2020/12/01 のログ
ご案内:「森の中」にディアーナさんが現れました。
■ディアーナ > 燦々と陽の降り注ぐ昼日中でも、蒼く薄暗い森の中。
日暮れを迎えつつある現在は、木々の枝も、その影も、茜色の濃淡を重ねていた。
一番近い街道すら、偶に荷馬車が通り抜ける程度の辺境の、そのまた奥深く。
野生動物の類が通った痕しか見当たらないような森の中、うろうろと彷徨う娘の姿があった。
「おかしいわ、この辺りだと思ったのに……」
足許の地面を見遣り、頭上に伸びる枝先を窺い、溜め息交じりに独り言ちて。
娘が先刻から探し歩いているのは、髪を結んでいた白いリボン。
半時ほど前、風に飛ばされた洗濯物を追い駆けている時、何処かに引っかけてしまったらしく、
やっと目当てのものを回収し、帰宅してほっと息を吐いた時には、
束ねていた髪ははらりと解けて背を覆っていた。
慌てて再度、探しに出てきたのだけれど――――――
「どうしよう、……もう、暗くなってしまうわ。
明日の朝、出直した方が良いのかしら……」
家に残してきた母も心配であるし、それにもう、随分と街道に近い。
いくら往来が稀であるとは言え、あまり近づきたくなかった。
母がくれた大切なリボンを、諦めたくはないけれど――――――。
ご案内:「森の中」にプレストさんが現れました。
■プレスト > 街道側からぺき、ばき、と枯れ枝を踏みしめる音が聞こえてくる。それは今、彼女がやってきた森の奥に向っていく様に音の位置が推移していく。
この山の奥に生えている薬草を採取してくるだけの簡単な仕事なのだが、夜を選んだのには理由もあった。
薬草自体が希少性が高く、どこに生えてるかを他に知られたくない意味合いが強い。
だが、その足音が不意に止まる。――耳の良い彼女ならばその音に紛れ。【しゅるり】と言う聞きなれた音が聞こえたかもしれない。
例えば、リボンが何かから解かれた様な音。そしてその後、足音の主が更に森の奥。偶然にも彼女の家のある、結解に近い方角に足を進めていく様だ。
「こんな場所に女物のリボン?誰か先客でもいるのか?」
その呟きは夜風に乗り彼女の方にも聞こえただろうか。
声の質が男である事は明白でもある。
そして夜闇を蠢く人の姿。――魔物の様な物ではないが、彼女の忌避する様な人間の、男の姿は彼女の方から近寄れば結界到達前に接触出来る、かもしれなかった。
■ディアーナ > 母親ほどに鋭敏ではなく、また、彼女ほど特徴的な形でもないけれど。
それでも、只人よりは物音に敏感な、僅かに尖った白い耳が、
異質な音を聞き咎め、金糸の狭間にぴくりと跳ねた。
「え、――――――…」
反射的に、音の聞こえた方へと振り返る。
あまり歓迎すべきことではないけれど、大型の野生動物の類であれば。
まだしも対処する術はある、不可視の加護の奥に逃げ込んでしまう手もある。
けれどもし、相手が二本の足で歩く、野生動物よりもずっと恐ろしい、獣であったとしたら――――――
違っていて欲しい、という娘の願いは、次の瞬間、打ち砕かれることになる。
風に乗って聞こえてきたのは、明らかに、王国の民が使う言葉だ。
言葉を話す獣など、娘の知識の中には居ない。
つまり、相手は言葉を操る、二本足の――――――。
その気配が、遠く垣間見えた人影が、向かう方角に気がついて。
娘は全ての思考をかなぐり捨て、そちらへ全力で駆け寄ることになる。
待って、行かないで、そちらへ行っては駄目――――――声に、出していたかも知れない。
そうして娘はある意味、ひどく無防備に、野生動物よりも警戒すべき存在の前へ、姿を現すことになるのだった。
果たして、相手の反応は――――――。
■プレスト > 男にしても女物のリボンがあったことが予想外だ。
上質な薬草が生える場所の近くに家があるわけでも無く、同業者はたいていが男。
それだけに興味深そうにリボンを手に、そして懐に仕舞い込んだ。容易には取り出せなくなったそれと共に。
彼女にとっては不幸にも結界より遥かに手前。危険な男の目の前に無防備なままに姿を見せた形になった。
「っとぉ!?なんだ、お前、同業者か!?」
男が手に持っているのは一般的なランタンだ。
そのランタンを向けると女の姿があり――。その女の装備、着用している者が戦に向かない物だと分かれば笑みを浮かべた。
大丈夫だ、やる事は――『何時もの事』なのだから。
森の奥で行われる事は秘中の秘――。表に語られない一幕になる。
ご案内:「森の中」からプレストさんが去りました。
ご案内:「森の中」からディアーナさんが去りました。