2022/10/30 のログ
シャル > 大変、と言われればそれはそうなのかもしれない。
本来なら子爵令嬢がひとりこんな場所をふらふらしているのがおかしな状況なわけで。学院の体質のせいなのか、国の体質のせいなのか、そういう点では良くも悪くも雑な環境かもしれず。

「オフ……で通せるところは、ここのお国柄が緩い、と言う意味では……気楽かもしれないですけどね」

貴族のたしなみ、のようなものをある程度すっぽかして生活していてもどうとでもなってしまうけれど、ふとした瞬間に出自の事を考えると、責任感みたいなものとの間で息苦しくなる、と言う部分は大変なのは、そう。

「酔っ払って詰め寄られたらきっと投げ飛ばしてしまいそう……。 あ、んん――ちょっと、何というか……思春期の悩みみたいなものですから。人に話すと考えがまとまりやすい、と言うのは同意できますけど……下世話な話にしかならなそうで」

あ、食べ物が欲しいほどではないですから――と、注文についての部分は、気にしてくれたことに対して礼をするにとどめておいて。

コルボ > 「緩いのか、腐ってるかはさておきな。
 どうせ対抗勢力に追い立てられて明日には没落するかもしれない貴族様のが多いんだ。
 扱いに気にするのは平民だけさ。
 シャルの家は大丈夫そうだけどな。」

 ……この国の腐敗、特に上流社会ほど顕著なそれを、緩いと言うことに注釈を入れるような物言いで。
 元より横柄なものはそこを突かれてしまう。四方八方から肉がなくなるまで啄まれるほどに。
 そして虚か実か不明なまま罪を告発されて追い立てられていく。

「……え、シャル強いの? 貴族だよな。あいつ等を? ……ほほぉ」

 酔っ払いと言えど、あそこにひしめくのはそれなりに荒事に慣れた者達。
 それを投げ飛ばせる、腕のほどはともかく、ただの貴族令嬢が口にすることではなく。

「下世話な話ならケアで聞き慣れてるよ。口外無用でな。
 ……その手の話、俺に言わないにしても友達とか話しやすい相手作って吐き出した方が良いと思うぜ。
 変な拍子に自分の中で拗らせちまうからな。」

 そう言いながら、まだ口につけてないカクテルを飲むか? などと。
 オフで教師随伴なのだから、酒の力を借りるのもいいだろうと。

シャル > 「ふふ、いっそ貴族の肩書は無くなった方が気が楽なのかもしれないですね。……なかなかそうはならないでしょうし、実際そうなったら大事ですから、本気でそう願うわけにもいかないですが」

子爵家と言うだけでも、もう小領主のようなものだ。それがぽんとなくなるわけにもいかないし、実のところ本当の領地は小国と言えるようなものなのだから、文字通り大事になってしまう。

「え?あぁ――油断している初手で驚かせて、あとは逃げの一手ですね」

ふふ、と小さく笑う。流石に面と向かって戦える自信はないけれど、相手がか弱い少女と油断してくれていたら、最初のいちど、はたぶんどうとでもなる。ぐらいには動ける……ように嫌々ながら鍛えられたのだし。

カクテルは――実はお酒の味、があんまり得意ではなくて、と、ごめんなさいと小さく誤りながら。
遠慮しているとかではなくって、お酒のちょっぴり胸が焼けるような感じがまだ本当に苦手らしくて。

「……なんだか、気持ちだけ空回りしていると言うか。色々やってみたいけれど上手く行かない、なんて言うよくある状況に自分だけ落ち込んでいるような、そんな感じです」

コルボ > 「ま、貴族の肩書がない平民のほうは、そのやりとりに押しつぶされないかひやひやしてるんだがな。
 少なくとも、振舞いの端々にシャルは品があるからな。意識しなくてもいいと思うぜ。

 ……どういう親かは知らないが、少なくともそう身に着けさせてくれたことは感謝した方がいいと思うぜ」

 少なくとも追い立てられるだけの弱みは見えないのだと、男はそう評して。
 平民が、貴族を評価するなど思い上がりも甚だしいはずだが。

「……護身術のキモをきちんと抑えてんだな。んじゃあ俺はシャルに油断しないようにするわ」

 そう言ってけらけら笑う。護身術の要点は悪漢を制圧することではない。
 その場の空気を初手で握って、身の安全を確保するための行動を確実に取れるようにすること。
 それが完璧な相手に、男は油断はしてやらないと。

 酒を断る表情を見れば、酒精に憧れるのでもなければ嗜んでいるわけでもないと理解して、
 口をつけつつ。

「理想と現実が追いついてねえだけだそりゃ。つか学院の生徒のほぼほぼがそういう状況だよ。
 ……てのが一般論だけど、具体的に、例えばやってみたいことってのが何で、上手く行かないのはどういう具合か、
 一個でもいいから言えるか?」

