2020/07/26 のログ
ご案内:「平民地区:裏通り」にレムリアさんが現れました。
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■獣魔目録 > ――…来訪者のようだ。
物好きでも来ない、好奇心だけでは決して踏み込めない裏通り、人払いの結界と呼ぶには稚拙では有るが魔導書は己を読むだけの理由か力を持つもの以外は好奇心以上のものを抱かないように、と魔力を冒険者や街の治安を守る人間たちに察知されぬ微弱な量を流していたが、来訪者のようだ。
全身をローブですっぽりと包み、顔は口元程度しか見せない小柄な人物は来訪者が本を買おうとする意志を告げることにニコリと口元を柔らかな笑みの形に変えて、了承の意を示すと縦に何度か頷く。
「マイ……ど……こ、の絵本、ナンテ……どうダイ?」
2冊の本を購入する来訪者に対して矢張り蚊が鳴くほどの大きさの声で、もう1冊の本を薦めながら実際にその本を手に取る。
ローブの袖から伸びるか細く真っ白な指先、の影に何かニュルリと伸びるものを潜めつつ、そう言葉で勧めた絵本を手に取るとまたそれも来訪者の方へとスっとさしだす。
「本、童話、読メバ、童話ノ、主人公と一緒ノ、キモチが味わエル。」
差し出した絵本にはタイトルは【絵本】とだけ、表紙に挿絵もなく、ただ【絵本】と、後はついでにように本三冊まとめての金額をボソボソと伝える――…その金額は古本市と変わらぬ安い値段である、そう子供の小遣いで十分支払えるような安い値段。
■レムリア > 言葉を交わすのは得意ではなさそうだと、そう見て取りつつ。
勧められた絵本を手に取りながら、やはり店主は人外だなと異形の気配に恐れの類ではなく面白そうだという期待感を胸に秘め。
「読めば、童話の主人公の気持ちが味わえると?」
幻覚系の術が仕込んであるのか、それとも本の中に引きずり込むような魔導書の親戚筋か。どういう代物にせよ、怪しげな店のお勧めとあれば尋常の物ではないだろう。伝えられた値段の安さも相まって嘘でも本当でもどちらでもいいだろうと、期待と好奇心に目を輝かせて追加の料金を支払い。
「普段からこういう所で商いをしているのか?」
面白かったら、また追加で買いに来るのもありやもしれぬ。そう思って、気軽に今後の為に問いを一言。
■獣魔目録 > 「読メバ、童話ノ、主人公……キモチ……ル。」
かくん、かくん、とまた縦に頷くのだがひどく不安定にまるで人形を思い切り前後に揺すったような感じで首が前後に頷くというよりも揺れ動く、揺れ動かしたまま追加の代金を受け取るのであるが、ゾルリと代金を受け取るついでに冷たい指先で相手の手を撫でようとする。
それと問いに対しての返答は別で。
ニコーとフードで隠れている相貌で唯一露出している口元の笑みを作り上げると、かくんかくんとまた不安定に頭を前後に振って好奇心か期待か良い方向での感情を向けてくる相手に応える、応えた後にその自ら揺らす頭部の所為で包み隠していたフードがパサリと後ろに落ちて相貌が露になるのだが。
――…その顔も形も全て
見たもの親類、あるいは好意を抱きやすい顔立ち、若しくは顔を見たものと全く同じ顔、それこそ性質の悪い悪戯のような顔を露にする、露にして変わらず口元だけは作ったような笑みを浮かべるのだ。
瞳は【そう】でありながらも輝きなどない。
表情は作り物の様な無機質なものを感じさせるもの。
――…それはそういう者を理解できる存在であれば明らかなる異形な存在である。
「商イ、読マレたクなっタラ、マタ来ル。」
と、続けた言葉での返答は勘の良いものならそれが何かわかりそうな意味合いの返答と、声色は少年少女男性女性と区別がつきにくい、平坦な声であった。
■レムリア > 特に難しい事をする必要もなく、ただ読むだけで効果は発動するらしい。
つい勢いで買い入れてしまったが、そういえばと絵本はどんな内容であるのかと買ってから中身へと意識を向ける。
主人公の気持ちが味わえると言っても、男性か女性か。大人か子供か。味わうべき主人公の設定も知らないし、絵本で描かれる物語の内容も知らない。この場で読み始めるのはどうかと思うし。落ち着いた場所で、読んでからのお愉しみという事にでもなるかと、表紙を眺め。
代金の支払い時に触れた指先の冷たさ。まっとうな人間らしくない安定感の欠ける動作。フードが落ちて露わになった顔の無機質さ。
「……ふむ。なるほど、商売目的ではないか。縁があればまた、という感じだな」
少しばかり真顔になって、相手の顔を見つめ。随分と人から離れた存在のようであるなと察して『読まれたくなったら』かと、買い取った本へと改めて目を落とし。
面白そうだからと無防備に読むのは少し問題があるかなどと、多少の警戒感を心に覚えつつも。面白そうなイベントを引き当てたという満足感が勝り。
「それでは、後でゆっくり読ませてもらうとしよう」
買い取った本を大事そうに胸元に抱えて、落ち着いて本を読める場所へと移動を開始する。
■獣魔目録 > 「マイ……アリ、ガ……トウ……。」
1冊の魔導書が己を読ませる為に販売するという形をとる為に作られた異形は自然さを取り繕う為に生み出された存在は購入者になった来訪者だった存在に手を振る。
二度、三度、ゆら、ゆら、と頷くのと同じくらいに不自然な角度で手を振ればふわりとその場に甘い香りを残して、一瞬にして姿は霞と消える。
正しくは購入者が抱える本の1冊に魔力として還元される。
だからこそ、抱えられている魔導書が内包する魔力の量が上昇するだろう。
あとはだ。
購入者が魔獣を求めて知的好奇心を満たすために魔導書に触れるか、それともタイトルのない本を開き、その中に淫靡なる物語が綴られていくことになるか、それとも最後に勧めた童話の主人公の気持ちを味わうことになるのか、それは購入者が選び縁を手繰り寄せることになるだろう。
魔導書も呪書も絵本も本である。
読み手が無ければ存在できない、しかし今宵は無事読み手に出えたようで、本はその存在意義を全うできそうである。
ただそれは真っ当な物語ではない事は確か。
どの本も決して読み手が幸福になるように書かれていない。
いやある意味幸福になることは出来る、可能性はある。
今宵はこれより新たな記述が加わることになるだろう。
その栄誉に選ばれるのはどの本か、本は開かれるその瞬間を待ちわびるのであった。
ご案内:「平民地区:裏通り」からレムリアさんが去りました。
ご案内:「平民地区:裏通り」から獣魔目録さんが去りました。