2022/10/16 のログ
ご案内:「無名遺跡堕神の神殿」にミメシスさんが現れました。
ご案内:「無名遺跡堕神の神殿」からミメシスさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡『堕神の神殿』」にミメシスさんが現れました。
ミメシス > ――『堕神の神殿』
無名遺跡、地下迷宮のひとつ。
数多有る遺跡の中でも宗教色が強く、歪み堕ちた禍々しい存在が崇拝が行われていた痕跡や生贄にささげられた犠牲者の骨が散見される迷宮である。
他の神の怒りを買ったのか極自然な現象として大地に埋没したのか誰かの手で埋められたのか、迷宮という名とは違い、教会や神殿といった造りとなってて犠牲者か当事者達の成れの果てかアンデッドやゴーストタイプの魔物が出没する
ここはその迷宮の中で『教会層』と呼ばれる比較的浅く魔物の出没が不思議と少ない安全層。
ただそれはあくまでも『少ない』だけであって存在しないわけではなく、実際に天井にはミメシスと呼ばれる魔物が張り付いていた。
邪神を模した像、人間が二人くらいは寝かせられる祭壇、無数の柱、風化の痕跡も無い美麗な赤い絨毯、何時までも消えない蝋燭、何もかもが怪しげな空間であっても弱小な魔物には関係が無い。
ゆらり、ぬらりと、そんな空間を無数の銀製の燭台に立てられた蝋燭が艶かしくも頼りなく室内を照らしている。

弱い魔物であれば弱いなりに獲物を狩る術を持っている、でなければ魔物と分類されないだろう。
犠牲者の声を語り、姿を迷宮の壁や亀裂へ或いは天井と同化させ、獲物が近づいてくると壁や天井から飛び、獲物に組み付く。
金属はその表皮より滲み出る粘液で溶かし、身体の何処からでも生やす事ができる触手を使い獲物を捕らえる。
捕らえると今度はその犠牲者の身体に特殊な体液を擦りつけ、もしくはその獲物の身体に牙を突きたて其処から体液を注ぎこみ、特殊な毒で犯しながら犠牲者に交尾を強いる。

犠牲者が見につけていた邪魔な金属は粘液で溶かしてからすすり、溶かすことは出来ないが粘液でふやけさせた布類は触手を使い引き千切り、交尾に邪魔なものを剥ぎ取りながら犯す。
確かに肉体的に脆弱かもしれないが、ミメシスらはこうして搦め手を使う事で獲物を捕らえ貪っているのだ。
そしてあわれな犠牲者は散々交尾を強いられた挙句、最悪無数の魔物蠢く巣に連れ去られるだろう。

教会に似た部屋の中で、ミメシスはじっと獲物が入り込んでくるのを待つ。
室内にはそれがいるという証左である果実が腐ったような甘い香りが広がり、教会と似たつくりの部屋に背徳的な空気を生み出している。

ミメシス > 僅かにであるが天井より魔物の皮膚から分泌された粘液がどろり……どろりと糸を引き滴り落ちて、地下迷宮の床に小さくもどろどろの粘液溜りを形成する。

そこより一層芳しく腐敗した果実の甘い香りが漂い、壁にかけられた光源の熱により蒸発し、更に迷宮の通路に小部屋に香りが広がっていく。

されど獲物は近づいてくる気配を魔物は感じれない。
すると次なる手として自分の喰らった冒険者の声を真似て、「タスケテ、タスケテ……。」と鳴くが当然聴く者はいない。

暫くはそうして獲物を寄せる努力を魔物なりにするのだが、諦める程度の知能はあったようで、天井をズリズリズリと這いずり、何かの這い進んだ痕跡を残しながら、次なる狩の場所へ迷宮の奥深くへと消えていくのであった。

