2023/01/16 のログ
ご案内:「平民地区 服屋」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 王都平民地区の一角。
さて、どうしたものかと腕組みをしている小さな姿があった。
特に難題が待ち構えているような場所ではない。
程々にありふれている服屋の中、異国情緒に溢れた装束に身を包んだまま。
着慣れている北方帝国辺境のもの以外に袖を通すことは、極めて稀。
目立てば目立つだけ、宣伝になろうという意図も含んでいるのだから。
それでもこの場に現れたのは、偶には王国風の装束を纏ってみるのも面白いのかもしれぬと思い立ったから。
「嗚呼、されど、何から手を付ければよいのか分からんのぅ。」
縁のある地域なら、元となる生地を選んで仕立て屋に持ち込むのが常だったが。
ここでは何をどう頼めばよいのか、今一つピンと来ない。
装束のスタイルが、出身地よりも多岐にわたっているのが拍車をかけている気配もある。
王国への滞在歴も相応にあるから、見聞した経験値は十分にあるのだけれど。
「儂一人で迷うておっても、事態が進展する気配も無し。
店の者に問うしかあるまい。」
店内で明らかに浮いていた存在が、ぴょんっと姿勢よく手を挙げて。
雇人と思しき丸顔の男が歩み寄り、問答が始まる訳だけれど。
■ホウセン > 大きな店舗で、店内に既製品が並んでいるような形態ではない。
見本となっている生地が壁際に所狭しと吊るされており、その中から材料を選ぶのだろうというのは理解できる。
が、相応しい色だ、柄だ、型だ、縫製方法だとなってしまうと、もうお手上げである。
これならいっそ、古着屋で出来合い品からマシなものを探した方が気楽なぐらい。
根底に、どんなものであれ相応の見目にはなるだろうからという考えがある。
性質の悪いことに、過信でないのが一層面倒くさい。
サラリとした黒髪と、人形めいて整った顔立ち。
確かに十分人目を惹く条件は揃っている。
「嗚呼、呼びつけてしもうてすまんのじゃが、ちぃとばかりこの国の装束を揃えておこうと思うてな。
特に華美なものを好む趣味はありゃせんが、商いをしておる手前、安う見られるのも困ってしまうのじゃ。」
”はじめてのおつかい”をするような店でもなければ、店員が目線を合わせる為にしゃがみ込むなんて配慮がされずとも仕方ない。
斜め下から店員を見上げて、大雑把な方向性を伝え。
見目の年頃を裏切り、身振り手振りも交えぬ静かな語り口で。
「じゃからというて、貴族のお歴々が身に纏うような込み入った刺繍があるものや、親の仇のようにヒラヒラが付いておるのも御免被りたい。
そも、身分不相応であろうし。」
斯く言う今の装束も、生地自体は上等なものを用いているが、色合いは努めて地味なものを選んでいる。
何か良い案は無いかと問い掛けると、店員はカウンターの裏に。
少し遅れて、幾つかのサンプルイラストを順繰りに見せてくれて。
はて、どれを選ぶか…等と検討する妖仙は、もし誰彼かが目に留まったら、気まぐれに意見を聴取でもしてみようかという心地で。
■ホウセン > 他に目ぼしい客もなく、もうプロにお任せしてしまおうという心地に至ったらしい。
際寸の為、小さな身体を差し出して――
ご案内:「平民地区 服屋」からホウセンさんが去りました。