2019/04/30 のログ
ご案内:「バー・マスカレード」にティエラさんが現れました。
ご案内:「バー・マスカレード」にフラニエータさんが現れました。
フラニエータ > 貧民地区にあるバー、マスカレード。女は珍しくこんな所で飲んでいた。
カウンター席の一番端、足を組んで頬杖を突く姿はいつもと変わらない。
そんな女は店主と会話しながら、酒場の中を見渡していた。

「…殺風景な店ね…少しは華やかさが欲しいものね…」

店主は女の言葉に肩を竦めると、そのまま扉に向かい、表に出て、開店を知らせるプレートを扉へとぶら下げた。
時刻は昼過ぎ。
本日は何故か、何時もより早い開店だった。

ティエラ > 貧民区のバーで毎日踊りを行う踊り子が一人。普段は行きつけのバーで踊りを披露するのだが。
 急にふらっとやってきても、場所がなかったりするので、いつも早めに酒場に行ってマスターに許可をもらうのが女の日課。
 何処も開いてなかったりした場合、断られた場合は飛び込みでマスターに売り込むのだけれども。
 最近は、とある酒場のマスターと意気投合し、其処の従業員となった。
 とはいえ、今までの癖というのはなかなか抜けず、昼間、いつも交渉する時間帯にその酒場に足を向けてしまった。

「いけない、いけない……って、あら?」

 酒場、マスカレードに到着したとき、何時もはあいていない時間帯、なのに、今日はすでに開店している。
 そんな話は聞いていないが、何かあったのだろうか。
 疑問を浮かべながら女は、ひょこ、とカウベルならしながら扉を開けて、中をのぞくのだった。

フラニエータ > 扉が開けば店の中から二人の視線が彼女へ突き刺さる。
一人は店主の視線で、本日この場で彼女に踊ってもらう約束になっている為か歓迎ムードで暖かいもの。
もう一人は女の視線。誰この子と言わんばかりの冷たいもの。

「…確かに華やかさが欲しいとは言ったけれど…」

まさかこんな小さな酒場で、踊り子が踊る…それは想定外だった様子。
女は頭を抱え、小さく頭を振る。
そんな女を無視する様に、店主は彼女に向かって言葉をかけた。
『彼女ココのオーナー。一応顔見せしといた方が良いかなって。うん。』
そう、らしい。

ティエラ > 入ってくるなりの視線に、女は、目を瞬かせる。
 顔なじみにもなっている、店のマスターと、その近くには怠惰な雰囲気の見知らぬ女性。
 視線の色も歓迎のものと、懐疑のものとの二種類に、少々の戸惑い。
 状況が読めない女に、入り込んでくる、女性の声。
 思い悩んでると言うよりも、マスターの上司というところなのだろう。
 こういう場面はよく見るのでなんとなく察するのだった。
 それを裏付ける店主の声、オーナーらしい。それなら挨拶しなければなるまい。

「こんにちは、はじめまして。
 ティエラ・フローレスと申します、ここで、ウエイトレス兼踊り娘として雇われておりますわ。
 どうぞよろしくお願いします。」

 女は、笑みを浮かべ、ぺこり、とお辞儀を一つ。
 どこかで見た記憶が、残るがすぐにぱっと出てくるものでもなく。
 ただ、それを露わにするにしても、もう少し確証がほしいわと、内心で。
 今は、猫をしっかりとかぶるのだった。

フラニエータ > 彼女の自己紹介を聞けば、冷たさを纏った女の視線は彼女から店主へ。
いつの間に雇った、と言わんばかりの視線だ。
暫く店主と女の視線での争いが続いたが、どうやら女が折れた様で、あからさまな大きなため息を落とす。

「…――ふぅん…男受けしそうだこと…」

再び彼女へ視線を戻せば、彼女の体を下から上へ、そして上から下へ眺める女。
健康的な肢体、葡萄色の瞳、長い髪。それらが女の目に入れば、当然女は嫉妬する。
己より若く、美しい娘が目の前に居るのだから…蛇の様な視線を彼女に送っていた。

