2020/03/09 のログ
ご案内:「九頭竜山脈 野原」にマリナさんが現れました。
マリナ > 日が傾く頃、ふ と目が覚める。
鼻先をくすぐるのは自室のシーツではなく、緑の匂い。
数秒間ぼぉっとしたあと、淡い金髪を垂らした小柄な少女は、むくり、起き上がる。

「……………ぁ……、… う~ん……」

あくびなんだか呻いたんだかわからない曖昧な声。
寝起きというのは誰しもこんなもの――かもしれないし、そうでもないのかもしれない。

今日はなんだかとっても暖かく、少女は久々に集落から出ていた。
ほんとうはお気に入りの場所で、すでに花咲き乱れているのではと期待もしたのだけれど、さすがに早かったようだ。
街道からは見つけにくい位置だというのに、陽射しを届けるように
背の高い木が途切れたそこはぽかぽかとしており、あっという間に眠りこけてしまった。
冬の気温なら生死に関わりそうなはなしだけれども、今日は気持ちよく――こんな時間に。
いくら暖かいといっても、やっぱり外は寝る場所ではない。
すこし冷えた体。そしてまだ半覚醒といった具合のあたま。
少女はぼんやりと、焦点も定めず小さな野原の真ん中で座っている。

ご案内:「九頭竜山脈 野原」にランバルディアさんが現れました。
ランバルディア > ――近頃は自分で採取をするのも悪くないと、森の中を歩き回っている。
薬草以外のおたのしみ、というのを見つけたのも大きい。
そんな男が、採取した薬草を詰めた鞄を片手に。
山の側からやってきた。

「…………――いやいや、……」

男が見るのは、日暮れ時の野原にちょこんと腰掛けた金髪の少女。
夕暮れに照らされて、いっそ精霊と見紛うような雰囲気とさえ思う。
しかし、男はそのシルエットをよぉく知っている。
しかし、この時間にこんな場所に居るのが妙だというのも知っていて。

半信半疑で、柔い風が揺らす草の音に紛れて密やかに近づく。
かつて王城の居室で近づいた時もそうだが、遠目から見てもひどく無防備だ。
いたずらな声掛けの仕方は幾らでも思い浮かぶのだが――いつにもまして寝惚けていそうな少女に。
とりあえずは真っ当に、声を掛けてみることにする。

「……こんなとこでぼーっとしてると風邪ひくぞ、マリナ」

ただし、ぽかぽかとつま先まで温まっている指を耳たぶに伸ばした。
なぜ温まっているかというと、見つけた秘湯にさっきまで浸かっていたから。
こんな場所で眠りこけていたのならさぞかし冷えていそうな小耳を、すり、と。温めてやろうとして。

マリナ > たぶん言わなくてもわかっているだろうけれど、少女自身に気配を察するとか、そういう能力が著しく欠けている。
それに加えて寝ぼけている現在、少女が近づくだれかに気づくことはできなかった。

「………………、…?」

くちびるが、“せ”と開こうとしたんだろうか。
あまりにも遅かったため、それより先に大きな手が伸び、つめたい耳に触れる。
じんわりと体温が分け与えられる感覚のさなか、少女はきょとんとまばたきをした。
まだ夢の中いるような、そんな実感なのはここではあまり見ない顔が近くにあるからだ。
それこそ自分がまだ王都にいるのかと錯覚してしまいそうになる。

「…せん…、…せんせい…?」

ようやく音になった声は、寝起き後まともな一言目だけあってかすれていた。
けれど一言発せられれば覚醒の手助けとなるらしく、続いてまともなことばが出せるようになる。

「お仕事ですか…?」

少女の示すところは往診という意味なのだけれども。
てっきり王都の患者を中心に診ているのだと思っていたものの、国中に患者がいるのだろうかとぼんやり。
やっぱりまだ通常通りとはいかないらしい。

ランバルディア > 巨躯を折って、中腰になって。
触れた耳たぶは案の定つめたい。
触れている側からも確かに体温を分ける感覚を味わいながら、少女の姿に視線を這わす。
褒められたものではないが、ぼんやりとした様子は少女に似合いの愛らしい雰囲気。
耳たぶだけでなく、縁にも体温を与えようと親指と人差し指が挟んで蠢き。

「……この顔忘れちまった?」

小耳を捕まえたまま、膝まで折って更に目線を落とす。
出来る限りに目線の高さを合わせ、じとり、金眼が見つめる。
ついでに、ずい、と顔を近づけて。

「――しごと、というかその準備だな。
 マリナは、こんなところでお昼寝か?」

少女の問いは、当たらずとも遠からず。
仕事といえば仕事だが、誰かに依頼したっても良い。なんなら少女に任せてもいい下拵え。
言葉を交わしているというのに未だぼんやりとした頬まで、大きなてのひらで包み。
そこまでぼんやりとしているのなら、お目覚めのキスでも頂けるか。
くちびるを盗み、音を鳴らす。