2021/11/07 のログ
ご案内:「自宅」にカーレルさんが現れました。
カーレル > 明け方まで確かに隣に寝ていた女の姿は既に無い
数刻前までは確かに隣で眠っていたが眼を覚ましたときに残っていたのは、
微かな残り香と腕の中に抱いていた柔らかな感触だけであった
飛ぶ鳥跡を濁さず、とはよく言ったものでそれ以外の痕跡は一切残さぬ大した女であったように思う

うつらうつらとベッドの上でそんな事を考えていたがようやく身体を起こして、
シャツに袖を通すとベッドの縁にかけ直し、床に落ちたコートを手繰って紙巻きの煙草を取り出す
ぼんやりした頭の上の寝癖に手櫛を入れながら紫煙を吐き出すとようやく目が冴えてきたようである
吐き出す紫煙の向こう側でちょこんと腰を下ろしてこちらを見上げる愛猫に気がつけば、
はいはい、と急かされるように咥え煙草で立ち上がり、キッチンへ向かう

カップに1杯と半分の穀物と湯で干した鶏肉を鍋で軽く火を通して愛猫の食事をこしらえる
いつの間にかキッチンにまで入り込んだ愛猫が頻りに鳴き声を上げ、
つかまり立ちするようにして急かすのも毎朝の事…通じはしない、とは判っていても、
なんとなく、はいはいだとか、判った判っただとか、語りかけてしまうのもいつもの事である

冷めた鍋の中身を餌皿にうつしてやりがっつき始める愛猫の背中を撫でるようにしその場を離れる
室内を見渡して洗濯でもするか、とシーツやら脱ぎっぱなしのシャツやら下着やらを拾えば、
扉を開けて平屋根の上に出る…天気がよく洗濯するには良い日和である

物干しにザッと洗った衣類やシーツを並べて干し、風に揺蕩う洗濯物の風景を眺めれば達成感が湧き上がる
平屋根の隅に置かれた木製の椅子に腰を下ろせば、また煙草を取り出しては一服する
風に揺れる洗濯物と通りを行く人をぼんやりと眺めながら煙を吐き出す
時折、通りすがる知人と二言、三言、挨拶を交わしたり、世間話をしたり…
そんな感じに正午近くまで時間が流れていく

「…買い物頼みたかったんだけどなあ…」

と、今朝方まで一緒にいた相手の事を思い返したりしつつ、短くなった煙草を消せば、
新たに煙草を咥えて火を灯した

カーレル > 2本目の煙草が短くなった頃合いにひょいと立ち上がって軽く伸びをして
部屋の中に戻り、コート掛けに引っ掛けてあったコートを手に取れば腕を通す
流石に買い出しに行かないと日用品であったり食べ物であったりに困りそうであった

「それじゃ、行ってくる」

窓の側の日当たりの良い場所でうとうとしていた愛猫に声をかければ
賑わう市場や商店の建ち並ぶ平民地区へと向かうのであった―――

ご案内:「自宅」からカーレルさんが去りました。