2020/03/11 のログ
ご案内:「平民地区・繁華街外れ」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「――どー…しよう……」

 平民地区にある賑わう繁華街の外れたブロックは人気も少なく、これといった店もなく遠くの喧噪がじんわりと響くばかりで比較的落ち着いていた。店舗よりも家屋が多く、空き家もいくつか混ざっていて。
 そんな空き家の 屋 根 の 上 で茫然と呟く女と、その真下で吠えている野良犬――

 大の苦手とする犬に追い掛けられて、無我夢中で走り回り気が付いたら平屋建ての空き家の屋根にまで上っていた。
 一体どうやって上ったのか必死過ぎてまったく思い出せない。
 我に返るとそんなところに突っ立っていた。
 犬も到底上れやしないだろうが、まだしつこく真下でワンワン吠えていて。
 屋根の上、腰を屈めて蹲るような体勢でそれを見下ろして、顔を全力でしかめ。

「……ちょっとー……あんたどうしてくれるのよぅ……。
 降りられないじゃないよー……」

 吠えられるとちょっと怖くてびくびくするが、ここは絶対に奴の手の届かない距離。
 情けなく力ない声音でぼそぼそと文句を投げ落とした。

ご案内:「平民地区・繁華街外れ」にアルファさんが現れました。
アルファ > ギルドの依頼で郊外まで出向いた。まだ寒い日で人の気配が少なければ吠える鳴き声も聞こえてきて。
そっちの方へと足を進めれば空き家の前で吠え喚く野良犬。その側にまで歩み寄って。

「…?」

何に吠えるか分からずに首を傾げる。
こちらが頭を撫でようとすれば吠えるのをやめるだろうか。
腰を落として犬の頭を撫でながら、吠え声に交じる微かな声に顎を持ち上げ。
屋根から顔を出す女性を見つけて。

「アンタ、何してんだ?」

黒髪が方に流れ落ちるほど不可思議そうに首を傾げて目を丸くする。

ティアフェル >  屋根まで上ったというのにまだ諦めない犬に、しつっこいなあぁ……と舌打ちカマしつつ、せめてこいつがいなくなってくれれば……と肩を落として見下ろしていた、その時、犬に向かって伸びる白い手が見えた。
 続いて黒髪。こちらに気づくと見上げられて紅い双眸と視線が合った。思わずぱたり、と瞬きをして見下ろし。

「えっ……、あ……ぅ………あー……何って……えっと……屋根に?登って?しまいました?」

 その上降りれません。

 へどもどと口ごもりながら完全に見たままなことを疑問形に漏らして。
 落ちないように屈みこんだ体勢のまま地上へ向けてもう少しだけ乗り出して、

「あのー。お暇ですか? 助けてくれたり……する?
 とりま、その犬……どっかやってくれると、こよなく嬉しいです」

 犬、と指差しながら少しばかり気まずそうに訴えた。

アルファ > 「屋根に?またなんで……あっ」

戸惑う仕草と跡切れ跡切れの物言いは事象を簡単に察せる。
問いかける舌の根乾かぬ内に唖然と声を漏らして。

「ふっ。」

失礼にも鼻で笑ってしまってニヤける顔を髪を掻き上げる仕草で隠した。
指し示される犬にはすでに手を触れていた。半妖に吠えないのならば両手で抱えて。

「どっかにやって欲しい犬というのはコイツかな?」

抱えあげてその顔に近づける。眉間に皺を寄せる顔も相手にしっかり見えるほど。
再び吠えて怖がらせるだろうか?
半妖としてはふざけているだけだが。

ティアフェル > 「なんでって……」

 犬に追われて逃げた末、とそういうことなのだが云い淀んで言葉を濁していたが。云わずとも察してしまわれた。
 そりゃそうだ。
 鼻で笑われて、ぐ、と詰まったような顔をして唇を噛み。落ち着かなげに指先を弄っていたが。

「ぎゃー! 信じらんない! やめてよ! バカバカー!」

 犬の顔をいきなり寄せられて、悲鳴を上げて屋根の上でどん、と尻餅をついて後退し。ついでに傾斜のついた屋根の上、バランスを崩して左へ落ちかけて慌てて両手を振って平衡を保とうとして。
 ――助けてくれと云った相手に対して思わず暴言を口走ってしまったが、完全に無意識ではあった。

