2021/07/03 のログ
ご案内:「古びた礼拝堂」にフィアさんが現れました。
フィア > 夕暮れ――昼と夜の狭間の時間
辛うじて割れていない、けれどいくら磨いてもくすんだままの窓ガラスから差し込む陽の光は緩く。
広いとは言い難い礼拝堂の中を優しく照らしていた。

もう四半刻もしないうちに、夜のベールが辺りを覆いつくすだろう。
同じ貧民地区であっても、多少は治安が良いと言っても、夜にひとりで出歩けばどうなるか。
そんなことは幼い子どもでも知っている。

次第に影が大きく広がっていくのを尻目に、救急箱を抱えた少女が奥の小部屋から出てくる。
治癒の奇跡を求める全員にそれを授けられればいいのだけれど、奇跡にも限りはある。
なので、手当だけで済ませることも多い。といっても、包帯や傷薬などもここでは高価なのだけれど。

ふぅ、と重たい溜息を漏らして、割れたステンドグラスを見上げる。
祈るべき聖像さえもすでに盗まれて久しいけれど、抱えていた救急箱を手近な机の上に置くと、両の手を組んで祈りを捧げ。

ご案内:「古びた礼拝堂」に黒須さんが現れました。
黒須 > (貧民地区での狭間の時間。
太陽が沈み街にも暗闇が近づく。
そんな外を大きな影がうろついていた。
よろめいた足つきで歩き、頭部からは出血、片腕はダラリと下がっており、肩を抑えていた。)

「クソっ…めんどくせぇな…。」

(集金を行っていた黒須。
契約者から返済を求めていたが、どうやら罠にはめられタコ殴られにあった。
不意打ちは唯一の弱点であったが持ち前のカウンターで何とか切り抜けた。
どうにか家に帰ろうと歩いていると、目の前に礼拝堂があった。
そこに行けば軽い手当は願える、金が取られても仕方がないと思い、ドアを開けて中に入れば祈りを捧げる少女を見つけ、大きな足音を立てて近づく。)

「…嬢ちゃん、悪いんだが…怪我の手当を頼めるか…?」

(背後から低い声で声をかけ、小さいために見下す様に高い所から下を見て、少女を見る。)

フィア > 静かに祈りを捧げていた空間に無遠慮な音が響く。
ビクッとまるで仔猫のように身体を震わせると、慌てて音が響いた出入口の方を振り返る。
そこには大きな黒い陰。

まるで夜が人の形をとって、立ち上がったかのような姿
すぐさま逃げだしたくなるけれど、残念ながら広くもない礼拝堂には出入口はひとつきり。
あるとすれば、先程まで少女が施術を行っていた小部屋に繋がる扉だけ。
掛けられた声は、乱暴なものではなかったけれど、それでも少女の怯えを助長するには十分過ぎる低さで。

「ひぅッ……え……は、はい……」

怪我という言葉が脳裏で変換されるまでに時間がかかってしまう。
よくよく見れば、血がぽたぽたと床へと雫を落としている。
慌てたように救急箱を掴むと、包帯を取り出しながら。

「そ、そこに……っ あ、あの……今日は、もう、あんまり……魔力、残って……」

とりあえず礼拝用のベンチに座って貰えるようにお願いする。
白い布に綺麗な水を染み込ませてから止血を試みる。
朝から既に何人にも癒しを施したせいで、すべての傷を癒すのは無理かもしれない。
それでも深呼吸をして、一番ひどいと思われる腕にそっと触れ。

「………主よ、傷つきたるものに、尊き癒しを―――」

囁くような、詠うような、そんな澄んだ声が礼拝堂に染み入る。
あたりを侵食し始めていた影を払うように、仄かな白い光が辺りに満ちていき。

黒須 > 「………おぅ」

(怯える声で返事をする少女を見た。
表情やその姿がよくわかるように表の姿を見れば、少し見つめるように眺めた。
小柄な体にまだ幼い顔、そして発達中の体のライン、その点が男の頭の中に流れ込んできた。)

(言われるがままにベンチに座る。
魔力がないとのことなので、治療できないのかと思いきや自分んオ腕にそっと触れ、白い光に包まれる。
消えれば腕の感覚が元に戻り、軽くひねったり、指を動かしたりと異常がないか確かめる。)

「…ほぅ、中々やるな?嬢ちゃん…。
…それで、魔術がねぇってのは…どういうことだ?」

(先ほど呟いた言葉が気になりそれに対して問いかける。
大きく、長い腕を少女の肩にかけて自分の方に近寄らせよとする。)

「怪我の治療のお礼だ…俺にできることがあるなら、やらせてくれねぇか?
そう…その、魔力を貯める方法…だったりな…?」

(低くも伝わるような声で声を掛けた。
指一本立てて、少女の腹部に指先を当て、そのまま下へ線を引くように撫でようとした。)

フィア > 折れているだろう腕に触れるかどうかという距離
翳した手に柔らかい光が宿る。
けれどその光は大きくなったり小さくなったりで安定しない。

「……くっ……ぅ………っ!」

少女の額に汗が滲む。
歯を食いしばり、何かを絞り出すように腕を伸ばす。
消えそうになっていた光がふわりと大きく傷を包み込むと、パンと弾け。

「はぁ……はぁっ……ど、どう、です……か……?」

立ち眩みのような感覚を覚えて、テーブルに手を突きながら、掠れた声で問いかける。
少なくとも腕の骨折だけは治せたはず。
他までは少し自信がない。地面がぐらぐらと揺れているような感覚で、足元が覚束ない。
しゃがみこんでしまいそうなのをどうにか我慢するので精一杯で、治療の続きは無理そう。
言外にごめんなさいと許しを請うような瞳をちらりと向けて。

「え…? ひゃぁっ!?」

抱き寄せられると、力の入っていない身体はあっけなく男の腕の中に納まってしまう。
服の上からお腹の上へと指を這わされると、ゾクッと足元から崩れ落ちてしまいそうな悍ましい感覚が這い上がってくる。

「な、なに……やだ、そんなの……いらない、です……」

ふるふる、と懸命に首を振る。
逃げ出したいのに、脚に力が入らない。何をされるのか分からずに、ぎゅっと胸に提げたロザリオを握りしめ。

黒須 > (安定しない光に包まれながらも腕は見事に完治する。
異常も違和感もなく、完璧に調子が戻った。
そして、額に汗を滲ませ、ふらつきながらテーブルに手を置く様子を見て、簡単にこちらに身を寄せてしまう程力が弱っているのを見ては少し目を細めた。)

「いらない、か…。
でも、嬢ちゃんの体は…欲しいように見えるが…?」

(ロザリオを握りしめて怯える姿、まるで生まれたての小鹿の様なその様子を見ては、男の目に醜い欲望ができていた。)

「具合が悪そうだな…?さっきの腕のお返しだ、俺が診てやるよ…。」

(そのまま、少女を連れてその奥にある小部屋へと入ろうとした。
そこから先はこの二人だけの記憶である…。)

ご案内:「古びた礼拝堂」からフィアさんが去りました。
ご案内:「古びた礼拝堂」から黒須さんが去りました。