2020/08/14 のログ
ロベリア > リルアール、という名を聞いて記憶を手繰ってみるものの特に何も思い浮かばない。
もしかしたら名家なのかもしれないが、直接関わりのない貴族等はよっぽどの事がない限り具体的な名前を覚えないタチなのである。
この辺りは人間よりも個体としての力が強い為、集団や群れというものを軽視しがちな傾向といえるがロベリア自身そういった人間とのズレはあまり自覚していない。
ともかくそういった気質は生まれついてのもので、これからもまず改まる事はなくリルアールなる家はついぞロベリアの記憶の中から出てくる事はなく。
ノウブルなる人物もやはり思い当たる人物はいなかった。

「まあ討伐ならそれなりに準備も必要よねえ。
護衛は私からの個人的な依頼だし日帰り出来る近郊にだから、すぐお金が入用なら先払いでまた後日改めてお願いしてもいいんだけど」

初対面の冒険者相手に先払いで護衛を頼む、というのも持ち逃げやキャンセルでごたつく可能性を孕むがせっかくの女の子冒険者とお近づきになれるのならロベリアに躊躇はなかった。

「あ、お店の手伝いも興味ある?うん、もちろんここで。ウェイトレスとか、あとは色々細かな用事とか頼んじゃうかもしれないけどそれでもいいなら日雇いでお願いしてもいいかなーって」

冒険者さんに頼む事でもないんだけどねえ、と改めて苦笑しながら。
しかしもし一緒に働けるのなら自身のやる気もうなぎのぼりというもので。

「簡単なものだけど賄い食も出せるしー、制服もこっちで準備してあるからその気なら今すぐにでもお願いしたいんだけど。どうかな?」

このチャンスを逃してなるものかと、極力魅力をアピールしつつ殊更親切そうに振る舞い。
割と本気で勧誘を始めるのであった。

シンディ・オーネ > リルアール家がそこまですんごい名家だったら自分なんぞ雇われていない、という思いがあるので知らなくとも何も思わず。
むしろノウブルを知らない方が残念なくらいで、さらりと流し気にもかけていない。

護衛がこの女主人からのものと聞くと、逆にそれは良いのかと、当然の疑問と一緒に恐縮した。

「? …? …んン? ええと… ええ、私で良ければ、護衛も喜んでですが。
 先払いは、お気持ちだけ頂いておきます。」

…この主人大丈夫なの?と、そういえばさっきから見られている気がして周囲を見回しておく。
が、それは人が良すぎやしないかという心配で、特にこの店で働く事に問題があるわけではない。
むしろこのお店での仕事の方に興味がありますと、真剣に条件確認しよう。

「はい、雑用何でもは冒険者なので、それはもう。
 ウェイトレス… は経験ありませんが、家事は問題無い… と、思います。
 …あの、お店の仕事を優先するのはもちろんですが、もし受けられそうな依頼が届いた時に、
 即対応が必要なものでなければ、なんというか、仕事終わりに引き受けて帰る事は可能ですか…?」

そう上手い話はないはずだが、今日だけにせよ不定期の日雇いにせよ、
届いた依頼にざっと目を通してツバつけたりしちゃってもいいのかなと聞いておく。
目を通すような暇が無いかもしれないし、
もしかしたら「斡旋所の職員として働く者はその斡旋所で依頼を引き受ける事が出来ない」みたいな制約があるかもしれないが。

「…せいふく。」

難があるとすれば、そこくらいだ。
魅力としてアピールされている通り、なるほど確かに仕事着があるというのは楽で良いのだが、
スカートもろくに履いたことが無いのに急にこれはハードルが高い。

…とはいえ、酒場は酒場でもいかがわしいお店とは違う所で女主人が着ている服なら、都会ではこれくらい普通なのだろう。
ならばたまにはこういう格好も良いというか、恋人は喜ぶのかなあと、ほんのり頬を染めた。

