2019/05/18 のログ
ご案内:「喫茶店 Nodding anemone」にセレーナさんが現れました。
セレーナ > のっそり、とも。びくびく、とも。
あるいは、おずおず、ともとれる、おっかなびっくりという様子での入店。
そんな感じで店に入ってきた少女に対し、店主は小さく頷き、目線だけで待ち合わせの相手の場所を教えてくれて。
少女は、その姿を見て、安堵のため息を漏らした。
そのまま、ととと、と近づき、イスに座れば。

「その、ありがとうございます、店長。
 お時間、いただいてしまって」

まずは、そんな挨拶を。

リス > 「ふふ、来たのね、こっちよ、セレーナ。」

 本来であれば、ここは会員証が必要なお店である、が、今回はちょっと無理を言って通してもらえるように取り計らっているのだ。
 ここの客は、女の子だけである、だから、彼女が怯えるようなものは何一つない。
 それよりも、彼女の急な連絡のほうが重要だから、邪魔の入らない店を選んだのだ。

「いいえ、すごく切羽詰っているようだったし。
 どうしたのかしら?

 もし、話を聞かれたくないなら、奥の部屋を借りるけれど?」

 本来であれば、女の子同士がイチャイチャするためだけの場所である。
 そして、もっと深いことをするために、奥の部屋がある。
 完全な防音の部屋で、そこに行くということは――――。
 まあ、それは深く詮索するものではないだろう。

 どうする?と目で問いかけながら、ウエイトレスを呼ぶ。

「何か、飲む?」

 走ってきたのだろう、息が上がっているのが見えるし、まずは落ち着きましょうね、と。

セレーナ > 「ど、どうも……」

入店の気配に気付かれ、相手から誘われ。
少女は、小動物的な気配のまま、相手に近づく。
なんというか、いつもよりも尚更小物といった様子だ。

「え、あ、え、っと。その……。
 だ、大丈夫、です。ハイ」

着席すれば、相手に何があったのか、と聞かれ。
少女はしどろもどろという様子で短く返事を返す。
相手がウエイトレスを呼んでくれたのであれば。
少女は、ちら、とウエイトレスの方を見ながら。

「あ、い、いただきます。その……。
 わ、私も冷たいコーヒーで……」

緊張したまま、そう注文し。少女は、何度か深呼吸。
その後、相手を上目遣いに見るようにし。

「そ、その。実はお願いというのは。
 ……お、お給料を、上げていただきたい、といいますか」

いよいよ本題。少女は、それはもうか細い声でそう頼み始める。
視線は落ち着き無くあっちやこっちへ行ったり来たりだ。

リス > もじもじとしている様子の彼女、まあ、店が店なので仕方の無いところもあるだろう。
 自分としては、別に普通の喫茶店と変わり無い……むしろ、男が来ない分安心できる場所という認識があるのだけれど。
 彼女はそうではないらしい。
 人それぞれである、という事なのだろう、ウェイトレスにアイスコーヒーを注文する様子を眺めて。

「給料を?」

 彼女の言葉に、コトン、と首をかしげる。
 とはいえ、彼女は長く勤めてくれているし、確かにそれはこちらから話すべきでもあっただろう。
 少女は小さく笑ってみせた。

「ごめんなさいね。それは、私から言うべきこと、だったわね。
 セレーナも、いつも貢献してくれているのに甘えていたわ。」

 彼女の言葉に、少女は申し訳ないわ、と頭を下げた後。
 視線を上げる。
 じっと、彼女のことを見て、さて、とつぶやく。

「そうね……月で計算していたから。
 今までは3000だったわね。
 4500でどう?」

 彼女の能力は、間違いはない。
 堅実に自分に見合った仕事をこなしていく、その安定性は買うべきところ。
 それなら、と能力を見越して、提案を。
 ここからは、彼女の交渉次第。

セレーナ > 大恩ある相手に、これから随分なお願い事をしなくてはならない。
そんな緊張感と罪悪感が、少女のことを怯えさせているのだが。
いざそれを口にしてしまえば、相手が首をかしげ。
そこにある意図を読み違えた少女は。