残ったのはその足掻きの残滓。
甘い香りとヌルヌルの液体である。

ご案内:「無名遺跡『堕神の神殿』」からミメシスさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡『堕神の神殿』」にミメシスさんが現れました。
ミメシス > ――…ミメシスと呼称される魔物はアンデッドには分類されない魔物である。
では何か?と問われると宝箱に巣くうミミックに近しい存在であり、教会内部に広がるアンデッドを排する力には影響されない。
だがそのミミックと違い一定の場所に留まる事をせず、獲物を探しにいく習性があり、こんな神聖力でも生物であるミメシスには関係なく、この場も当然の如く狩場として認識し、今も獲物を待ちうごめいている。
数少ない武器である擬態化、天井に張り付き皮膚を周囲の光景と一体化させる事で獲物を欺き、脆弱な分不意打ちで獲物に襲い掛かり、その身体に圧し掛かり喰らう或いは交尾に持ち込む。
全身より滲ませる透明な粘液は捕食行動・生殖行動をし易いように獲物が身につけている金属を溶かす性質を持っていて、邪魔なもの危険なものはそうして排除した後に行動に移すのだ。
それが雄であればそのまま触手などを使い獲物を絞め殺してゆっくりと肉を咀嚼し、血液を含む体液を啜るが、獲物が雌であれば触手は獲物を絞めるためのモノではなく、弄るための器官となる。
口になり、手になり、足になり、強制的に獲物を交尾状態に貶める毒を打つ針になり、異種族の雌を悦楽で溶かし苗床へと変えようとするだろう。

此処に存在するミメシスの個体は天井にではなく、床に擬態している特異個体。
もし獲物が踏めば触手を湧かせて捕らえ、踏み越えれば背後から襲い掛かるだろう。
真っ赤な絨毯、それに擬態した身体は赤く淡い明かりしか存在しないこの場では見つけることは難しい。
しかし、その手にカンテラやランプがあれば別である。
なぜならばその明かりに照らされて絨毯の一部が粘液でぬらりと艶やかに妖しく光を反射するのだから。

――…邪なる神が祀られた教会。
一攫千金を狙う冒険者が足を踏み入れるか、それとも祀られた神を崇める魔族か、その噂を聞きつけ調査にくる聖職者か。
どれであろうとミメシスは構わない、訪れるものが繁殖に適した存在であればどんな種族でどんな職業であろうと、区別無く襲うだけなのだ。

ミメシス > 燃えるような赤ではない、鉄錆びの香りすらしそうな深紅。
入り口から祭壇まで伸び広がる赤い絨毯の上で、獲物が踏み越えるか踏みつけるかするまでじっと動かないミメシス。

知能が高ければ自らの体から溢れる透明な粘液をなるべく抑えるだろうが、脆弱なる魔物には其処まで知恵を働かす事は出来ず、生殖本能が極端に高い魔物はただただじっとその場で擬態化した身体で待つ事しかできない。

周囲には蝋燭が燃える香り、それを上回る甘い甘い鎖かけた果実が僅かに醗酵した匂いに近しい特有の香りで満たし、更には――…魔物は犠牲者の声を真似る。

「……………………………。」

天使の歌声。
否、是は犠牲者の声色と犠牲者が魔物相手に残した歌声であり残響。
室内は肉塊が奏でているとは思えない邪なる神に祈りをささげる歌声が響き続ける、歪み狂った空間へと変わっていく。

踏み込めばどこかに生存者がいて、歌を祈りをささげ神に歌を奉げているようにも感じれる、かもしれないが、此処は無名遺跡であり、そんな存在がいるはずも無いのだ。

これは紛れも無く、犠牲者を装った魔物の仕業であると、侵入者は気がつけるだろうか。

ご案内:「無名遺跡『堕神の神殿』」にアリスクレーユさんが現れました。
アリスクレーユ >  
擬態した魔物一匹しか存在しなかったその場所に、遠くから響く、
小さな爆発音。
そして遠い場所まで十分に届く、魔力の余波。

暫しの静寂の後。
コツコツと響く乾いた靴音があった。
近づく足音。

やがて、一つの人影が現れた。
すらりと細い手足に、美しい金色の髪。
宝石の如く煌めく蒼の瞳。
そうして異様な雰囲気を湛えるこの場に似つかわしくない、
鈴の音の如き凛、とした音が響いた。