「…い、今からでも。大丈夫です。よろしくお願いします。」

ロベリア > どうもお店の方に興味がありそうだと分かれば、勧誘には更に熱が入り。

「依頼が円満解決するなら何も問題はないわよー」

とシンディの申し出にも快諾する。
ある種の癒着といえなくもないが、どうせ酒場に流れてくるような仕事である。基本的に緊急性は低いし依頼の達成が成されるのなら問題はないだろう。
それであまりにも失敗が嵩むようであれば流石に問題になるかもしれないが、その辺りの見極めもロベリアが目を通すのだしあまりにも無茶な仕事は事前に警告も出来る。
見たところ真面目そうな子ではあるが、若手や新人の冒険者というのは焦って無理をして失敗しがちなもので。
特にこの酒場にはそれなりに腕の立つ連中が屯している事もあり。
時折危険度高めな討伐依頼も回ってくるのでそういった依頼にいきなり手を出すようであれば、先程の相棒の実績や実力と見比べてこちらから仕事を通すか判断する事になるだろう。

「家事一般が出来るなら、とりあえずは問題ないわねー。
ただし、お客さんの前ではなるべく笑顔でね」

シンディがやってくる直前まで完全に気の抜けた表情を晒していた事を棚上げして、ウェイトレスとしての心得を説く。
そして彼女の前で改めてにこりと微笑んで見せて。

「ふふ、それじゃあお願いしちゃおうかしら。
あと私の事はロベリアって呼んでね!
あー、でもシンディちゃんはクールに振る舞って笑顔出し惜しみにしても人気出ちゃうかも!
何かそういうタイプの美人さんだもんねー」

ともかく上機嫌で雇用を快諾すると、改めて自己紹介をしながら制服を持ってくる事に。
背格好や体型から見て、とりあえずロベリアの制服と同じものを持ってきた。
着替えを手渡すと更衣室へと向かわせ、わくわくしながら彼女が袖を通すのを待っている。

シンディ・オーネ > 支所とはいえ冒険者ギルドの仕事が内側から垣間見えるというのも魅力に思う。
ちゃっかり依頼を引き受けてしまっても良いとなれば、願ったりで。
ひとまず今日を見てもらおうと、改めて店員の方に雇用を願い出る。

「では、ぜひお願いします。
 …あ、護衛の方もいずれ?」

もう片方も、店員として詰めるのであればいつでもお供できそうだ。
もっともそちらは他に頼むようであれば、それはそれで気にしない。

…家事や笑顔といった言葉には、少し表情が引きつる。
父子家庭で一通りの家事はこなしてきたけれど、母親がいないとクオリティには自信が無かった。
養父の監督は、うるさい事を言わない人だったのでかなり十分ではないかもしれない。
それに愛想笑いとか一番苦手とするところ。
あれ店員って実は難しい仕事なんじゃあるまいかと早速不安になるが、そこは口に出さず仕事に取り掛かる姿勢。
…向けられる笑顔に、へらりと笑ってみせる顔はぎこちない。

「よろしく、ロベリアさん。…。」

人相が悪い、という自己評価が先に立ち、好意的な評価にはどう対応して良いか分からなかった。
店主としては先行き不安になりそうな雰囲気かもしれないが、制服を頂いてバックヤード。
いささか特殊な構造の服に多少戸惑うけれど、そでを通して姿見の前。

やぶ睨みの顔をしかめて、むむむと赤くなる。

予想以上に、脚が凄まじく心細い。
安全靴では何かのジョークになりそうなので靴も借り物か。
見てくれはそうおかしくないと思うけれど、非常に落ち着かなくてもじりと腿をすり合わせた。

そして背中。背中くらい大した事なかろうと思うなかれ、
普段露出していない部分が開いているというのは、前ほどではないにせよ妙な気恥ずかしさがある。
確かに涼しくて夏場は良いような気もするが、ここでバストサイズ。
ロベリアと背格好はほぼ同じで違和感無いものの、
アンダー:トップ差の都合で、背中側にも布地が回っていないと上手く締め付けられず、
やや出っ張ってしまってる感じ。横乳。

