2022/12/26 のログ
ご案内:「平民地区/公園」にアッシュさんが現れました。
アッシュ > 小さな公園の、樹の側のベンチへ腰掛けて、男は独り考え事をしていた。
いつもの格好に、フード付きのマントを羽織って、それを深めに被り。表情の見えない謎の人物が鎮座しているものだから、当然、怪しんで誰も寄っては来ない。

何かを時折小さく呟いていると、やや大きめの犬が舌を垂らしながら足元までやってくると、覗き込むように見てくる。
男が目を遣れば、その犬は首輪をしていて、リードも付いたままここまで来たようだ。

「……よお。お前、散歩中に逃げ出してでも来たのか」

へっへっへっと息継ぎをする犬を眺めている。犬の方も、構ってくれないのかなぁ、と言うような目で男を眺めている。
背もたれから身を起こして前かがみになり、少し撫でてやると満足げに見えなくもない。

「飼い主が居るなら、ちゃんと帰ってやれよ。帰る場所があるんだろう。
 おじさんは――どうかな、帰る場所はないのかもしれない。お前はそうならない方がいいぞ」

アッシュ > 男がここで身体を休めていると、どうも動物が寄ってくる法則でもあるのだろうか。
……ひどく疲れている様子の男だったが、そんな事をお構いなしに撫でろと要求してくる犬が、羨ましいような気もして、暫しそのまま撫でてやる。

「昔と変わらんな。いや……お前がまだ産まれてもいないような頃の話だがね。
 かつておじさ――俺が住んでいた街を出てきた頃の事を思い出していたのさ」

いつもとぼけた様子で話す男だったが、犬相手にそれをしても意味がない、と思ったのか。
犬の方は撫でられていればそれで満足なのか、男が呟く話を聞いているのかいないのか。当然、何となく聞いていたとしても意味が解っているわけはないのだが。

「何かを大事にしていると……いや、大事にしようとしていると、すり抜けて逃げていくものだよな。掴もうとしているつもりでも、そうなる。
 で、別の誰かが横から掴んで行くんだ。お前がどこかから逃げてきたんだとしても、俺はそれを止めはしないが……」

飼い主がリードをしっかり持っているつもりでも、ふとした何かのタイミングで、この犬は逃げ出して来てしまったのだろう。
きちんと首輪とリードがあっても、そうなる。男にとっては、それがどこから来ようとどこへ行こうと、ただ見送ろうとするだけに過ぎないが。

アッシュ > 「俺はお前を檻に入れようとは思わないし、そうだな……鳥ですら鳥籠に入れたくはない。
 何なら、どこへでも行けるようにその紐も首輪も外してやってもいい。……が、お前は帰れるうちに帰ったほうがいい、多分、な」

やがて、遠目にでも自分の犬は流石に解ったのか、飼い主らしき人物が慌てた様子で駆け寄ってくる。
怪しすぎる男の格好に、びくりと立ち止まり、やや遠巻きに声をかけてくるのだが。
男が犬を肩をぽんぽんと軽く叩いてやると、犬は自らくるりと向きをかえて、飼い主の方に飛び込んでじゃれついている。
それでいい、とフードの下から見送ってやると、飼い主はひとつ頭を下げて、今度はしっかりとリードを腕に通して持ち。連れ立って帰っていくのだ。

「それでいいんだ……あるべき場所へ帰れ。
 さて、俺は――どこへ行こうか?……どこへ行くべきなのか……」

す、とベンチから立ち上がり、その場からどこかへ行こうと考えるが、行き先が思いつかない。
特にアテがあるわけでもなく、ただ足がどこかへ向かおうとするならそのまま歩けばいい、と思うに至り。

ご案内:「平民地区/公園」からアッシュさんが去りました。