「ティエラ、ねぇ…ティエラ?…――…」

女は彼女の名前を数回呼ぶと、目を見開いた。彼女が一体どういう人物か悟った様子。

「…――奥の部屋、借りるわよ?…ついてらっしゃいな…」

最初の言葉は店主に向けて。次の言葉は彼女に向けて。
女はその言葉を残すと席を立ち、カウンター側に回り、その奥にある扉を開いて中に入っていく。

『…何か気に障ること、したの?』

店主は彼女に向かってそう告げると、奥へどうぞと掌でカウンター奥の扉を指した。

ティエラ > 「………。」

自分のことを見る視線に、女は既視感を感じる、というのも、自分と同じ種類の視線であるからだった。
 言い方を変えれば、同性愛者の視線というものであろう、彼女の嫉妬まみれた声は、ある意味普通の同性のそれよりも、強いのだろう。
 見た目若く美しければ恋人もできやすくなる、自分も同じようにきれいな女性がいれば同じ感想を抱くのでわかるのだ。
 とはいえ、声の調子が変わってきた、何かを思い出そうとしているような。
 やはり、と思う。
 ジプシー故に旅をしている一族であり、それはいつも同じとはいえない。
 家族親族であろうが道を違え別の場所を進むこともある。
 幼い頃に別たれた姉が居たりもするものである。

「はい、おねえさま。」

 付いてこい、と彼女は言うので、女はにこやかに頷いて、歩き始める。

『今の会話のどこかに、気に障ることがあったら……大変よね?』

 ただ、挨拶をしただけである。
 用件が別っているから、女はマスターに、大丈夫、と軽くウインクをして見せて、そのまま奥へ、と。

フラニエータ > 店主は何が起きたのか分からない、といった表情。彼女の言葉に首を傾げるだけだった。

扉を開けると廊下がある。すぐ右手には店主の名前が書かれているプレートがぶら下げられている扉。
女はその扉を無視するように奥へ進むと、もう一つ扉があった。
それを開き、中に入っていく女。扉の先には部屋は無く、下り階段があるだけだった。どうやら地下室がある様子。
壁にかけられているランプを手に取り、火をつけると彼女の方を振り向かずに階段を降りていく女…
階段を下り切れば、そこにはまた扉があり、女は胸元から鍵を取り出し、その扉を開けた。
中に入れば女は開口一番、

「…久しぶりね。――もう何年前かしら…元気にしていた様子だけれど…」

ランプの火を部屋の壁にかけてあるランプへと移し、灯していけば
浮かび上がるのは大きなベッドが二つ、四人掛けのテーブルセットが一つ、ソファが一つ。
女は客間の様にも見えるその部屋のソファに座る。

「…この店には…踊り子として来たの?それとも――…妹として来たの?」

足を組み、肘を太腿の上に乗せ、顔を支えながら、怪訝そうな顔を彼女へ向けた。

ティエラ > 姉に連れられるがままに、女は移動をする。
 マスターの生活圏なのであろう、その家の中、マスターの部屋のネームプレートの奥に、もう一つの扉。
 その場所は地下に続いており、先んじて降りていく女性をついて行くように歩く女、そのときも一切こちらを見ない彼女。
 降りきった先にある扉、鍵を開けられて開かれれば、招き入れられる。

「ええ、お姉様もお美しくなられて。」

 似ていない姉妹、とはいえ、姉は姉である。
 自分が先祖返りしたから、似ていないだけなのであるのだ、そういう意味では、家族の誰とも似ていないのが娘である。
 姉が、ソファに座るのを眺めて、ベッドに腰をかけた。

「踊り娘としてきましたの、だって、お姉様のお店なんて、知りませんでしたし。
 それに、一族は昔から、別れた者のことは探しはしませんでしょう?
 それが、どのような別れであろうと、別れは別れだ、と。

 お姉様にお会いした瞬間に、妹になったっただけ、ですから。」

 お姉様だって、私のこと、探していませんでしたでしょう?
 女は薄く笑い、目を細めて尋ねる。

フラニエータ > 「そう…偶然なのね、それなら良いわ…」

女は手招きをして己の横へ座る様に促しながら、彼女の言葉に対してそう答えた。
偶然とは言えど、この店は普通の店ではない。
表向きは場末のバーだが、後ろ暗い人々の隠れ家にもなっているのだ。
常連の殆どが一般人の振りをした情報屋や盗賊等で、やはりここは貧民地区だった。
その事を彼女に伝えるかどうか…いや、この場所で働く限りは、やはり伝えないといけない。

「――今…私、悪い事を沢山しているの。
少なくとも此処で働けば…そういう事に巻き込まれる可能性があるのだけれど…
本当に此処で働くの?」

いつもの様にねっとりとした口調だが、心配そうな視線を向けるのは、実姉だからだろう。
出来るならこんな所で働いて欲しくは無い。それが本音である。

ティエラ > 「ふふ、そもそも、『魔女』はその存在を発覚されてしまえば、魔女狩りに、会うのですよ?
 悪いことをしていても、していなくても同じですわ。
 気にするような物でもありません。
 それよりも、偶然とはいえ、血のつながる姉に会えたのに、また、別れろ、と言う方が、私は怒りますけれど?」