「あーあ……魔物が殆ど居ないのは楽で良いけど、
 お宝の気配も全然ないじゃない……」

つん、と。
柔らかな唇を突き出した少女は、
新たに訪れた一室を見るなり、大きくため息をついた。
少女に同行者はなく、どうやら一人でこの場を訪れているようだ。

蝋燭に照らされ、輝く白い太腿。
そこに巻いたベルト――その外側にある革製のダガーホルスターに
自らの獲物を収める少女。

どうやら、先ほど戦闘を終えたばかりのようだ。
汗一つかいていないところから、
少女にとってはつまらぬ一戦だったのだろうことが分かる。
一歩、また一歩と歩を進めていく。

「さっさとミメシスを見つけて、
 売り捌いてやろうと思ったのに……」

『見つけて』から『売り捌く』まで一気に思考段階が飛んでいる。
彼女にとって、その魔物を狩ることは些事であるかのようだった。

彼女の空いている左手に、青白い炎が現出し、すぐに消える。
ダガーを携えてはいるが、魔術を行使するようだ。

そして彼女はかなりの自信を有しているらしい。
その足取りから、前進することへの余裕が見てとれる。

「それにしても、気味の悪い迷宮……っていうか、教会? 何か声も聞こえるし……。
 ここにも何も無いんだったら、もう帰ろうかな……」

周囲に適当に目配せ――或いは、すっかり緩みきった警戒の視線――を飛ばししつつ。

そのまま赤の絨毯を靴で――踏んだ。

ミメシス > 赤い絨毯を踏んだ筈の侵入者の靴裏には絨毯越しの床を踏んだときの硬質な音も弾力もなく、代わりに伝わるのは絨毯以外のものを踏んだグニュという不気味な弾力と同時にヌルリとした滑りである――…虎の尾ならぬ堕神の神殿』の教会層に巣くい獲物を待っていたミメシスを踏みしめたのだ。

それはミメシスにとっては狩猟の合図であり引き金。
当然侵入者を誘う犠牲者の声真似もピタリと止めると、自分の身体を踏みつけた獲物を襲うべく、全身の擬態を解き、赤い絨毯と酷似させていた体色を不気味な紫色にじわじわと戻しながら、まずは踏み込んだ獲物を捕らえるべく行動を。

その足裏を靴をぐずりと音をたて、自分の身体中に飲み込み始め、生温かな泥沼に足を入れたが如くに似た感触を与えながら、ずぷ、ずぷっ、と容易くその足首まで一気に飲み込んでいこうとする、当然足を上げようとすれば、逃がさないときつく足に足首に肉体で圧をかけ、この場に釘付けにしようと動く。

その捕獲行動は人間や人型と違って触手を使った一斉同時の行動となって、ほぼ獲物の足首を飲み込もうと蠢くその動きと同時に床から或いは床より盛り上がった空間から紫色の皮膚をした触手を伸ばして、足首だけではなその身体を捕縛し、獲物が雄であれば圧し折り骸に変え、雌であれば繁殖をしようと、探りも入れ始めるだろう。

まずミメシスが探りに伸ばしたのは危険が無いかの確認の為にその獲物の左右の手首、ダガーを握り締めている手首も、魔力の残痕が残っていそうな逆の手首も紫色の触手を不気味な弾力と透明な粘液の滑りを伴いニュルりと巻きつかせ、そのまま手首から肘辺りまで柔らかな肌を舐め這い上がろうとする。

「……タスケテ、タスケテ…タスケテ。」

獲物を捕らえる行動を始めておきながら、今更ミメシスは今まで喰らった犠牲者の声を真似て、鳴く。
老若男女様々が混ざり合うモザイク状の声色の中に今夜の獲物の聞き覚えた声があるかもしれないが、其処まで知恵は回らず、助けていう言葉とは裏腹に獲物を捕まえ喜びの鳴き声だった。