「いやあの、すみません雇われ風情が生意気を言ってしまって!
 でも、あの、お金が、必要なんです!」

慌てて言い訳をし始める少女。
だが、相手が笑顔になり、頭を下げてくるのを見れば。
その早口が更に加速することになる。

「いえ、気にしないでください! って、ていうか私こそ。
 本当に、申し訳ないです。その、あの」

やはり、金銭のことになるとなかなか気分良くは話せない。
ましてや、雇用主に頭を下げさせるなど、少女としてはしたくはなかった。
だが、更に。相手の提示した金額を聞けば。
少女は黙り込んでしまう。

「……。え、っと。その。嬉しいです。
 ただ、その……。特別な、手当て、みたいなものといいますか。
 あの、お金を借りる形でもいいんですけど」

相手の提示した額に不満は無い。いや、むしろ身に余る光栄ともいえる提示額だ。
しかし、少女が今欲している金額……というか。事情に照らし合わせると不安が残る。
少女は、自ら借金を頼み込みはじめる。これまでの少女からは想像もできない様子かもしれない。

リス > 「ええ。
 そうね、子どもを育てるにもお金、生活するにもお金。
 確かに、お金はたくさん必要、よね。」

 彼女は既に家庭を持っていて、生活をしている。
 子供にかかるお金は莫大になるものである、そのために稼ぐと言っても過言ではない。
 こう、家の三姉妹を思い出す。
 いろいろな意味でお金を使いまくってるわよね、と。
 お金持ちで良かった、と思う瞬間である。

「……ふむ?」

 しかし、何かが違う模様。
 彼女の様子は、少女には某か、来るものがあった。
 良くないたぐいの物である。
 彼女のような状態の人間をよく知っているのだ。

 とはいえ、だ。
 大事な従業員でもある、話をまず、聞くだけ聞いた方がイイだろう。
 そのあと、どうするかを決める。

「話してごらんなさい?
 事情遺憾に寄っては、力を貸すわ。

 しかし、お金を借りる、ということはどういう事か。
 ちゃんと、考えてね?

 お金は、身を滅ぼすモノよ。」

 別に、カネを借りること自体には罪も罰もないだろう。
 しかし、借りるということは返す必要がある。
 金貸しもする少女が故に、身内には厳しくし、貸さないのだ。

セレーナ > 「は、はい。本当に、そこなんです……」

まさしくその通り。流石は雇用主、お金に関してのことであればお見通しという訳だ。
実際、まず少女の財布事情で一番の圧迫はまず子供なのである。
とはいえ、今の問題は子供の養育費だけではないのだが……。

「……はい。実は、その。
 ……最近、夫が仕事で大怪我をしてしまって。
 今は治療中なんですけど……。
 その治療費もかかるし、夫の収入もなくなるしで……」

相手に促され、訥々と話し始める少女。
ことは夫が大怪我をしたことに始まった。
仕事どころか、日常生活を送るのも困難な状態。
治療費に、養育費。自身の仕事にかかる諸経費。
夫のケガが治るまでどれだけの時間がかかるか分からないので、貯えというか、余裕を持っておきたい。
そんな事情を話している少女の顔は……すっかり疲れた人妻の顔。
顔色も良くは無いし、明らかに疲れている。

「……そんな、感じで。
 今までだって、十分お給料は貰ってたのに。
 それが、どんどんどんどん減っていって……。
 もう、私どうしたらいいのか……!」

顔を覆い、頭を振る少女。
そもそも、ちゃんとした生命としてこの世に生を受けたわけではないこの少女にとって。
常識などの知識はあれど、様々な経験が不足している。
こういった状況も、初めて経験するものであり。どうしたらいいのかまったくわからないのである。

リス > 「なるほど、ね。」

 少女は、軽くうなづいてみせる。
 よくある話ではある。
 まずは、アイスコーヒーを軽く一口。

「あまり、他人の家の台所事情に首を突っ込むのは翼はないと思うのだけれど。
 分かったわ、貸す貸さないは、まず一先ずを置いておきましょう。
 色々と聞かせてもらうわ。
 その上で判断するからね。」

 そう、言いながら彼女の話を聞くことにしたのだが。
 聞くにしても、やはりよく聞く話なのである。
 ただ、彼女は相談できる相手が居るのが、幸運なのであろう。
 不運なものは、相談できる相手もおらず、騙され違法レベルの借金を背負わされて娼館に売られてしまうというのもお約束というレベルであるのだ。

「そうね……。
 旦那さんの看護で仕事もできなくなっている……か。
 分かったわ。

 だったら。
 ――――お金は貸さないほうがいいわね。」

 それは、お金で解決する問題という訳ではなさそうだ。

「まずは、子供を私のところにあずけなさいな。
 で、旦那を施術院に。
 そうすれば、仕事ができるようになるわ。
 仕事のお金があれば、施術院のお金などは、やりくりは出来るでしょう?

