2021/10/18 のログ
ご案内:「富裕地区の一角」にビョルンさんが現れました。
ご案内:「富裕地区の一角」にゲーゲン・アングリフさんが現れました。
ビョルン > 富裕地区の一角、とはいえど商業区域を一本奥へ入った立地とあれば平民階級にも親しみはあるだろうか。
今夜ひっそりと近隣の住民を招待し、開業した一軒の店舗があった。
広い店舗に大きなテーブル、その間の通路を縦横に駆け巡るのはトレイを手にしたローラーブーツ履きの少女たちであった。耳があったり、なかったりといったところだ。
外見で言うならば歳の頃は年長者でも15には満たぬだろうか。

本日は招待客のみ、チップだけを頂いて良い食材を惜しみなく調理して大盤振る舞いするという形式であった。
そんな開店サービスが終了したばかりである。

管弦楽のバンドも片づけを終え、はけたところで。
のそろ、と奥向きから貴族の坊のような格好で姿を現す。
まだ鉄板料理から飛び散った脂の匂いの残るようなベンチシートに腰掛ける。

「どうだった」

相手を手招き、仮の店主としての営業について問うた。
手招きには手の空いた少女たちも反応しただろう。

ゲーゲン・アングリフ > 長い間、自身の城……ともいえる店を休み。
生活費を稼ぐために慣れぬ冒険者稼業に精を出していた男。
ある日、急な連絡を貰い、呼び出され。
そこから話に巻き込まれ、流されるままに時間が経過し……。

「……」

男は、なんだかしらないけれども。
とある店舗で働いていた。いや、働かされていた。

「……あ、お疲れ様です……」

なにがなにやら、という様子のまま。
男は、相手の声かけに反応し。
しかして、立ったままで、相手の顔をまじまじと見て。

「……まず、なんと言っていいのか、というところなんですが。
 ……こういった形式のお店の営業が、こんなに順調に行くとは……」

この目の前の若き男に声かけられ。
要領を得ぬまま、あっというまに店主に据えられ。
混乱している男であったが。
まずはそう、率直に言葉を吐き出した。
正確には、それが精一杯だった、という様子でもあるかもしれない。

ビョルン > 相手に任せていたのは主に酒類の配膳。
テーブルには大きな籠に白パン黒パンにバケットを盛りセルフサービスとした。
料理は主に肉と海鮮の鉄板焼き。
こちらを調理するのは現在店舗を持たない料理人夫妻であり、彼らもまた表に出ることはない。
ウェイトレスたちは客の希望に応じて肉の切り分けや甲殻類の殻剥きはするものの個人的な深い交流はできない雰囲気に仕上げた。

そうしてそれを見張らせる目的もあり。

「ああ、お疲れ。
 大きなハコの切り盛りもなかなかの腕じゃないか」

おおかた店舗の片づけを終えた少女たちもまだ店舗の床を滑るのが楽しいのかローラーブーツを脱がず、己へと果物を盛った皿と甘そうな飲み物が入ったグラスを持って滑り寄り左右へ座った。

「どうだ、どれも可愛いだろう。
 連れて帰るなよ」

左右に13歳程の少女を侍らせて、そっくり返ってみた。

ゲーゲン・アングリフ > 言われるがままに、配膳業務を行っていた男。
自分の店では、当然従業員を雇ったことなどなかったが。
そこは、冒険者としてパーティを組んだりした経験で何とか誤魔化していた。
男自身、やりづらさや働きにくさを感じることなどは無く。

「いえ、正直一杯一杯でしたよ……。
 ビョルンさんの教育や指示が行き届いていたからなんとか、という話で」

視界の端で走る少女たちに苦笑しつつ。男は相手に頭を下げる。
そのまま、次に何と言うべきか、と思案していれば。
まったく意図していなかった言葉を叩きつけられ。

「……持ち帰りませんよ。
 というか、こんな老体を相手してくれるような娘さんはいらっしゃらないでしょうに」

人が悪い、と言うように。わざとらしいげんなり顔を作る男。
そのまま、顎を数度擦り、相手に向かって一度咳払い。

「基本的な営業に関しては、このクオリティを維持できるのなら、問題ないかと思います。
 ただ、この後営業時間や営業日数をすり合わせていって。
 従業員の数は調整していかなくては、とは思いますが」

