2021/03/05 のログ
ご案内:「ナイトカフェ「火窯」」にアウル・リブライアンさんが現れました。
■アウル・リブライアン > 店の外には火と窯のブロンズマーク 店内の様子も伺えない窓の無い空間
一種の隠れ家店は王都にいくつも存在するだろう
密やかな出会い 怪しげな密会 壁に耳を潜ませる取引
今夜も〈火窯〉は静かな時間が流れている
「……。」
魔女は壁際の向かい合う席で一人の顔をローブで陰りにさせた者と対面しあう。
書物を手にしていた魔女が待っていたのは分かる構図であり、小さな革の角ばったケース
鍵付きの金留を含んだそれが開けられ、魔女の目の前に出される。
其処にあるのは六つの金剛石
カッティングされた爪ほどのサイズのそれらは、通常なら王族貴族に流すべき、いや
オークションでならばもっと値が張りそうだ
しかしこれは金を持つ者らに卸すべき品ではなかった
「……いい出来ね。」
書物をようやく閉じた魔女、手袋をはめた指先で一つをつまみ上げ、カッティングとその透明度を眺める。
注文通りの造りを魔女は満足げに、静かに一言そうつぶやくのみで終わらせた。
「……遺灰は残していないでしょうね?」
骨灰を用いて作られし人工の金剛石
人体から生成されたそれはまさに人工的な命石の一種と言える代物だろう
使われている材料も、死人からならばそれなりなものでなければ意味もない。
取引相手がうなずく様子なら、魔女は一瞬目を細めて眺める。
開心術か、仕草を読み取っているのか
信用した様子で戻すのならば鍵を閉め、報酬の宝石を一つ手渡した。
魔女が手ずから祈りを込めた正真正銘の王道な魔石だ。
それこそ、売りに出せる魔石である。
「これからも好い取引をしましょう?」
そう言って、魔女は革のそれに、木製の指先でシュルリと印をつける。
立ち去る相手に合わせ、革ケースを隅に寄せたのならば、まだ熱いコーヒーを口元に運んだ。
■アウル・リブライアン > 静かなカフェの中、夜のまだ冷える時期に熱いコーヒーを求めてくる者は少ない
一見では気づけない趣味のような造りと、堂々と表通りの中央に存在するわけでもない。
知りゆく者だけが繋げていくような場所。
骨陶磁のカップに口をつけ、滑らかな触り心地とコーヒーの苦み
書物の紙の匂いがまだコーヒーが残る鼻腔と混ざり合う時間は魔女には好ましい物だろうか
話し合いが終わるころを見計らい、静かに足音を最小限にした店主が。注文していたガレットを静かに置いた。
四辺を折りたたんだ中央に卵 周囲に覗ける野菜
一種のクレープのようなそれを添えられたナイフとフォークで切り分けるに至るまで、時間はかからない
書物を優先にして、冷めたガレットを食べるような行為は、いくら活字中毒でもやりすぎだ
況してや運ぶ時間も指定していたのだから尚のことだろう
「……。」
削り出しのウッドハンドと生きた左手が、器用に切り分けて口に運んでいく。
肉類を除き、卵と野菜のみでつくられたガレットは魔女の体にも優しいものだろうか
中央の表面だけ焼けた黄身を割くと、それまでおとなしくしていた首元の青蛇が、頭を持ち上げる
「あら、おはよう。」
飼い主の首で温もっていた瞳は眠たげな黄色い眼を数度、瞬き
既に食事を始めていた様子を、伸ばしたÝ字の舌で嗅ぎつける
フォークの先に塗した黄身のソースを近づけのならば
シュウシーシュルと蛇の言葉で飼い主と意思疎通を行いながらも、ペロリペロリと黄身をなめとっていく。
卵の殻を吐かせるくらいなら、こうして魔女と愛蛇 ふたりで分け合うほうが余程品があるだろう。
ご案内:「ナイトカフェ「火窯」」からアウル・リブライアンさんが去りました。