 そして、給料の件だけれど。
 明日改めてお店に来なさいな。
 給料上げるべきだった時からの分……半年分くらいかしら?再計算し他差額を渡すから、それがあれば、問題はないはずね?

 ――――そのうえで、お金を借りるという選択肢は出てくるかしら?」

 

セレーナ > 話をしきってしまえば、緊張感は消失していた。
変わりに在るのは焦燥感。
口にすれば、自分の情況を理解してしまい、酷く憂鬱になる。

「……ごめんなさい、こんな話をして……。
 その、楽しくないでしょうし、迷惑ですよね」

どんより、という様子で喋る少女。
しかし、相手の語る言葉に驚いたように目を見開くのだが。

「……それ、って。いや、でも。
 それは店長に迷惑が……。
 いえ、そうしてもらえると、助かるんですけど。
 ……あぁ、その。なんて言ったらいいのか……」

相手の提案を聞けば驚きしかないが。
しかし、その話は実に現実的な話であった。
少女は、相手の提案に感謝し、涙を滲ませる。
相手のことを真っ直ぐに見て、何度も何度も頭を下げる。

リス > 「いいえ、いいえ。
 だって、従業員のケアも、雇用主の役割よ。
 必要以上に踏み込まないというのも、必要ではあるけれど、ね。」

 とはいえだ、困っている店子を見捨てるのはそもそも雇用主としてはあるまじき者である。
 これは両親の教えでもあるから、それは正しいことなのであろう。
 楽しい楽しくないで言えば、楽しくない話だが。
 必要か、必要でないか、で言えば、必要な話題でもあるのだ。

「お金を借りる相談しておいて何をいまさらよ。
 別に、その程度は迷惑というレベルではないわ。
 ちなみに、どんな子?暴れたりする子?

 状況次第によっては、うちの家かしらね。
 大丈夫なら、ミレーたちと同じアパートに、私の嫁の弟や妹がいるから、そこに預けるつもりだけれど。」

 彼女の旦那との子供、どんな子なのかは聞いてなかったし。
 危険度が高いというなら、一番強力な竜のいるリスの家がいいだろうと思う。
 あそこでも、子守はできるし、うん。

「ふふ、恩は別の時に返してもらえればいいわ?」

 今は恩を感じる時じゃなくて、旦那を心配して、癒す時でしょと。

セレーナ > 「……は、あぁぁぁぁ……」

相手の気持ち良いまでの言葉に、少女が息を漏らす。
そのまま涙目で相手を見る表情は、聖母か女神を見るような色で。
元々尊敬する相手ではあったが、いよいよ心酔という感じにもなっているかもしれない。

「それは、いえ。まだまだ、赤子なので……。
 夜泣きもしないですし、大人しい双子です、はい。

 ……その、ぜひ、お願いしたいです」

既に細かい計画までできている辺り、この店長は有能が過ぎるのではないか、とも思うが。
少女はその厚意に甘えることにする。
しかし、そこでこの恩についての話となれば。

「……あ、あのぅ。その。も、もう一つ。
 お願いしたいことがあるんですけど」

さらにおずおずと切り出そうとする少女。
もうここまで来れば、恥も全てさらけ出そう、という心積もり。

リス > 聖母でも聖女でもありません、単なる商売人であり。
 お金を貸すことを渋って別の解決方法を見出しただけです。
 そもそも、竜ですから。

「夜泣きもしないって、それはそれで心配になるわね。
 とはいえ、まだ赤ん坊なら、大丈夫ね。

 じゃあ、私の嫁の弟妹と一緒に、ミレーたちのアパートメントに入れておくわ。」

 じゃあ、後でそのための手続きをしておかないとダメねと、少女は思う。
 彼女の弟妹は、家令や執事の勉強もしている、いい経験になるわね、と。
 ミレーの先輩たち、特に牛のミレーなら乳も出るだろうし、と。

「もう一つ……?」

 切り出す彼女、そのお願い。
 意表をつかれて目を丸くしながらも、どうぞ、と先を促す。

ご案内:「喫茶店 Nodding anemone」からセレーナさんが去りました。
ご案内:「喫茶店 Nodding anemone」からリスさんが去りました。