2022/09/01 のログ
ご案内:「九頭竜の水浴び場『薬湯』」にマーシュさんが現れました。
■マーシュ > 「─────」
濛々と、立ち込める湯気。
混じる香りは薬草のほんのわずかに苦い風味。
随分と不似合いな場所にいる事実を、修道女自身が感じてはいるのだが。
今は、心地よい熱気に小さくため息を吐いた。
できるだけ人目につかない奥の湯殿を借りて、そうしている理由は───
■マーシュ > 通り雨に足止めをされつつ。いつものように、城下の教会施設に遣いに出ていたのだが
その途中で通りがかった馬車に泥水を浴びせられたのだ。
それはもう見事に。
己の運んでいた荷物は濡れて困るものではなかったし、何より体でかばうことになったために無事ではあったが───。
濡れ鼠になった己に同情してか、多少の良心の呵責を覚えたのか、あるいはそのどちらもか。
緊急避難としてこの旅籠の利用券を融通してもらった、というのが顛末。
──立ち寄り先の施設に世話になることも考えたが、受け取らないと解放されそうになかった。
使いを済ませ、帰還が遅れることを連絡して、そうして己は場違いなここで、湯に親しんでいる。
「…………洗濯、までしていただいたのは少し……。」
己の恰好へ驚きと同時に、事情を説明すると同情を向けられ。
旅籠だからだろうか、洗濯までお世話になってしまったことにはこちらが少々気が引けてしまう。
帰る前には何かできることをさせてもらおう、と小さく誓いながら、湯の音が満ちる中に視線を巡らせていた。
■マーシュ > あまり目立たない場所を、と願ったため、いくつもある地下浴場の中でも奥まった場所で、大きくもない場所だからか自分以外の姿は見えない。
そのことに安堵しつつも───人目につく場所で肌を晒すという行為には慣れそうにはない。
それでも、汚れた体を清められたのは嬉しかったし、ようやくひとごこち。
体に大ぶりの麻布を巻き付けると、石造りの湯船に腰掛けるようにして膝から先を湯に浸し。
染み入る様な温もりに、ほんのりと雨に濡れて冷えた体が温まって白い肌が染まってゆく。
洗髪を終えた髪を、緩く束ねてまとめ上げる。
髪が長い所為で少し頭が重いが、湯につけるよりはましだろう。
沐浴とは違う熱は、心地よくもあるが、逆上せてしまいそうでもあった。
ふ、と幾度目かの息を吐いて緩く目を伏せる。
ご案内:「九頭竜の水浴び場『薬湯』」にクレイプニルスさんが現れました。
■クレイプニルス > 最近、今は無き右目が痛むように感じる。
クレイは少し遠めの場所で魔物の討伐依頼をこなした後から、そう感じるようになっていた。
理由は分からないが……まあ、とにかく痛い物は痛い。
そして、痛みと言う物はうっとうしいものだ。
王都に帰還した後、ギルドへの報告はそこそこに。やってきたのは九頭龍の水浴び場にある、薬湯の場。
このお湯の湯気には、鎮痛の作用があるとされており、目の傷跡がうずくときはよく利用するのだ。
特に、湯の奥の方。人があまりいない場所などがいい。眼帯をとっても誰も見ないから。
腰に大きめの布を巻き、意気揚々と薬湯の暖簾をくぐり、奥の方に行けば……先客が。
「……っぁ」
湯気でよく見えないが、確実に女性であろうことはわかる。この水浴び場は基本混浴というか、男女関係なしに入れるので、こういうことはよくあるのだが……
だが、ストレートに女性の横に入浴するのも、アレであろう。
「どうも。貴女も湯治に来たんですか?」
まあ、あたふたしても仕方がない。ここは、紳士的に行こうと。
「良ければ、お湯をご一緒しても?そちらにはできるだけ近づかないので」
そう断りを入れつつ。反応を待って。
■マーシュ > 流れる湯の音に混じる、音。
地下ということもあり、籠りがちな音は幾重にも反響して、どこからのそれかはわかりづらい。
それでも己が利用している場所へ人影が見えたのならば、気づかないはずもない。
僅かに緊張したものの、けれど己も場所を借りている身。
少し戸惑ったような相手の立ち居振る舞いに静かに会釈を返した。
女はまだ湯に浸かっている、というよりは足湯を楽しんでいる程度なので、体に巻き付けた湯衣代わりの布も解いていない。
髪や、容姿。体の稜線はある程度は推察がつくだろうが──その程度。
異性相手ということもあって多少居心地が悪そうなのはお互い様。
問いかけに、僅かに思案したが、己の事情を語るまでもないと判断したのだろう、顎を引いて首肯を返した。
