2021/09/12 のログ
ご案内:「平民地区 裏通りの露店」に肉檻さんが現れました。
肉檻 > 陽が沈んだ後も行き交う人々の流れは絶える事無く賑わいを見せる平民地区の表通り。
しかしその場所から一歩裏道へと足を踏み入れ、入り組んだ路地を進んだ先にあるその場所は人通りも少なく静かなもので。

そんな場所に、一軒の露店が人知れず存在していた。

唯でさえ薄暗い裏路地の中、張られた天幕の下にひとつだけ明かりが灯されてはいたものの、
其れは露店の中全体を照らし出すには余りにも心許なく。

木箱を並べただけの簡素な商品台に陳列されていたのは様々で、
何に用いるのかも分からないガラクタ同然の器具もあれば、真贋も定かでは無い宝石類も有り。

そして其れらの中に埋もれながらも、僅かな明かりを受けて自らの存在を主張するかの如く煌めいていたのは。
成人男性の拳大程の大きさをした透き通る真球の水晶玉が、物言わずに其処に佇んで居た。

肉檻 > その商品台の向こう側――天幕の奥の闇に溶け込む様に立って居たのは、ローブのフードを目深に被った人物。
ゆったりとしたローブの所為で身体の輪郭は曖昧で、男とも女ともつかぬ店主の姿で。

一見すれば唯のガラクタにしか映らない其の品々も、求める者の存在は確かに存在して居て。
時として、何処からか情報を聞き付けてこの露店へと足を運ぶ客が種族や身分を問わず訪れているのは事実の様子。

――勿論、冷やかしの客や偶然迷い込んだだけの市民なども多いが、
店主と思しきローブ姿の人物からしてみれば其れは其れで一向に構わない。

静まり返った夜の裏路地は、耳を澄ませば時折表通りの喧騒や、
或いは別の場所で勃発した諍いの声が夜風に乗って聞こえて来る中で。

その露店は唯静かに、客の訪れを淡々と待ち続けていた――

肉檻 > ――結局、その晩店を訪れる客の姿は一人も無く。

しかしながら其れも日常茶飯事で、商品台の木箱へと布を被せるとローブ姿の店主は黙々と露店の後片付けを開始する。
無数のガラクタや宝石類に混じって、物言わずに佇んでいた水晶玉もまた被せられた布に覆われて。

次に其れを手にする誰かが現れる時が来るのを、唯静かに待ち続けるのだった――

ご案内:「平民地区 裏通りの露店」から肉檻さんが去りました。