2020/11/20 のログ
ティアフェル >  取り敢えずまだ冷たげな視線は向けられていないので密かにほっとしつつ。独自にショックを受けている様子に、今度はこっちがくわ、となった。

「もうとっくにかわいいわー! それ以上かわいさ追及して一体どうしようって云うの…っ?!
 傾国でも企んでいるの…?!」

 目に泪すら溜めて不安そうな顔を見せられると、このまま持って帰って飾って愛でてやるからな!と可笑しな野望を抱かせるほどで。子ども相手に謎の逆切れを見せた。
 ちなみに、かわいいと自称して突っ込みが返ってこないと……正味調子狂う。

「よーし、君は今日からうちの子だー!
 あ、君、じゃなんだね。お名前は? わたしはティアフェルだよ。ティアお姉ちゃんて呼ぶと、萌え尽くすよ」

 尽くしていいのかだが。差し出されて小さいお手々を繋いで、シメシメみたいな顔で笑った後、上機嫌ににこにこして立ち上がる誘拐犯。

「っへー。こんなに小っちゃいのに冒険者なの? すごいね、早熟ねえ。わたしも冒険しゃ……ううん……今は違うか」

 感心したように常に装備を完璧にしてある小さな冒険者に肯いて、自分も冒険者だと云いかけて若干苦笑気味に首を振った。今はヒーラーも冒険者も休業中だったと。
 ただ、無邪気ににこにこしてくれる彼女のかわいい笑顔に癒されて。

「お、っとぉ……あはは、ちっちゃーい、やわらかぁーい、超カワイー」

 なでなでしたら喜んでくれて抱き着く所作が小動物みたいで愛嬌がある。かわいい、とでれでれしながら、ぎゅ、とハグして。よしよしと猫かわいがり開始。

ラファル > 「ぴゃ!?」

 怒り始めた、可愛いらしい。追及してどうするのか、そもそも追及しているわけではなくて、可愛くないとだめじゃないのかなとか。
 ぐるぐるぐるぐるぐる、ぐるぐる。頭ぐるぐる。

 ぷしー。頭から湯気が出た。

「わかんないー。でも、可愛いの方が良い気がした!ボク、けーこくはしないよ!。けーこくすると、めっ。されるし。」

 先程の彼女は可愛かったし、それなら事象しても良いんじゃないかな、と思う。彼女は綺麗と言った方が良いのだろうか、と幼女は考える。
 答えのない系の問題はまだまだ難しい。
 傾国にかんしては、其れすると、基本的に討伐対象になるのは判ってる。姉とか両親とかに怒られるから、やらない。

「ボク、ラファル。ラファル、トゥルネソルー。ティアおねーちゃん。」

 流石に、萌え尽きることはないとおもうが、喜ぶというなら、其れで呼ぶ、だって、笑顔が見たいのだし。
 きゅ、と小さな手は彼女の掌を握って、誘拐犯についてく幼女。

 てぃあふぇるは らふぁる を てにいれた! (謎のファンファーレ)

「うん!おいちゃんの弟子として、冒険者してるの!まだ、一人で難しい依頼はダメだけど、簡単な依頼ならいいんだよ!
 ティアおねーちゃんも冒険者なの?一緒にぼーけん出来る!」

 彼女は冒険者、言いかけて止まったけど、屹度そうなのだろう。色々聞けるから、と幼女は嬉しくてぴょんぴょん跳ねるのだ。

「うにゅー」

 頭をなでてる間にぎゅ、と抱き着いて。よしよしされて。嬉しくなる。
 猫ではないが、猫のように尻尾のようにゆらゆら揺れるツインテール。額を思いっきり、彼女のお腹に擦り擦り。
 ふかふかの洋服にえへへーと笑いながら頭を擦りつける。