「かまいません、体を温めていた程度でしたので」
此方に気を遣った言葉に、むしろ湯治目当てならばこちらが身を引くべきだろうかと考えながら言葉を返した。
■クレイプニルス > やはり、女性経験があろうとも、こういった場所で異性と一緒になるのは多少気まずい。
とはいえ、お湯場で突っ立っているというのも些か間が抜けているだろう。
相手から了承を得れば、左目と口を笑みの形に。
「ああ、ありがとうございます。では、失礼して……っと」
女性からやや離れた場所にまず足を、そこからゆっくりと体を浸からせていく。
ふぅ……と息を吐きつつ。布はまあ、とるのが温泉のマナーだが、見ず知らずの女性がいるのだ。少しのマナー違反くらいは。と、つけたまま。
やはり、体を湯に沈めれば温泉の薬効が、からだの古傷に染みてくる感じがする。
ふと、相手が、何か思案しているようなので。
「ああ、俺の事はお気になさらず……と言っても難しいでしょうが。
このお湯、古い傷によく効くんです。だから、良く入りに来るんですよ」
なんて、軽く声をかけるのは気まずい空気を解すため。
やはり、お湯場は気楽に入ったほうがいい。
無論、目の前の女性が出るなら引き止めはしないだろうが、やはり、
一人よりも二人の方が温まる空間は心地よい。そう思っている性質の男なのだ。
■マーシュ > 基本的に人好きのする性質なのだろう、己の返答に笑みを浮かべて湯に身を沈めるのを見守りながら。
相手の右目に残る傷が、湯治の理由なのだろうかと、職業柄、そういった傷痍に慣れている女は、悪意なくそう思考を巡らせるも、口にしない。
己とは違い、体を沈め、寛いだ呼気を零す相手の様子を、それもまた湯殿の景色として受け入れながら、こちらに向けられた言葉に緩く双眸を瞬かせた。
「いえ……ただ、こういった場に慣れていないだけですので、こちらのことこそお気になされませんよう」
仄かに香る薬草の香り。湯気に混じるそれには興味深そうに感じ入りながら。
相手の言葉に甘え、ひとまず辞去することはやめて、足湯を続けることにした。
湯治という目的がある男に対して己はただ場所を借りているだけなのは心苦しいところではあるのだが──。
「………傷、というとこちらの?」
少し惑いつつ、己の右の目許を撫でて、相手の傷を確認するように。
おそらく冒険者か、あるいは騎士か……それはわからないが、体つきのしっかりした相手のことだ、ほかにも傷はあるのかもしれないが、とりあえず目立って見えるそれについて穏やかに問うた。
■クレイプニルス > 相手とは短く言葉を交わしただけ。ただそれだけなのだが、言葉の端々…というか、声色等から感じ取れるのは、きっと優しい人なのだろうという事。
無論、第一印象というだけだが、この国において、優しい女性というのは美徳であり、そして人の魔に刈られやすいという事だ。
だから……自分は。この場では紳士であろうと思いつつ。
「あはは。まあ、誰しも始めての場所ではくつろぎにくいですよね」
慣れていない。という言葉にはそう返しつつ。
相手はこちらの言葉に甘えたようなので、こちらも、相手の言葉に甘えて、リラックスしながら、上を見上げて……水滴が、ポトリ。
そして、相手が自身の目を撫でて発した言葉には、少々の苦笑を交えて。
「はは、ええ。そうですね。隠すことでもないですが……」
まあ、嬉々として語るようなことでもないが、聞かれて返さないほどに気にしてるわけでもない。
「俺、冒険者なんですが……少し昔、右目に矢を受けちゃいましてね。
今は眼帯で隠してますが、その傷が少し痛むので」
まあ、見せろと言われたら困るが、そうそう言われることも無いだろう。
「まあ、男の傷は勲章……とは言っても、痛い物は痛いですから。こうしてね」
そう冗談めかして言うくらいには気にしていない。
緩やかに、こちらも眼帯を撫で、緩い笑みを浮かべる。
「まあ、護衛に孤児院などに行けば、少年にかっこいいと言われるくらいのご利益はありますがね」
なんて言いながら……
■マーシュ > 「…………まあ、そんなところです」
職業柄そぐわない、と訴えるわけにもいかない。わずかに押し黙り、応じた。
慣れたら、……慣れるようなことがあるのは少々異常な気もするが。
無論、この場自体を否定しているわけではなく、己の立場を考えてのことでしかない。
此方の、ともすれば不躾な問いかけに、困ったような笑みとともに応じてくれる言葉に耳を傾け、静かに頷いた。
