2022/06/04 のログ
ご案内:「街はずれ」にフィンさんが現れました。
■フィン > 宵闇に沈む神聖都市、その街はずれ。
ちょっとした冒険に繰り出した仔猫が、他猫のテリトリーを避け、もめ事を避け、
歩き回っているうちに、りっぱな迷い猫になってしまうように。
お使いに出る、という名目で、気まずい空間を飛び出した子どももまた、
いま、まんまと迷子になってしまっていた。
無遠慮に頭を撫でようとする手やら、
もっとぶしつけに、肩や腕を掴もうとする手やら、
とにかくそんなものから逃げて、かわして駆けまわるうち、
すっかり日は暮れ落ちて、あたりの景色は黒々と――――――
「ここ、………どこ、なんでしょう………」
心細さがよりいっそう、子どもの声を細くする。
慣れ親しんだ王都ではない、見ず知らずの街のはずれ。
途方に暮れて、泣きたくなるのを必死にこらえて、
とぼとぼと足を動かしながら、僧衣の灰色をぎゅっと両手で握り締める。
神父さま、心配してるだろうか。
ふだんは少し苦手だけれど、今は、あの手が懐かしいような。
逃げ出したりせず、ずっとあの人の膝の上に居れば良かったかも、
――――そんなことさえ、考え始めていた。
■フィン > 心細い、けれどもひとに道をたずねようにも、ひと通りがない。
震えるため息、俯いた拍子に、ほろりと涙がこぼれそうになる。
慌てて顔を仰のかせ、空を見上げて深呼吸を一度。
ゆっくりと瞬きながら、もう、一度。
それから、華奢な子どもは歩き始めた。
とぼとぼと、ふらふらと、疲れ切った足取りで。
ぶじにもと居た場所へ帰り着けるかどうかは、神のみぞ知る――――――。
ご案内:「街はずれ」からフィンさんが去りました。