「ここで犬近づけるとかドSか!」

 あまつさえ軽く涙目でドS呼ばわりまで。

アルファ > 「ぎゃー!じゃなくてさ。どの犬を遠ざければ良いか分からなければ助けようもないんだが」

犬などこの場に一匹だけなのに。クツクツと肩を震わせ笑いを込めながら悪ふざけは続いた。
だが犬が緊迫した鳴き声を響かせて女性の危機を知らせたのなら双眸を眇めて笑みは潜められる。
太陽に照らされ伸びる青年の影が生物のように動き、壁に昇り、真っ黒な腕で転落しそうな体を抱きかかえようと。
抵抗しなければそのまま地面に足がつくまで確りと支えながら下降してゆくだろう。

「ドSなのは君かもしれないよ。こいつ、そんなに悪そうな奴には見えないんだが。」

青年の隣に煩く吠え立てる犬。吠え顔こそ凶悪だがその尻尾は楽しげに揺れていた。

ティアフェル > 「あんた分かってやってんでしょォォォォォ!!?
 他に!! いないでしょうよー!! 犬なんかあぁぁぁぁ!!」

 態とだっていうのは、面白がっているだけだというのは明白。
 しかし、よろめいたところで、不意に伸びてきた青年の影、

「えっ、えっ…?! きゃあぁぁぁあ!!」

 バランスは立て直せないこともなかったけれど、予想外の現象が起きて逆に驚いて身体が傾いてしまった。
 悲鳴を上げながら屋根から落ちかけた身体を器用に支える黒い腕。影遣いか……と認識できたのは下におろしてもらってからだった。

「あ、れ……あ……?
 ってぇ、イヤァァァァァァ!!!」

 無事に降りられて、きょとんとしたように立ち尽くしたが、地上へ戻るとやっぱりいらっしゃるお犬。
 面白いように絶叫して、ずざざざざざ、と全力で後ずさり、空き家の壁にぶつかって止まり。べた、と背中と両掌を冷たい壁にくっつけて、ぶんぶん首を振って。

「無理無理無理無理!! やめてぇぇええ!! こーなーいーでぇぇぇ!!」

 犬としては遊んでいるじゃれているからかっているという感じで、追いかけたり吠えたてたりしているのかも知れないが、こちらとしては恐怖以外の何物でもない。
 顔面蒼白で引き攣った表情の全身全霊拒否。
 ――それが犬としても面白可笑しいのかもしれない。

アルファ > 降りてきた女性にまた駆け寄る犬は、蛇蝎の如く避けられけたたましい鳴き声に
くぅーんと悲しげな声も交えた。
それを見た青年はゆっくりと腰を下ろして伏した耳ごと頭を撫でてやり。

「イヤァァァて。かわいそうに。この子が鳴いたから俺が慌てて助けてあげたんだ
 そこまで嫌わなくても良いじゃないか
 ねー?」

未練たらしく女性を見つめる野良犬の鋭い目つきを顔を縮めたり伸ばしたりして少しでも
微笑みっぽくしようとする青年が弄くり回して。

「ま、人には好き嫌いがあるからな。無理にとは言わないけれどね
 あ、コラ!」

青年の手から逃れて走る犬。向かう先はもちろん恐慌した女性。
相手が嫌がるならば追い払うが、とりあえずは様子を見ようと立ち上がって腕組みをした。

アルファ > #ダイスの結果
#1:犬はティアフェルの顔を舐めてじゃれる。
#2:犬はティアフェルの胸に飛び込む。
#3:犬はテイアフェルのスカートに噛み付く
#4:犬はティアフェルの手に噛み付く。
#5:犬はティアフェルの足に尿を引っ掛ける。
#6:ティアフェルは犬に噛みつかれ振り回される。

ティアフェル > [1d6→2=2]
ティアフェル > 「悪いけど無理! 絶対無理! 死んでも無理!!
 わたしのことを思うなら、頼むから近づかないで!! ステイ!! ステイで!!」

 犬の顔に愛嬌を含ませようとその顔をぐにぐにと弄ったりしているが、どれだけ柔和だろうが怖い物は怖い。
 犬恐怖症なのだから仕方がない。
 くっついた壁とほぼ同化しながら腰が砕けそうになっていたが、とうとう犬が彼の手を離れてこちらに突進してきやがった!