ティアフェル > 「お……?」

 目と頭が回っているような。お目目が渦巻き状になっているような。そんな彼女からとうとう湯気が噴き出した。

「そうだね?! 確かにかわいいに越したこたあないよッ、でももう充分ではなくって…?!
 そーか、じゃあそんなもんで勘弁してあげるといいよ!」

 かわいすぎると苦労するよ、と少女の足を引っ張る悪い大人。もうそれ以上美少女指数を上げたら街を歩けば7人の誘拐犯に出会いまくるぜと拗れた心配。
 じゅーぶん、カワイイ。そのままの君でいて。

「ラファルちゃんね。よろしくね。今日から君のお姉ちゃんだよ!
 ……それにしてもすごい勢いでわたしの人心掌握してくるな……タダものじゃない……」

 相当な手練れ、と酔っ払いを抜きにしても訳の分からん思考で女は人たらしの才能を幼女に見た。
 祝福のファンファーレが鳴ってる。これはレベルアップした時とかクエスト達成した時のやつかしら。やっほう。

「おいちゃん? そのおいちゃんは大丈夫? わたしみたいにヤバくない?
 あー……わたしは、ね……今は冒険できないんだ。
 まだ無理だけど、いつか、一緒に冒険しようね」

 魔法の力が戻ってこないことには冒険者としての活動は難しい。少し眉を下げたが。嬉しそうに跳ねている小さい子に気を遣わせるようなことは云うまいと、頬を掻いて笑い。

「いーこいーこ、っふふ。擽ったいってー」

 とかいながらデレッデレである。子どもは好きだ。手のかかる猿である自分の弟は除くが。特に素直でかわいい女の子なら云うことなし。腹部にすり寄る感触がくすぐったくてくすくす喉声で笑い。頭に頬を埋めるようにしてぎゅーと。かいぐりしまくる。

ラファル > 「だめだよー?だって、胡坐をかいたらそこから崩れるって。可愛いもどりょく、弛まぬことが、一番だって。
 可愛いを勘弁したら、可愛くなくなるんだ。」

 そう。美貌も、修業も、其処で満足したら終わりなのです、可愛いでする苦労は、修行だと思わないとだめです。
 こればかりは、エロスの先生でも、ダメと首を横に振らざるを得ない。それに、誘拐犯なんてたいてい――――。

「あい!ティアおねーちゃん。
 人心掌握……?あれ?したっけ。」

 そういう手練手管は、学んだことあるけれど、意図して行ったつもりはない。具合悪そうだったから助けて。
 楽しい人だったから、懐いた。あれおかしいなー?ときょとーんと首を傾げる幼女。
 でも、ファンファーレが成ってるんだから、細かい事はいいよね!ラファルが仲間になった!

「うーん。ティアおねーちゃんとは別の意味でヤバいと思うよー!強い!!頭いい!
 そっかぁ……残念。でも、ティアおねーちゃんの分まで稼いで見せる!
 一緒に行こうね!」

 一緒に行けない理由は判らないけれど、冒険者として稼げないのだろう、其れなら、その分まで稼ぐ、幼女は心に誓った。
 お金はいっぱいある方が嬉しいし、ご飯もお金がないと買えない。
 だって、幼女の食費は、大変だもの。

「あはー。ティアおねーちゃんも、くすぐったいよー。」

 かいぐりかいぐり、頭なでられてとても嬉しい。
 だから、ぎゅむ、と抱き着いて、顔を上げて。えへー。とにへらとした緩んだ顔を見せる。

ティアフェル > 「どこまで向上心…?! 意識高い系少女か、志は天まで届く勢いかッ。
 うーん、十年後には眩しくて直視できなくなってそう。
 ラファル、恐ろしい子…!」

 戦慄した。たゆまぬ努力を続け完徹していく初志に脱帽とともに恐れ入って小さく震え。

「してるねー。今まさにしちゃってるねー。
 ティアおねーちゃん、だなんて、そんな…ッ、自分で呼べと云っておいてきゅん死する……!」

 ああ、わたしやばい。本当やばい。今のうちに捕まった方がいい気すらしてきた。
 きゅんきゅんがとまらないお姉ちゃん心。弟よりやっぱり妹だわ!と確信。きっと今弟見たら同じ人類じゃなくて完全なる猿にしか見えないだろう。
 
