2023/01/23 のログ
ご案内:「平民地区の酒場宿」にヴェルニールさんが現れました。
ご案内:「平民地区の酒場宿」にティカさんが現れました。
■ヴェルニール > ――――いつだかの、とある日の夕刻。
春にはまだ届かない季節の、傾く陽が駆け足で闇に溶ける頃合いに。
人影がふたつ、小路を歩いていた。
黒髪を夜に靡かせながら、長い布地をふわりと揺らしつつ行く静かな足音の女の傍らには、霜を踏みしめ歩くような尖った気配の、それでいて、凍った氷柱のように手折ってしまえそうな雰囲気もある少女。
ギルドの掲示板前でそれらしい餌を撒いて彼女を拐かしてきた処なのか、本来の目的は別として気紛れに声を掛けてみたくなったのかはさておき。
どうぞ、と案内する先は、よくある酒場を上階へと上がった宿。
その一番奥、他の部屋よりは多少広いつくりになっている場所へと扉を開け、片手で促して。
室内へと入れば、ぱちん――と、指を鳴らして防音魔法をかけてしまう。
防音するのならば、そも、密室でなくとも良かった筈なのだが。
「お掛けになってね。
…そうそう、果実酒もあるけれど、ティカは苺はお好きだったかしら?」
彼女が不審を覚えるかどうかのうちに、そんな言葉と共に首を傾けて、備え付けの棚からカップを取り出してみたり。
広いベッドはあるけれど、椅子の上には弦が二本の独特な風合いをした楽器が既に腰を下ろしている。
■ティカ > (―――この姉ちゃんには悪いが、話を聞くだけで金を払うなんて条件出す方が悪いんだ。精々金だけ巻き上げられて人生勉強とするがいいさ)
そんな露悪的な考えを敢えて心に浮かべるのは、経験豊富な冒険者かと思えば、妙に人の好い所もある麗人に若干絆されていたからだ。
とはいえ、彼女の依頼はどう考えても己の手に余る物だと思えたし、無理矢理その仕事を引き受けるなんて逆に無責任な所業だろう。
話の詳細も聞かずに断って、彼女に無駄な支払いをさせないというのが誠実な対応なのだろうけど、爪に火を灯すような生活を送る駆け出し冒険者はそんな綺麗ごとなんて言ってられないのだ。
心の中でどのような言い訳を並べようとも消える事のない罪悪感が、ただでさえ不愛想なティカの童顔を一層ぶすっと不機嫌そうに強張らせていた。
「ふぅん……悪くない部屋使ってんだな」
麗人に通されたのは、下階が酒場という事を考えれば夜は若干騒がしかろうが、面積の広さやベッドの大きさなど、ティカのお財布事情では到底泊まれそうも無い部屋だった。
促されるまま椅子を引き、どっかりと―――とは言っても体重の軽い小さなお尻にはちょこん、といった効果音こそ相応しかろうが―――腰を下ろす。
「ん………まぁ、嫌いじゃあねぇ」
苺の果実酒。
酒にも甘味にも縁のない生活を送る赤貧少女の口腔に唾液が溢れた。
そんな内面に気付かれぬ様、大した興味も持ち合わせていない風を装って寝台脇の楽器などに目を向ける物の、小躯の全身が醸すそわそわとした気配は傍から見れば丸わかり。
■ヴェルニール > 表面上は波立つように気を張りながらも、そわそわとした少女の胸の内をどこまで捉えているのだか。
人生勉強―――という意味では、初めからそういった事も想定のうちではあるようで、言葉よりも態度が饒舌なそんな彼女の表情を楽し気に眺めやり。
「あら、そんなに簡単に出された飲み物に口をつけてしまっても宜しいの?」
ふたつのグラスに注ぐのは、毒々しいくらいに真っ赤な色を湛えた果実酒。
