2022/12/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 Sweet&Sweets」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
■ドラゴン・ジーン > 王都マグメールの平民地区で経営されている製菓店。もしも仮にチラシに誘導されて貴方が此処に来たとする。そして店の主から一度に立ち入れるのは一人まで、そして時間一杯までは食べ放題だと説明を受けた後に導かれた部屋の中に踏み込んだと考えよう。指折りの王都の魔術師の幻覚呪文はあっという間にその貴方の五感に干渉して蝕み、そこに本来存在しない筈の別の風景を織り成して齎す。
そこは森の中だ。まるで御伽噺の中の如く樹林が避けるように、不自然に幹が老人の腰のように曲がり。しかして密度の高い木々の並びは、まるで木製の鳥籠を編み上げているようにも見えるでしょう。楕円球形の形状となっているその内面空間の只中に、それはそれは立派な御菓子の家が建っているのでした。
外壁はクッキーやビスケットなどの焼き菓子を複雑に張り合わせ、こんがりと狐色。先程まで雪が降っていたかのように屋根にはデコレーションの生クリームが盛り付けられ。そこからは今もココアパウダー混じりのホイップが滴り続けている。窓は色とりどりの美しい硝子板がハメ込まれており。その周囲を飛び交う、果物のジャムに濡れたパン菓子のミツバチたちの放つ燐光を照り返していた。そしてダークチョコレートのドアは一切の傷も傷みすらも無く、玄関口に静かに建っている。鍵穴も何も無いドアにはホワイトチョコレートの子山羊の形をしたノッカーがついていた。
■ドラゴン・ジーン > もしも、更にそこで貴方が今一歩そこに足を踏み入れたとするならば、家の主のいらっしゃいませの文句の代わりに、噎せ返るような甘い芳香が貴方の鼻先にへと浴びせかけられる。天井から釣り下げられた蜂の巣の周囲でぶんぶん飛んでいる蜂たちの発光下。大広間の、これまた大家族用のパイ生地で出来たテーブルの上には何十段にも及ぶ大きなケーキ。
それを取り囲む席の二つには尋常ではなく巨大なジンジャーブレッドマンクッキーが腰掛けている。壁際の床に設置された見上げんばかりのスポンジケーキ状の振り子型の柱時計が文字盤に針を刻み続け。純白の砂糖菓子のバスタブには今も水飴の水面が細波を打ち。濃厚なブラウニーの煉瓦を積み上げた竈は、粉砂糖の灰を噴いており。
隅に置かれたカステラの宝箱からは色彩鮮やかな琥珀糖の宝石が溢れ返り。チョコ菓子のクローゼットからはパンケーキとベリーの帽子や、練り上げたアイスクリームの涼しい衣が食み出していた。
見渡す限りの全てが、見ているだけで虫歯が出来そうな程の甘味の山でありました。
「………」
ですが一つ不幸な事があると言うならば、その素敵で虫歯があるならば歯がゆくなりそうな空間の中には既に異物が入り込んでいたという事。卓上において天井をもつかん程の立派なケーキの頂きに飾り付けられている竜のミニチュアは、一見すれば飴細工やゼリーのように見えるかも知れないが、その正体は当たり前のように幻覚によって演出されている風景の中に混在している一体の怪物であった。
その証拠に、時折に石炭色の頭部から伸びる三本の触角が青白い光を湛え放っては、本来ならば恐らくは別の何かで構成されている筈の幻惑空間を見回している。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 Sweet&Sweets」からドラゴン・ジーンさんが去りました。