要するに、人員はある程度以上は必要です、という当たり前の意見だった。
逆に言えば、今現在の形での営業には不備は無い、という言葉。
もちろん、それはこのままずっと同じ営業を続けるのなら、ということではあるが。

「……ちなみに、目標とかはございますか?
 金額でも、店舗数拡大でも、なんでもいいのですが」

男は、そこで意を決してそれを相手に尋ねてみる。

ビョルン > ふむ、とひとつ頷いて。

「何があっても持ち帰りなしというのは、客にも徹底してくれ。
 未通娘と呼ぶにも幼いのが多いからな、だからこそ余計に」

それから、経営については腕を組んで思案する。
その口元へ差し出される南国の果物が刺さったフォークの先。
それへあむり、と噛みついて咀嚼しながら。

「──従業員の追加は、あるだろうね。
 また、売り込みがあれば雇ってもいいと思う──…。
 今日は催事的な開店だったが、常設のメニューはコックや肉屋と相談して欲しい」

食い物屋のシノギはわからん。
目標、との言葉を聞けば飲み物を差し出していた少女の手からグラスをもぎ取っては「けぇれけぇれ」と彼女らを追い払い。

「──金額で言うなら、目立たない程度にぼろ儲け。
 だけど、結局はそこじゃない」

甘いジュースで喉を潤す。

ゲーゲン・アングリフ > 「それはもちろん。
 ……あ、でも。ここでそういう風になったお客さんに。
 ビョルンさんのお店を紹介すればいいのでは?」

いくら目を光らせても、完全に従業員を護れるわけでもない。
ならばいっそ、そういった客の欲のはけ口を用意してしまえばいいのでは、と。
男はそう提案してみる。

「ふむふむ……。わかりました。
 では、その辺りは従業員内で相談し。
 すぐに、報告を上げさせていただきます」

コストをかけることに関して、否定的な意見が出なかったので。
男は頷き、そう返す。
経営するにあたり、必要な物を正当に要求するのは、重要なことである。

「……と、言いますと?」

思わせぶりな相手の言葉に、男は少し驚いたような表情になる。
男はてっきり、この店である程度大きく稼ぐつもりなのかと考えていたからだ。
それ以外の目的があるのなら、と。
男はその先に興味を持ち、笑顔を浮かべながら続きの言葉を待つ。

ビョルン > 「ま、逆に正面切ってこの娘らに結婚申し込んでくる奴が居たら逆に目出度いけどな。
 そこはそら、この近くなら満更知らないキャバレーもあるから、そっちへ紹介でもしてやれば」

本来、富裕地区で不自由なく飲食できる身分の者が己の塒近くを通るとどういった感情を催すのだろう。
二頭立てを横付けできぬ小路の店は、恐らく相応しくない。

つい勿体ぶったが、言葉にするのは初めてである。
難しい顔になる。

「娘を売って食い繋ごう、なんて考えが蔓延してる辺境の寒村は実に多い。
 ──親はそれでもいいかもな、けど売られた子供なんて売ればすぐ死ぬやつが大半。よしんば、死ななかったとして碌な人生ねぇから。
 こいつらの生活費を出しながら、何らかの手段で自活るか釣り合った相手に見初められるまで養う──ここはそんな絡繰で動かすつもりだ」

返してから相手の浮かべている笑顔を見返し、口元緩める。

ゲーゲン・アングリフ > 「なるほど……。そういうのに対しての対応も考えてはおきたいですね。
 ふふっ。承りました。都度、いいように対応しておきます」

相手の柔らかな言葉に、男は笑み零しつつも、一礼する。
ようするに、任せた、という按配。
そういうことなのだろう、と男は判断した。

「……なるほど。
 ようするに、慈善事業……でもないですが。
 ちょっとした人助け、ということでしょうかね。
 そのついでに、儲けもいただける範囲でいただく、と」