そのうちのひとつを、気もそぞろに赤い瞳に興味を浮かべる彼女へと手渡して。
「…ふふ、そうね。かわいらしいお嬢さんと寝所でふたりきりですもの。
下心を秘めて、よからぬ事を企てているのならば、ティカを酔わせてしまうか…
口をつければ身体が火照って欲に燃える熱を持て余してしまうような媚薬のたぐいでも一服盛ってしまおう、などと思っていても不思議ではありませんわね。
…というのは、冗談ですわよ。」
片手に持ち上げた、同じ瓶から注いだ甘ったるい酒のグラスを口元へ傾けつつ。
視線を絡めれば、小柄な、けれどしっかりと女の匂いを感じさせる彼女の肢体へと流して。
肌の柔らかさを舐めるように、衣類の下の体温を測るようにじっとりと湿って熱を帯びた瞳が下りていく。
衣類を押し上げるふっくらとした双丘と、その下のすべらかな腹を透かし見るように視線が纏わりつき、いつの間にか傍らに寄せた手は細い腰を引き寄せるような素振りで宙を掻き。
■ティカ > 「――――っ! …………あ、あんたがあたしを騙す意味なんてねぇだろ」
グラスに注がれたワインレッドに小鼻を寄せて香る芳香を堪能し、早速一口頂こうかという所で的確な指摘が入ってびくりとする。
苺の果実酒に夢中になって、その可能性に気付いていなかったティカは、気まずそうに視線を逸らす。
しかしすぐにそういう事もちゃんと考えての行動だと言い訳して、その言を証明するかの如くぐいっと杯を煽ってみせた。
「ッ!!?」
思わず噴き出しそうになった。
必至でそれを抑えて無理矢理に口腔のアルコールを呑み下すと、しばしの間けんけんと噎せかえり
「じょ、冗談かよっ! 畜生、タチの悪い女だな、あんたは!」
涙目である。
ついでに頬が赤いのは、他愛もなくやり込められた事に気恥ずかしさを覚えているから。
まぁ、考えてみれば眼前の彼女が、わざわざティカみたいな小娘に下心を持ち、こんな手間暇かけて媚薬を仕込むなんて事は考えられない。
その容姿には華があり、金だって十分に持っているように見えるのだ。
そっちの気があるにしたって、彼女になら抱かれても良いと考える女なんていくらでもいるだろう。
「―――――くっそ。さっさと始めろよ。仕事の詳細とやら、聞かせてくれンだろ!」
折角の果実酒を味わい損ねた事もあり、乱暴な手つきでグラスを置いて腕を組み、背もたれに背を預けて顎をしゃくって話を促す。
何やらねっとりとした視線に身体のあちこちをなぞり見られてぞわぞわと背筋に粟立つ物を感じるも、きゅんっと子宮を収縮させる下腹の蠢きなどに気付かれてしまえばますます居心地が悪くなるに違いないので粗雑な態度でそれを覆い隠そうと。
■ヴェルニール > 「あたくしがティカを騙して得をするか否かですけれど。
楽しくはあるかも知れませんわねぇ…」
甘酸っぱい苺が煮詰まり過ぎて、芳醇な香りになっているそれ。
赤色を映す同じ色の瞳がきらきらと輝くように見えた一瞬、目を細めて。
騙す良心云々や、手間暇かどうかというより、それで楽しめるからしい。
勢い込んでグラスを傾ける様子を横目に、くすくすと笑みを浮かべては果実酒を飲む。
噴きそうになった彼女へと片手を添えれば、幾らか低めの体温が咽せかえる背を撫でて。
「ええ冗談。
毒もおクスリも仕込んでおりませんわよ。
如何して?なにかお変わりあるかしら。
心配でしたら―――あたくしの唇から、直接飲んでみます?
