2023/03/12 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 亡霊桜」に八蛟さんが現れました。
■八蛟 > ◆
冬も終わりを告げた時期
花虫が増えるにはまだ早い。
そんな折、最近また亡霊桜が現れ始めたという噂が出始めた。
この桜 何もない自然地帯の何処か 人が通り道や届く場所に現れる。
不気味と思う者は本能が何かを囁く。
鈍いものほど、目を奪われ足を止めて眺めるかもしれない。
それが亡霊桜の狙いであるし、結末はやはり桜。
求める物は変わらない。
しかし、それも上手くいったらのこと。
都合が全て噛み合わない限り、この亡霊桜はただの見栄えのいい柳桜の群れとなる。
今夜は鬼がその噂を聞いて、肩に担ぐには壺酒二つ
縄で締める素焼きの壺には “薔薇人”“酔蛇” と筆で書かれている。
酒は多めがいい。 月も真上をいくどころか、今はまだ土に近い。
暗い空の中で白桃に染まる柳桜 垂れるそれが視界の上を一杯にしており
後から現れるだろう月に浮気をさせるつもりはないらしい。
「ハハッまた一段と、咲いてるじゃあないか。」
貌 両腕 躰 傷の無い場所がない鬼が一人、太い鬼歯を機嫌よく開いて笑みを浮かべた。
ガランッと蛇革のサンダルは厚い爪と踵が下駄のように鳴らす。
鬼は港湾都市や奴隷都市を好んで行き来する。
海辺を渡ることも多い そのせいか、港湾都市から届く位置に出現した亡霊桜を嬉しく思った。
「せっかくの夜桜だ。多めに用意してよかったよ。」
やれ店主からは香りがいい 薔薇人 を。
やれその息子からは良い酔いを楽しむなら 酔蛇 だ。 と。
鬼は笑いながらその二つともを喧嘩をする前に買い取った。
今思えば、それは良い判断だった。
適当な良い根を張る部分に腰を下ろし、肘掛に一本借りる。
視界は柳桜が群れており、何とも言えない景色だった。
どんぶりほどの大きさ。
まるで力士が飲み干すような盃 いちゃもはや椀か。
どべん どべん と注ぐ薔薇人は、常温よりやや冷えた。
しかしくどく無いいい香りをさせている。
桜を視界に収めたまま ぐぅ と一息で開けると、喉を焼く独特な酒の乾き。
一瞬息をすることを止めてしまうようなそれが 後から吹き出る。
「美味ェ。」
たまらない、という鬼の貌。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 亡霊桜」から八蛟さんが去りました。