別に前がしっかり止まっていればポロリもありえず、まあいいか?と思うがなかなか出ては行かれなかった。
のろのろと覚悟を決めて髪を結いポニーテールに。
…こんなに女性をアピールする服を着るとすっぴんの自分が気になるが、
化粧品を貸してもらったところでやり方が分からない。
まあいいだろうとため息をつき、表へ。

「すみません、手間取りました。」

やや赤いが、別にこれくらい都会じゃ普通でしょって努めたお澄まし顔で、何しましょうかと待機姿勢。

ロベリア > 着替えて来たシンディは見るからに慣れない様子であった。
このぐらいの格好は割と平気、というようなあけすけな女性たちの相手の多いロベリアにとってこれはかえって新鮮な感動に満ちていて。
ぎこちない表情も、羞恥心を堪えてそれでも赤面を隠せていないその顔も庇護欲と情欲を同時にくすぐってくる。

「んっ、おっほん……。
うん中々似合ってるわね。
制服はとりあえず私の持ってきたけど、どこか苦しかったりしない?」

思わず見とれてしまっていたのをごまかすように軽く咳払いをすると、これ幸いと着替えた姿をあちこち確認して。
実際にサイズ調整の事も考えてはいるのだが、ギリギリで留まっているという風情の横乳にはつい何度も視線をやってしまう。

「大丈夫そうなら、今は丁度暇そうだし軽く研修ね。
私が手取り足取り教えてあげる!」

護衛の依頼は、そのうち機会もあるだろう。
とりあえず今日のところは店内の案内と諸注意。
初めは配膳辺りから慣れてもらって、注文を取ったりはもうちょっとしてから。
今は客も少ないがもうじき昼時だ。
酒こそ出ないものの、数時間は見違える程人の出入りが起きるはず。
接客業に不慣れそうな彼女にレクチャーをしながら、ロベリア自身も先程までとは打って変わってやる気が満ちてきていた。

「護衛の方の依頼は、とりあえずはお昼を乗り切ってからねー。
あ、それとお触りしてくるお客さんは怪我しない程度に殴っていいから。
ちょっと練習してみる?」

と言いつつ、シンディのスカートの裾に手を伸ばしてみたり……。

シンディ・オーネ > 「あー… ん、あー、ハイ、大丈夫、です。」

苦しかったり?と問われて、苦しいまでではないが胸がちょっとともごもご。
しかし微妙に言い難いところで、具体的にはしなかった。
確認してくれている時に、気付いてくれないかなともじもじ。
スルーしてくれるのであれば、言い出せないままである。

周囲の目もあって落ち着かないが、仕事の説明には魔術師一流の集中力でキリッと臨もう。
一度割り切ってしまえば、多少恥ずかしい格好ではあるがそれは自分基準で、
ロベリアも同じ格好しているのだから、気にする方がおかしいのだと本当に思えてくる。

「――お、おさわりっ…?」

が、続く警告にはそんなのあるのかと、再度頬染め素っ頓狂な声が出た。
お店を勘違いしてやしないかと思うが、してみるとこの制服にもやっぱり責任があるような気がする。

「い!?いえあの、れ、れんしゅうって…!」

スカートに手が伸びるとちょちょっと待ってとその場で跳ねるように逃げそうになるが…
いやこれは練習、試されているのだと思いなおす。

いいのか? やっちゃっていいとなればやれなくはないがいいのか?と悩む一瞬の後――

「――おっとお客様手を落としましたよぉー…?」

パシとその手を取ると、グイと引き上げ関節的によろしくない方向へ捩り上げようとする。
もちろんこの上なく加減しており抵抗されれば即放す勢いだが、何というか慣れているのは伝わるだろう。

絡まれ方の系統は全く違うけれど、他者に対して暴力で応じるのに慣れていると。

一筋縄ではいかないと技の強度が増していき、
終いには全身絡み付かせるような関節技に及ぼうとするので、
そうなるとセクハラ防止の意味があったかどうか疑問が出るがそれはまた別の話か―― 【持ち越し】