と云って口付けるのも楽しみでしたのに残念だわ…。」
身体の不調だか、そういった作用を期待するような目線が伺うが。
勿論本当に何も盛ってはいないので、ただただ言葉にのせて煽ってみている。
彼女の頬が赤いのは、身体の疼きというよりは、単に揶揄われた事に羞恥を覚えているだけ…と今はまだ思っていて。
やや青みのかった唇をすい、と持ち上げれば、口端から赤い舌をちろり、と覗かせて。
射るように視線を合わせたまま、グラスを傾けて酒を口に含めば、顔を寄せて春の花のように色づいた唇へと近づける。
彼女がうっかりと顔を逸らすタイミングを計り損ねてしまうのならそのまま正面衝突だし、そうでなくても、指先を伸ばして顎先を捕まえてしまえば、上向きに持ち上げさせて強引に唇を奪ってみせ。
その割には、触れるだけの柔らかな感触を味わって、また顔を離し。
「えぇ、それでは依頼のお話ですけれど――
捜しものをしていると言いましたわよね。
あたくし、以前の棲み処からなくしてしまった物がありますの。
ある時翼が生えて、広い空を飛んでみたいとでも思ったのか、或いは狭い世界にはいられないと、異国を見たくなって旅人のキャラバンに紛れてしまったのか定かではないけれど、兎角、本来形のないそれは、いつの間にか器を得たようで――」
わざわざ耳元に唇を寄せて吐息をのせて、頬どころか耳朶も染めようと悪戯してから。
まるで酒場で伝奇譚でも弾き語るような、抒情詩でも謡うような調子で語り始める。
それは恐らくは全くのつくりばなしでも、餌の為の法螺という訳でもないのだが。
語り口調がこんな調子では、全篇を聞いたとて肝心な処は分からないだろうし、人によってはその前に眠くなってしまうかも知れず。
その間も相変わらず蛇のように這う視線が、ブーツで覆われていても華奢な足元を、丸みのある膝を、むっちりとした太腿が段差を作る内腿を舐めていて。
■ティカ > 「これだから金持ちってのは……」
性質の悪い揶揄いに細眉は歪む物の、背筋を撫でる繊手の優しさのせいでどうも彼女を憎み切れない。
呑み慣れないアルコールが頬に熱を灯してはいるものの、薬物などが仕込まれていないのならば、それ以上の影響なんて出ようはずもない。
軽い飲み口に反して極端に度数の高いレディキラーの類でもない限りは。
結局溜息一つで先の戯れを水に流――――そうとした所での更なる追撃。
「はぁぁあっ!? お、おまっ、何言って……ば、ばか止めろこらっ、あっ、ちょ……待っ、わぁぁああっ、……ッ!!」
嫣然たる風情で艶やかな唇に酒精を含んだ彼女が、淫靡に細めた双眸で慌てるティカを射竦ませたまま美貌を寄せる。
仏頂面があっけなく驚愕に染まり、それが見る間に炎熱を強め、ぎゃあぎゃあ喚きつつ必死で背筋を反らして近付く唇から逃れようとするのだけれど、既に退路は椅子の背もたれに塞がれている。
ついにはぎゅぅうっと両目を瞑った赤面は、ちゅむっと触れる柔らかな感触に唇を奪われた。
彼女の唇に返すのは粗暴な言動には似つかわしくない柔らかく、繊細な、年若い女の子の甘い唇の感触。
「―――――お、おま…っ、お前……ほ、本当に……ッ」
何事も無かったかの様にしれっと依頼の詳細を話し始めた彼女に、眉根を吊り上げ若干涙目の少女は小さな拳を握ってぷるぷるするばかり。
内緒話の如く耳朶に口寄せ話すのも、まぁ、隣室や廊下からの聞き耳対策なのかもと思えば無下に振り払う事も出来ない。
言の葉で鼓膜を愛撫するかの囁きに口付けで乱れた鼓動も戻らぬままの少女はぞくぞくっと恥ずかしい喜悦を感じつつ、それでも出来るだけの真剣さで彼女の話に耳を傾ける。
――――しかし、その語り口はどうにも要領を得ず、正直彼女が何を言っているのか分からない。
むむむむ…っと困った様に眉根を寄せて、どうにかこうにか依頼人の意図するところを掴もうとする駆け出し冒険者。
依頼を受けるつもりなんぞさっぱり無いにも関わらず、それでも金をもらうのだからと真摯な対応を心掛けるこの娘は、散々な目に合って来てもやはり生来の人の好さを捨てきれていないのだ。
よもや、当の依頼者の目がチュニックスタイルのキルトアーマーの裾から覗き、ロングブーツと一体化した皮タイツのむっちり食い込む太腿の健康的な柔らかさを視姦しているとは思いも寄らない。