シャル > 「ええ。いつか……自分の住む場所の人々ぐらいは、ひやひやせずに過ごせるような貴族でありたいです、ね」

なにかの本で、弱者を守る為に使わないで何の為の権力なの、と言うお話があったのをいつも思い出す。
そういう教養を与えてくれた親達には、感謝している方だと思いたい。……少々格闘マニア気味な親達なのはあまり感謝したくない部分ではあるけれど。

「もう少し、不真面目な感じが強かったら……投げ飛ばしていたかもしれませんね」

先刻かなりぼんやりしていたものだから、状況によっては咄嗟にひっくり返していたかもしれない。
ただでさえ男性と話すのはどこかしら警戒心が先に立ってしまうのだし。
とは言え、今この相手はそう危険なわけではなさそうなのだし、今からじゃあ投げてみますねと言ってそうできるほど強いわけでもないと思うし、かも、の話は殆ど冗談で、ほんのり笑ったような表情になりつつ。

「そうですね……誰かのお役に立ちたい!なんて、それもよくある考えだとは、思いますけど。それで……ううん、例えばお仕事をしてみたい、と言っても機会がなかったり、とか……かえって迷惑かけてしまってないか、とか……でしょうか?」

暫し考えてから、そう例えて言ってみる。流石に、売りに出てみたら何もなくて、とは言い難い。
その事そのものより、誰かと話している間にも、負担をかけていないかしら、なんて考えてしまうことの方が本心では不安なのかもしれず。

コルボ > 「……なるほど。そういうこと言える手合いか。
 なら、人がよさそうだと付け込まれないようにな。」

 親が付け込まれたら最終的に拳で決着つけそうなタフネスだとはまだ知らない。

「世間の枠で言えば根は不真面目だよ? 教科書通りにやって上手く行くことのが少ないからな。
 シャルが投げ飛ばそうとして、目の前できちんとリカバリーして見せたりとか、
 一度見せたら、お前さん学習してつぎはもっときちんと投げ飛ばしそうだしな。

 まー……、俺の場合は、女関係の噂は大体当たってるからな。後ろからシャルに投げ飛ばされても文句言えねえわな。」

 常駐戦陣、とまではいかないが、枠にはまっては生きていけぬ、機を逃すと。
 女性に関してもそうで、噂は否定しないが言い訳もしない。

 投げに関しては生徒の経験となるならそれもまた良しとさえ見せる、自分を不真面目だという男は、

「なんだ、良い顔で笑うじゃねえか」

 などと言って笑い返し。

「仕事するなら、それぞれの業界があるからな。まずは顔役とか橋渡しに取り次ぐとか、はあるが……。
 シャルは、生真面目に機会がないことや迷惑かけることを気にし過ぎてそうに思えるけど……。

 俺から言わせればシャルみたいな類の考える迷惑と成果がないと、
 マジで駄目な奴の迷惑と成果がないは規模が違うからな。

 シャルの場合はそうだな、まず考えるより疲れ果てても成果がない、まで来るまで動いてもいいんじゃないか?
 意欲あるやつが止まってる方が問題だわ」

 ……昨日男は別件で仕事があって”買い”にいけなくて。
 そうでなくても”買う側”に入って成果のない男。

 昨日出くわしていれば、間違いなく買って一助になっていたのだろうが。

シャル > 付け込まれそうになったら、それは騙されたりすることもあるかもしれない。
とは言え、子爵家ともなるとそれこそ暗殺者を雇ったとか言う話も聞いたことがあるし、後の方が怖そうなのもまた事実。

「私自身が付け込まれたり騙されたり、と言うことよりも……その後の方がむしろ心配な気がします。それこそ、私が投げ方など学習する前に、私の家から、こう……もっと怖い人たちが来ちゃうかも、ですから」

場合によっては戦争が起きてしまう。それはまずい……のもあって、爵位を低く隠して生きているのだけれど。
そんな考えに至っても、まだ難しい顔にならないで済んでいるぐらいには、なんだか落ち着けているようで。時々そうやって笑っている様子を、もっと学院内でも普段から出来ていたらいいのかもしれないけれど。

「まだもっと子供だった頃に、頑張ってみたことを……思っていたのと違う!って言われたことがあって。それで――普通に話していても、実はそう思われているのかも?って考えてしまうようになったのかも、ですね」

お互い、どこか同じかもしれない場所ですれ違っていたかもしれないことは、もちろん互いに知るよしもなく。

コルボ > 「なら、シャルが強くなればいい」

 ふとそんなことを言う。

「個の力とか知恵とかもあるけど、付け込まれる前に忠告する仲間や友達、そういうのが来ることを察知する部下。
 そこに至らない、人脈を用いた強さだな。
 お前さんは今平民も貴族も関係ない状況の、言ってみれば玉石混合青田買いの学院にいるんだぞ。

 要はあれだ、友達作れ。なんやかんや数は力だ。
 お前さんが、守らないといけないって思わないぐらいに強くなれば怖いのも出てこなくなるだろうよ」

 悩むより動くに足る資格があるのだと。既に高貴なる者の務めを果たしているなら行動あるのみだと。

「頑張ってみたこと、ねえ……。意外と自己評価と周囲の評価はズレるからな。
 俺だってそうだぜ?