痛む、という言葉にはわずかに反応を見せるも───、いまはただ、手を握りこむ程度。
「……ここの湯が痛みに効くということでしょうか。」
初めて赴いたため、この湯の効能に詳しいわけではない。だからそう、嘯いて。
ただ、古傷と言えど傷むのなら、と視線を上げた。
「それで収まるのなら良いですが──一度きちんと術医に見せることをお勧めいたします」
己にそこまでの能力はない。けれど痛みは信号だと聞いたことはある。
女は己の職責を果たすように可能なら、医療と、治癒術、どちらにも明るい人物を探すべきだろうと告げた。
ただ、傷をネガティブなものとはとらえない言葉には、どう応じたものかとこちらがやや、眉尻を下げる。
必要以上に憐れむつもりはないが、何も知らない子供ではない以上同意はしづらいというものだ。
■クレイプニルス > 「……?」
相手がわずかに押し黙ったのを見れば、首を少し傾げる。とはいえ、それに突っ込んで半紙をすることはないが。
まあ、自分も実は貴族。この場には似つかわしくないと言えば似つかわしくない。
とはいえ、お互いに自身がここにいる事へのアンバランスさを知ることは……きっとない。
「まあ、目の傷の痛みに、ここの温泉の薬効が合っている……という事なんでしょうかね」
とはいえ、術医に見せたほうがいいと言われれば、少し困る。
というのも、実家……アークス家お抱えの術医に、右目の傷口に、見栄えが悪いからと宝石をはめられたのだ。
そう、この眼帯の後ろは、傷口に宝石を術合させられている状態……
「……ええ、そうしたほうがいいとは思うのですが。術医は、苦手で」
勿論、そんな目を見せるわけにもいかないのだが。
そう、困ったように笑顔を浮かべるのが精いっぱいであった。
そして、自分の言葉に困ったような反応をされれば。
「あはは。すいません、困らせちゃいましたかね……
まあ、もう戻ってこない右目を悲しむより、少しでも前向きに生きようかな。
……なんて思っただけです」
無論、その考えに同意されづらくても。そう思って生きる方が辛くない。そう思っての事。
「でもまあ……一回、治癒の術を修めた、しっかりと術医の知識のある方に見てもらった方がいいのかな……」
まあ、目はどうにもならないかもしれないが、
体中の古傷はましにはできるかな。なんて思いつつそう呟こう。
■マーシュ > 此方の不必要な沈黙に不思議そうに首をかしげるのに困らせてしまったか、とゆっくりと首を横に振る。
「痛みが和らぐのであれば、そうかもしれません。私は、……多少心得はございますが、門外漢ですので」
主に薬草について。とはいえ、教会で習い覚えた程度のこと。
施療院に勤めているわけでも、医院の看板を掲げている専門家とは違う。
だからはっきりとしたことは言えないのだが、術医が苦手と聞くとわずかに目を瞠る。
それが何に起因するかは彼の事情によるものだから、それを問いただすことはないが───。
何か難しい事情を抱えているらしいのだけを飲み込んで、頷いた。
もし、その痛みに、悪いモノ──呪術的な類が絡んでいるのならば彼らに見てもらうのが一番いいのだが。
けれどそう言ったことを一番知るのは彼自身ではないかとも思うとそれ以上押し付けることはしなかった。
「そう、ですか。………その傷跡があなたにとって重荷になっていないのであればよいことかと思います」
失ったものを元通りにする術は、己の知る限りは、知らない。
あるいは神のごとき力であれば可能なのかもしれないが、果たして──?
知らないことを口にはできない。ゆえに沈黙をえらび。
ただ、そうしていると湯殿の入り口から己を呼ばう声音がした。
おそらくは衣服の洗濯が終わったのだろう。
其方に視線を向けると、改めて同席している相手に視線を戻し。
「刻限のようです、お話し、ありがとうございました」
頭を下げると、さぷ、と湯に浸かっていた足を引き上げる。
全身浸かっていたわけではないが、十分体は暖められたのは、火照りを見せる色白の肌の色が示していた。
それでは、と場を後にする挨拶の言葉を向けると、女は濡れた足音を小さく残して湯気の向こうへと姿を消した。
ご案内:「九頭竜の水浴び場『薬湯』」からマーシュさんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場『薬湯』」からクレイプニルスさんが去りました。