2021/10/08 のログ
ご案内:「どこかの酒場」にアイリースさんが現れました。
■アイリース > 「……へぇ」
本日、お出かけして、夜になって。
最後にちょっと一息、ということで。
とある酒場に入ることになったのだけれども。
「こういうお店も……」
そこは、普段入るような酒場とはちょっと違う風景が広がっていた。
仕切りで席が区分けされていて。
プライベートな空間が作り出されている。
……なるほど、これならのんびりと。
邪魔されたりすることなく、会話と食事が楽しめそうである。
ご案内:「どこかの酒場」にビョルンさんが現れました。
■ビョルン > テーブルを囲む席への出入り口はドアはないものの、長いカーテンを捲っての出入りとなるような形だろうか。
個室とも、半個室ともいえた。
そのうちの案内された席へ連れを伴って向かう。
席に就けば剣帯を緩めて己の左側へと刀を立てかけておいた。
物珍しそうに店内を見ていた連れを見ればふと頬の締まりを緩める。
「こういう店は、初めてか。
東の方にはないのか」
問い掛けた。
問い乍ら思うには、何を食わんかという至極単純なことであった。
■アイリース > 連れの動きを追うようにしながら、
私も、区切られた部屋に入る。
ついつい、物珍しさにきょろきょろと視線をさまよわせてしまうが。
一度、咳払いをし。
「初めてですねぇ。
東にも、似たような形の店はあるにはあるんでしょうが。
入ったことは無いです」
そもそも故郷にいたときは修行ばかりだったので。
あまり、店に入るという記憶も無い。
せいぜい、任務の時に、というくらいなので。
「……こういう形式のお店はいいですね。
色々と、使えそうで」
そう言いつつ、うんうんと頷いてしまうが。
同時に、私のお腹から音がなる。
……昔はそうでもなかったのだが。
この国に来て以来、体が空腹を耐えられなくなってきている。
思わず、相手から視線を逸らしてしまうが。
その間も、私のおなかはくぅくぅ鳴りっぱなしだった。
■ビョルン > 個室ごとに常時の品書きがコルクボードに貼られて吊るされている。
後は案内してきた店員が本日入荷の肉と魚を言っていたっけ。
食べ物に思索を巡らしながらも返された言葉に帰す。
「なんだっけな、東の国の……リョーテー。
個室と言ってもそこには遠く及ばんのだろう」
日付によってか、曜日によってか、はたまた店主の気まぐれかピンの打たれている料理が気にかかる。
名前からして晩餐会などには決して上がらないメニューだろうが。
「色々と、とはどういう……、
──じゃあ、『辛味入り汁掛け飯』」
あと甘い飲み物。
そう呟きながら連れへと視線を転じた。
■アイリース > 「あぁ、料亭ですか。
あれは……まぁ、そうですねぇ。
こういう形式よりも、一室は広いですけれども」
それを言ってしまえば、東国式の宿でも一緒なのだよなぁ、とも思ってしまう。
まぁ要するに、そもそもそういった形式の店と、この仕切り式の店とでは。
狙っている客層が違うのだろうな、と思う。
「それはまぁ、色々ですよ。
悪巧みとか、秘密の会合とか……。
……あ、オススメの魚を。調理方法もお任せします。
あと、東国のお酒があれば」
やはり、邪魔の入らない空間というのは、便利なのは間違いないと思う。
当然、そういった空間ではよからぬことも起こるだろうが。
だからこその需要もあるのだろう。
私は、相手に続いて注文をしつつ。ちら、と相手を見るが。
そこで視線がぶつかり。思わず、微笑を浮かべてしまう。
「そういえば、以前何かおっしゃってませんでしたっけ?