ロベリア > 【中断】
ご案内:「酒場 輝く白狼亭」からロベリアさんが去りました。
ご案内:「酒場 輝く白狼亭」からシンディ・オーネさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場 輝く白狼亭」にロベリアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場 輝く白狼亭」にシンディ・オーネさんが現れました。
ロベリア > 「あっあっちょっと、そっち、そっちはキマる……!」

殴られなかったが、代わりに関節技が飛んできた。
力自体は軽いといえるが、そのまま放っておいたらどんどん可動域の限界近くまで捻り上げられていき。
しかしシンディに密着され、柔らかな肉体を押し付けられると抵抗せずもうちょっとこのままでいようなどと思ってしまう。
流石に本格的に怪我をする前に解放されたが、その頃には若干涙目になっていた。

「いたた……。こ、これなら、大丈夫そうね……」

ダメージが残るようなかけられ方ではなかったが痛いものは痛い。
だが期せずして体術の練度も垣間見る事が出来た。
腕をさすりながら、改めてシンディと向き合い。

「昼間は多分大丈夫だけど、夜お酒が入るとみんな悪ノリしがちだから。このぐらいの方が頼もしいわね。
いざって時はこの調子で、器物壊さない範囲なら好きなだけやっちゃっていいから」

言いながら、手を軽く握ってみる。
多少痛むが作業に支障はなさそうだし、痛みもこのぐらいならすぐに引くだろう。
そういう訳で、改めて研修に取り組む。

「とりあえず、笑顔は追々ねー。慣れてないと案外難しいし、当面はお客さんに失礼な事言わなければ接客面はおっけー」

とは言ったものの、言葉遣いの方は問題なさそうだし冒険者相手程度なら不足のない礼節を備えているように見える。
料理の番は自分でやるし、考えてみれば研修といってもそう大した事はしなくても良さそうだ。

「それじゃーお昼までまだちょっと時間あるし、それまでスマイルの練習でもしてみる?
普段笑顔になる事を考えながら練習するといいっていうわよー」

そう言うロベリアは相変わらずのふにゃっとした柔らかな笑顔で。

「例えばそうねー……。んー……。
……ふふっ、ふへへ……」

既に笑顔は問題のないロベリアだが、お手本のつもりで自分の好きな事を想像。
そもそも緩々だった笑顔は更に締りがなくなっていき、気持ちの悪い笑い声が漏れ出す始末。

シンディ・オーネ > キメてんのよと、これが遠慮なくかけられる相手ならいっそ楽しそうな表情さえ浮かべていたかもしれないが、
ただの試しで相手が女性となると勝手が違う。
変に加減し過ぎても実力を示せないのである程度は本気で行くが、表情はいいのかな?と引きつって。

「…す、すみません。あ、でもすぐ痛みは取れると思います、これは何度かけてもいいやつなので。」

故郷でいわゆる不良の部類に絡まれがちだったのは、村八分な背景や本人の性格が原因だったのだろうけど、
もしかしたらスキンシップを求められていたなんて事もあったのだろうか。

少なくとも本人はその辺りを自覚していないので、制圧できる相手にはこの対応で良いかもしれないが、
酔って狼藉を働く相手が互角以上の技量を持っていた場合、セクハラに対する反撃の遠慮の無さが、
よりエスカレートした良からぬ事態を招く事はあるかもしれない。

そんなのは思い至らない話で、ロベリアを痛がらせた事に気まずそうにするのも束の間、
いざって時には好きなだけと言われると、なんだか嬉しそうに頷いている。

「失礼な事… 気を付けます。」

あまりそういうシチュエーションが無かったが、目上への言葉遣いくらいは一応。
明確に上下関係が無いとちょっとくらい年上だってタメ口になってしまうが、
店員をやるからには気を付けますと、ちょっと不安そうに。

店の事を教わりながら、メモが必要無い程度であれば何とかなるかなと少しほっとして。
しかしスマイルの練習とくると、今店員は二人なのにかなり暇なのかと、気遣わし気に周囲を見回した。

