2022/12/15 のログ
ご案内:「王都平民地区/公園」にアッシュさんが現れました。
■アッシュ > 平民地区のはずれ、植樹が目立つ他には特に変哲のない小さな公園。
疲れている様子なのか、樹の下に設えられたベンチに横になり、だらけている男の姿があった。
男の身の丈を全て収めるには少々長さの足りないベンチで、脚を組み、顔を覆うように開いた本を載せて眠っているのかいないのか。
「……いやぁ、しんどいねぇ。癒やしてくれる可愛い女の子でも居て欲しいところだよ」
気だるそうにそんな愚痴を吐く、どうやら眠ってはいないようだった。
ふと、仰向けに寝そべるその腹の上に、何かほんのり重さがかかったような気がして、本の隙間から視線を向ける。
見れば白と黒のまだらな模様の、まだ至極小さい仔猫がどこから来たのか男の腹の上によじ登っていた。
「おいおい、なんだ……どこから来たのか知らんが、人の上に登るんじゃぁないよ」
手を伸ばしてひょいとつまみ上げれば、にー!と不満そうに口をいっぱい開けて鳴く仔猫。
地面に下ろす――のはなんとなくかわいそうに思ったのか、自分が寝ているすぐ横に退かすに留めて。
■アッシュ > やれやれ、可愛い娘を子猫ちゃん、と呼ぶ話は数あれど。子猫どころか仔猫――文字通りそのまんまじゃないか。オスなのかメスなのかは定かではないが。
そんな事を口の端で笑いながら思っていれば、またどうもよじ登ってきている気配がある。
当然、小さすぎて全く重いわけではないからどうと言うことはないのだが……寝ている腹の上でもぞもぞしている奴がいると、それはそれで落ち着かなくはある。
再びゆっくりと手を伸ばすと、今度は掴む前から、にー!と威嚇された。
「いや、そこはお前の席じゃないんだぞ……だいたい、猫なら猫らしくにゃーとか言え。にーじゃないだろ」
まだ上手く鳴けないのであろうそれに意地悪くそんな風に言ってやると、また思い切り、にー!と不平を漏らされた。
仕方ない、腹の上に乗っかっているぐらいは許してやるか……と。
暫しそのままにして視界の端で眺めていると、満足したのか腹の上で丸くなり始めた。
「寝るのかい!……まったく、やれやれだぜ――」
まぁ、全くの独りよりは、マシか。そんな風に思わなくもなかった。
仔猫の白黒模様が、どこか懐かしいものを思い出すような気もしたから、それで許してやることにしたような気もする。
ご案内:「王都平民地区/公園」にリアさんが現れました。
■リア > 「! ……ねこ……」
公園を通りすがりざま、聞きつけた子猫の鳴声。
制服姿の娘はぴたっと足を止めた。
鳴声の出所を探して視線がすいっと動く。最初に見つけたのはベンチの上の男性。
「ねこ……?」
男性の上手すぎる鳴きまねだったのか――と一瞬落胆しかける。
次いで、何やら独り言を言っているように見えて首を傾げたけれど、よく見ればその腹の上に小さな生き物を見つけ、立ち尽くして目を輝かせた。
「ねこ……っ!」
はっとした風に、制服のポケットをぽふっと叩く。
そこには犬猫おびき寄せ用の餌が常に入っているのだ。
公園に入ってまっすぐ、ベンチのそばにしゃがみこむ。この間数秒である。
「わあっ……小っっ……さい……!」
子猫を驚かすまいと抑えながら、しかし抑えきれぬ歓喜の声。
「生後何週間とかかしら……あなたの猫?」
目を釘付けにされながら、手は出さずため息をつく。
■アッシュ > 腹の上の仔猫と共に、だらだらと微睡むことにしようかと、顔の上のズレた本を少し戻そうと思った所で。
にーと鳴くどころかやたらハッキリと人の言葉で、ねこ!と鳴きだし始めたな、にゃーを飛ばすどころかそれはいきなり進化しすぎだろう……などと一瞬思わなくもなかったが。
「……お、おお? なんだ、やたら気合の入ったお嬢さんだな」
物凄い勢いで近寄ってくる人の気配に、気づかなかったわけもなく。
危険を感じはしなかったから、ただ本の隙間からなんとなく様子を伺っていただけであったが、いやはや随分と目を輝かせている様子じゃないか。
どうも、よほどの猫好きなのか、はたまた小さい動物が好きなだけかもしれないが。
もう少しだけよく見てみれば、たしかにそれも似合いそうな若い少女が目に映る。
「ん、まぁ……見る限り一歳にもなってないんだろうな、猫の一歳はもうだいぶデカかったような――いや、おじさんの猫じゃぁないよ。寝てたら乗られちまってね、動くに動けん」
件の仔猫の方も、なんだかただならぬ気配を感じ取ったのか、寝ようとしていた所をそっと頭を持ち上げる。
くりくりとしたまんまるい目でじっと少女の方を見ているようで。
■リア > 触りたくて触りたくて肩のあたりがそわそわするけれど、逃げ出されたくないので手は出さない。
あんまり見つめてもやっぱり警戒されてしまうかもしれないから、仔猫の視線から無理やり視線を剥がし、漏れてしまう笑顔をそのままアッシュに向けた。
「あ、ごめんなさい、ご挨拶が先でした。ご機嫌よう! 猫日和ですね」