なんだか、新しい事業というか。
また稼ぎの場を増やすとか」
寝物語に聞いた話だったので、詳しいことは覚えてはいないが。
注文をして、一息ついたので。そう尋ねてみる。
■ビョルン > 三食は無理としても、朝夕の食事を共にする女が出来てから大盛りは頼まなくなった。
「で、やっぱりそのリョーテーでも悪い相談をしたりお役人へ袖の下を渡したりするんだろう? 知らないけど」
こういった場所でなら、女の言うように実行前の計画を話したりすることも易いのだろうか。
ふむ、と頷いて腕を組む。
「よく覚えてたな──、実は新しい店がある。
だが、表向きに俺は──「血盟の若」は、関わらない。
傍目にはただの客か、調べたとて所有者とわかる程度にしたいなと思っている。
と、言うのも場所が」
口にした地所は平民地区と富裕地区の境界辺り、いつか女の余所行きを仕立てたテーラーの通り奥一本あたりの位置であった。
■アイリース > 「ですね。まぁ、ハッキリ言いますと。
お高い料亭って、やっぱり個人の素性なんかを隠す仕組みが確立されてるんですよ。
となれば、悪巧みにはうってつけ、ということで」
結局のところ。密室の強みはそこである。
情報が漏れない、というのは。とにかく売りになるのだ。
「はぁ……つまり、今私たちが関与してる娼館とかとは違う。
独立した組織、でもないですが。
そういったものに仕立て上げたいと……?」
相手の言うことに、少し首を傾げてしまう。
なんというか、私の知っているこの男性は。
静かに、しかし大胆に力を増すように動くのが得意な印象だったが。
……と、思ったところで。その場所を聞いた時点で。
私は、思わず苦笑を漏らしてしまう。
「それはまた……」
いわば、私たちの馴染みである地区とは離れた場所。
なんというか……ハッキリと言っていいのなら。
私たちの息があまりかかっていない地点であった。
なるほど。そういうことか、と得心がいく。
■ビョルン > 「密室で出来上がった筋書きがこの世界の半分ってところだろうな」
料亭でなくても酒屋の個室でなくても。
例えば路地裏の暗がりであるとか、己の世界でもよくある話だ。
「そう、そうして娼館でもない。
けれど切り盛りは女の気持ちがわかる奴でないと──と、悩みどころは沢山だ」
この計画を立案したときに真っ先に顔が浮かんだ男は己の元に魔法銃を一丁残して都を発ってしまっていたし。
「ただ、店舗<ハコ>と女は居るわけで、こいつらを遊ばせておくわけにもいけない。
まるきり外部の人間の方が──…」
押し黙っていると、注文した絡み汁かけ飯とジョッキサイズのフルーツジュースが届く。
両手の指先合わせてスプーンを取った。
■アイリース > 「じゃあ、残りの半分は?」
相手のその一言に、思わず笑ってしまう。
なるほど、実に鋭い指摘かもしれない。
どこの国でも、結局悪人はいるのだから。
「はぁ。ますます珍しいお話ですね。
こう言ってはなんですが。
なんだか健全な営業を推進する経営者みたいなお話ですね」
らしくない、とまでは言わない。
なんだかんだ、この人物。無駄に血を流したりだとかは好まない人物だから。
とはいうものの、それにしてもずいぶんと方針の変わった話だと思っていたが。
「それはそうですねぇ。
やっぱり、波はあるので。
どうせなら手が空いてる娘はそっちに回しても……。
おぉ……?」
ちょうどのタイミングで届いた料理に、思わず目を奪われる。
なんとも気の利いたことに、お刺身と、冷えた酒である。
私は、手を合わせ、箸をつけようとするが……。
「……その話。そこまで考えているということは。
ある程度、目処というか。
計算はしてあるんでしょう?」
本当の意味でのノープランで考えだけ進めている、とは。
この人物のことを知れば知るほど思えない。
少し、アテなんかあるのでは? などとたずねてみた。
■ビョルン > 「残りは、たまたまだとか偶然だとか」
残念ながら、無策の正義の味方が一瞬の勝利を掴むことは偶然に依るものなのだ。
「健全な経営──なんてあるのかね、そうそら……ただのバーの店主が船でいけない薬を取り寄せてたなんて話もあるから」
スプーンで辛味のついた飯を頬張る。
鼻に抜けるような辛さが丁度よく、癖になりそうだ。
「ああ、まあむしろこっちで使えないのの身も預かるつもりでもある」
女の元にも酒と料理が届いたようだ。
「生魚ですね」と一瞬奇異の目を向ける。
「目処どころか、最低の行儀作法と接客の言葉遣いまでは俺が仕事の合間合間に出向いて手ずから教えた。
口の堅い何人かを招待しての店回しの実戦もしているが、評判は悪くない」
──アテに関しては返事待ちである。
スプーンを止めてジュースで喉を潤した。
■アイリース > 「そう考えると、わりと世界は救いが無いですねぇ」