しかし店主の意向とあらば大抵の事に異は唱えない。特に不意の雇われたてな今ならなおさらだ。
…でれっと、そんな表現になりそうな感じに崩れて来る笑顔に、これは、これでいいのか?と半眼になった。

「…何を考えてその笑顔ですか?」

不審に思うの半分、どんな趣味の人なのかなって興味も半分。
そう問う顔は、可笑しそうに和んでいる。

ロベリア > 妄想の中の女体を振り払い、さり気なく口元を拭う。
多分よだれは垂れてなかったけど、初対面の女の子の前でちょっと飛ばしすぎてしまったかもしれない。

「それはまあ、プライバシーというものもありまして……」

緩みきった表情を何とか通常営業にまで引き締め。
妄想への追求を有耶無耶にするように堂々と胸を張り。

「と、ともかくっ!自然に笑顔になれる事を考えるのがコツ!
あとは恥ずかしがらない事ね!」

と、指導に戻る。
とはいえいきなり出来るものでもない。
先程も言ったように、今日のところは実践が出来なくても咎めるつもりもなく。

「それじゃ、早速練習してみよっか?」

そう言ったロベリアは先程のような緩みきった表情でもなく。
実に自然な笑顔を浮かべていた。

シンディ・オーネ > 「…無難なもので誤魔化せばいいのに。」

プライバシーというはぐらかしに、
かえって気になりますと面白がって言う。
が、堂々とされてはちょっとイジったところで何も出なさそうだし、そもそもこれは練習だった。
え、やっぱりやるんですかって嫌そうに表情強張らせてしまうけど、確かに愛想悪いウェイトレスなんてダメだろう。

「えー… ええと、こんな…?」

しかし改めて作り笑いしろなんて言われたら、普段にこやかな人だってそこそこ気恥ずかしいのではないか。
ふふっと口元を笑みの形にしてみせるけれど、じわじわと顔が赤い。目が笑っていない。

…自分でテイクツーと引っ込めて、ううんと咳払いしてアドバイスを参考にしてみよう。

…こっぱずかしい制服だけれど、たぶんだが恋人のアニーことアーネストはこの格好を見て喜んでくれると思う。
いやそれとも、はしたないよとたしなめてくるだろうか?
でもそうやって堅物なフリをして、本当に嫌がっているかどうかは顔を見ればすぐ分かるのだ。
きっとまんざらでもない、照れた顔をしてくれるに違いない…

目を閉じてそんな事を思っていたら、なるほど、思い出し笑いみたいでなんだけど、にっこりしてくる。

「…うん、なるほど。いいですねこれ。」

こうですね分かりましたと、にこっとしてみせれば無難な愛想笑い。
…すぐに唇が引き結ばれるみたいに、そんな事している自分を微妙に思うのが顔に出て来るのだが。

ロベリア > 「うん、いい感じいい感じ」

まだ不慣れそうな笑顔だが、初々しい感じも可愛らしい。
そしてそんなシンディにロベリアは顔を寄せて。

「それで、何を考えての笑顔だったのかなー?
犬とか猫とかかな?」

じいっと目を合わせながら、じりじりと距離を詰める。
自分の事は隠したが、完全にそれを棚に上げている。
とはいえ、無理に聞き出してもパワハラであるし女の子に嫌われるような事はしたくないので大分冗談めかした口調であるが。

シンディ・オーネ > 「――っ…!?
 いっ、犬です。そう、犬です。カワイイ。」

すっと寄る顔に、自分がはぐらかしておいてそれはズルくないですかと、
抗議したいが思わず赤くなってしまいしどろもどろ。
幸い犬猫?という助け船があったのでそうそれですと乗っかってしまったが、
なるほど急に無難なもので誤魔化すのはけっこうなスキルが必要なのかもしれない。

…しかし、ロベリアはここで店主をしている身元の確かな人だが、
ロベリアにとって私はどこの誰とも分からない流れ者である。
それをひょいと雇ってくれたのに、私は自己紹介も何もしてないのではないかと、悩む間が空いて。