「ほう。ならばよし。チート系か、天は何物を一個人にぶっこんでいくんだろう、わたしとかモブをスルーして……。
 ラファルちゃん……こ、こんなゲスいお姉ちゃんだというのになんと健気な……!
 この子を祀る祠を建立したい……」

 絶対、絶対一緒に行こう、と強く肯いてその小さい手を握ろう。ぐっときてウルっとくる。経済事情まで気を遣えるなんて、恐ろしい子。

「っふっふっふ。もっと擽ってやるー。えいえいえい」

 くすぐったがって、笑顔になる様子がまたカワイイ。萌え死ぬ。
 アホ毛をぶんぶん揺らしながら、ぎゅうぎゅう抱き合い始め、ぽふん、とその頭を胸元に埋めるようにして抱き込み、頭や背中をわしゃわしゃわしゃ。

ラファル > 「にひー……じゃ、ティアおねーちゃんも、可愛く、若しくは、きれーになるのだっ……!
 直視できないなんて、寂しいもんね!なら、ティアおねーちゃんも、同じになれば。」

 ノーなんて、言わせません、一人で辛くても仲間がいれば。
 だから、綺麗、可愛いの研鑽に参加してもらうのです、震える子羊さんではいさせません。

「しんじゃやだよー!」

 きゅん死、判る、わかるけど、されたら困る、とても、困る。
 だから、いやいや、として、ギューッと抱き着くのだ、うん、死んだらきっと、蘇生させて見せる。
 マウストゥマウスからの、心臓マッサージで!

「うーん……わかんないよねー。ほんと、凄いんだよねー。でも、ティアおねーちゃんの方が可愛い、これ間違いない!
 ゲスいの?普通の人レベルだと思うけど。お金貸して払えないからって、躰要求するようなこと、するの?
 ダメだよ、ティアおねーちゃん、それ、妹じゃなくて神様になっちゃう。ボク、神様やだよ?」

 神様だと一緒に居るの大変だし、一緒に居たいのー。
 幼女だからこその感覚なのか、お別れに耐性の無い子だった。

「にゃははは!くすぐったいー。」

 肌が半裸レベルで晒されている幼女、擽りポイント見えまくりだから。
 擽られて身を捩ってキャッキャッと楽しんで、幼女も彼女の脇腹にてをのばしてこしょこしょしはじめる。
 抱き着かれてしまえばちっちゃな体は大人の体に包み込まれてしまって。
 わしゃしゃーと、擽られてしまえばきゃー、と楽しく笑う。

 とっても、楽しくて、好き!があふれる。

ティアフェル > 「いや、ほら。わたしすでにそこはカンストだから? ご覧の通り?」

 そろそろこの自意識過剰発言に突っ込んでくるだろうか。期待薄だがボケに関してはしつこい。
 ふふ、すでに女神の領域、と偉そうな顔をしてゴリラが大ボケカマして見せます。

「可愛い妹を残して死ぬものかー!」

 心臓にはなかなか負担がかかっているのを感じるが根性で持ちこたえます、と今さっき妹にしたばかりの幼女に誓った。ギューと抱き着かれるので、ギューと抱き着き返す、その図は一見これから死地に赴くのって感じだ。
 死にかけても手厚く蘇生されて死んでる暇もなさそうだけど。

「さすがにおいちゃんよりかわいくなかったら19年間の人生を見つめなおさざるを得ないよね……。でも安堵しているわたしがいる……。
 その質問の前提として、貸せる金がないなー……。エロいばっかが下衆って訳でもないんだよ~。
 妹神……いもがみ…いいじゃないか、萌えるじゃないか。信者が集まりそうじゃないか……」