はっきりと言う相手に、私は更に笑顔で答える。
……まぁ、実際のところそんなものかもしれない。
「……はい? それはまた。
なんとも大それたお話ですね」
その話は、聞いた覚えがない気がするが。
なんというか、その店主。なかなか豪胆と言うか愚かと言うか……。
「なるほど。そういうことであれば。
すぐに候補をお伝えしますよ」
相手の考えを理解し、そう告げる。
……本当に。なんだかんだ、優しいお人である。
私が刺身を食べようとすれば、相手からの奇異の視線。
美味しいんですよ、と言いたいところだが。
さすがに、刺身という食文化は易々とは受け入れられないかもしれない。
「さすが。仕事が早いですねぇ。
そうなってくると、私も急がないとですね」
そっち向きの女の子を相手に伝え。
円滑に仕事が回るようにする。
なるほど、忙しくもやり甲斐がありそうだ、と思いつつ。
刺身を一切れ食し、酒を喉に流し込む。
……うん。絶対に間違いのない組み合わせ。美味、である。
■ビョルン > 「世知辛ェ」
そう言って笑顔を見せる。
世知辛い世界の役者の一人としての笑顔だ。
「石を投げたら悪党に当たる、なんて大袈裟な話でもない」
またスプーンを持ち、辛味付き汁かけ飯を口に入れる。
日付感覚を狂わせないように、洋上の船員には定期でこれが振舞われたという話を思い出す。
「なるべく若いのを、売れないくらい若い新造<しんぞう>か禿<かむろ>を頼む」
古い言葉で女の歳の頃を伝える。
逆に、貧民地区の娼館街では珍しいくらいかもしれない。
飯を食べながら見る。
この女の食文化で理解ができないものは、生魚を食べるところと新鮮であると保証された生卵をつるりと飲んで精が付いたなんて言っているところだろうか。
「素直で可愛らしいのを頼む、娼婦では幸せになれなさそうなのをね」
もりもりと飯を食べ進め、ジョッキのジュースに喉を鳴らす。
そうして、壁のメニューを凝視してポッケの手帳に何やら書きつけもした。
■アイリース > 「えぇ、本当に」
とはいえ、その世知辛い世界でも。
完全に完璧に救いが無い、というわけではないので。
一応、懸命に生きていくつもりではある。
「逆に、善人に当たるという話でもないですが」
ん~、と天井を見つつ、そんなことを言ってみる。
まぁ、意味はないのだが。それっぽいこと、っていうだけ。
「なおかつ、娼館向きじゃないような子のほうがいいですかねぇ」
適材適所、ではないが。
やはり、『そういった仕事』に苦手意識がある子は。
できれば、働かせたくない、という思いは私にもある。
あむあむ、と刺身を食しつつ。都度酒を飲む。
やっぱり、合う食べ方、っていうのはある。
「勿論。心得てますよ」
私の思いを汲み取ったかのような相手の言葉に。
思わず、嬉しくなって満面の笑みを浮かべてしまう。
そのまま、酒を飲み干し。うん、と頷く。
そうと決れば、動くのは早いほうがいい。
■ビョルン > こんなやり取りにも悲壮感がない故にまだ幸せと言えようか。
相手の理解が早く、まだ具体的にどんな店とも告げてはいないが着々と候補を見繕っているらしい。
「まあ、完成したらお前もおめかししておいでよ。
それともどこかの坊ちゃんのようななりをして、遊ぼうか」
着手さえすれば、いずれは日の目を見る。
辛い飯を食べ終わり、辛味の余韻をフルーツジュースで流して「ごっそさん」と手を合わす。
酒を嗜んでいる女を見て目を細めた。
「困った、しっかり口を濯いでくれるまでは熱いベーゼもできない」
ふふ、と更けゆく夜の空気に息を揺らす。
■アイリース > 少なくとも、こういった話をしている時。
この相手となら、そこからどうするか、というようなことを考えられる。
それは、幸せなことであると思う。
「うぇ? おめかしですかぁ……。
まぁ、はい。そういうことでしたら」
正直に言うと、あまり表に出て行きたいわけでもないのだが。
命令……というか、この人の言葉だと。
従わないわけにはいかないというか、従いたくなるというか。
惚れた弱み、というやつなのであろうか。
「……あぁ、そうですか。なら……」
相手の言葉の意味を図りかねていたが。
口内の甘さで、心当たる。
なるほど、酒か、と。思い。
私は、す、と身を乗り出し、相手の額へとキスをする。
「今夜はこれで我慢していただきましょうか」
なんていいつつ。私も笑みを零してしまう。
……いや、正直。私としても、これでお預けは辛いのだが。
それでも、やむなしと思いつつ。
今宵もまた、夜が更けていく……。
ご案内:「どこかの酒場」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「どこかの酒場」からアイリースさんが去りました。