「ギャィアァァァァァァァァァァ!!!」

 避ける間もなく胸に飛び込んでこられて断末魔かというような絶叫が響き渡った。

「イヤァァァァァ!! やぁぁぁぁぁぁあぁ!! ヤメテエェェェェ!!」

 完全に強姦現場みたいな悲鳴が響き渡っていた。

アルファ > 「なんだやっぱり懐いていただけじゃないか
 胸に飛び込むのはどうかと思うが」

光景に微笑み見守り。犬は相手の胸の中ですんすん鼻を鳴らしてそれ以上のご無体はしない。

「やっぱり動物はおん……うぉっ」

しみじみと語るのが終わらぬ内に周囲を劈く悲鳴が。
青年も野良犬もびくり、と肩が跳ね上がるほど驚いてしまい。

「なにも暴行されてるんじゃないからそこまでしなくても。
 あ、逃げた!」

執拗に追いかけた野良も流石にこりて走り去っていくのを見届け。
蹲る女性にゆっくりと近づいたのなら手を伸ばした。

「犬にモテモテなのも考えようだな。立てるかい?」

ティアフェル >  飛び込まれた瞬間に宵闇を劈いて鳴り渡る悲鳴。
 人ってこんなに声出るんだ…ってぐらいうるさかったもので、さしもの犬も驚いた、ぽよんと弾む胸の中でびっく!と震えて、それから間近での大音量が続くもので耳が壊れるとばかりに堪らず尻尾撒いて逃げ去っていった。

 残された犬恐怖症は、魂が抜けた様に白目向いて放心して、ぶるぶる震撼しながら腰が完全に抜けて空き家の壁に背を凭せ掛けて――灰になっていた。

「………、は……?」

 そして、しばらくして犬が去って声を掛けられ伸ばされた手にぼんやりと瞬きをして、まだ魂が抜けたような顔でそちらを見上げ。

「い、犬……犬は……?」

 きょろ、きょろ、と見廻して、とっくに逃げた野良犬の所在を確認。

アルファ > 「どこかに行ったよ。いやぁ凄い声だった。
 これから犬に出会ったら今の感覚を思い出すと良い。
 犬どころか誰も彼も逃げていくから」

取られなかった手はゆっくりと引き戻して周囲を見渡す。
野犬の群れどころか人気も少ない。
正気に戻れば心配はないだろうと薄紅の瞳を瞬かせて。

「さて大丈夫かい?問題ないならもう行くが。
 心細いなら街の中央まで付き添っても良い。」

ティアフェル > 「っぅ……」

 犬嫌いにとっては相当ショックだったらしく、アドバイス?めいたことも云われているが真面な返答をする余裕もなく、とにかく犬がいなくなったと聞けば力が抜けきって、ついでに涙腺も崩壊して。
 ぼろ泣きだった。
 暴漢に襲われてもこうもしおらしくはなかろう。えぐえぐと啜り上げつつ、手を差し伸べてくれたのもほとんど認識できていなかったが、気遣うような声には、夢中でがしっとその袖をつかもうとしながら。

「一人にしないで…!
 お願いします、途中まででいいから一緒に行って~!」

 なっさけない声と顔で必死に訴えた。
 また犬が戻ってきたら遭遇したら、と思うと今日は街を歩くのも怖い。
 へたれ過ぎる科白を放って縋るように見上げた。

アルファ > 「ぁ……」

犬の珍騒動を見たときよりも控えめな声が漏れてしまう。
泣き崩れる女性を見ればその恐怖体験に悪ノリした半妖にも罪悪感が溢れて。
さまざめとなく女性がその袖を掴んだのなら再び腰を下ろして。