 いやだと妹さんは仰ってますが、ここのイタイ姉ゴリラはなにか妄想に浸って戻ってこないし、話をあまり聞く余裕もありません。うふふ、でへへ、と薄暗い顔で妙な笑い声を立てている。

「ふ、っは、あはははっ、だめだめ、脇腹、そこガチすぎ…ッ マジで擽ったいからー、ひゃ、ふ、ははははっ」

 道端でじゃれまくる様子は姉妹に見えるのだろうか。片方が酒臭いので絡まれているように見えているかも知れない。細くて柔らかい女の子のピチピチ素肌が心地よい。脇を擽られて、笑い転げ、もうお腹痛い、と耐え切れなくなってきては、擽ったそうだけど楽し気な笑いに子供と同じレベルでじゃれて。
 最終的にとりゃー、と彼女に脇腹に両手を差し込んで軽く持ち上げて低めだが高いたかーい。

ラファル > 「だーめー、美貌に、カンストは、無い……っ!」

 どらごんむすめ、ごりらさんに、指差しして、熱烈主張!人差し指の先の指紋の渦巻き見える位にびしいっと!

「いっしょにしたいの!」

 本音がぽろんと。可愛いを突き詰めるのに、お友達と言うか、道連れが欲しいだけの幼女でした。

「わーい!ティアおねーちゃんっ……うれしっ!」

 食いしばりが発動した模様。誓ってくれた、嬉しい。抱き着いてくれる姉に、腕を回して抱きしめ返す。ぽろぽろ涙を流せば感動の一幕。
 往来の道の片隅で繰り広げられる即興劇。見世物ではありません、本人たちの積りは。

「うん、確かおいちゃん……40歳くらいだし。うんうん、安心して!ティアおねーちゃんは、可愛い。

 エロいばかりが下種ではない……うーん。

 ねー。信仰集めて、どうするの―?」

 エロは下種では無いらしい、自分の知っている下種い事をつらつら言うと、引かれるかもしれない。だって、10歳の幼女が知って居て良い情報ではないから。
 なので、此処は黙ることにした。
 たぶん言っても、妹神様作成計画を練ってる姉を止めるすべが思い浮かばない。
 いったいどんな風になるのだろう、妹神。芋掘るのだろうか。おいもたべたい。

「にゃー!ラファル負けないもん……!」

 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ。
 お互い、擽りあう姿は微笑ましい。楽しそうに笑い、楽しそうにじゃれていた。
 彼女がラファルを持ち上げようとする、幼女は軽いから出来るのだけれど、バックパックがある。
 結構重いので、持ち上げる瞬間忍術で、するりとバックパックだけを堕とす。彼女が持ち上げると、幼女だけが高い高いされて。
 地面にバックパックが落ちている。

「わーい!」

 低くても地面に足が付かないと言うのは嬉しい物で。
 目をキラッキラッさせる幼女。飛びたい。

ティアフェル > 「もー、しょうがないなあ、これ以上美しくなってしまったら……それこそ国が滅んでしまうじゃないのぅ、困ったわあ」

 カンスト越えの世界かあ、一体全体どうなっちゃうの。とツッコミ不在なのでボケ倒す。ボケカオス。
 そんなにお姉ちゃんと一緒がいいならやむを得ぬ、とカスな自尊心全開で肯いた。

「ラファルちゃんっ、大丈夫お姉ちゃん一緒にいるからねッ…!」

 実の姉妹の泪のワンシーンのようだが……ただの茶番である。本人は本気でうるうるして妹と強く抱き合い、感動に打ち震えるが。

「四十路に負けるわけにはいかんな!19歳女子としてッ。ありがとうラファルちゃん、君もカワイイがゲシュタルト崩壊起こすレベルでカワイイよ!
 ……ん? 妹力を集めてそのパワーで世界をちょっとだけ幸せにする……」