 心配してくれる声は、血縁である自分のみを案じてのこと。
 そもそも、一族が流浪の民となっているのは、魔女狩りのせい。
 後ろ暗いことをしていなかったとしても、犯罪者と同等の扱いを受けていたから、身を隠し、身分を隠して生活していたのだ。
 それを今更犯罪どうこう、気にするほどのことでもない。
 生まれついて犯罪者として、認定されてるのだから。

「それに、私ならば、お力になれますわ?」

 魔女としての力、姉にはない魔法の技術やちしき、薬の作成。
 こんな優良物件をてばなしますの?と小さく笑って見せようか。

フラニエータ > 女も少々魔法を使える。だから魔女狩りなどという得体の知れない迫害を受けて来た。
しかし、彼女は己よりもその実力は上、だからこそ己以上の迫害を受けて来たのだろう。
あの地獄に居るよりも、今の方がマシ…

「…子供の時から…貴女、本当に生意気だったわ…そうね、私も別れるのは嫌…
魔法の事は他の人に喋っちゃダメよ?…姉妹というのも…内緒にしておいた方が良いわね…
――ああ、でもお姉様と呼んでも問題は無いわ。
…そう呼んでくれる子…沢山居るから…ククク…」

柵にもなる可能性がある、血の繋がりという関係は伏せておいた方が良いだろう。
そう思った女は、彼女の唇の前に己の人差し指を立てて微笑んだ。
そして力になる、という彼女に対して、

「――私の為に働いてくれるの?…それなら姉妹で…堕ちましょうか…」

口角を少し上げて妖しくも妖艶に微笑みながら、
怪しくも悪辣ともとれる言葉を彼女に向けて囁いた。

ティエラ > 人を助けるために魔術を使った、そしたら石を投げられ、捕まり、火あぶりにされかけた。
 これは、己一人のそれではなく、一族の一部に受け継がれるのだ。
 魔女の一族だから、魔女だから、人は、教会は、その迷信に踊らされ、殺しにかかってくる。
 そして、幸か不幸か、ティエラは先祖返りをして、一族でも有数の魔力を持つ存在であった。
 それ故に、魔女である事を隠す事は、徹底されていたのだ。

「あら、酷い、お姉様こそ何時も、私のこと虐めてたくせに?
 それは、無理かしらね、今はむしろ冒険者に登録し、魔法使いと登録してますの。
 その方が、いろいろとやりやすいので。

 ―――いったい、どれだけの妹が居るのかしらね、お姉様?」

 素朴な村とかであれば、魔女とばれれば危険だが、大都会、冒険者ギルドに所属すれば、魔法使いだと偽れば、魔法を使っても其処まで大きな騒ぎにはならない。
 なので、今は冒険者として身分をもらってるし、魔法も使っているので今更隠すのは無理、と笑う。

「墜ちる……いい響きですわね、で、どちらの意味で?」

 目を細めて女は問いかける。
 自分の口元に当てられた人差し指、薄く唇を開いて、ちゅぱ、と音を立てて舐めてみせる。

 姉の盗賊などの犯罪者の片棒として犯罪者として墜ちるのか。
 血の繋がった姉妹で体重ね愛し合う背徳者として墜ちるのか。


 妹の目は、そのどちらでも、構いませんわ?と雄弁に返答していた。

フラニエータ > 幸か不幸か、彼女はこの町に訪れ、己と会うことが出来た。
逞しくも美しく育った彼女は、己の庇護など必要無いのかも知れない。
しかし、彼女が必要としなくても、女は彼女を姉として支えようとするだろう。

「あら、虐めた覚えは無いのだけれど…貴女も喜んでいたでしょう?私の勘違いかしら…?」
…そうなの…冒険者…それなら問題は無いわね…逞しくなったこと…」

何人、の問いには指を順に折って見せ、さあ、分からないわ、等と宣って。
久しぶりの姉妹の会話は常識的なそれとは全く違うが、女は楽しんでいるようだった。

「ティエラは…どっちの意味が…イイの?」

指を舐められればその指で唇を撫で、弄び、くすくすと笑って見せた。

ティエラ > 「あら、そうだったかしら?」

 虐めていたのを喜んでいたという言葉に、軽く女は返答を帰す。
 姉との気の置けないやりとりは、やはり楽しい物であって。
 いいわけも弁明もしない姉には、しりがる、と言い切ってみせる。

「お姉様?質問に質問を返すのは、愚かですわ。

 そもそも―――――」

 ここから始まるのは、悪巧み。
 その内容を知るのは、姉と、妹のみ――――。

ご案内:「バー・マスカレード」からティエラさんが去りました。
ご案内:「バー・マスカレード」からフラニエータさんが去りました。