この様々に組み合わさった犠牲者の声を混ぜ合わせた鳴き声こそミメシスの特徴。
ミメシスが獲物を求めるときの鳴き声、冒険者が求めた魔物が此処にいるという証左。

アリスクレーユ >  
「えっ」

足裏に思わぬ感触を覚え、一瞬の内に思考が揺らぐ。
絨毯だと思い、足を乗せたその一点から。
まるで床が溶け出すかのように、冒涜の紫色が姿を現したのを、
反射的に向けた視線が確かに捉えた。

――まさかこいつが、ミメシス……!?
  擬態する性質があるなんて聞いてないわよっ!?

想定外だった。
この魔物について十分な知識を有している者であれば、
当然知っている筈の情報。
それは、彼女の頭には入っていなかった。

――いや、そうだ。そういえば……。

ふと、過去の景色が脳裏を過る。

『ま、大したことのない討伐対象だ。
 何よりその魔物は炎に弱くてな、そして――』
『あー、それなら問題なし! 炎の扱いは得意だから!
 じゃあ、さっさと狩ってくるからきちんと報酬弾んでよね~!』

依頼主からの忠告を適当に流した際のやり取りが、
一瞬の内に脳裏に浮かんだ。
あの時、きちんと忠告を全て聞いていれば――。
そんな後悔を頭の内でぐるぐると回す。
その間にも、足はどんどんと沈み込んでいく。

「ちょっ、離しなさいよ!」

後悔の念で反応が遅れたことが災いしたか、
或いは元より魔物の俊敏性が上だったか。
とにかく、持ち上げようとした足はしっかりと拘束され、
最早その場から逃げ去ることはできないようだった。

またたく間に肘先まで駆け上ってくる悪寒に、
思わず身震いをする。
反射的に、手にしたダガーで纏わりつく
肉を切り落とそうと右手に力を込めるが――
既に肉の塊に纏わりつかれた手には、力が入らない。

「っ……」

眼前の魔物が発する、謎の声。
先は大して気にも留めていなかったその声の意味するところを、
少女は理解した。
皮膚の下を走る悪寒が、一層その激しさを増す。

しかし少女は、ふっと笑みを見せる。

「残念だけど……
 あたしの声はあんたのコレクションにはならないわよ」

空いた左手に、一冒険者が扱っているとは到底思えない大量の、
そして純度の高い魔力を込める――。

今、少女の左手から必滅の火炎が生じようとしていた。
足と腕を拘束されているくらいであれば、まだ問題ない。
集中力を保ち、反撃の一撃を――!

ミメシス > 圧倒的な熱が必滅の火炎魔法が発動するならば脆弱なミメシスは容易く燃えて乾きホロホロと砂の如く崩壊し、勝利した暁に得られる様々なモノと引き換えに、冒険者は犠牲者とならずに済んだ――…かもしれない、だがそれが現実にならないのは今夜獲物を捕らえたミメシスは多くの犠牲者を飲み込んだ存在。
脆弱であれ幾多の危険をすり抜けてきた魔物は当然その発動せんとする魔力に魔法に反応し、素早くそれを無力化すべく行動を始める。

愚鈍な魔物に似合わぬ何かを起こせば何かに反応し行動をみせるミメシス、その犠牲者の行為をあざ笑うかのように犠牲者たちが残した断末魔や哀願の言葉を切り取り縫い合わせたが如き鳴き声を上げるのだった。

「オマ、えも、喰らウ、タスケて、喰らウ、喰ワナイで。」

単語を継ぎ接ぎにした言葉は意味が通りそうで通らぬが、ミメシスの鳴き声には明らかに相手を嘲笑する音色が含まれていて、その声を肉塊の何処からか発し奏でながら、ヌルヌルヌルヌルッと手早く手首から二の腕まで、二の腕から肩口まで這い上がり、集中力の阻害と共に雄雌判別させるために邪魔な衣を剥ぎ取るべく、獲物の左右の腕に巻きつかせている触手の先端を使い、獲物がまとう衣服の肩口に絡んで、そのまま衣服を外側に引っ張り巻き込みながら、肩口から二の腕までヌルリと下り始める。