 カワイイ妹には世界平和を助長できる力がある。そうねいちゃん信じている。
 うっとり…と妹神計画に思いを馳せて色々妄想して満足する。
 妹に芋を捧げて妹力を高めつつ……そろそろ訳が分からなくなってきたことに自分でも気づいた。

「ふ、っはははははっ、やだー、もう、ほんと、腹筋が…きゃはははははっ」

 擽り返しの妹の猛攻に死ぬーと腹筋痛いぐらい爆笑して、もう堪らぬとこちょこちょから逃れる為に持ち上げようとしたが、一瞬荷物の重量感に阻まれかけるも、神業で荷物が落ちて、小さくて細っこい少女を高い高いできた。

「えーいっ」 

 そのまま飛ばすことはできないが、代わりに脇を持ち上げた姿勢でくるくる回って、昔弟をあやしたように人力メリーゴウランド。

ラファル > 「大丈夫!ティアおねーちゃんが傾国しても、めっされないから!それに、傾国したら、安全な所に行けばいいんだよ!」

 カウンターストップ、通称カンスト。聞くだけならば、凄い様にも聞こえる。でも、カウンターの最大値が問題な気がする。
 ラファルのカウンターストップが10で、ティアフェルさんのカウンターストップが20だとする。大差なくても、カンストは、カンストなのだ……っ。
 それに気が付かず、ブレーキの無い二人は、爆走、する!

「おねーちゃーんっ!」

 ぽろぽろ零れる涙、確りと抱きしめあう二人、感動のワンシーン。ちょっと離れてみると、髪の色は金髪と栗毛。目も翡翠と、金。あれれ?にてないぞぅ。
 でも、気にしてはいけない、突っ込んではいけない空間となっている。

「うん!ティアおねーちゃん可愛い!もっと、可愛くなる! ……げ、げしゅ……?

 あ、それいいね!世界幸せ!」

 世界平和とか、世界幸せ、それは良い事だと、幼女は判った。うん、それは良いかもしれない、幼女は目を輝かせる。
 なので、後は、姉の中にあると思われる完全で完璧で幸せな計画を実行してもらうだけだ。
 計画が判らないので、幼女は、指示待ちになる。ちょこんと正座。

「あわー!ぐーるーぐーるーぅ!」

 久しぶりではないが、人力飛行、彼女がメリーゴーランドのように回ってくれるから。
 きゃ、きゃ、と楽しく笑う幼女。
 たのしくて、あはわはー!笑って両手を伸ばしたのだ。

ティアフェル > 「そうね! 例え一国を潰したとてバックレてしまえばいいんだわ! ああ、ごめんなさい、滅んでしまう国わたしの美貌が神なばかりに」

 国どころか集落……3人くらいのグループすらも歯が立たない分際で。カンストの単位がミリどころかナノな癖して。
 とんだ暴走族だった。
 
「ラファルちゃーん!」

 うう、と嗚咽めいた声を漏らしてしかと抱き合うエセ姉妹。見た目も似ていないので深読みするタイプが見れば並々ならない事情でもありそうだが……なにも重要事項のない寸劇に過ぎないという。

「やーん、かわいいラファルちゃんのお姉ちゃんとして恥ずかしくないように、お姉ちゃんがんばるね!
 でしょ。妹力は世界を救うのよ…! さて早速ラファルちゃんを我がご神体として、お部屋に奉って、と……お花とお菓子とミルクティーとフリルにレースを用意せねば」

 部屋に奉ってしまったら信者が自分一人になってしまってそれで世界救おうというのだからちゃんちゃらおかしい。
 だが当人は大真面目で――誘拐に戻るのだ。お家はこっちだよーとにこにこして正座したご神体の手を引き。