「…犬みたいなやつです。
 地方村に隠遁した魔術師が拾ったなんて公言している怪しい女の子に妙に懐いて。
 大人しく村の仕事にでもつけば良かったのに、
 どうせそのうち村を出る私を連れ出してやろうって、駆け落ちみたいな真似をしたばかなやつ。
 本人は勇者に憧れて冒険者やりたいんだって言うけど、それも本当なんでしょうけど…」

もごもご言って、要領を得ないかなと首を振り。

「そんな幼馴染と一緒に冒険者をしていますが、彼だけ熟練の冒険団に拾ってもらえて、
 どう考えてもそちらの方が順調な出だしになりそうなので、今は別々に仕事を受けています。
 あ、宿だけは一緒で。
 私はその、こういう洒落た格好をした事がないから…」

これを見て彼がどう思うかを考えてニヤけたのだと言いかけて、そこまで説明することはないかな!と咳払い。

「それでロベリアさんは?」

話を逸らすように、私は話したぞ!と再度聞いてみるのだ。

ロベリア > 「ほほー、犬ねえ。
可愛いものねえおっきい犬とかもふもふで」

頷きながら、直感的に犬というのは嘘だなとは分かった。
というか流石に嘘が下手すぎる。
しかしそうやって誤魔化したい事を無理に探る事はあるまい。
これでこの話は手打ちに、と思ったのだが。

「へー……。
ほーほー……。
ふーん……」

思いがけず割と具体的な身の上話に、相槌で答えながら最後までそれを聞き。

「つまり、愛しい彼にこういう格好をさせたいって考えてた訳ね?」

顎に手をあて、キリッといつになく真面目な顔で盛大に外した結論で締めくくった。
もちろん冗談だが、一応ロベリアなりの気遣いである。

「って、私!?」

てっきりもう終わった話と思っていたので、不意をつかれ驚く。
それこそ適当に誤魔化してもいいのだが、咄嗟にそういった嘘をつくのは得意とは言い難い。
暫く頭をかいたりそわそわと視線を泳がせていたが、やがてシンディに向き直ると。

「えーっとぉ……。その、恋人とイイコトしてる時の事とかを……」

恋人やセックスフレンドは複数、というか割と大勢といっても良い程度にいるがそこまでは言わなくてもいいだろう。
ウブそうな新米冒険者にはそれこそ無駄に刺激が強い。
あと当然のように同性ばかりなのも、異性愛らしきシンディにわざわざ言う事もないだろうし。
そこまで言ってこれ以上は察して、という態度で微妙に視線を合わせづらい気まずい沈黙が流れた。

シンディ・オーネ > 知らず、ほんのり頬染めて穏やかな顔をしている。
話すと決めたら大事な話で、恥ずかしさよりも正確に把握してもらおうという注意の方が――

「…え?ええまあ、オトコノコだから、こういう格好は喜ぶ―― ん?させた… いやいやいや、させたくは、別にっ!」

何その特殊性癖と慌てて、まだ小さい頃だったらアリかもしれないが今はねと笑う。
気遣い成功。変な気恥ずかしさは紛れて、義理を果たした感にほっとした。

そしてそう、私だって話したのだからロベリアの事ももうちょっとである。
別に言わなくてもいいですけど、私は話したのになー?みたいな圧力をかけてみたら、
なるほど、イイコト。もう子供じゃないので分かりますと、
ロベリアが男の人と絡み合っているところを思わず想像し、
ちょっと気まずくなるが、こちらも状況が許す限り毎日で、ふと、他の恋人達はどんな感じなのかなと気になった。
あけすけには聞けないが。

「…うん、何だか、かわいいですよね。
 一生懸命で… ちょっと、ちゃんと応えられているか心配になる。」

分かる分かると、相槌をうってみる。
こちらは二人とも不慣れでどうしても夜の営みには戸惑いが付いて回る状況で、
それでも十分幸せでニヤけるに値する想像・回想だと思うが、
出て来る言葉はなんというか穏やかな。

具体的な同意を示して気遣い返しのつもりが、あれ、更に気まずい話にならないかとそわそわ。