2020/03/10 のログ
■マリナ > 「ぇっ…忘れてません、マリナいま呼びませんでしたか」
この状態だと冗談も皮肉もまともに受け取ってしまい、困る少女。
忘れてたわけではないけれども、実体としてはあまり捉えていなかったかもしれない。
顔が近づいて、はっきりと目鼻立ちや声が感じられるようになると、これは現実なのだと悟るから。
耳がとてもくすぐったい。
「…た、たぶん…、――――」
こんなところで寝てはいけないと、本人も遅ればせながら思ったらしい。
はい、お昼寝です、なんて返事が返せるはずもなく、
バツが悪そうに呟く少女の視線が固定された。頬を包まれることで。
気づくと、話すには少し近すぎるのではないかという距離にある。
屋外なのでほとんどわからなかったのだけれど、冷えつつある風にのって石鹸のような香りもする。
その距離で―――あとすこし、近づけば。ほんのすこし顔を傾ければ。
くちびるは触れ合う。気軽に、淡く。
「――――あ っ…、待って、ちょっと、だめ …!」
とたんに、ぱっと慌てて距離をとろうとするけれども、触れたあとでは遅いような。
これがせんせいでなければぽかんとしたり、ちょっと怒ったり、別の反応があったかもしれない。
正直、いま世界で一番距離をとらなければならない人物のはずだった。
頭がきちんと働いている状態なら、それをまずことばで説明しようとしただろうに。
■ランバルディア > 多分、とは一体どういうことか。
誰かに寝かされたにしては装いは乱れていないし、そういった形跡もない。
照れとはまた違う視線の揺らぎに何となくの事情は察せられる。
これも王城から離れて得られた仕草のひとつと思うと暫く見ていても飽きないが。
久方ぶりに会えた時間をそう贅沢に消費するのは、もったいなく。
淡い濡れた音は風の音に紛れて、互いにだけ聴かせてすぐに消える。
「ん、っ……?……ン、――――」
距離を取るのに身動ぐのか、かぶりを振るのか、後退るのか。
いずれにせよ、頬を包む男の手がもうちょっと伸びて。
耳から、襟足に指をかけるようにしてちいさな頭ごと捉えれば距離は離れない。
慌ただしく紡がれたことばとも言えない声と、この態勢は互いにひどく既視感のある情景。
だから、身体に染み付いた流れのままもうひと押し。
少女の膝小僧と突き合わせて野原に膝を着き、肩を寄せて、――離したばかりのくちびるを、もう一度触れ合わせる。
寄せるだけに留まらず、傾け押し付けて、舌先を伸ばす。
あまぁい薬は今日は挟まないけれど。
唾液の味、吐息の熱さ、くちびるの感触。
お話をするというなら、それらもきちんと思い出して貰ってからとばかり。
■マリナ > あきらかに暴れたり無理に振り解こうとまでしなかったのは、少女自身、
相手を甘く見ている――というか、断ればすぐにやめてくれると思っていた。
もちろん以前であればそう考えることもなかったのだけれど、
丁寧に扱ってくれた時間があったため、男性とはそういう―――思慕があれば尊重してくれるものだと。
そういえば男性というものは、かなり強引なところもあるのだった。
そしてお城育ちだけあって腕力もなにもない少女が抗ったとしても、なんの手応えもない。
「まってまって、せん、っ―――――、…」
一瞬、あれ、聞こえなかったのかな、なんて思うほどに自然な流れで
また距離が詰められるもので、少女も二度三度と声をかけようとするのだけれども。
吸った息なのか吐き出そうとしたことばなのか、それごと塞がれて焦る声が途切れた。
「ぁ」と、小さく跳ねるような音は、屋外ではきっと相手にしか聞こえない。
舌先が忍び込み、呼吸をしようかこの期に及んでもことばが紡げないか、迷う少女の舌にふれた。
膚の表面はすっかり冷えきってしまった体も、口内はあたたかい。
紛れもなくそれは少女の体温であり、熱であり、血が通っている証だ。
「…――――っ、 ふ…」
ほのかにこぼれる吐息。
いまだ口吻の息遣いが上手くないものだから、突然舌まで入れられると苦しくなりがち。
ちょっと必死に顎を上げたのは、口腔で混じり合う唾液を少女なりに嚥下しやすくした結果だった。
舌先から首筋までぞわぞわ痺れる感覚。
きもちいいような、苦しいような、頭がぼぉっとするような。
それを訴えて、ぽんぽん、と白衣の胸元を少女の指先が軽く叩く。
ご案内:「九頭竜山脈 野原」からマリナさんが去りました。
ご案内:「九頭竜山脈 野原」からランバルディアさんが去りました。