挨拶しながらポケットから小さな袋を出して、その中の餌――柔らかく加工された干し魚をアッシュのお腹の上、猫の顔のそばにちょこんと置いてみる。
「ふうん、野良なのかしらこの子。親猫が近くにいればいいけど……」
他に姿が無いか鳴声は聞こえないかとちらっとあたりを窺う。
「おじさまはここでお昼寝ですか?」
次から次に思考が飛ぶのは浮かれているせいである。
猫に気をとられて、猫の飼い主というわけではないという目の前の男性の異質さに遅れて気づく。
ただ、ここが富裕地区なら公園のベンチで寝ているのはなかなか異質だけれど、場所柄こういうのは普通なのだろうか、としゃがんだまま首を傾げる。
■アッシュ > 「ああ、御機嫌よう――猫日和……? ……まぁ、そうだなぁ」
猫日和、なんて言い回しは初めて耳にしたような気もして、変な笑いが漏れそうになるが。
あまり笑うのもかわいそうな気がした、誤魔化すように同意したのも仔猫に夢中な様子だから多分気づかれまい。
「おじさんはちょっとお疲れ気味だったのさ。家と仕事場が同じだからねぇ、たまに外でゆっくりしないと――
いやいや、そこで餌付けを始めるんじゃぁないよ。そのへんに親猫は……居そうな気配がないんだよなぁ」
話をしている間に、腹の上に置かれた干し魚。
そこは猫の寝床ではないし、ましてやエサ箱でもない、男の腹の上だと言うことをどっちも忘れてるじゃあないか。なんてひどい。
仔猫一匹ふらふらさせている親猫の顔が見たいし、この少女の親……いや、少女の方は別段一人歩きしていてもおかしくはないのだろう。
学生服の少女が一人、は全く安全とも言い難い所ではあるな、と少し心配にはなるものの。
「なんなら、お嬢ちゃんが親猫の代わりになったらいいさ。こんなくたびれたおじさんの腹の上より居心地いいんじゃないかな」
腹の上で干し魚をぺちぺちしていた仔猫を、干し魚ごとひょいと掌に掬い上げて。
餌に夢中のそれは今度は不満声を漏らさず捕まって、そのまま、ぽふん、と目の前でしゃがみこんでいた少女の膝へと降ろされた。
■リア > 「……変な女だと思われないように、ええと、少し落ち着きますか」
アッシュの気配を敏感に察して己を戒める。もう遅いかもしれない。
「お疲れのときは甘いものを食べてベッドで寝てくださいな。
お家じゃゆっくりできないなら……別宅で猫を飼うしかないのかしら」
猫が餌に気を取られている隙に、そうっと撫でる。細くて柔らかい毛並みが持ち上げられるまで。
「この子がここが良いみたいだから、諦めていただくしか……ああー」
一瞬の嘆きのあと、膝の上にやってきた猫に息を飲む。
そうっとそうっと膝の上を手で囲って……
「……お家では何屋さんなんですか? 食べ物ではないような……事務関係?……でもないような……
ああ……実家ならこの子を飼えたかもしれないけど……」
■アッシュ > 今度は、抑えられず少しだけ吹き出した。意外と、こちらの様子は何となく見てはいたらしい。
揺れてずり落ちそうになった本をつまみ上げて閉じると、よいしょ、と起き上がり。
お腹の上が自由になったから、今度は普通にベンチへ座る形に収まることができるのだ。
「まぁいいんじゃないか、おじさんとしては面白い子は好きだよ。話して楽しい方がいいだろうさ」
少女のように全力でキラキラするほど仔猫好きと言うわけでは流石になかったが、男の方とてちっちゃい生き物に全く笑顔にならないわけでもない。
そもそも、動物は案外敏感なものだから、嫌うような者の所へよじ登ったりはしないものだ。
ふわふわの毛玉が少女の膝の上で干し魚と戯れてみたり噛み付いてみたりしているのを、微笑ましく眺めつつ。
それを慎重に愛でようとしている少女の方も、微笑ましく思いながら。
「ん、ああ……しがない探偵業をしているのさ。と言っても看板も立てていないし、こっちから仕事を探し歩いてるような大したことない話なんだがね。やってる事は冒険者達と似たようなものかもなぁ
ま、お嬢さんがそいつをもしどうしても飼えないんなら、それこそ里親探しぐらいはするさ。どうしても飼えないんなら仕方ないからなぁ」
見た所学生のようだし、寮住まいなどであれば飼いにくいのだろうが。そこは悪魔の誘惑的にわざとつついてみて、反応を楽しんでいるのやもしれず。
■リア > 「いつもはこうじゃないんですからね、この子が私を狂わせるのがいけないんです」
大変遺憾であるので猫のせいにする。
当の仔猫は悪気なくちょちょいと餌で遊んだり制服を引っ掛けたりしているが、まだ爪も柔らかいのかほつれまではしないようだ。
制服が引き裂かれても手放すことはないのだけれども。
膝の上の毛玉を落とさないようにスカートの裾を両手で引っ張りながらゆっくり立ち上がり、アッシュの隣に腰掛ける。
探偵、と聞いて目が丸くなる。
「探偵さん? 本物の?
わあ……! 私、子どものころ探偵小説と怪盗モノが大好きでした。
看板が無いならこの子を看板猫にすればいいのでは?
そうしたら私も遊びに行ってこの子に会えるし!」
名案とばかりに手のひらをぱちん!と合わせて。