
くい、と一つホットな赤ワインを口にしてから。
鈴を持ち上げる、ちりん、ちりん、と今度は二回。
壁の画像が切り替わる。
そこは、どこかの部屋であろう、白い部屋、其処に立つのは複数人の女性。
すべて奴隷である、その証左に、全員に首輪がつけられている。
一人は、少女たちと同い年ぐらいの。人間の少女。
一人は、牛のミレー族なのだろうがっしりとした女性
一人は、エルフなのだろう、白くつややかな肌を持った女性。
一人は、少女たちよりも年下の、蛮族と思わしき娘。
最後の一人は、人間だが、どこか気品と、叩かれ、鍛え上げられた剣のような視線を持つ、人間の女性だった
これが、今宵、少女が用意した、奴隷である。
「素性などもしっかり調べてありますわ、犯罪、戦争奴隷はおりません。
基本的に、借金の肩に奴隷になったものですわ。
―――一人を、除きますが。」
■ナイン > (グリューブルムという貴族家は。随分と以前から、此のダイラスに別宅を置いていた。
お陰で今も都市銀行に一枚噛んでおり、嘗てのお家騒動で破産せずに済んだ。
海運…というより、船舶航行の取り決めに対する権限も残っており、それが先日のハデグへの出兵では活かされた。
…もしかすれば、今は亡き己の父も。ダイラスを代表する商家であり、古参の海運業者である彼女の父と。親交が有ったかもしれない。
こういった秘密の場所で、酒を交わす機会でも有ったのかもしれない――等と。つい、想像を逞しくしてしまいそうだ。
今はこうして娘と娘。己と彼女でグラスを重ねつつ。)
近頃は頓に、魔道機械の技術が進んできている気がするよ。
何やら王都の方だと、映画…という物が作られたり。ベルカード家が好きな夢を見せる施設を立ち上げていたり。
今も急激に帝国の諸々が伝わってきているだろう?…うかうかしていると、若造でも時代に取り残されてしまいそうだよ。
そう、さな。…今日は確かに。少し、堅苦しくなってしまいそうだ。
…商談成立して、受け取るべきも受け取って。そうしたら亦改めて一席…と言っていただろう?
その時にでも。貴女の艶姿に期待するのは、後回しかな。
(席に着いて一呼吸。…此処迄、少々急いで夜間の街中を抜けてきた為。冷え気味だった肺の奥迄、温かな室温が行き渡る。
安堵めいた吐息の後で、彼女の提案…約束を、亦一つ追加するような物言いに。是非も無く頷いてみせようか。
…彼女の痛みには気が付かず。亦、若し気が付いたとすれば…気にするな、そう言った筈。
髪飾りも彼女に選んで貰った物ではあるが。それは亦別件であり、何ら約束を違えられた訳ではないのだから。
切り替え、大事、である。或いは割り振りとでも言うべきか。)
ぁは。少なくとも、今まで…貴女と交わしてきた商談は。皆、役立てさせて貰っているよ。
魔導具、宝飾、馬車、それに……ふふ。妹君には先日来、着いて来て貰っている事だし。
(乾杯を終え、グラスへと口を着けたなら。呼吸器に続いて今度は胃の奥へ、温もりが染み渡る。
漸く力を抜く事が出来た、と言わんばかり。椅子へと深く腰掛け直しつつ。
つい数日前にも、王城にて行われた祝勝会での諸々等。今現在己に着いてくれている彼女の妹について触れようか。
さて。言葉を重ねつつ、改めて、窓…めいたソレへと目を向ける。
今は、彼等ダイラスの住人達が、自らの居城を誇るかの如く。栄華を極める繁華街の夜景が煌めいているのだが。
彼女の合図が、鈴の音――実際には、其処に籠もる術的な信号だろうか――として伝わったのか。異なる画像に切り替わった。
計五人の女。…一列に並べられ、奴隷として首輪を填められた彼女等の様子は。ともすれば女囚めいて見えない事も無いのだが。
厳密には、正しい意味での奴隷、その物である。
即ち立場や身分を、売り手であるトゥルネソル商会によって握られつつも。
きちんと「商品」としての管理を施された、それこそ己等貴族のような、立場有る者に合わせて整えられた女達。
貧民街の性奴隷等に付き物の傷ましさも陰惨さも無く。確りとした人格を思わせる彼女達に。ほぅ、と小さく息を吐く。
…確かな、商品価値。それを一目で見出せるというだけで。
彼女に、その商会に、話を持ち掛けた意味が有ったという物だ。)
流石だ、な。こう早く用立ててくれるとは……思わなかった、とは言わないけれど。それでも想定以上だよ。
そして、彼女達自身の方も… ―――― ……?
(一人一人を、改めてとっくりと。
オーソドックスと言うべきか。最も、表だってメイドとしても雇えるであろう、人の娘。
豊満な肉体の内側に、頑健さを秘め。健やかな強さを目に見えて顕す、ミレーの女性。
匂い立つ程の色香を備えつつ。理知的な、恐らくは種々の術式に長けるであろう、エルフの女。
タトゥの際だった膚が、異国の風情を。煌めく瞳が溌剌さを思わす、褐色の少女。
――そして。最後の一人が、己の首を傾げてしまった理由。)
その言い方だと。…どうしても、一人、が気になるよ。
……聞かせて貰っても?