 女を口説くのには自信もあるし大体繋がるが、出会い系のクラブで買う側に立って待ちの姿勢だと鳴かず飛ばずだからな……。

 どんなジャンルで百戦錬磨でも、上手く行かない奴だっているんだからよ、
 少々のことは気にすんなよ。

 そうでなくても貴族なんざマナーなんて共通項以外は、我の強い人種なんだから大体自称普通が別の変、なんざよくある話だよ。
 てか、今のシャルそんな変か? 少なくとも口説いていいなら口説くぐらい総合的にイイ女だと思ってるけど。」

 グイグイと、肯定をしながら言葉は距離を詰めてきて。

シャル > 「……集中してさえいたら、大抵の事は回避できるのですけれど。どうしても、こう……考え事が始まってしまうとぼんやりしてしまいがち、で。確かに、そういう時に頼れるひと達が居たら、もう少し気持ちも楽なのかも、ですね」

言われた通り、普段はただの学院生。
その雑多の中に紛れてしまえば、不必要に気負ってあれこれ難しくしてしまう意味はないのかも、とは思う。

「貴方の場合は――もう少し落ち着いてみたらいいだけなのでは……」

不真面目なそぶりを周囲に見せすぎるから警戒されるのだと思うのだけれど。と、根っから警戒心強めな少女が言うのだからわりと痛い所なのかもしれない。
けれど、そう言って在り方を変えようとするとそれはそれで上手く行かなかったりとか、それこそ自分が自分じゃない気がしてくることもまたよく知っている。
少女自身、明るくはきはきとしていなさいと言われたら到底無理だと思うのだし。

「んん……嬉しくないわけでは、ないですけど。そういうのは……いつか機会があるのなら、ぐらいにしておいてください? たぶん――話して落ち着いてしまったから……気を持たせるだけ持たせて寝そうな気がします、し」

明確に否定しない辺り、騙されているのかしら、なんて考えてもみたり。
とは言え、だいぶゆったりと話していたから、いざ何か起こっても……日々の授業の疲れがふと来たら、唐突に寝ている気がする。いい所で気づいたら寝てる、なんてどこかの物語でもよくありそう。

コルボ > 「ま、周りにもっと目を向けたら少しは、色々変わると思うぜ」

 落ち着いて観たら、と言われれば肩を竦めて

「出会う場所で、嘘の自分で売り込んだところで、それは相手に失礼だからな……。
 ま、失敗したら失敗したで楽しむのが百戦錬磨の側の考え方だな。

 ……シャルは、失敗自体が駄目なのかもだけどな」

 たとえ失敗しても、それはありのままの自分なのだと。周囲の目を気にしないで振舞う男はそう告げて。

「んじゃあ、その機会を楽しみにしとくわ。

 ……てか、色々考えてんのかね」

 ふと、視線を店内に向けてから見やれば、ため息一つ。
 信用できるウェイトレスに声をかけて、ラフィーナ家へ迎えを寄こすように伝えるだろう。
 人が来るまでは、自分が見張りをしていて。

シャル > 「身の丈に合わせて、できることをやっていくしかないから……」

失敗を楽しめるようになったら、たぶんもっと色々できるようになる気はする。
けど、小さな傷が心の奥に全部残って溜まっていくような生き方をしているから。それでも、そのおかげで慮れることも、いくつもあるから、それもまたひとつの自分。

「そう……ですね、そうなることが、あれば。 いつも色々考えてばかりですよ、私。今は……だいぶ頭が回らなくなってますけど――」

はふ、と口元を手で隠したその奥で、小さく眠たげな吐息が漏れる。
まだ無理をしているとどんどんぼんやりしてしまいそうだから、帰らなきゃ……と相手に伝えて。
なんとなく察してくれていたのか、人を呼んでくれてもいるようだったけれど。

「では、今日は……これで。色々話せて嬉しかったです。随分と落ち着いた気がしますし……」

そんなやり取りをしつつ、迎えに人が来れば、またこんな所でぼんやりしてらっしゃる、などと半ば引きずられるように――

ご案内:「平民地区酒場・テラス席」からシャルさんが去りました。
ご案内:「平民地区酒場・テラス席」からコルボさんが去りました。