「それーいっ、三半規管は大丈夫かーい!?」

 手を伸ばす女の子を賑やかな笑い声を弾かせながら、ぐるぐると何回転もして、腕がいい加減疲れてきたところで減速してそっと爪先から下ろし。

「っふー。面白かった? そろそろ帰ろっか。
 お腹空いてない? お菓子何が好き? 明日の朝ごはん、何がいいかなー?」

 連れて帰るというか 誘 拐 な ん で す け ど 。ごくごく自然に少女の手を取って、巣に戻る気の誘拐魔。ほのぼのした質問を投げかける様子は、一見そう見えないが。
 優しそうに聞こえますが、これは犯罪者の科白です。

ラファル > 「ボクは見張られてるけど、ティアおねーちゃんは大丈夫だから、ばくれちゃえ―!」

 危険な存在なので、見張られています、幼女。彼女が正体を知ったらどう思うのでしょうか、でも気にせずに、ゴーゴー教唆。
 彼女の魅力が幾つかなんて、知ったことでは無い、数値で測るものではないのだ!

「うわーん!」

 そもそもの話でいえば、こんな濃ゆい二人に近づこうとする人自体がレアです。そして、行われていることは茶番で見物程度の物事とすれば。
 誰も気にする人がいないのでした。通り過ぎる人ばかり。

「あい!ティアおねーちゃんについて行くよ!
 わーい!……あ。フリル、と、レースって……お洋服……?」

 手を引かれれば、ちゃんと立ち上がってとことこついて行きます御神体(?)でも、ただ問題が一つ。
 この御神体、見た目を見ればわかるでしょうが…… お 洋 服 が 嫌 い で す 。
 裸族なのです、実は。これで我慢してるレベルなのでした。お洋服、着ないとだめ?ウルウルします。

「あいっ!もっとすごくてもだいじょーぶ!こんど、ボクの本気見せるよー!」

 下ろされて、幼女は何事もなかったのようにシタっと着地。敬礼して見せる余裕。
 そして、何気なく、ドラゴンの背に乗せる約束、ええ。本人も気が付かない程度のお約束。

「お腹、好いた!お肉!
 この間狩った猪あるから、保存してあるからそれ食べたいなー!」

 幼女、誘拐されてる気分は微塵もありません。ついて行きます。
 そして、家に、巣に戻ればわかるでしょう、幼女の生態が。まず、食事、ティアちゃんの家のエンゲル係数では持たない事でしょう。
 だって、猪を丸々提出したうえで、腹八文目と言い切る。
 だから、自分で稼いで自分で食べる必要があるのです、それは問題なくしてるので、ティアおねーさんの懐は痛むことはありませんが。
 屹度、呆気にとられるでしょう。

 毎日のように、山のような肉とかを狩って帰ってくるのです、それを消費しきる幼女。
 何時、これがドラゴンだとばれるのでしょうか。

 ドラゴンを誘拐する勇者ティアフェルさんになります。

ティアフェル > 「監視対象なの……?! わたしやっぱ捕まる……?!」

 見張られてる、という科白に傾国だのなんだのしょうもない妄言はふっとんだ。思わず、がば、がば、と大きく左右見回して警戒する。

「泣かないでッ…! お姉ちゃんまで泣いちゃうわ」

 勝手に泣き晒せという話だが、本人は至って真剣に続ける。妹の泣き声で胸が張り裂けてしまうわ、とガチでした。
 茶番も本気でやらねばつまらん、という。

「おうよわたしについてこい!
 じゃあ、フリルのリボンを結んでレースのカバーがついたクッションを用意しよーねー」

 その程度でも妹信者満足だった。ふりふりの洋服が好きじゃない子はよくいる。活発な女の子ならなおのこと。かわいいものを身に着けさせなくてもかわいいものを周囲に配置するだけでも充分だ。うんうん、と意思を尊重する姉は妹にめっぽう弱い。

「やー、さすがうちの子……でもおねーちゃんの腕力の限界の方が早し……」

 夢中になって腰をイワしてしまったらカッコ悪い。頼もしすぎる妹に、あははと頬を掻き。どんな本気だろー、とそこはほのぼのと応じて。楽しみにしてるね、と微笑まし気に頭をなでなで。