足首から膝まで飲み込んだ身体でも当然邪魔なものは剥ぎ取り、甘い果実の皮を剥くように履いている靴に装飾された金属があるならそれを溶かし、無ければ口内でもごもごと飴玉でも転がすように器用に肉の圧と脈動を利用して、靴まで脱がそうとするのだった。

それと一緒になって行った魔法発動の妨害。
集中力の阻害と、危険な行動を排除する対処。
刃物を握っていれば其処へは獲物の腕に巻きつかせた触手の皮膚より金属を溶解させる粘液を滴らせ、何よりの脅威である魔法への対処は――…おぞましきミメシスの唯一にしてそれこそミメシスが高額で取引される理由のひとつである極上の毒を用いる。

踏まれてから捕縛までの行動よりも素早く、鈍重な姿かたち、情報から外れた速度で、紫色肉塊の身体より人間の子指くらいしかない細い触手を生み出し、射出する勢いで獲物に向けて放つと、その触手は先端部分より鋭い針状の牙を生み出しながら、獲物の首筋にその針状の牙をずぷっと突き立て、魔法を発動させる集中力を奪う為に皮膚を穿つ痛みと、その首筋の血管より高い熱を帯びた甘い甘い桃色の毒をどくん、どくん、どくん、と流し込んでいく。

普段の皮膚に擦り込む薄桃色の毒よりも危うい濃度の高い桃色の毒、甘い甘いその毒は効果を発揮できれば肌の感度を強引に引き上げる他に、微量な体液への依存と抵抗が弱ければ錯乱効果を与える、毒を打ち込んだ存在を友好的な存在と錯覚させる催眠作用のある困惑の毒。

体液へ依存する効果とは違い直ぐ効くが大量に打ち込まれない限り直ぐに目覚めるであり魔力を使えば正気に戻るのは容易いが、ミメシスにとって魔法を回避するための一瞬が必要であった……それ以上は悦楽を持って妨害をするであろう、それまでの時間稼ぎ。

アリスクレーユ >  
「あたしを喰らうですって?
 はっ、あんたが殺してきた奴らとは違うのよ! 思い知――」

そう口にして、まさに魔炎を現出させようとした、その時。
想定外の俊敏性で以て彼女の首筋に毒が打ち込まれる。

「――れ……れ、え……?」

ぱっと見開かれる、宝石の如き蒼。
首筋から注入される毒は、
彼女の思考を掻き乱すのに十分なものだった。

――あれ、何であたし、魔術なんて使って……。

眼前の魔物が己を害する魔物であるということを、
その瞬間はすっかり忘れ去って。
力を込めていた手はすっかり勢いを失い、
指先までだらん、と弛緩する。

――って、何してんだあたしは!

魔力を集中。この感覚、毒を打ち込まれたのに相違ない。
ならば、全力で魔力を毒の浄化に回す。
警戒心の足りていない彼女であったが、
そういった魔術分野の応用力は、
冒険者として備えているらしかった。

既に脱がされてしまったお気に入りのブーツが
肉塊の中に埋もれていくのを視野に入れながら、
裸の足でばたばたと藻掻こうとする。
しかし、純粋な力では振り解くことはかなわないようだ。

「嘲笑っていられるのも今のうちよ……」

嘲笑のように聞こえる魔物の声と言葉。
また、体を舐め回すように這うその肉塊に身震いしながら、
羞恥に頬を染める。衣服はどんどん剥ぎ取られている。
正直、目を瞑りたいくらいだった。

露わになる少女の肉体は、一点の曇りもない。
理性ある人間が見たならば、思わずため息をつきたくなるくらいの、瑞々しい白。
その白は次第に粘液に塗れ、蝋燭の光に照らされて妖艶な色を帯びていく。