「ごめんね。そこまで怖かったとは思わなかった。
 あのノラもきっとそうだ。嫌な奴につきまとったりしない。
 こんなに泣かせているとしったらきっともう追いかけてきたりしないよ」

右袖を掴ませたままに左手でハンカチを差し出す。受け取ろうが受け取るまいが。
すぐに動くつもりはなく。その背筋を撫でようとする。涙が止まり落ち着くまで。

「あー、俺はアルファっていう冒険者だ。
 こんなに繊細な女性と出会うのは初めてだったから悪ノリしてしまった。
 許してくれよ。犬嫌いのお嬢さん」

申し訳なさそうに顔を顰めてもこちらを見るのなら片目を瞑ってやっぱり戯ける。

ティアフェル >  オーガと遭遇したところで「やってやるー」と息巻く程ごん太な神経の持ち主の癖に犬相手には、全ヘタレが導入された不甲斐ない奴になりさがってしまう性分。
 犬ショックで泣かされていたが、目線を合わせるように腰を落とすそちらを濡れた目で見て、

「い、いや、なんか……すいません。
 わたしもう、犬だけはほんっっっっとーに駄目で。
 マジでオーガのがマシっていうか。
 ……そ、そうかな? もう来ないかな…?
 犬には悪いけどそうしてくれると非常に助かる」

 差し出されたハンカチを「ありがとう」と受け取ってごしごしと涙を拭う。
 背を擦られて大分落ち着いてくれば、ぼろ泣きしてしまったのがかなり恥ずかしい。

「アルファさん? わたしも冒険者で、ティアフェルって云うの。
 せんさっ……ええ、わたしったらか弱く繊細で純情可憐で……うふふ」

 繊細というまったく云われ慣れない科白に一瞬目を瞠ってから、居直ったように事実無根のプロフィールを流した。申し訳なさそうな様子に軽く首を振って。

「――いや、うん、あなたが悪いって訳でも……まあ、あんまり?ないし?
 いーよ。こっちこそごめんねー。
 大騒ぎしまくってびっくりしたでしょ」

 おどけるような所作に、少し腫れた目で笑い返しながら。
 一度犬をけしかけられたので完全に悪いとは云わないというみみっちさ。

アルファ > 「……そのセリフ、犬が聞いたら傷つくよ。
 いっそ犬がオーガ並に凶暴なら駆逐されたのに。
 なまじ愛嬌があるから街中にいるから大変だね
 ――街に戻る前にしっかり拭っておきなよ。
 これじゃ俺が強姦したと勘違いされちゃう」

言葉はゆっくりと。動揺する乙女心をこれ以上傷つけないように。
背中を撫でる掌と合わせて優しくかけていたけれど。

「同じ冒険者か。よろしくね。
 ……そんなセリフ出るならもう元気が出たってことだよね」

最後にぱしんと音が響くくらい元気よく背筋を叩いてから立ち上がって。
その背で導くように街へと向かった。
途中、互いの身の上話や依頼の話などして。
地区の中心に戻る頃には女性冒険者にも笑顔が戻っているだろうか。

ティアフェル >  初動でてっきりどSだと思ったが……案外親切だった。
 犬ごときで泣き出したところもからかわれなくてよかった。しっかり涙を拭いて、 

「犬の存在がわたしの人生を脅かし傷つけているんだからしょうがないわ。
 ね、駆逐対象と云えばケルベロス級かな。いやもう生涯出遭いたくないけど。
 あ、これ……洗って返した方がいいかな。ごめんね」

 借りたハンカチをそのまま返すのは気が引けて後日返却がいいかと小首を傾げ。
 お陰様でどうにか調子が戻った、と宥めてくれた相手に少々情けなさそうに笑みを向けて。
 最終的にばし、と叩かれて反射的に背筋がぴん、と伸びて。
 そして、途中まで一緒に、冒険者共通の話をして歩きながらも野良犬の気配がしたら彼を盾にすることも辞さない犬恐怖症、今日はお陰様でなんとか無事に帰れたそうな。

ご案内:「平民地区・繁華街外れ」からアルファさんが去りました。
ご案内:「平民地区・繁華街外れ」からティアフェルさんが去りました。