「おっと猪ですか、さすがワイルドじゃのう……じゃあそれをお料理しよっか、猪は癖があるから良く煮込んで……お野菜もちゃんと食べるんだよー」

 お肉ばかり食べたがって野菜を摂らないのは弟達も同じだから、ついついその癖で口にする。そんな今の段階では小さな身体のどこに自分の体積を越える程の食べ物が入っていくのか。という摩訶不思議な事実は知らないので平和なもんだった。
 しかし、目の当たりにしたらしたで食べ盛りの弟達のお腹を日夜満たしていた姉ゴリラは意地でも腹いっぱいにしてやる!と意気込む予想。

 早い段階で人外とは察するだろうが――竜族なんて高位種だと知るのは少し後かも知れない。
 ともかく今はただのかわいい妹ちゃんで。かわいいかわいいかわいいねーとめろめろに甘やかし倒しながら下宿先に連れて行って、ごはん食べたりお風呂入ったり一緒に寝たりするのだ。楽しすぎる生活に浮かれ出すゴリであった……。

ラファル > 「うん、ヴァールさんが見てるの。お家から。」

 自宅から、国中を見てる有能な家令様がいます、家令様が見てる。一応、分類お嬢様なので。危険がない限り何もしないのです。
 そして、悲しい事に危険判定されておりません。傾国判定もされてないのでしょう、と言うかアウトオブ・ほにゃらら。

「うん、ボク泣かない、つよいこになる。」

 なんでしょう、スポコン的な寸劇に早変わり、でも、本人はいたって真面目。ええ
 全力だからこそ、楽しいのです、きっとメイビ―。

「わ!それはうれしいな!わーい!」

 フリルが嫌いなのではなく、服が嫌い、だから、普通に可愛いお部屋とかだと、幼女はぴょんぴょん楽しそうにする。
 可愛い熊さんとか、可愛いおねーちゃんとかきっと楽しいはずだ。

「大丈夫だよ!凄く、嬉しかったから!」

 姉や両親にそんなことをして貰った記憶はないし、彼女のしてくれたことは新鮮で嬉しくて楽しかった。
 だから、だから、懐く。もっと、一緒に居たいな、と。
 頭をなでられて、えへへ、と嬉しくて、はにかむのだ。

「おやさい……香草焼きとかある。」

 好き嫌いは良くない。判るし、食べられるし、食べる。でも、嗜好だけで行くと肉になる、それはドラゴンとして仕方のない事だろう。
 
 ちなみに。弟たちとは案外仲良くやっていくことになる、だって、根本が同じようなもので、子供なのである。
 すぐに意気投合する、と言うか、弟さんたちをまとめるボス的な。強いし。

 一緒にお風呂入って、一緒に寝て。楽しく暮らすのだ。
 彼女が、ティアフェルちゃんのお家から卒業するまでの間は、妹として、兄妹と一緒に過ごすことになる。

 そこから、定期的に、見知らぬお金がティアフェルさんの所に届き始める。
 題名は 『妹が迷惑かけてすみません』と言う、迷 惑 料

 トゥルネソルの名前を調べると、商会が一つ、見つかるはずだ 

ティアフェル >  ――まんまと幼女を拉致った先は実家のある故郷――ではなく、下宿先の一部屋だから、お金持ちの彼女からしたらとても狭くて不自由かもしれない。
 サルのような弟がわんさかいる家になんてそもそも連れ帰ったら大変なので、実家暮らしだったら、さすがに誘拐は難しかったろう。

 ともあれ、しばらく妹を愛でる日々に浸り、色々落ち込みがちな日常がかなり楽しく塗り替わったという――。

ご案内:「王都 平民地区 街角」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都 平民地区 街角」からラファルさんが去りました。