もう一度、もう一度だ。
先の不発で、かなりの魔力を消費してしまった。
おそらく、次の一撃に魔力を注ぎ込めば
相応の時間、魔力の充填に時間を使うことになる。
その間に喰い殺されては、たまったものではない。

魔力を巡らせている内は、
先程のように錯乱するほど毒は効かない。
勝算はあると、少女は考えていた。

粘り気のある体液に嫌悪感を覚えながら、
左手に魔力を込めるが――

ミメシス > 微量の依存と濃度によっては催眠錯乱作用を発揮する媚毒は、そういう遊びが好きな貴族やある種洗脳や拷問に利用したい裏の人間達には喉から手が出るほど欲しいものだろう。
ミメシスが生きている、新鮮で健康な状態であれば延々と生み出されるその媚毒は当然今は尽きる事無く体内より生成され毒牙より獲物の血液に混ぜて体内に打ち込み続け、緩慢にではあるが魔力への抵抗を見せるように、浄化され素振りが見えればぷちゅっと量を増やして毒を執拗に注ぎ込む。

それほどまでに獲物の脅威力をミメシスは感じ取っていた。
だから媚毒を打ち込む針を毒牙を直ぐに抜く事は無く、突き立てたまま果実の皮を獲物が柔肌を守るために包んでいる邪魔な衣服を器用に剥ぎ取り続け、中より剥き出しになった真っ白い果実を美しい肢体を前にして、それが雄か雌かの触診を始めた――…ぬらりと輝く蝋燭達の炎に照らされた艶かな獲物の肢体を前に瑞々しく妖艶なる柔肌に向けて、両腕を束縛する触手とも違う、毒を穿つそれとも違う、弄るための触手を沸き立たせ、群がらせるだろう。

ただ両腕の二の腕まで巻きつかせた触手は解かない。
肉塊である本体の中にくわえ込んだ素足も離さない。
当然首筋の毒牙もそのまま……。
ただその素足にはくにゅる、くにゅ、くにゅ、と音を立て粘液を泡立て、素足の指の間全てを舐めるように細い触手で舐り始めてはいる。

銀の燭台にさした炎尽きぬ魔法の蝋燭の橙色の明かりの下、早速と動かしたのは三本の紫色の肉をした手代わりの触手達、それは透明な粘液ではなく肌の感度を引き上げる怪しげな媚毒成分の混じる毒を滴らせ、いく筋も赤い絨毯に向けて粘液の糸を滴らせながら、それが雌であるか一番判別しやすい双丘に乳房のふくらみに寄せると、ぬるんっ、ぬるんっ、ぬるぬると左右の乳房の肉に一本ずつを巻きつかせていき、粘液を乳房に擦り込む動きと共に、膨らんでいるか、それは母体に程よく成長しているかを確認のため、ぎゅ、と左右を同時に柔らかくだが締め上げ、そのまま緩急つけてリズムを刻みながら、揉み弄くっていく。

「ヤダ、止めろ、喰う、クウ、くう?犯…サレル?タマゴ……胎……帰シテ、帰さナイ」
ミメシスは三度犠牲者が残した言葉を繋げて言葉にして鳴いた。
やはりそれも一連の言葉としては不明瞭であるが、言葉のひとつひとつは犠牲になった女や男達が吐いた言葉で、犠牲者がたどる末路を思わせる悲鳴なのだ。

その触手と同時に生み出した3本目の触手を動かす先はそんな乳房と乳房の狭間であり、透明な桃色の粘液まみれの先端で谷間をなぞりながら、鎖骨の合間を撫でてあがり、喉を、あご先を撫でて、最後には悪態を吐き出す瑞々しい唇にヌルと粘液まみれの丸みしかない切っ先を押し付ける。

それはまだ味見といった段階であるが、本能が美しい獲物を雌を察し始めたのか、当然のように獲物であるエルフの少女の足を咥えてしゃぶる本体からはぼこぼこと音をたて突起を生み、触手を生み出そうとし始めている、探りようではなく生殖用のモノ達を。