ふ~むふ~む、などと。
なにか間延びしたのんきな声を上げつつ。
男は確認するように、小声で相手にそう問う。
どこか、その表情は愉快そうというか、楽しそうな様子であった。

「そういうことでしたら、微力ながら全力を尽くさせていただきます。
 私としても、自分の店の稼ぎだけでは飢えて死んでしまいますので」

男の店はそもそも客が入らないのが平常営業なので。
こういったところで働けるのはありがたい、と。
そう素直に言う。

ビョルン > 「そう、客にはいいように。
 良い意味の、適当、で肩肘張らねぇのが一番」

年の功には素直に委ねる。
苦笑いのような表情を一瞬浮かべて肩を竦めた。

「慈善なんて滅相もないよ。
 碌な商売にもなりゃしない、口減らしに売られてきたならただ飯は食わさん。そぉいうことだ」

微力と全力が並べば変なの、とぼやく。
けれど大きく頷く。

「後は、俺はたまに来る客になる──金と収支の報告は雇った堅気の会計士に取りにこさせる。
 疲れただろう──残り物つまみながら飲もうぜ」

テーブルに置いたジュースのグラスを持ち上げて、籠の中のパンに齧りつく。
そんなことをしていれば此方の動きを気にかけている少女の何れかが少しはましなつまみを持ってくるだろうか。

ゲーゲン・アングリフ > 「そうですね。
 できれば、手荒くご退場願う必要がない……。
 そんなお客様ばかりだといいのですが」

ふぅ~、と。苦笑したまま言う男。
この国では、金持ち貴族はずいぶんと傲慢である、ということは。
男もよく知っている。なので、これは心からの願いであった。

「ははは、そういうことにしておきましょう。
 これ以上は、互いに野暮でしょうからな」

相手のぼやき方に男は声を上げて笑うが。
そのまま、それ以上は追求しないようにした。
そういった踏み込み方をしない、というのも。
男なりの処世術であった。

「あぁ、それは助かります。
 経営が軌道に乗れば、金銭面のプロは絶対に必要不可欠となりますので。
 そうですね……では、お言葉に甘えまして」

男は、相手に言ってもらったことには逆らわず。
相手から少し離れた位置に座り、運ばれてきたつまみを見る。
その中のクラッカーをかじかじと小さくかじりながら。
ふむ、と思案。少女に声をかけ、二、三。
飲み物のボトルを持ってくるように頼む。

ビョルン > 「幼い奴でも出すかしっかりした奴で固めるか、昼営業にするか夜営業にするか。
 随分違うだろうさ」

売られてきた娘たちを教育し、正しい生き方はこうだと啓蒙するつもりはない。
己の一存でそんなことはおこがましいとすら感じるからだ。
相手の笑い声を聞いてうんうんと頷きジュースのグラスを持ち上げる。

「ああ、そうだ。この間教えたミルクセーキを持ってきて頂戴。クリームと砂糖はケチらず使うんだよ」

少女の一人を呼び止めて言いつけ、相手も席に着くのを見る。
独特の距離感でぽつりぽつりと営業の相談と雑談が混ざり、夜が更けゆくのだろう。

ゲーゲン・アングリフ > 「その辺りは、色々と試行錯誤ですね。
 せっかくですから、私としても学んでいきたいですし」

男自身、自分の流行らない店以外で店主となるのは。
いい経験になるだろう、と考えていた。
そして、雇われた以上は結果を残したい、とも。

「では、私も失礼して……」

相手の注文を聞きつつ。
男は、運ばれてきたボトルから、ワインをグラスに注ぎ。
ゆるり、と口に流し込んでいく。
この相手との関係。なかなかに面白いことになりそうだ、と。
そう直感しながら、夜遅くまで、会話を楽しんでいったのだった……。

ご案内:「富裕地区の一角」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「富裕地区の一角」からゲーゲン・アングリフさんが去りました。