(半ば確信的に。彼女の言う例外が、最後の一人を指しているのだと思わされていた。
ほんの僅かばかり己よりも年上だろうか?その、人間の女性は。
真っ新な生成を纏っても尚隠し切れない、鋭さを。全身に、何よりもその眼差しに秘めていた。
ざっくばらんに言ってしまえば、堅気とは思えない、という奴なのだが。
それと同時に、立ち姿の所作は凛とした物。奴隷どころか、いっそ逆をすら思わせて。
…そして。何故だろう。何処か、そんな姿に。既視感を覚えてしまうのだ。)
■リス > 実際な話、どうなのだろう―――父と、彼女の無き父親は。語られたことはないし、聞いたこともない、そもそも、父親は貴族は貴族、平民は平民、その立場をわきまえるタイプだ。
そのスタンスは、今も変わらない、だからこそ、お金をたくさん稼いでも、貴族の位を買おうとはしないのだ。
今の財力があれば、貴族の子女を迎え入れて、貴族になるという事だって不可能ではないのだが―――それはしない。
そんな父親なのだ、ただ、商売上必要であれば、それを伝えてくれるのかもしれない、むしろ、自分で開拓しろボケ娘というほうが大きいやも。
「魔導機械―――あの、油要らずで魔力で動くカンテラ、とかそういうモノ、でしたっけ。
遺跡から掘られてて、出て来たものを流用するというのはよく聞きます、が……あいにく此方はメインでの取り扱いにするには。
数が少ないので高くなってしまいますから、まだ手を出せてはいないですわ。」
お恥ずかしい。
少女のモットーとしては安くいいものをたくさん売るである、そんな性質故に一品ものとかは、あまり店に置かない、こないだ、妹が持ち込んだものを置いているが、やはり売れていないのだ。
目的は、平民なので、あまり高くしても売れないし、安くて大量で、良いものという事で取り揃えてるのだった。
なので、実はそういう魔導機械など、一回で大きくお金を動かすものはまだあまり手を出せていなかったりもする。一応、後学のために、知ろうとはしているが―――。
実際、魔道具を卸してくれる第二師団の副団長様に教えを乞うぐらいか、無いだろう。
「艶姿、だなんて。ふふ、人妻を口説いてるようですわ?
それとも―――私のハーレムに、来てくださいますか?」
お友達だから、彼女の軽口に、目を細めて、そっと目元を赤らめて言って見せる。お互いの気質を判っているからの冗談のようなもの。
冗談はほどほどに、と軽く口元を緩ませて、笑みを浮かべ、そっと下から見上げて上目遣いで見つめて見せる。
ドラゴンの愛は、とっても重いですよぉ?と。
「お役に立てているのであれば幸い、今後とも、よろしくお願いいたします。
全身全霊をもって、お客様の欲しいにお答えいたしますので。
ああ、ラファルは今も、外をくるくる動いてますわ?あの子は、そういうの大好きですから。
むしろ、生き生きしてますわ、悪戯し放題だって。」
彼女が口にしないことに関しては、少女もまた口にはしない、野暮なこともあるし――。
その代わり、妹の話題に対しては、軽く笑い、答えて見せよう、今も妹は、彼女の周囲を守っている。
彼女を害そうとする何某に、悪戯と称した酷い目に合わせているのだろう、心を折るような勢いで。
それもこれも、彼女の師匠の教えを守っての事とのことだ、敵の嫌がることをたっぷりするらしい。と。
祝勝会の時は、師匠も来ていたらしく張り切っていた模様、最後には、御馳走美味しかった、という大変残念な感想だったとも。
「ええ。ええ。
先の四人に関しては、先日送っておいたお手紙に記載されたままでございます。
ただ、最後の一人に関しては―――。
借金での、奴隷では、無いのですわ。」
貴族との買い物というのは、基本的には、まず相手の要望を聞いて、そのうえでいくつか選び、どういうモノを持っていくのかをちゃんと先に伝えておいて、それを実際に見て、貴族が買うかどうかを決める。
平民のように、店に来てみながら買うというのがすべてではない、敵が多い、忙しいなど、いろいろ理由はあるだろう。
故に、このような方法もあるのだ。
そして、最後の一人に関しては、少女は恥ずかしそうに言う。
あらかじめ伝えられなかったのは己の不手際である、だからこそ、説明の必要があり、それをするのは、商人としては未熟という事に他ならないから。
あくまで、少女の商売の中で、という話ではあるが。
「最後の一人は―――元王族です。
政争に敗れ、貴族の位を剥奪された一族、その姫です。継承権などは、判りません、さすがにそこまでは調べきれませんでしたが。
今まで表に出ていなかったのもあり、おそらく末端の方ですわ。
拳闘士として、アケローン闘技場で戦っていたところを見つけ、買い付けました。
もと、姫であることは確定しておりますので、礼儀作法に関しては問題はなく。
扱い的には、借金の奴隷ではなく、犯罪の奴隷になってしまうのでしょう。
ただ、ナイン様の求める水準に一番近しいので、敢えて、入れましたわ。
あと―――すでに喉を潰されて喋ることが能わぬようになっております。」
そう、彼女の野中にあるとするならば、それなりの実力、それと、どこに連れても問題はない所作。
元貴族の姫であれば、そういった所作は慣れているだろう、そして、アケローンで無名ではあるものの最近勝ち始めている期待の―――とある意味であれば失意の新人。
故に、少女は彼女を買い、そして、商品として磨いた。
しかし、重大な瑕疵があり、それもまた、伝えておくことにする。
彼女の視線の鋭さは、奴隷に落ちて間もないもの特有の生き残る意志と、復讐の炎というところだろう、と。